May 2010

May 25, 2010

ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ 無声の絵画 詩と文学


ロセッティ 海の呪文 セイレーンの琴と歌声


A Sea Spell 1877  Fogg Art Museum, Harvard University

海の呪文 1877年 フォッグ美術館 (美術書から)
ロセッティ Dante Gabriel Rossetti

画像をクリックすると実際に撮影した写真の画像に変わります。

この海の呪文はホイッスラーの孔雀の間で有名なF・R・レイランドが所有していたものです。1872年に、ロセッティのヴァイオリンを爪弾く「ヴェロニカ・ヴェロネーゼ」を購入し、連作になるような作品を依頼しました。それがこの「海の呪文」です。

実際には暖炉のうえの鏡を挟んで対になるように「ヴェロニカ・ヴェロネーゼ」と対で飾っていたのは、のちほど紹介いたします「レイディ・リリス」でした。

ロセッティの間と呼んでもよいくらいのF・R・レイランドのドローイングルームに、二面だけでも7枚の作品が並んでいます。

この3枚の作品はいずれもロセッティの詩から絵画化されたものです。「海の呪文」の原文がこちらです。

Her lute hangs shadowed in the apple-tree,
While flashing fingers weave the sweet-strung spell
Between its chords; and as the wild notes swell,
The sea-bird for those branches leaves the sea.
But to what sound her listening ear stoops she?
What netherworld gulf-whispers doth she hear,
In answering echoes from what planisphere,
Along the wind, along the estuary?

She sinks into her spell: and when full soon
Her lips move and she soars into her song,
What creatures of the midmost main shall throng
In furrowed surf-clouds to the summoning rune:
Till he, the fated mariner, hears her cry,
And up her rock, bare-breasted, comes to die?

 林檎の木の下でハープ。これはホイッスラーの影響で、ジャポニズムの作品にも値するかもしれません。ハープはお琴を立てているのです。

(C)Rossetti org


原文の詩はリュートとですが、絵画作品に描かれているのはリュートではありませんね。フェルメールの絵のあれがリュート(ギターに似た)です。

そして甘い呪文を奏でます。

美しい歌声で航行中の船員たちを惑わせ、そして難破させて、その死体は風にのって、河口に沿って歌声とともに流れていったのでしょうか。セイレーンの頭上にいる海鳥がその魂として描かれています。

ゲーテの「ファウスト」のほか、ご存知のホメロスの叙事詩「オデュッセイア」と海の魔物セイレーンのシーンはかかせませんね。

イアソンのアルゴー船では、吟遊詩人オルフェウスの竪琴の美しい音色はこのセイレーンの歌声にも勝り、船員は無事でした。

ジョン・ウィリアム・ウォーターハウスの「セイレーン」と同じくハープを手にしているところは、ラファエル前派の特徴ですね。

恋をすることなく、ただただ航海中の船を難破させるために歌う歌声。それは海の呪文。セイレーンの美しい唇の動き、呪文を美しい歌声に変えて。そして悲しいことに惑わされるものなどいなかったのです。海のファム・ファタル。

それではお花はどうでしょうか。左のお花はスナップ・ドラゴン、頭上には林檎の実。

A Sea-Spell  snapdragon


「顎をあけた竜の頭」(スナップドラゴン)はセイレーン、甘い香りで蜜蜂を誘うこの花。蜜蜂は船員たち。

「林檎の実」は禁断の木の実のようです。林檎の実は誘惑、林檎の木は名誉です。

A Sea-Spell apple


花の冠ですが、ウィンスロップ・コレクション展の図録にキャロライン・ローズとあったのでしょうか?どんなお花なんでしょう。見たことありません。

キャロライン・ローズって、 デュシェス・ドゥ・ブラバンの枝変わりミス・キャロラインのことではないかと。

A Sea-Spell-Wreath


そうなるとデュシェス・ドゥ・ブラバンの特徴がないような・・・。耳から後ろにかけてはその薔薇にもみえますが。そして額のほうの花びらはすっかり花が開いて花弁が一重の薔薇のよう。それとも違うお花でしょうか。

そして「赤いアネモネ」だといわれている左下の花。ヴィーナスの恋人アドニスが亡くなったときの「赤い血」から生まれた花。

A Sea-Spell Anemone


赤いアネモネは「君を愛す」ですが、アネモネは死と眠りも暗示しています。でもアネモネに見えないですね。萎んでいるよう。そして蕾があります。アネモネの蕾は独特の丸み。なぜアネモネとなったのでしょう。当時の品種?

もしも満開を過ぎてしまった薔薇、萎んだ花は「死」を意味していると思われます。とくに身につけているセイレーン自身も死の呪縛にあるのでしょうか。


ロセッティ フィアンメッタ(フィアメッタ)  「デカメロン」 ボッカッチョの恋人

A Vision of Fiammetta(1878) Andrew Lloyd Webber Collection

フィアンメッタの展望 1878年
ロセッティ Dante Gabriel Rossetti
アンドリュー(アンドルー)・ロイド=ウェバー コレクション

正真正銘の写真画像はクリックでどうぞ。もちろん大富豪の邸宅に私が伺ったわけじゃありませんよ。友人から頂戴した画像です。

日中の明るいときは、この美術書のような明るさで見えるそうです。写真はちょっと暗いです。

以前に「ラファエル前派 モードと芸術」で使用した画像は美術書のものをスキャナしたので、色調は違います。

フィアンメッタはボッカッチョ(ボッカチオ)の恋人。ダンテのベアトリーチェと同じように歴史に残るカップル。

ダンテの理解者でもあり、ペトラルカとともにルネサンス初期の作家で「デカメロン」は有名ですよね。

ペトラルカはダンテとベアトリーチェの後をいく人でした。ラウラという謎の恋人とは心の恋人のまま、恋愛抒情詩を捧げ、ラウラが亡くなると生涯ラウラへの恋心を詩に託します。

ボッカッチョはナポリ王の私生児マリア・ダクィーノに小さな炎(フィアンメッタ)と名づけ、ペトラルカと同じくベアトリーチェとダンテの関係に倣います。この純愛がフィアンメッタの新しい恋で終わったからなんですね。

ソネットの「On his Last Sight of Fiammetta フィアンメッタの最後の光景」を書き上げます。

それをロセッティは絵画作品としたのです。

Behold Fiammetta, shown in Vision here.
Gloom-girt 'mid Spring-flushed apple-growth she
stands;

And as she sways the branches with her hands,
Along her arm the sundered bloom falls sheer,
In separate petals shed, each like a tear;
While from the quivering bough the bird expands
His wings. And lo! thy spirit understands
Life shaken and shower'd and flown, and Death
drawn near.
All stirs with change. Her garments beat the air:
10 The angel circling round her aureole
Shimmers in flight against the tree's grey bole:
While she, with reassuring eyes most fair,
A presage and a promise stands; as 'twere
On Death's dark storm the rainbow of the Soul.

ロセッティはこうした男女の恋や愛を理想としていました。実際のロセッティの現実とは正反対。

そうしてやはりフィアンメッタにも赤い小鳥を描いています。ベアトリーチェの肖像画と同じように。そしてフィアンメッタには「火の鳥」を描いているようです。


 ロセッティ ロマン・ウィンドゥ マネス神のために


Roman Widow (Ds Manibus) 1874-Museo de Arte de Ponce

ロマン・ウィンドゥ(マネス神のために) 1874年 ポンセ美術館

竪琴と琴でしょうか。二つの古楽器を奏でる女性。亡くなった愛する人の魂を慰めるマネス神を祀る巫女でしょうか。墓地の守護者でもあり、右側には小さな墓石。そこに「ディ・マネス」と刻まれています。

その墓石はラピス・マナリスと呼ばれる石。その下には聖水盤のようなものが描かれていますが、水をかけながら天空神ユピテルに雨乞いをするために崇拝された伝承も他にあるようです。

神話の物語だけではなく、古代のキリスト教の墓石にも刻まれていたといわれています。

この両手に二つの楽器をもつというのが、絵画作品では「呪歌の場面」とされているそうです。


ロセッティ レイディ・リリス 

私がもっとも好きなロセッティの「レイディ・リリス」はメトロポリタン所蔵のものです。

F・R・レイランドのドローイング・ルーム。顔が映っていない「レイディ・リリス」ですが、膝に花輪があるのがかすかながら認められます。1868年に完成したデラウェア美術館の「レディ・リリス」かと思われます。対のように鏡を挟んでいるのが1872年の「ヴェロニカ・ヴェロネーゼ」です。

こちらの記事からごらんください。
詩人ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティの絵画

ファム・ファタルを象徴しているとされていますが、もっともロセッティの記事でデラウェア美術館の「レイディ・リリス」を引用している方が多いですが、メトロポリタン、テキサス大学で所有しているものは、とても穏やかな表情です。

Lilith-1867-The Ransom Center at the University of Texas

ロセッティ レイディ・リリス 1867年 テキサス大学所有

Lady Lilith, 1867, Dante Gabriel Rossetti The Metropolitan Museum of Art

大好きな ロセッティ レイディ・リリス 1867年 メトロポリタン美術館蔵

Lady Lilith, 1866-68 (altered 1872-73)Delaware Art Museum

これは嫌い ロセッティ レイディ・リリス 1868年 デラウェア美術館蔵

ロセッティの描いたリリス。赤い芥子の花はベアトリーチェにも描かれています。

窓辺の蝋燭は、まるでマグダラのマリアを思い出しますが、蝋は肉体、芯は魂です。そして香水瓶に狐の手袋ジギタリスの花。香水瓶は香油壺を表しているのでしょうか。聖女とされる前のマグダラのマリアを示すもの。つまり娼婦です。

狐の手袋(ジギタリス)の花言葉は不誠実。3枚目のデラウェア美術館蔵のリリスは膝に雛菊の花輪を置いています。花言葉は無邪気ですが、もしかすると「五感の嗅覚」を象徴しているのかもしれません。「香水瓶」、「花」、「花輪を持つ貴婦人」が嗅覚の擬人像だからです。つまり香りで惑わすということでしょうか。

背後の白薔薇は尊敬、無邪気・清純・純潔、私は処女、恋の吐息、私はあなたにふさわしいとあります。(不思議なことに蕾は赤なんですね。)

これはリリスの面の装いを象徴しているのですね。左肩から胸元まで肌をあらわにしている本質と面の偽りが見て取れます。

さてこの作品で一番目につくところはどこですか?ロセッティはそこを強調しているんですよね。つまり主題です。

リリスが鏡を見ながら長い髪を櫛で梳かしているところではないでしょうか。これがロセッティのリリスの主題です。

Lady Lilith

七つの大罪のひとつ淫乱を象徴している場面を描いているのですね。わかりやすいですね。セイレーンのアトリビュートも同じ。美しい声と美しいしぐさで罠をかけて引きずり込むセイレーン。

図像学(iconography)のとおり、鏡を持ち櫛で髪を梳かす女性は「淫乱」の擬人化を示しています。

テキサス大学所有のリリスには小さな象徴は描かれていません。共通するのは「長い髪を櫛で梳かす主題」と「背後の薔薇の花」、そして「悪魔を象徴する左手に鏡と緋色の紐」です。

サタンをあらわす左手には緋色の紐を結んでいます。獲物を縛り上げる魔性の印。そして鏡を手にしています。鏡は「蛇」を象徴し、イヴに禁断の木の実を食べさせたあの蛇を描いたのです。聖書はこの「蛇」をサタンとしています。まさに「鏡」はサタンの姿を映すもので、「虚栄」と「淫欲」をあらわします。

リリスはイザヤ書においては「夜の魔女」とされています。

アダムの最初の妻というのは中世時代。11世紀の「ベン・シラのアルファベット」に綴られているその妻リリスは、17世紀の「タムルード語彙集」でひろまり、古代からの伝承ではなさそうなので、物語のひとつと考えていいようですね。

Lilith

wikiにシュメール語の「ギルガメシュ叙事詩」序にキ-シキル-リル-ラ-ケ ki-sikil-lil-la-ke の名がありますが、これと同一視されたようです。

-シキル-リ-ラ-から「キルケ」の名も浮かび上がってきますね!

夜の性愛の女性、夜の魔物、夜の魔女などの伝承がありますが、旧約聖書には次のように書かれています。

「荒野の獣はジャッカルに出会い 山羊の魔神はその友を呼び 夜の魔女は、そこに休息を求め 休む所を見つける。」(引用:wiki)

ラファエル前派は新しい解釈が好きで、不貞に対して神助を求めるための女性たちのウェヌス・ウェルティコルディアを心変わりを誘うウェヌス(ヴィーナス)として描きました。

それもロセッティの作品です。
記事 ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ Dante Gabriel Rossetti

ロセッティは、このリリスをソネット形式で「肉体の美」を創作しました。わさわざ中世の新しい解釈から引用しています。

地上はじめての人アダムの妻リリス 巧みな蛇より甘言をのせた蜜の舌
黄金の稲穂の如く輝く髪は神々しく 地上は幾つも時を重ねても
誕生のままの姿のリリス その我が身に男の視線をとらえては
獲物をその巣にかけるのだ 男の宿命を喰らい尽くすために
薔薇と芥子はおまえの花 リリス、その香りをそえて接吻を
そして快楽のあとの深い眠り 引き返す男がいるだろうか
その呪文を唱えたとたん 魂を奪われる 男はリリスの髪一筋で 心の臓を貫かれる

Sonnet LXXVIII from "The House of Life: A Sonnet Sequence" Body's Beauty

Of Adam's first wife, Lilith, it is told
    ('The witch he loved before the gift of Eve,)
    That, ere the snake's, her sweet tongue could deceive,
And her enchanted hair was the first gold.
And still she sits, young while the earth is old,
    And, subtly of herself contemplative,
    Draws men to watch the bright web she can weave,
Till heart and body and life are in its hold.

The rose and poppy are her flowers; for where
    Is he not found, O Lilith, whom shed scent
And soft-shed kisses and soft sleep shall snare?
    Lo! as that youth's eyes burned at thine, so went
    Thy spell through him, and left his straight neck bent
And round his heart one strangling golden hair.

Sibylla Palmifera

Poem 'Soul's Beauty'  Sibylla Palmifera

パルミフェラの巫女、あるいはパルミフェラの預言者(シビラ・パルミフェラ)はロセッティの1865-70年の作品です。

レイディ・リリスの「肉体の美」に対して、ロセッティはパルミフェラの巫女に「魂の美」という詩を添えています。

このパルミフェラの巫女は下記からどうぞ。
記事「詩人ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティの絵画

 


ロセッティ ラ・ピーア・デ・トロメイ  ダンテ「神曲」 惨殺されるマレンマの谷の窓 

La Pia de Tolommei

トロメイ家のピーア 1868-80年 スペンサー美術館

全体的に暗いトーン。青空も見えず、薄暗い雲と灰色に塗られた鳥。

ロセッティがこの色相の暗さで描いたのは、観賞者にいまそこに「死」が迫っていることを知らせているのです。

オペラ好きな方なら「ピーア・デ・トロメイ」ですぐおわかりになられますね。原作は「ダンテの「神曲」で、地獄編のパウロとフランチェスカのように、ピーアも煉獄編で悲恋を語ります。そして「パウロとフランチェスカ」同様にこうしてオペラの評判にもなっています。

記事 ダンテ 神曲 地獄編 ここからパウロとフランチェスカの作品が鑑賞できます。

それでは煉獄編 ピーアの悲恋

「思い出してくださいませ。ピーアでございます。シエーナで生まれました私をマレンマが死なせました。そのわけは、まず珠の指輪を贈って、わたしを娶った男が存じておるのでございます。」

ウェルギリウスに導かれているダンテ。この二人に三人目の魂が話しかけたところでこの歌は終わりです。三人目の魂がピーア。

ご存知のように神曲は実在した人物たちが登場します。このピーアもその名だけで当時の人々はすぐにわかったことでしょう。

トロメイ家のピーアはラ・ピエトロ城の城主の息子に嫁ぎました。

ところが美しいと評判のマルゲリータと結婚するためにピーアは惨殺されました。ひとつの説にはピエトロの城中で。

そしてもうひとつの説が「伯爵夫人の身投げ」と呼ばれる由縁となった、マレンマの谷に面した窓によって立ったときに、兵士の一人が命じられるまま投げ落としたという悲しみの死。

ロセッティは、いままさにそのマレンマの谷に面した窓のピーアを描いているのです。

モデルはモリス夫人。


 ロセッティ ラ・ギルランダータ 花飾りの女


La Ghirlandata 1873  Guildhall Art Gallery, London

ラ・ギルランダータ 花飾りの女 1873年 ギルドホール美術館

ウィリアム・モリスと共同で借りていたケルムスコット・マナー。この作品はそこで描かれたものです。天使はメイ・モリス。そしてハープを奏でるアレクサ・ワイルディングがモデル。

バーン=ジョーンズがプルーストの好きな山査子(サンザシ)の花をちりばめた「欺かれたマーリン」(とてもきれいな作品画像)がありますが、ここでも山査子の花が描かれています。

「欺かれたマーリン」になぜ山査子の花が描かれたのかというと花言葉です。「ただひとつの恋」です。マーリンにとっては「唯一の恋人」に裏切られたのですね。そしてそれは茨の冠。

ロセッティの「ラ・ギルランダータ(花飾りの女)」には、山査子のほか、ヴィーナスの花の銀梅花(ギンバイカ)が「愛の囁き」、薔薇は「愛」を象徴して描いています。左下の赤いお花が特定できません。

ここにも「ウェヌス・ウェルティコルディア」と同じ吸葛。

そして作品の前面にひろがる飛燕草。鳥兜と同じに恐ろしい花。数分で死にいたります。花言葉は移り気・気まぐれ・自由・慈悲とさまざまです。

ロセッティはこの作品の花のいくつかを「聖書」から引用しているそうです。

キリストの荊冠を編んだのは山査子(サンザシ)でしたね。

銀梅花はミルトスといいますね。聖書で「茂った木の枝」というのがミルトスをさしています。いたるところにこの花がでてきてどこを引用しようかと迷ってしまうくらい多いのです。ここではアダムとイヴが楽園追放のときにこのミルトスを手にしていたということを記しておきましょう。

そして薔薇ですが、フェニキアバラ、カニナバラというのがキリストの時代に咲いていたものです。ロセッティが描いた薔薇とは違います。

それでは「ソロモンの知恵」にある「咲き初めたばらがしおれぬ うちに、その花の冠をつけよう。」(2:8)から引用したのではないでしょうか。

まだ「花飾りの女」は吸葛と薔薇の花の冠をつけていないのですから。

関連記事
ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ  Dante Gabriel Rossetti
プロセルピナ(1881-82) テートギャラリー
ムネモシュネ(ムネーモシュネー)1881年 デラウェア美術館
ウェヌス・ウェルティコルディア 1864-68年
ウェヌス・ウェルティコルディア 個人所蔵
シリアの女神アスタルトまたはシリアの女神アスタルテ

ダンテ・・ゲイブリエル・ロセッティ 聖告(受態告知
見よ、我は主のはした女なり (聖告) 1849−50
聖告 1855年 個人所蔵
聖告 1859年 フイッツウィリアム美術館
聖母マリアの少女時代 1848-49年

ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ
ベアトリーチェの死とダンテの夢 1871年
ベアトリーチェの死とダンテの夢 1880年
ベアタ・ベアトリクス 1871–72
ベアタ・ベアトリクス 1877年
ベアタ・ベアトリクス 1864-70年
祝福されし乙女 1875-8
祝福されし乙女 1875-9
祝福されし乙女(バーン=ジョーンズ)
天上の乙女 1874年
習作 祝福されし乙女1876
黄金の水 1858年
ベアトリーチェの会釈 1859年
パオロとフランチェスカ・ダ・リミニ 1855年
ベアトリーチェ一周忌に天使を描くダンテ 1853-54

詩人ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティの絵画
習作 美しき手(ラ・ベッラ・マーノ La Bella Mano)
美しき手(ラ・ベッラ・マーノ La Bella Mano)
ルクレツィア・ボルジア 1860-61
レヴェリー(夢想あるいは幻想)1868
The Daydream, (白昼夢)1872-78
The Day Dream, (白昼夢)1880
アウレア・カテナ(黄金の鎖)
ラ・ドンナ・デッラ・フィネストラ(窓辺の淑女)
ジェーン・モリスの写真
「婦人の肖像画」
F・R・レイランドのドローイングルーム
ヴェロニカ・ヴェロネーゼ 1872
パルミフェラの巫女(シビラ・パルミフェラ)
「扇をもつ婦人」 バーミンガム美術館
アレクサ・ワイルディング
習作 メデューサの容貌
メデューサの容貌続きを読む

May 17, 2010

エドワード・バーン=ジョーンズ ヴィーナス賛歌  Laus Veneris by Edward Burne-Jones

Laus Veneris (1869), Laing Art Gallery,British Pre-Raphaelite artist Edward Burne-Jones


Laus Veneris (1869), Laing Art Gallery,British Pre-Raphaelite artist Edward Burne-Jones


バーン・ジョーンズの「ヴィーナス賛歌」です。まずはディティールからご覧ください。ヴィーナスと書かれたところに少女がいます。お花でしょうか。包み持っていますね。 そしてその下には少女たち(少年にもみえます)が、手にそのお花のようなハートを差し出しています。 そしてクピド。そしてプシュケと思われるような少女。ここではヴィーナスの過ぎた日々が描かれているのでしょうか。

Laus Veneris (1869), Laing Art Gallery,British Pre-Raphaelite artist Edward Burne-Jones


Laus Veneris (1869), Laing Art Gallery,British Pre-Raphaelite artist Edward Burne-Jones


エドワード・バーン=ジョーンズは、一枚の作品にいくつものシーンを重ねて描くことをすることがあります。「天地創造の6日間」の5枚のシーンもいくつもの物語を重ねています。このヴィーナスが座る壁には、もしかするとパリスの審判での勝利の凱旋、嫉妬するほど美しいプシュケ、そうした物語が描かれているのでしょうか。それとも・・・。

Laus Veneris (1869), Laing Art Gallery,British Pre-Raphaelite artist Edward Burne-Jones


この作品画像に合うまでは、エドワード・バーン=ジョーンズの描く大作が理解できませんでした。

ところが大きくしかも色質が美しいものに出会って驚きました。この壁面には数羽の白い鳩(ウェヌスの象徴)が、古代庭園のなかを飛び去ろうとしているようです。クピドの矢はその鳩を狙っている。

Laus Veneris (1869), Laing Art Gallery,British Pre-Raphaelite artist Edward Burne-Jones

alei と sai から「エドワード・バーン=ジョーンズの面白さはポスターや一般美術書、ネットではわからないよ」といわれて、 美術書を借りてきました。

一番興味を惹かれたのがこの「ヴィーナス賛歌」です。ヴィーナスが描かれている壁面には、こんな美しい場面が描かれていたのを知ったからです。

そのあといろんなサイトやポスターなどをみても、大きくみることもできませんし、色質が違います。ヴィーナス賛歌のどこがいいんだろうってずっと思っていました。

Laus Veneris (1869), Laing Art Gallery,British Pre-Raphaelite artist Edward Burne-Jones

ロセッティの親友でもあったアルジャーノン・チャールズ・スウィンバーン(Algernon Charles Swinburne, 1837年– 1909年)の詩に騎士タンホイザーとの官能の世界に引きずりこんだホーゼルハーグのヴィーナス(Venus in Horselberg)がこの作品に描かれています。

この作品が描かれる30年ほど前に、リヒャルト・ワーグナーが作曲した「タンホイザー」でも、ヴィーナスは悪徳の女神として官能的なファム・ファタルでした。

スウィンバーンの「ヴィーナス讃歌」(Laus Veneris)は1866年。リヒャルト・ワーグナーはそれよりもはやく1843年から1845年にかけて作曲し上演しています。


Laus Veneris by Edward Burne-Jones_kafka

エドワード・バーン=ジョーンズ ヴィーナス賛歌 1869年 レイング美術館
Laus Veneris by Edward Burne-Jones Laing Art Gallery

Laus Veneris (1869), Laing Art Gallery,British Pre-Raphaelite artist Edward Burne-Jones
 

↑ 左下の隅をよくご覧くださいな。騎士が五人。4人の女性がいます。季節の女神ホーラたち、あるいはホーラの一人に三美神でしょうか。

wikiからの引用
スウィンバーンは1883年にエドワード・バーン=ジョーンズにこう書き送っている。「私はある形式ですべての韻律を使ったささやかな歌(songs)、いえ小歌(songlets)の新しい本を書き……ちょうど出版したところです。その本の献呈をミス・ロセッティも受諾してくれました。私はあなたとジョージー(バーン・ジョーンズの妻)が、100ある9行詩の中にお気に入りのものを見つけられることを望みます。」

「ヴィーナス賛歌」はそれ以前のもののようですね。エドワード・バーン=ジョーンズはスウィンバーンの退廃的なヴィーナス像をほかの作品にも描いています。モリスの「地上の楽園」にある挿絵「ヴィーナスの丘」もそうでしょう。

Laus Veneris (1869), Laing Art Gallery,British Pre-Raphaelite artist Edward Burne-Jones


Laus Veneris (1869), Laing Art Gallery,British Pre-Raphaelite artist Edward Burne-Jones


さて一番左はしに描かれている女性が手にしているものがわかりません。椅子の下には孔雀の羽、そして左隅には古楽器の笛でしょうか。孔雀はヘーラーを象徴するのですが、高貴な女性を示すこともありますね。 一人だけ後ろ向きの女性、膝になにか持っています。彼女たちのアトリビュート。

Laus Veneris (1869), Laing Art Gallery,British Pre-Raphaelite artist Edward Burne-Jones


Laus Veneris (1869), Laing Art Gallery,British Pre-Raphaelite artist Edward Burne-Jones

スウィンバーンの「ヴィーナス讃歌」 (ラウス・ヴェネリス)も、ワグナーの「タンホイザー」も、もともとは15世紀につくられた「タンホイザー伝説」がもとになっています。

スウィンバーンのヴィーナス賛歌は読んでいませんが、ワグナーの歌劇では、タンホイザー伝説の最後とは違い、タンホイザーは二度目のヴェーヌスの洞窟に足を運ぼうとしてヴォルフラムに引き止められます。そのときタンホイザーの愛に殉死したエリーザベトの葬列が通るのです。

ヴェーヌスベルク(ヴィーナスの洞窟)は、つぎの愛欲を求めるものがくるまで、愛欲の女神ヴェーヌス捜し求める者がくるまで、その入り口は消滅してしまうのでした。

Laus Veneris (1869),

エロス(クピド)とウェヌスが描かれています。もしかすると「ヴィーナスの誕生」のシーンかもしれません。

プラトンの饗宴でも、ニ柱のヴィーナス(ウェヌス)とエロス(クピド)が語られています。天上と地上のヴィーナス。地上のヴィーナスは世俗のヴィーナスで性愛を象徴しています。エロスもそのニ柱のものだと。

こちらが天上のヴィーナスで、右側の矢をもつエロスとドレスを着たヴィーナスが地上のヴィーナスを象徴しているとしてもいいかもしれません。

kafka

タンホイザーは去ってしまった。退廃的なヴィーナス。薔薇が一輪足元にこぼれています。

愛、情熱を示す薔薇の花。膝には輝く王冠。その王冠をはずしてヴィーナスは髪に手をかけています。つぎのタンホイザーがくるまで、そう時間はかからなさそう。

それとも、いままさに窓から熱いまなざしをおくっているのがタンホイザーでしょうか。

これはタンホイザーがこれから来る場面なのかもしれませんね。

最後にヴィーナスの作品記事にリンクした一覧をご紹介。同じものを掲載していませんので、それぞれ見ごたえがあります。画像も色質のよいものです。

エドワード・バーン=ジョーンズ ヴィーナス(Veneris by Edward Burne-Jones) 関連記事

エドワード・バーン=ジョーンズ  ヴィーナス巡り
エドワード・バーン=ジョーンズ ヴィーナスの誕生
エドワード・バーン=ジョーンズ ウェヌス・エピタラミア(祝婚歌のウェヌス)

XAI
エドワード・バーン=ジョーンズ シリーズ「薔薇物語」
たくさんの作品記事にリンクさせています。年代別になっています。

続きを読む

May 11, 2010

エドワード・バーン=ジョーンズ ダナエ Danae by Edward Burne-Jones


Danae

「ダナエ」 バーン=ジョーンズ(ポスター画像)
Danae by Edward Burne-Jones
Peter Nahum at The Leicester Galleries

クリムトでもおなじみの「ダナエ」。バーン=ジョーンズは彼女が産んだペルセウスも描いています。

「ダナエ」が子を産むと、父王が殺されるだろうという不吉な予言に、王は娘のダナエを塔に幽閉します。ところが黄金の雨となってゼウスがダナエを犯すのですね。

関連記事 「ウィーン世紀末のダナエ

バーン=ジョーンズは古典からではなく、当時の新訳ですとか、世紀末文学やモリスからの影響を受けて描いているようですね。

Danäe and the Brazen Tower (1872), Ashmolean Museum Danae or The Tower of Brass(1887-88), Glasgow Museums

画像をクリックすると全体像になります。(↑Click Here)

左 「ダナエと真鍮の搭」 エドワード・バーン=ジョーンズ
Danäe and the Brazen Tower (1872), Ashmolean Museum

右「ダナエあるいは真鍮の塔」 エドワード・バーン=ジョーンズ(ポスター画像)
Danae or the Tower of Brass (1887-88), Glasgow Museums

Danae Watching the Building of the Brazen Tower Fogg Art Museum

エドワード・バーン=ジョーンズ 「真鍮の搭を覗くダナエ」 (ポスター画像)フォッグ美術館蔵
Danae watching the building of the tower Fogg Art Museum 1872年

ダナエを幽閉するための真鍮の塔の建設。それをダナエが覗いているところです。

The Tower of Brass (Danae) - Edward Burne-Jones_350

右側の「ダナエあるいは真鍮の塔」の写真です。写真でも実際の確かな色ではないのですが、存在感が違いますね。

記事 バーン=ジョーンズ Edward Burne-Jones 「The Legend of St George」
記事 バーン・ジョーンズ アーサー王と円卓の騎士

実はこの二つの記事にある別々な作品がひとつの作品につながっています。
記事「エドワード・バーン=ジョーンズ  ヴィーナス巡り 」
記事エドワード・バーン=ジョーンズ 7枚の運命の女神の車輪

記事バーン=ジョーンズ ヴィースの誕生(海からあがるヴィーナス 1873-79)
記事「エドワード・バーン=ジョーンズ ウェヌス・エピタラミア(祝婚歌のウェヌス)」

XAI
エドワード・バーン=ジョーンズ シリーズ「薔薇物語」
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May 09, 2010

アエネーイスから アイネイアースと母ヴィーナス

Vénus demande à Vulcain des armes pour Énée

「アイネイアスのためにウルカヌスに武器を注文するヴィーナス」

フランソワ・ブーシェが描いたこの作品。ウェルギリウスの「アイネーイス」の場面です。

ブーシェというと、女性や天使、官能的なロココ調を思い浮かべてしまいますが、社会的な風俗画やこうした神話も多いですよね。

この場面は何人もの画家が描いているシーンで、ブーシェと同じフランスの画家シャルル=ジョゼフ・ナトワール (Charles-Joseph Natoire)もブーシェを手本にしたような作品を残しています。

トロイア戦争のあとの物語が、詩人ウェルギリウス(前70年–前19年)のアイネーイスです。この作品はホメーロスの「イーリアス」、「オデュッセイア」をもとに書かれました。

ウェヌス(ヴィーナス)は夫の鍛冶神ウエルカヌス(ヘパイストス)に、アンキセス(アンキーセース)との子のアイネイアスに武器をつくってほしいと頼んでいるところ。

ウェヌスとマルスとの不貞を見られる前のことでしょうか?

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ブーシェの「アイネイアス(アイネイアース)のために造った武器をウェヌスへ贈るウルカヌス」

ウェヌス(ヴィーナス)にさっそくウエルカヌス(ヘパイスト)はアイネイアースのための武器を渡します。

ウェヌス(ヴィーナス)はパリスの審判で、唯一の美を勝ち取った「愛と美の女神アフロディーテ」ですが、このパリスの審判がトロイア戦争を起こしたきっかけとなったのです。

アフロディーテとトロイア王族のアンキーセースの子アイネイアースは、トロイア陥落後、祖国復興のためにイタリアへと旅立ちます。

このブーシェの2点はほかに同じテーマのものがあり、「神々の愛」という連作タペストリーの下絵として描かれたものです。たしかルイ16世コレクションだったと思います。

この「アエネーイス」で、もっとも悲劇だと感じるのはカルタゴの王女ディドー(ディド)。カルタゴの建国神話に基づく伝記とは異なりますが、剣あるいは炎に身を投じる最期。

どちらの物語にしても、悲劇の女王です。

800px-Heinrich_Friedrich

ハインリッヒ ・フリードリヒ・フューガー(Heinrich Friedrich Fuger)が描いたこの「ディド」。剣ではなく炎に身を投じる姿を描いたのでしょうか。それとも苦悩の中の王女ディドなのでしょうか。

アイネイアースの母ウェヌス(ヴィーナス)は、クピド(エロス)にディドへ愛の矢を打ち込ませます。

アイネイアースの身を守るためにはディドが彼を愛することだと考えた愚かな母ウェヌス(ヴィーナス)。

ユーピテル(大神ゼウス)の神託はイタリア半島にアイネイアースを出向かせることになっていたのにかかわらず。

ヘルメス(メリクリウス)は、神託を促しにアイネイアースの元に訪ねてきます。

アイネイアースは決意を固めイタリア半島へ、そしてディドは命を絶ったのです。

アフロディーテがクピド(エロス)の愛の矢を使わせて、命を断たせた若い女性たちの一人となったのですね。

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エラルート・デ・ライレッセ(Gerard de Lairesse)の「ウルカヌスの武器をアイネアスに贈るウェヌス」です。

ディドの呪いをよそに、美しいウェヌス。作品のディティールです。全体像は下記から。

巫女シビラの導きによって冥界に入ったアイネイアースは亡き父アンキセスと会い、ローマの英雄となることを告げられます。

ラティウムではアルデアの王トゥルヌスの婚約者だったラウィーニアとアイネイアースと婚約することになるのです。

この地こそ、新しいトロイアの国。

そして戦わなければならないのはトゥルヌス。激しい戦いで多くの人々が命を落とします。

唯一の美でパリスの審判が起こした戦争は、トロイア、そしてこのラティウムですが、大神ゼウスの仕組んだことでもあったんですね。

Weapons_to_Aeneas

人間が多くなり間引きをしなければならなくなった。

トロイアのパリスに美の審判をさせて戦争を引き起こし間引きをしたのです。

神々に踊らされた人間たち。

ウルカヌスの武器をここでアイネイアースは使うことになるのです。

トゥルヌスとアエネアースとの一騎打ちでトゥルヌスを倒しますが、アエネアースはどうなったのでしょう。

トロイアの勝利はおさめたものの、アエネアースの最期はウェヌスによって身を浄められて神となったとされるものと、「アエネーイス」のようにラウィーニアと国を治めたという伝承があります。

どちらにしても亡き父アンキセスの予言のとおりにローマの英雄になったことにちがいはありません。

May 02, 2010

クロード・ベルランド Claude Verlinde

L'arbre généalogique by claude verlinde


「家系樹(類縁樹)」 クロード・ベルランド

このクロード・ベルランドは、sai から教えてもらった画家です。ずーっと昔にエキシビジョンがあったらしいですね。

そのときは話題になっていたそうなので、40代から50代以降の方ならご存知かも。

鳥類を祖とした女性でしょうか?この堂々とした物腰。

La folie by Claude Verlinde


「狂おしいほど」 クロード・ベルランド

鏡を見るヴィーナスみたいですね。そして儚さでしょうか。なにを擬人化しているんでしょう。

記事 鏡のヴィーナス

「家系樹」のほうは諷刺画かなって思ったり。探せば寓意が見つかりそうです。

記事 クロード・ベルランド Claude Verlinde

記事  KAFKA クロード・ベルランド Claude Verlinde

記事 女神アプロディーテー by クロード・ベルランド Claude Verlinde

一年に一回の更新のXAI 今年はクロード・ベルランドだった!
クロード・ベルランド Claude Verlinde

大きな画像で迫力のある3枚です!