May 17, 2010

エドワード・バーン=ジョーンズ ヴィーナス賛歌  Laus Veneris by Edward Burne-Jones

Laus Veneris (1869), Laing Art Gallery,British Pre-Raphaelite artist Edward Burne-Jones


Laus Veneris (1869), Laing Art Gallery,British Pre-Raphaelite artist Edward Burne-Jones


バーン・ジョーンズの「ヴィーナス賛歌」です。まずはディティールからご覧ください。ヴィーナスと書かれたところに少女がいます。お花でしょうか。包み持っていますね。 そしてその下には少女たち(少年にもみえます)が、手にそのお花のようなハートを差し出しています。 そしてクピド。そしてプシュケと思われるような少女。ここではヴィーナスの過ぎた日々が描かれているのでしょうか。

Laus Veneris (1869), Laing Art Gallery,British Pre-Raphaelite artist Edward Burne-Jones


Laus Veneris (1869), Laing Art Gallery,British Pre-Raphaelite artist Edward Burne-Jones


エドワード・バーン=ジョーンズは、一枚の作品にいくつものシーンを重ねて描くことをすることがあります。「天地創造の6日間」の5枚のシーンもいくつもの物語を重ねています。このヴィーナスが座る壁には、もしかするとパリスの審判での勝利の凱旋、嫉妬するほど美しいプシュケ、そうした物語が描かれているのでしょうか。それとも・・・。

Laus Veneris (1869), Laing Art Gallery,British Pre-Raphaelite artist Edward Burne-Jones


この作品画像に合うまでは、エドワード・バーン=ジョーンズの描く大作が理解できませんでした。

ところが大きくしかも色質が美しいものに出会って驚きました。この壁面には数羽の白い鳩(ウェヌスの象徴)が、古代庭園のなかを飛び去ろうとしているようです。クピドの矢はその鳩を狙っている。

Laus Veneris (1869), Laing Art Gallery,British Pre-Raphaelite artist Edward Burne-Jones

alei と sai から「エドワード・バーン=ジョーンズの面白さはポスターや一般美術書、ネットではわからないよ」といわれて、 美術書を借りてきました。

一番興味を惹かれたのがこの「ヴィーナス賛歌」です。ヴィーナスが描かれている壁面には、こんな美しい場面が描かれていたのを知ったからです。

そのあといろんなサイトやポスターなどをみても、大きくみることもできませんし、色質が違います。ヴィーナス賛歌のどこがいいんだろうってずっと思っていました。

Laus Veneris (1869), Laing Art Gallery,British Pre-Raphaelite artist Edward Burne-Jones

ロセッティの親友でもあったアルジャーノン・チャールズ・スウィンバーン(Algernon Charles Swinburne, 1837年– 1909年)の詩に騎士タンホイザーとの官能の世界に引きずりこんだホーゼルハーグのヴィーナス(Venus in Horselberg)がこの作品に描かれています。

この作品が描かれる30年ほど前に、リヒャルト・ワーグナーが作曲した「タンホイザー」でも、ヴィーナスは悪徳の女神として官能的なファム・ファタルでした。

スウィンバーンの「ヴィーナス讃歌」(Laus Veneris)は1866年。リヒャルト・ワーグナーはそれよりもはやく1843年から1845年にかけて作曲し上演しています。


Laus Veneris by Edward Burne-Jones_kafka

エドワード・バーン=ジョーンズ ヴィーナス賛歌 1869年 レイング美術館
Laus Veneris by Edward Burne-Jones Laing Art Gallery

Laus Veneris (1869), Laing Art Gallery,British Pre-Raphaelite artist Edward Burne-Jones
 

↑ 左下の隅をよくご覧くださいな。騎士が五人。4人の女性がいます。季節の女神ホーラたち、あるいはホーラの一人に三美神でしょうか。

wikiからの引用
スウィンバーンは1883年にエドワード・バーン=ジョーンズにこう書き送っている。「私はある形式ですべての韻律を使ったささやかな歌(songs)、いえ小歌(songlets)の新しい本を書き……ちょうど出版したところです。その本の献呈をミス・ロセッティも受諾してくれました。私はあなたとジョージー(バーン・ジョーンズの妻)が、100ある9行詩の中にお気に入りのものを見つけられることを望みます。」

「ヴィーナス賛歌」はそれ以前のもののようですね。エドワード・バーン=ジョーンズはスウィンバーンの退廃的なヴィーナス像をほかの作品にも描いています。モリスの「地上の楽園」にある挿絵「ヴィーナスの丘」もそうでしょう。

Laus Veneris (1869), Laing Art Gallery,British Pre-Raphaelite artist Edward Burne-Jones


Laus Veneris (1869), Laing Art Gallery,British Pre-Raphaelite artist Edward Burne-Jones


さて一番左はしに描かれている女性が手にしているものがわかりません。椅子の下には孔雀の羽、そして左隅には古楽器の笛でしょうか。孔雀はヘーラーを象徴するのですが、高貴な女性を示すこともありますね。 一人だけ後ろ向きの女性、膝になにか持っています。彼女たちのアトリビュート。

Laus Veneris (1869), Laing Art Gallery,British Pre-Raphaelite artist Edward Burne-Jones


Laus Veneris (1869), Laing Art Gallery,British Pre-Raphaelite artist Edward Burne-Jones

スウィンバーンの「ヴィーナス讃歌」 (ラウス・ヴェネリス)も、ワグナーの「タンホイザー」も、もともとは15世紀につくられた「タンホイザー伝説」がもとになっています。

スウィンバーンのヴィーナス賛歌は読んでいませんが、ワグナーの歌劇では、タンホイザー伝説の最後とは違い、タンホイザーは二度目のヴェーヌスの洞窟に足を運ぼうとしてヴォルフラムに引き止められます。そのときタンホイザーの愛に殉死したエリーザベトの葬列が通るのです。

ヴェーヌスベルク(ヴィーナスの洞窟)は、つぎの愛欲を求めるものがくるまで、愛欲の女神ヴェーヌス捜し求める者がくるまで、その入り口は消滅してしまうのでした。

Laus Veneris (1869),

エロス(クピド)とウェヌスが描かれています。もしかすると「ヴィーナスの誕生」のシーンかもしれません。

プラトンの饗宴でも、ニ柱のヴィーナス(ウェヌス)とエロス(クピド)が語られています。天上と地上のヴィーナス。地上のヴィーナスは世俗のヴィーナスで性愛を象徴しています。エロスもそのニ柱のものだと。

こちらが天上のヴィーナスで、右側の矢をもつエロスとドレスを着たヴィーナスが地上のヴィーナスを象徴しているとしてもいいかもしれません。

kafka

タンホイザーは去ってしまった。退廃的なヴィーナス。薔薇が一輪足元にこぼれています。

愛、情熱を示す薔薇の花。膝には輝く王冠。その王冠をはずしてヴィーナスは髪に手をかけています。つぎのタンホイザーがくるまで、そう時間はかからなさそう。

それとも、いままさに窓から熱いまなざしをおくっているのがタンホイザーでしょうか。

これはタンホイザーがこれから来る場面なのかもしれませんね。

最後にヴィーナスの作品記事にリンクした一覧をご紹介。同じものを掲載していませんので、それぞれ見ごたえがあります。画像も色質のよいものです。

エドワード・バーン=ジョーンズ ヴィーナス(Veneris by Edward Burne-Jones) 関連記事

エドワード・バーン=ジョーンズ  ヴィーナス巡り
エドワード・バーン=ジョーンズ ヴィーナスの誕生
エドワード・バーン=ジョーンズ ウェヌス・エピタラミア(祝婚歌のウェヌス)

XAI
エドワード・バーン=ジョーンズ シリーズ「薔薇物語」
たくさんの作品記事にリンクさせています。年代別になっています。





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この記事へのコメント

1. Posted by バク   April 03, 2011 22:39
初めてお邪魔いたします。
15年程前にニューキャッスルのレイング・アートギャラリーへ、ジョン・マーチンが見たくて行きました折、ラウス・ヴェネリスを発見しました。全く予想をしていなかったものですから、驚きました。そして、その色彩の美しさに魅了されました。

バーン=ジョーンズの画には、色々な象徴が隠されていますね、しかし、それ以上に私には色彩のコンポジションのような近代的な感性を感じます。

ラファエル前派の画は、リヴァプール郊外、ポートサンライトに在ります、レディ・リーヴァーアートギャラリーで沢山見る事が出来ました。
2. Posted by fu-   November 08, 2011 14:49
バクさんへ

すいません、コメント遅れてしまいました。

ジョン・マーチンとは、絵画にずいぶん通じているのですね。たしか英王室にも縁ある画家でしたか?

壮大なスケールの画家だと思います。

レイング・アートギャラリーでは、ラウス・ヴェネリスをご覧になったのですね。色彩のコンポジションのような近代的な感性とコメントにありましたが、そのような見方をできるのは素晴らしいですね。

色彩の美しさに魅了されたということは、やはり本物を鑑賞しないといけないですね。

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