BS式ことブラック・ショールズの公式は、株価の運動が正規分布に従い、ボラティリティは一定であるという非現実的な仮定を置いているため、「間違った仮定に間違った値(IV)を入れて正しい価格を求めている」などと揶揄されることもあります。しかし、比較的容易に現実を近似できるため、オプショントレーダーにとって実用上最も使われる公式であることは間違いないと思います。

BS式は、確率微分方程式などという複雑怪奇な概念を用いて導出するなどかなり難解なもので、正にブラックボックスとして、単に式を当てはめているというケースが多いと想像します(かくいう私もその一人でした)。

ちなみに、確率微分方程式の解法には「伊藤の補題」が用いられており、伊藤清氏は、ウォールストリートで最も有名な日本人だそうです。

それはさておき、複雑なBS式のイメージをつかんで、グリークスパラメータの変化に対する「感性」を磨きたいと常々考えておりまして、図やグラフで表せないかと挑戦してみたところ、少しは形になりましたので記事を書いてます。

当然ながら、これが分かったところでトレードの腕前が上がる訳ではありません。単に、理屈っぽい人間の自己満足ですが、万一なんらかの参考になれば嬉しいです。

まず、基本形から。

BS1
S: 原資産価格
K: 行使価格
σ: IV
T: 残存期間
 

右側は、横軸がS/K、つまり行使価格に対する原資産価格の比です。ちょうど1ならATM。1より小さければCALLのOTM、1より大きければPUTのOTMです。

縦軸は、横軸S/Kの対数を、σ√Tで割ったもので、よくBS式の解説でd1, d2とまとめられている式の根幹部分です。

次に左側です。いわゆる標準正規分布のグラフが2つ書かれています。横になっているのは、右のグラフで決まったd1,d2に対して正規分布のグラフを使うからです。また、2つ書いてあるのは、下がd1用、上がd2用で、d1 - d2 = σ√T です。N'(x)は、xに対する確率を表すもので、山の頂上が約0.4です。また、N(x)はxの左側の面積で、全部の面積が1です。

実は、これだけでオプションの価格やデルタ、ガンマ、セータ、ベガを求めるための部品がすべて揃ったことになります。

例えば、図で示したのは、S/Kが1より小さい、例えば、原資産10700円、行使価格11000円のような場合です。そのとき、右側の横軸から対数のグラフの値を求め、それを左側の正規分布の方に引っ張ります。そうして図示したN(d1)という緑で塗られた部分、これがコールのデルタです。(コールのデルタはN(d1)そのもの)

ガンマは、N'(d1)をSσ√Tで割ったものです。N'(d1)は、左の横軸に示した値でこれを原資産×IV×残存で割れば求まります。ベガは、SN'(d1)√Tですから、同様に求まります。ガンマもベガもATMで最も大きな値を取ることは、このグラフで理解できると思います。

セータも同様に求まりますが、式が複雑なので省略します。。

引き続き、IVが動いた時、残存による変化、ボラティリティ・スマイルがどう表されるかなどを考察していきたいと思います。