今回は、財政投融資特別会計について取り上げます。
財政投融資特別会計は、特別会計に関する法律の第50条に
財政投融資特別会計は、財政融資資金の運用並びに産業の開発及び貿易の振興のために国の財政資金をもって行う投資(出資及び貸付けをいう。第五十四条第三号及び第五十九条第一項において同じ。)に関する経理を明確にすることを目的とする。
と書かれています。つまり、国が産業の育成などを図るために行う投資・融資を管理する勘定と言うことになります。投融資ですから、運用益や利子収入を得ることを前提としているところが、通常の財政支出と異なるところです。
元々は、旧大蔵省資金運用部が郵貯や年金の積立金を全額に預かり、特殊法人に融資するための仕組みでしたが、2001年の財投改革により現在の形態になりました(参考:http://www.findai.com/yogo/0070.htm)。
本特別会計には、融資勘定と投資勘定とがありますが、圧倒的に規模の大きい融資勘定の方をメインに取り上げることにします。
財政融資は、財投債と呼ばれる国債を発行し資金を調達します。そして、運用収益と償還金を国債整理基金に繰り入れていくという流れになっています。
次の図表は財務省のページ(http://www.mof.go.jp/about_mof/mof_budget/special_account/zaitou/zaitou_4.htm)にある23年度当初予算からの抜粋です。
歳入、歳出のフローを見ると、財投債(公債金)で14兆円調達し、14.6兆円を融資勘定へ繰入。また、運用収入と償還金など(財政融資資金より受入)の約24兆円のうち、22兆円を国債整理基金へ繰入れて返済していることが分かります。
また積立金1兆円を一般会計に繰り入れるというフローがあります。これは、ここ数年の厳しい財政状況から、いわゆる「埋蔵金」として当会計の積立金を一般会計に繰り入れるという特例法に基づいたやりくりです。
当会計の積立金は、特別会計に関する法律の第58条を根拠に余剰資金を「積み立てている」ものですが、昨今の埋蔵金論争の中で取り崩されてきており、帳簿上、平成19年度末に17兆円ほどあったものがほぼ枯渇しており、ここのところは毎年の決算上の剰余金を積立金として、それを取り崩すという形になっています。
次にストックである貸借対照表を見てみます。(参考:23年度特別会計予算 )
23年末予定額の資産サイドを見ると、
と貸付金が大半を占めています。その貸付金の内訳は、
となっています。この中の内訳は、例えば、21年度の財務書類で確認することができます。(一つ一つを確認するのは膨大な作業になりますので、気付いたことがあれば機会を改めてということで。)
一方、調達勘定である負債サイドを見ますと、
となっています。財投改革の流れから、預託金は減少傾向にあり、公債=財投債が資金調達の主体となっています。
また、株式会社の自己資本にあたる「繰越利益」と「本年度利益」の合計は、0.8兆円で、21年度末の5.1兆円から大きく減っており、これは、積立金を取り崩した影響であると思われます。
当会計はある意味、銀行や証券会社のような機能を持っている訳ですから、自己資本の厚み、そして、貸出先の健全性などが重要です。しかし、公的な使命を担っているという側面から、貸出先は市場規律が働きにくい所が多いと推測できます。160兆円にも上るバランスシートを持つ当会計の健全性は、国の財政の健全性をみるためにも大きな要素であり、上述のトレンドはとても安心できる状態ではないというのが正直なところです。
ところで、財務省の22年度運用報告の別表3、4によると、2000年に400兆円余りであった運用規模が、財投改革により直近の160兆円まで急減してきています。そして、預託金の中心であった郵貯や年金の資金がほぼゼロになっています。
250兆円に上る「バランスシート調整」が起きた訳ですが、同期間に普通国債の発行残高が増え、かつ、民営化されたゆうちょ銀行は現在も国債を多く保有していることから、財政投融資を経由していた公的金融の多くが、一般会計を通した財政政策となり、長引く不況による影響でその縮小もままならず、国家財政の悪化が表面化している。これが現在の我々が見ているものかもしれません。
財政投融資特別会計は、特別会計に関する法律の第50条に
財政投融資特別会計は、財政融資資金の運用並びに産業の開発及び貿易の振興のために国の財政資金をもって行う投資(出資及び貸付けをいう。第五十四条第三号及び第五十九条第一項において同じ。)に関する経理を明確にすることを目的とする。
と書かれています。つまり、国が産業の育成などを図るために行う投資・融資を管理する勘定と言うことになります。投融資ですから、運用益や利子収入を得ることを前提としているところが、通常の財政支出と異なるところです。
元々は、旧大蔵省資金運用部が郵貯や年金の積立金を全額に預かり、特殊法人に融資するための仕組みでしたが、2001年の財投改革により現在の形態になりました(参考:http://www.findai.com/yogo/0070.htm)。
本特別会計には、融資勘定と投資勘定とがありますが、圧倒的に規模の大きい融資勘定の方をメインに取り上げることにします。
財政融資は、財投債と呼ばれる国債を発行し資金を調達します。そして、運用収益と償還金を国債整理基金に繰り入れていくという流れになっています。
次の図表は財務省のページ(http://www.mof.go.jp/about_mof/mof_budget/special_account/zaitou/zaitou_4.htm)にある23年度当初予算からの抜粋です。
(単位:百万円)
歳入 | 歳出 | ||
---|---|---|---|
資金運用収入 | 3,185,892 | 財政融資資金へ繰入 | 14,600,000 |
公債金 | 14,000,000 | 事務取扱費 | 5,530 |
財政融資資金より受入 | 20,861,034 | 諸支出金 | 668,121 |
積立金より受入 | 1,058,800 | 一般会計へ繰入 | 1,058,800 |
信託受益権等譲渡収入 | 200,000 | 国債整理基金特別会計へ繰入 | 22,248,103 |
雑収入 | 16,455 | 予備費 | 60 |
計 | 39,322,181 | 計 | 38,580,614 |
歳入、歳出のフローを見ると、財投債(公債金)で14兆円調達し、14.6兆円を融資勘定へ繰入。また、運用収入と償還金など(財政融資資金より受入)の約24兆円のうち、22兆円を国債整理基金へ繰入れて返済していることが分かります。
また積立金1兆円を一般会計に繰り入れるというフローがあります。これは、ここ数年の厳しい財政状況から、いわゆる「埋蔵金」として当会計の積立金を一般会計に繰り入れるという特例法に基づいたやりくりです。
当会計の積立金は、特別会計に関する法律の第58条を根拠に余剰資金を「積み立てている」ものですが、昨今の埋蔵金論争の中で取り崩されてきており、帳簿上、平成19年度末に17兆円ほどあったものがほぼ枯渇しており、ここのところは毎年の決算上の剰余金を積立金として、それを取り崩すという形になっています。
次にストックである貸借対照表を見てみます。(参考:23年度特別会計予算 )
23年末予定額の資産サイドを見ると、
現預金 | 0.5兆円 |
国債 | 2兆円 日銀への売り現先 1.3兆 道路債券承継0.7兆 |
特別法人債 | 2.4兆円 |
貸付金 | 155.4兆円 |
と貸付金が大半を占めています。その貸付金の内訳は、
一般会計・特別会計 | 29.2兆 |
政府関係機関 | 26.4兆 |
地方公共団体 | 54.9兆 |
特別法人 | 44.9兆 |
となっています。この中の内訳は、例えば、21年度の財務書類で確認することができます。(一つ一つを確認するのは膨大な作業になりますので、気付いたことがあれば機会を改めてということで。)
一方、調達勘定である負債サイドを見ますと、
預託金 | 39.2兆円 特別会計 32.9兆 共済組合 4.2兆 |
公債 | 118.9兆円 |
となっています。財投改革の流れから、預託金は減少傾向にあり、公債=財投債が資金調達の主体となっています。
また、株式会社の自己資本にあたる「繰越利益」と「本年度利益」の合計は、0.8兆円で、21年度末の5.1兆円から大きく減っており、これは、積立金を取り崩した影響であると思われます。
当会計はある意味、銀行や証券会社のような機能を持っている訳ですから、自己資本の厚み、そして、貸出先の健全性などが重要です。しかし、公的な使命を担っているという側面から、貸出先は市場規律が働きにくい所が多いと推測できます。160兆円にも上るバランスシートを持つ当会計の健全性は、国の財政の健全性をみるためにも大きな要素であり、上述のトレンドはとても安心できる状態ではないというのが正直なところです。
ところで、財務省の22年度運用報告の別表3、4によると、2000年に400兆円余りであった運用規模が、財投改革により直近の160兆円まで急減してきています。そして、預託金の中心であった郵貯や年金の資金がほぼゼロになっています。
250兆円に上る「バランスシート調整」が起きた訳ですが、同期間に普通国債の発行残高が増え、かつ、民営化されたゆうちょ銀行は現在も国債を多く保有していることから、財政投融資を経由していた公的金融の多くが、一般会計を通した財政政策となり、長引く不況による影響でその縮小もままならず、国家財政の悪化が表面化している。これが現在の我々が見ているものかもしれません。