少し具体的な例で考えてみます。

次の条件でコールオプション価格を計算してみます。なお、以下の例では、金利0.10%, 1年=250日で計算しています。

    日経平均 10000円
    権利行使価格: 10000円
    残存: 0.202年 (50.5日)
    IV: 20.0%

BS式に当てはめると、
    コールオプション価格: 359.5円
    デルタ: 0.52
    ガンマ:0.0443
    セータ:-3.57
    ベガ :17.91

となります。

では、ここから2つのケースを考えてみます。

ケース(1) 1日後に日経平均は変わらず、IVは19.59%に下落

    残存: 0.198年 (49.5日)
    IV: 19.59%

    コールオプション価格: 348.6円
    デルタ: 0.52
    ガンマ:0.0457
    セータ:-3.53
    ベガ :17.73

ケース(2) 3日後に日経平均、IVとも変わらず。

    残存: 0.19年 (47.5日)
    IV: 20.0%

    コールオプション価格: 348.6円
     デルタ: 0.52
    ガンマ:0.0457
    セータ:-3.68
    ベガ :17.37

簡単のため、日経平均を固定していますが、ケース(1)もケース(2)もオプション価格は同じで、経過日数とIVが異なります。この場合、

    ケース(1)  セータ負け + ベガ負け
    ケース(2)  セータ負け

    それぞれの負けの量が等しい

という風に表わされるでしょう。しかし、現実はもっと複雑です。例えば、ケース(1)の条件を元に、原資産を動かし、かつデルタをヘッジするため先物を組み合わせた例を考えます。

ケース(3) デルタを0にするため、10000円で先物ミニを5枚売る。1日後に日経平均が9900円に下落、IVは19.59%に下落

    残存: 0.198年 (49.5日)
    IV: 19.59%

    コールオプション価格: 299.1円
    デルタ: 0.47 ( - 0.5 先物の分 = -0.03)
    ガンマ:0.0461
    セータ:-3.49
    ベガ :17.53

    先物の利益 50円

オプション価格は日経平均の下落により大きく下がりましたが、先物の利益を足すとケース(1)よりはマシなので、セータとベガに負けたが、ガンマの効果で損失を減らしたとなるでしょう。しかし、前回書いたとおり、セータとガンマは裏腹の関係で、セータの負けをガンマ効果が勝ればトータルでガンマ/セータを取ったと言えるはずです。このケースでは結局ガンマ/セータには勝ったのでしょうか?

IVが動いているのでベガの負けがあり、すぐには分かりません。では、IV=20.0%のままと仮定してみます。そうすると、オプション価格は306.3円となります。元のオプション価格が359.5円ですから、先物の利益を足しても少し損失が出ています。つまり、ガンマ/セータに関してもこのポジションは負けたということになります。(日経平均が9800円なら、オプション価格261.2円、先物の利益100円で、ガンマ/セータに勝てます)。

かなり話が複雑になってきましたが、ここで私なりの考えを一旦まとめますと、

    1つのオプション銘柄において、ガンマ/セータとベガを独立に取りに行くことは不可能であり、仮に可能としても簡単には判別できないので意味がない

ということです。1つのオプション銘柄というところは、同じ限月と言い換えてもいいでしょう。

前回書いたとおり、そもそも、IVは外から与えられるパラメータではありません。ですから、IVが下がったから価格が下がるのではなく、価格が下がったからIVが下がるのです。そう考えると、原資産の変動と時間の経過で説明できない部分をすべてIVという一つの変数にまとめてしまっている訳で、故にベガという指標にはある種の矛盾があると言えます。価格が下がった結果から逆算している訳ですから。

敢えて言えば、原資産の変動と時間の経過では説明できない市場参加者の「マインド」に対する感応度を測る指標と考えた方が良いと思います。

次回のエントリでは、BS式の定義からこのあたりの背景を考えたいと思います。