今回の記事は、いつもの目線を少し変えて少々アグレッシブにお届けします。
子どもが行きたい学校に行けばいい。お受験なんて自分とは関係のない話。という方がいる一方、子どもには最高の教育を受けさせてやりたいという思いで、幼少のころからお子さまを塾に通わせたりするお受験志向も過熱しています。

「お受験」という言葉には多少の皮肉めいたニュアンスが含まれているように思いますが、子どもの教育に必死になることは決して間違いではないでしょう。そして、おそらく子どもが大切な親であれば、思うはずです――“どうせならいい仕事に就いて、生きていくのに困らないでほしい”、と。

もちろん、良い仕事に就いたり、良い企業に就職することがすべてではありません。しかし、格差社会が当たり前になりつつある今・新卒一括採用システムが当面はデフォルトであり続ける今、あえて「就職で勝てる人になる方法」に切り込んでみたいと思います。

お子さまの教育、今後についていろいろ考えている方は、ぜひご一読ください。


jinji今回お話をうかがったのは、これまでに5,000人以上の新卒者を見てきたAさん。Aさんはこれまで、外資系企業と日本企業で人事採用を担当されると共に、就職支援のNPOで10年近く、学生に対してエントリーシートや面接の指導をし続けています。
“自分こそ最高だ”と信じてやまない自信にあふれた学生が、いざ、就職活動の際に書類でバサバサと切られていく現実を目の当たりにしてきたAさんに、「どのように育った人を企業が欲しがるのか」という視点で、いろいろと話していただきました。


――早速ですが採用試験で落ちる人はどういう人が多いでしょうか?

僕個人の経験ですが、書類選考の段階だと法政大学の学生の方が東大生よりも通っていたという事実があります。新卒採用では、なまじ学歴が高くて「俺は大丈夫だ」みたいな人が一番先にはじかれます。いくら頭が良くても東大のような大学の学生であっても、相手をなめた態度や「俺だったら通るにきまってる」という考えというのはエントリーシートをぱっと見ただけでわかるんです。ちまたに「エントリシートの書き方」なんて情報はごろごろ転がっていて就職活動については準備できる環境にあるのに、ちゃんと準備していない人は通りません。

「準備をしていない」というのは、面接で聞かれることをちゃんと想定していないし、エントリーシートも一度書いたら直さないという人のことです。こういった人というのは、就職活動自体を不毛だとか茶番だと思っている人に多いですね。

少し考えればわかることなのですが、もし社会人だったら提案書を作ってそのまま出しますか?ということなんですよね。他の人の意見を聞いて、ブラッシュアップしてから出しますよね。そういう努力をしない時点でだめなんです。面接に何の意味があるんだ?と考えるより、面接の成功パターンがあるならそれに備えて準備をする人が受かるということです。

目の前の試練に対して勝てるパターンを見つけることは全然悪いことではなくて、むしろ、業務効率という面において下準備というのは社会人としては当たり前のことですよね。成功のルールが決まっているのなら、それを素直に学んだほうがいい。それを「恥ずかしい」とか「自分には必要ない」とい言って遠くから見ている人と、泥臭くても自分で練習して成果を出す人ではどちらがいいでしょうか。

企業は明らかに後者の人材を求めますよね。就活のエントリーシートを、たったの一枚もきちんと準備ができない人に、社会に出て提案書や上司に提出する資料を作らせても、やっぱりやらないし、できません。

逆に、ちゃんと準備している人はエントリーシートも読む人の目線で書かれています。例えば「窒化ガリウム系半導体レーザー」という研究をしている学生がいたのですが、エントリーシートでは専門分野以外の人にもわかりやすいように書かれていて、この人は絶対に仕事ができると思いました。


――面接ではどういったところを見られますか?

エントリーシートと同じく、ちゃんと面接の準備ができているかの確認をします。よく使う質問は、「今、日本にボールペンは何本ありますか?」というものです。ここで確認するのは、どれだけ正確な本数を計算できるかではなくて、回答に行きつくまでの思考方法を確認します。

この回答例としては「ボールペンは学校とオフィスで主に使われている。まず学校には教室が15ほどあり、1クラスは30人前後。1人につき5本ボールペンをもっているとすると?」という風に想定して単純に計算していくんです。

実はこの質問、既に対策があり、準備している学生はすぐに答えられるんですね。もちろん中には本当に頭の回転が速くてその場でできてしまう人もいますけど、その場でできる人ならそれでもいいし、それができるように準備してくるような人であれば、社会人になっても順応できるだろうと思います。

逆に「なんでそういうことを聞くんですか?」という人は論外です。準備もしてないし、その場で解く能力も無い、ということですから。最終面接までいくと、入社の意思等についても見られますが、最初の面接で確認するのはまず準備ができているかです。


――経歴で、もっとも注目される点はなんでしょうか?

まず、部活でもサークルでも、何かを新しく始めてリーダーになった人には注目します。というのは、新しく始めるには絶対に仲間が必要ですよね。まだ何もでき上がってない状態で、仲間になってくれる人を見つけられるのは一つの重要なスキルです。

そして、何かを新しく始めたリーダーは、大きなプレッシャーやストレスを経験するでしょう。ですからリーダーを務めた人は、ストレスに強くなったり、プレッシャーを楽しんだりできるようになります。そういった状況にどれだけ晒されてきたか、という経験は会社に入ってからも大切です。


――ストレスに強いことは特に重要なのでしょうか?

会社でも、何か新しいことを始めるとか、トップに立つのはプレッシャーがかかって大変ですよね。でも、そのプレッシャーがゾクゾクして楽しい、という感覚をこれまでの体験で覚えている人は強いですね。誰もが避ける大変な仕事を引き受けるのはそういう人ですし、そういう人を企業は欲しがります。
でもそうなるには、強いストレスのもとでの経験を積むしかありません。なので、エントリーシートを見る際にも、そういったストレスの経験があるか無いかを特に見ています。


――ストレスに耐性がある人は、もともと素質があるんですか?

いえ、ほぼ環境が決めることだと思います。育つ場所の影響もありますが、最大の要因は親でしょうね。親がストレスにどう向かい合っているかとか、親が大人になっても学習し続けている姿というのが最高の影響です。親自身が新しいことを学習して、何かできるようになった姿を見せることは子どもにとっての最大のモチベーションになると思います。


――例えば、というようなケースはありますか?

ひとつは、親御さんが学者であるというケースですね。親御さんがアカデミックなわけですから、お子さんも自然と勉強自体が楽しいと思うようになることが多いようです。同様に、親御さんが理系の研究職の方も、お子さんが勉強を楽しむようになる傾向にあるようです。同僚が良い例なのですが、こんなことを言っていました。

「私の場合、親父が研究者、さらにその親父(祖父)は気象予報官で、二人とも勉強が大好き。土日も、二人共通の書斎があって、そこで、親父と祖父が勉強を楽しそうにしている姿をみていたので、「きっと学習は楽しいんだな」というのが、染み付いていた」
ちなみに言うと、彼はもちろん東大ですし、ストレートで大手外資系メーカーに就職、その後、コンサルタントになってグローバルに活躍していますよ。今も昔も、勉強好きは変わり無いようで、仕事を頼むと事前の準備と調査が徹底していますね。

ただ、全員が全員学者や研究職というわけではないでしょうから、仕事や趣味でもなんでもいいので、何かに挑戦するとか、新しいことをやる姿を子どもに見せるのは親としての務めと思って意識されたほうがいいんじゃないでしょうか。


――育つ場所も大きく影響するのでしょうか?

そう思いますね。例えば外国人と触れ合う機会があるとか、違う境遇の人とどれだけ会う機会があるかが大切です。逆に、例えば中高一貫の進学校で同じ仲間とばかり話しているのはストレスが少なすぎてあまり勧めないですね。さらに言うと、都心の進学校でまあまあの成績でいることよりも、地方の学校で1番・2番という成績を取ってきた人の方がストレスに晒されて鍛えられていると思います。

ですから、大学だけではなく中高の経歴にもしっかり注目しますよ。ずっと都心の進学校でまあまあ「特筆すべきこともなく」という程度の人と、田舎ではあるけれどトップの成績で生徒会長をやり、文化祭では新しいイベントを仕切ったという人を比べるとしたら、もちろん後者の方がいいわけです。

また、いろいろな人に会える、という点では、小学校選びも大切かと思います。良い中学校というのは成績順で入学者が決まりますから、ある意味、似た人が集まっているんです。しかし、小学校の場合は頭の良し悪しだけで決まるわけではないですから、ユニークな子どもたちが多く集まります。そういった環境で育つと成長度が違ってくると思いますよ。


――最後に、今後、企業が求める人材について聞かせてください。

今後は、語学能力はデフォルトで求められますので、それに加えて、常識が通じない海外でもたくましく交渉できるタフさが確実に求められてくると思います。特に製造業など海外で稼ぐ企業であればますますその傾向があるでしょう。欧米だけではなく、インドや中国といった国々の人と、精神面で渡りあえるタフさというのは、東大生だからあるというわけではないですし、センター試験の点数が良いからといって培われるものではありません。小さい時からどれだけ違う境遇の人と接してきたかで磨かれると思います。

学歴重視であっても間違いではないと思いますが、就職の際には決して最終学歴だけが求められているわけではないということを知っておいていただければと思います。その辺の環境づくりは親御さん次第でしょうね。