「あなたは禁煙の人」
大阪での私共の定宿の一つに “ ドーミーイン梅田東 ” というビジネスホテルがあります。
ドーミーインは、今、全国に向けて施設を急展開している、大変勢いのあるホテルチェーンです。グループには、「ドーミーイン」以外の他の施設名称もあるようですが、ビジネスホテルは全て「ドーミーイン」名にて展開されているようです。
ドーミーインの価格体系は、一様に大変リーズナブルであり、とりわけ清潔感と快適性を重視しているところが嬉しいですね。
部屋でのインターネット無料接続サービスなどは言うに及ばず、ズボンプレッサーやアイロン、果ては自転車の無料貸し出し、その他、つめ切り、綿棒、文具小物のこまごましたものも無料貸し出し又は進呈です。
寝具は軽量羽毛掛け布団を使用していて、いわゆる洋風のシーツ&毛布巻き込み式ではありませんから、窮屈な思いをせずに、楽に眠りにつけます。我々日本人には極めて快適です。
多忙なビジネスマンなら部屋での仕事も当たり前。だから、通常のシティホテルにありがちな薄暗い照明ではなく、家庭にある丸型蛍光灯の照明が部屋の隅々まで煌々と照らしてくれるのもありがたい限り。
また、客室各フロア又は、要所には電子レンジが備え付けられていて、コンビニエンスストアで買い出した食材を加熱することも容易です。
どれをとっても気が利いていますね。期待に応える或いは超える。そこに感動があり、真の満足が生まれるのですが、ビジネスユースの顧客の期待をよく把握し、これに応えていますね。
快適性の極みとしては、各地の大抵のドーミーインは大浴場を付帯しています。しかも天然温泉である場合も少なくありません。日本全国を転戦する出張族ビジネスマンにとって、アウェーでの疲れを心身ともに癒してくれる、大変に嬉しい、ありがたい宿泊施設なのです。
さて、先日、大阪にある天然温泉大浴場が付帯の “ ドーミーイン梅田東 ” を利用した時のお話しです。
フロントでチェックインする際に、フロントスタッフは私の顔を見るなり「いらっしゃいませ。いつもありがとうございます」と、素晴らしい笑顔で出迎えてくれました。
まぁ、いつも利用しているわけですので、ちょっと気の利いたホテルならば、これくらいの愛想は投げかけてくれる筈です。
ところが、あにはからんや大抵の場合はフロントスタッフにこちらの名前を名乗ったり、チェックインカード(レジストレーションカード)に氏名を記入した後に、フロントスタッフが予約システムのPC画面上の顧客情報を確認して、そこに表示される簡単な顧客情報(例えば “ レベル○○のリピーター ” 等)を確認してからの、ディレイトの愛想となります。
しかし、ドーミーイン梅田東の場合は違います。私が名前を名乗らずとも、チェックインカード等で明らかにせずとも「いつもありがとうございます」と、笑顔で出迎えてくれるのです。しかも、3回目の利用のときからこのような気持ちよい応対なのです。
一時、ニューオータニやホテルオークラのドアマンが顧客を数千人単位で、その顔、名前、職業、趣味や好み等々を覚えているということで話題になりましたが、そういう方向性です。しかも安価なビジネスホテルにも関わらずです。期待を超えていますね。
従業員教育がしっかりとなされていると同時に、その成果として優れた接客文化が定着している現れですね。
さて、ここから先が今回の本題です。
ドーミーイン梅田東のフロントスタッフの皆さんには大変好感を持っておりますが、なかでもとりわけ好印象の女性スタッフがみえます。その方が、先日の私のチェックインを担当してくれました。
前述の出迎えの後、彼女はこう続けました。「今回のインターネットからのご予約は××プランの喫煙タイプのお部屋で承っておりますが、いつもは禁煙タイプのお部屋をご利用でしたよね。ご予約自体は喫煙タイプのお部屋だったのですが、今回も禁煙タイプのお部屋がよろしかったのではないかと思い、禁煙タイプのお部屋をご用意させて頂きました。よろしかったですよね」
このトーク、そして対応内容に、私は感激いたしました。
念のために禁煙タイプの部屋も押さえつつ、一応、客側の予約の通り、喫煙タイプの部屋を用意しておくという腰の引けた対応ではないのです。客の真意を確かめてから「それでしたら(予約間違え)、本日は禁煙タイプのお部屋も空いておりますので、よろしければルームチェンジいたしましょうか?」などという対応であれば、「なかなか親切だな」とは思いこそすれ、感動の域ではありません。彼女の場合、大胆にも、予約ミスに的を絞りきって、それ以外の可能性を排除して、先にルームチェンジを決断して、実行してしまっていたのです。
ひょっとしたら「おいおい。俺は今まで禁煙をしていただけで、先日禁煙をやめたから、今回からは喫煙ルームを予約することにしたんだ。折角タバコをくゆらせてのんびりしようと思っていたのに、勝手な判断をするんじゃない!」とのクレームになる可能性もあったわけです。
そんなことは、充分にホテル業務の経験を積んでいるように見える彼女ならば解りきっている筈です。しかし、そのようなリスクを犯しても、決断して、実行したのです。
本来ならば、客側に予約確認の電話を入れつつ、それを確認するところですが、私の場合、スケジュール管理が非常にタイトでシビアなため、出張の際は前日或いは当日のぎりぎりになるまで宿泊予約が出来ない場合が多く、この日も、午前中にインターネットから予約をして、午後には自家用車で出発してしまっていました。ホテル側としては確認がとれなかったでしょう。
けれども、彼女のトークには一切の迷いが無く、さも当然であるように、しかも気遣いの雰囲気をしっかりと漂わせていました。これは自らの仕事に対する誇りと自身の現れであり、強烈で良好なホスピタリティマインドが具現化されたものです。
「これでもか」という親切を、さり気なく提供する偉大なる「おせっかいの人」、それが“真サービスマン(サービスウーマン)”です。ベースに流れるのは「歓待」「厚遇」「おもてなし」といった、「親切」を基本とするホスピタリティマインドです。
会社としての教育及びそれによる良質の文化、上司の指導、もちろん何よりもご本人の素晴らしい素養が、このような素晴らしい感動を生むのでしょうが、しかし、このような人々を生み出す「人情の街“大阪”」の土壌(文化)の豊かさ、奥深さにも感動を禁じ得ません。
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