「赤はアカンで!ホスピタリティ」
シティプラザ大阪のバー(スカイラウンジ)では、焼酎がリスペクトされています。
シティホテルのメインバーであれば、当然、スコッチ、ブランデー、カクテル、裾野を広げて若干のワインといったところが定番です。それがクラシカルなスタイルであり、いわゆるホテル通の人々の憩い、癒しの場となります。
ところが、こちらでは焼酎が正々堂々主役を張ろうかという勢いです。これまた見事に予測を覆されて、ハっとさせられます。加えて、扱われている焼酎は、決して大衆的な香りを醸し出すことなく、銘柄やボトルの佇まいからして神秘的な存在感があります。通にしか解らない、厳選、こだわりの品揃えであります。
バーのチーフに話を伺ったところ、このバーの開設にあたり、コンセプトや品揃え等々、思い切って任せてもらえたとのことです。その任された責任感と、ひとつホテルで長年お付き合いしてきたお客様との阿吽の呼吸により、ホスピタリティ精神、エンターテイメント精神を基に具現化されたのが「シティホテルのメインバーでありながらの焼酎リスペクト」なのです。
私は、口が卑しい方なので、アルコールさえ入っていればなんでも美味しく頂けるクチなのですが、しかし、ここの焼酎の美味しさは好く判りました。少し興味を示すと、バーのチーフが、色々とうんちくを語ってくれます。そして、そのうんちくに心ときめかせていると、なんと冷蔵庫から「蒸留一番酒」なるものを恭しくとり出だしてきてくれました。通常市販はされていないもののようです。ここまでの用意があるとは、バーのチーフも相当に勉強をしている模様。様々の種類の蒸留一番酒を利きながら、酒談義に花を咲かせることが出来ました。これも大いなるエンターテイメント精神、そしてホスピタリティ精神の現れです。
聞くところによると、こちらのバーはオープン以来、“赤(赤字)”を出したことが一度も無いとか。立派なことです。ホテル全体のことを考えて、少々の赤字を見込んでもステイタスとしてメインバーを営業させている場合も少なくありませんが、こちらではしっかりと黒字経営されてみえる。バーのチーフが、品揃えから、コンセプトづくりまで、ある程度のことを任されて、しかもお客様を「ハッ」とさせるため、喜ばせるために、大きな賭けをして(通常のシティホテルのメインバーコンセプトには、焼酎リスペクトはない考え方)まで、エンターテイメント精神を貫いたのです。気合が違いますね。当然、商品(焼酎)をお奨めするにしても、会社の方針だから奨めるといった及び腰ではなく、用意周到な、こだわりの持って行き方があるのです。売上が伸びないわけありませんね。
いくら、ホスピタリティマインドの教育研修会を実施しても、スッタッフ自らが自主自律の精神で、ある程度の権限と責任を負って、主体的にサービスに取り組まなくては、そこには真のホスピタリティマインドは発現しないのでしょうね。
ついでに言えば、このシティプラザ大阪の場合、ホテル全体の収支が、一度も“赤”になったことは無いそうです。これだけ立派な施設、そして手のかかる施設でありながら、これだけ人によるホスピタリティサービスが行き届いていながら、半公共経営(市町村組合資本)でありながら!!・・・しかし、一度も“赤”を出さない!!・・・驚異です。まさにホスピタリティ経営の鏡です。
随所でスタッフが「自主自律」「ホスピタリティ」「エンターテイメント」の精神で、作業ではなく、“仕事”をしているからでしょう。それは、今まで述べてきた様々の事例から察して余りあります。
本質論としては、今、話題のリッツカールトンのホスピタリティ経営にも共通しますね。大変、興味深いところです。
今後のシティプラザ大阪に注目です。
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