2016年05月14日

個人投資家の海外資産には厳しい課税の仕組み

5月10日に発表されたパナマ文書の明細は、いまだはっきりしたことは分かっていない。すでに発表されている大企業のセレブ関連以外には、今のところカタカナ表記と住所程度にとどまっている。とはいえ、いずれは著名な富裕層の個人名も含めて表に出て来るはずだ。

そもそもパナマ文書の何が問題なのか……。パナマのようなタックスヘイブンに会社を設立して、その法人を隠れ蓑にして、日本など法人税の高い地域で上げた利益をタックスヘイブンの会社に移す。いわゆる「企業収益の隠蔽」を目的とした節税は何が問題なのか……。

ここでポイントになるのは、「パナマに法人を設立して、その法人に資産を蓄積して節税する」という点だ。法人の節税はこれで終了なのだが、日本の税制ではパナマの法人の役割が問題になる。単なる節税目的だけのペーパーカンパニーと認定されれば、節税目的とされて日本の税務当局に課税されてしまうことになる。少なくとも、従業員をきちんとおいて、実務実績のある法人でないとだめなのだ。

一方、個人投資家がパナマにある銀行などに口座を開設するだけでは節税にならない。まずはパナマに法人を設立して、パナマ以外のオフショアバンクに口座を開設。利息などをパナマにあるペーパーカンパニーに移すことで、法人同様に節税ができる環境ができる。パナマ以外の場所で上げた利益には課税されないのがパナマの税制だ。

ただし、ここまでやるのはまさに大富豪であり、これだけのことをする日本の大富豪はそうはいないはずだ。パナマに設立した法人=持ち株会社の持ち分比率によっては、個人もタックスヘイブン対策税制の対象となり課税されるし、個人であっても、法人扱いとなる仕組みになっている。

そもそも、現在では少なくとも日本の居住者、もしくは生活の拠点が日本にある個人の場合、世界中のどこであろうと、預金や投資、事業を通して得た利益は、日本の税務当局に申告しなければならないことになっている。パナマと違い、日本は日本以外で上げた利益に対しても課税される国だからだ。

加えて、2014年以降は5000万円を超える海外財産を保有している人は、「国外財産調書」の提出が義務付けられている。国外財産調書というのは、動産、不動産、預貯金、保険金、貸付金、株式、公社債、投資信託などすべての財産を示しており、これらの額が5000万円を超す人は調書をまとめて税務当局に提出する義務がある。

国外財産調書の提出には罰則規定まであり、正当な理由なく期限(翌年の3月15日)までに提出しなければ、「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」が科されることになっている。

ちなみに、2015年7月には「国外転出時課税制度」、いわゆる「出国税」が導入されて、1億円以上の有価証券を持つ資産家が海外に移住する際には、株式の含み益などにも所得税が課税されることになっている。つまり、日本の個人投資家は海外のタックスヘイブンにペーパーカンパニーなどを作って資産を保管しても、5000万円を超す資産があれば申告する義務があるということだ。

言い換えれば、パナマ文書に描かれているような行為というのは、企業にとっては「合法」でも、個人の場合は「日本の税務当局に申告しなければ違法になる」ケースがあるということだ。問題は、それがきちんと申告されているかどうかであって、そういう意味では、パナマ文書に最も高い関心を示しているのは税務当局と言って過言ではないかもしれない。

現実問題として、日本には個人富裕層は数多い。「年齢階級別 実物資産・貯蓄現在高の比較(二人以上の世帯)」という総務省統計局の「全国消費実態調査」によれば、60歳から69歳の世帯では総資産額5188万円(2009年、負債は263万円)、同じく70歳以上で5151万円(同127万円)となっている。そのうちの貯蓄額は60~69歳で2048万円、70歳以上で1987万円となっている。

これはあくまでも平均だから、日本には数千万円の預貯金額を持っている富裕層は数多く存在する。そんな日本の富裕層がいつまでもマイナス金利の日本で資産運用出来るはずもない。老後破綻を防ぐ意味でも、もっとまともな資産運用ができる海外で自分の資産を防衛しようとする人は今後増えて行くはずだ。

パナマ文書が示す「課税逃れ」「資産隠し」と、日本の個人投資家の海外口座による「資産防衛のための運用」とは、別物として考える必要がある。


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タックスヘイブン | 雑感

2016年04月21日

「パナマ文書」のポイントは課税逃れと資産隠し?

「パナマ文書」が話題になっている。パナマ文書そのものについての説明は避けるが、パナマ文書が「タックスヘイブン(租税回避地)」の利用の実態を暴いたものとして注目されており、企業や富裕層の「資産隠し」や「課税逃れ」が話題になっている。

久しぶりにジャーナリストがその責務を果たす大きな役割を演じている、という印象だが、パナマ文書を単純に課税逃れ、財産隠しを暴いた「スキャンダル」として捉えてしまうのは惜しい気がしてならない。昔から「パナマ」はタックスヘイブンとして知られているが、その地を利用するのは企業が圧倒的に多かった。

国際的な活動をしている企業が、パナマに持ち株会社などを設立して、その会社に「配当」などの形で利益を集積しつつ、拠点となる国での税負担を軽減させる方法だ。パナマの税制は「領土主義」と呼ばれるもので、収入を生む活動がパナマで行われた場合のみ課税される仕組みになっている。パナマ以外で上げた収益の法人税率は、ゼロというわけだ。

現在の世界経済は、日本をはじめとして企業に高い法人税を課税する国家と、パナマのようなタックスヘイブンと呼ばれる法人税の安い、もしくは徴収しない国に分かれている。下の2014年のデータを見ても分かるように、日本は屈指の高い法人税率を徴収する国として知られている。

http://www.kpmg.com/jp/ja/knowledge/pages/tax-survey-2014.aspx

サウジアラビア、米国に次ぐ世界第3位の高い法人税を課税する国だが、上位2か国には間接税がないため、実質的には日本が法人に対して最も高い税率を課していると言っても過言ではないかもしれない。安倍政権が進めようとしている「法人税率を20%台に引き下げる」という動きも分からないでもないが、法人税率だけの問題でないことは事実だ。

実際、日本の法人税には実は様々な抜け道がある。実際に、企業が納税している税金の額、いわゆる「実行税負担率」は日本企業、特に大手企業になればなるほど低いと言われる。資本金100億円超の大手企業の場合の平均的な法人税合計税額は、平均で17.20%(外国税額含む)にしかならないそうだ。

これが資本金1億円超5億円以下の企業になると、37.92%も負担している。グローバルな活動をしている大企業になればなるほど、税金を納めていないことになるわけだ。その大企業の租税回避の舞台となっているのが「タックスヘイブン」であり、パナマ文書に記載されている「モサック・フォンカセ」のような法律事務所だ。

http://president.jp/articles/-/16378

すでに、様々なメディアでも報道されているようにタックスヘイブンに子会社を設立して、本国の高い税率を回避しようとする行為は「違法」ではない。日本の大企業も含めて、グローバル企業の大半がしていることでもある。問題があるとすれば、こうしたタックスヘイブンの国、地域をそのまま放置して、見過ごして来た「政治」といったほう良いのかもしれない。英国も、法人税率を引き下げようとしているが、旧英国領が多いタックスヘイブンの問題を放置しているのも、英国政府にも様々な恩恵があるためと言われている。

もっとも、課税を逃れるという意味では、倫理的な面で問題がある。日本を拠点にして成長してきた企業が、パナマなどのタックスヘイブンに持ち株会社などを設立して、租税回避を図っているのはフェアとは言えない。とりわけ、1000兆円もの財政赤字で苦しむ日本政府を尻目に、自社の内部留保を増やしていく姿は、国民感情としては憤りを感じる。

パナマに持ち株会社を設立するコストは軽微なもので、グローバルなフィールドで事業を展開している企業であれば、当然の事業活動ともいえるが、そうした課税の仕組みこそが問題と言ってもいい。−−続く−−

※新刊が出ました。







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タックスヘイブン | 雑感

2016年02月19日

マイナス金利はどんなに拡大しても、景気押し上げにはつながらないのではないか。
預金金利が低下し、住宅ローン金利やマイカーローン金利なども低下している。そうした事態が進んで行けば、やはり問題なのは銀行はどこで収益を確保するのか、不安になってくる。

たとえば、金利の低下によって、おそらく住宅ローンを組もうと考える消費者は増えるはずだ。
しかし、変動金利に関して銀行側は融資基準を上げて来ることが考えられる。
簡単に融資してくれなくなる、ということだ。

要するに「貸し渋り」が始まるという意味だ。
というのも、3000万円とか5000万円の資金を融資しても、銀行が得られる収益は年間で4〜5万円程度と言われる。万一、100件の融資案件のうち、1件でも不良債権になったら、100件分の銀行の儲けは吹き飛んでしまう可能性がある。

融資条件も、たとえば「大企業のサラリーマンだから借りられる」というのは、もはや何の意味もなくなるかもしれない。きちんとした担保や保証人がいなければ、融資しても採算が取れない時代になったのだ。
それがマイナス金利の実態と言って良い。

そう考えると、銀行がマイナス金利の影響の度合いを計りかねているうちに変動金利を組んでしまうしかないかもしれない。あるいはちょっと金利は高くなるが「固定金利」であれば融資を受けられる可能性が高くなる。
いずれにしても、マイナス金利の行く先は実質的な銀行の貸し渋りだと思ったほうが良い。。

そもそマイナス金利は、日本経済にダメージを与えるのではないか。本来、いまの政権がしなければならないのは、やはり「構造改革」しかないはずだ。

たとえば、次のような改革を本来であればするべきなのかもしれない。
安倍政権では絶対に実現できない事ばかりだが・・・、実現すれば新しいビジネスがや新規市場参入が山のように増えるはずだ。欧州や米国は、ここに移民政策を絡めて労働力を確保してきた。
これぐらいの思い切った改革がいまの日本には求められる。

●官僚の支配構造を根本から変える……とりあえずは「キャリア制度」の全面廃止は必要不可欠だろう。官僚制度がいまや日本を完璧に近い形で支配している。安保法案も、官僚がゴーサインを出したから成立した。官僚は、常に都合よく法を解釈する。自分がしたくないときは、法律の壁があってできない、と言い訳をする。日本の改革が進まない原因のひとつは官僚制度だ。

●日本に存在する特有の利権制度を改革する……メディア、原発関連、建設などなど、日本には特有の規制があってその規制に守られている業界が数多く存在する。

●グローバルスタンダードを阻んでいる規制の緩和……金融商品や建築業界、医薬品など、日本特有の規制があって市場参入できないものが多い。


たとえば、香港やシンガポールは国際金融センターになっているために、金融商品は現地語と英語の両方が通用する。欧州や米国で設立された優れたファンドを、そのまま翻訳などのコストをかけずに届出や販売ができる。日本の投資信託にろくなものがないのは、こうしたグローバルスタンダードを阻む規制があるからだ。ジャパン・コストと呼ばれる余計なコストがかかるため、優れた投資信託は日本には存在しない。

本来、1000兆円の財政赤字を抱える政府は、政党を問わず、日本国債が暴落しないように最大限の配慮をしながら財政政策を進めていくべきだ。マイナス金利は、果たしてどんな影響をもたらすのか。マイナス金利は、銀行を委縮させ、経済全体を縮小させる気がしてならない。





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マイナス金利 | ソブリンリスク

2016年02月15日

2月15日の株式市場は、大きく上昇し日経平均で1000円を超える上げとなった。この背景には、とりあえずマイナス金利導入というイベントに対して、売り方が利益確定したという見方が正解だろう。2015年10−12月のGDPが発表され、前期比マイナス0.4%、年率換算でマイナス1.4%のマイナス成長であることが分かったにもかかわらず、株価は大きく上昇した。

株価は上昇したが、日本経済の「ファンダメンタルズ」は明らかに低迷しつつある、ということだ。いずれにしても、原油価格の暴落や中国経済のバブル崩壊といった外部環境の悪化もあるが、それ以前にアベノミクスの真価が問われ始めていることになる。英国BBCも「アベノミクスの終焉か」というタイトルで、アベノミクスの失敗を指摘している。

そもそもアベノミクスという「まやかしの経済政策」は、3本の矢という国民に分かりやすいプレゼンテーションからスタートしたのだが、実際に放たれたのは「大胆な金融政策」という1本目の矢だけだった。結局は、マネタリーベースを増やすというコストのかからない緩和マネーを、大量にばらまいただけだ。

マイナス金利の導入は、その金融政策さえも限界に近づいていることを示している。そもそもデンマークやスウェーデン、スイス、そしてECB(欧州中央銀行)などのマイナス金利と日銀のマイナス金利を同一視するのは間違っているのではないか。日銀は、20年近くも延々と超低金利を実施し、量的緩和の歴史も長い。日本政府は、900兆円を超える赤字国債を発行し、自治体などの借金を合わせると1050兆円を超える、莫大な財政赤字がある。

そんな状態で、中央銀行が国債を買い始めたら「財政ファイナンス(中央銀行が国債を買い入れること)」とみなされる。そこに、今回の「マイナス金利」導入でリスクマネーが動いたわけだ。欧州の中央銀行のマイナス金利は、ある意味で純粋な金融政策と言えるが、日本のマイナス金利はもっと危険なファクターを含んでいる。

いまや日本政府は、赤字国債がなければ1日でも過ごせないような国債頼りの状況になっている。国債の利回りが大きく下落するようなマイナス金利の導入は、債券価格を大きく上昇させる。ゼロ金利政策の頃の国債価格が一番高いと思っていたら、さらに高くなるマイナス金利導入という事態があったわけだ。

つまり、日本政府はさらに金利の低い国債を発行し続けることが可能となり、日銀は逆に史上最も高くなってしまった日本国債を大量に保有し続けることになったわけだ。これも「財政ファイナンス」の一種ではないのか、そんな疑念を持たれてもやむを得ないだろう。ひょっとして、政府はもうそこまで追いつめられているのかもしれない。

そんな割高な国債を年間80兆円もの勢いで買い続けているために、日銀のバランスシートは当然悪化して行く。日銀もそれを狙って、意図的に割高な国債を購入しているのかもしれない。円高は日本の莫大な緩和マネーが、世界中に散らばっているために、その巻き戻しであって、円価格の動向は経済原理通りには動かない。

実際、日銀はアベノミクススタート直後の決算書では、125兆円(平成25年3月末現在)の国債を保有していたのが、現在では340兆円(平成27年2月10日現在)となっている。わずか2年で3倍弱になった勘定だ。周知のように、国債というのは「価格変動リスク」がある。国債が暴落した時には、日銀は莫大な不良債権を抱えてしまう可能性がある。

もっとも、その時こそ、日銀と安倍政権が狙う「円の信用失墜=超円安」になる。問題はその時、株価は上がるのか、それとも下がるのか。それはそうなってみないと分からないという不安がある。マイナス金利導入は、その国債暴落へのプロセスを速める金融政策であり、超円安に誘導する政策と言える。

それが、国民にとってプラスなのか、マイナスなのか・・・、いうまでもないだろう。
日銀は速やかに量的緩和を終結させてマイナス金利を辞めるべきだ。いまなら、まだ間に合うかもしれない・・・。





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マイナス金利 | アベノミクス

2016年02月13日

世界の株価の下落が止まらない。
数多くの専門家がいろいろ分析しているが、どうも納得できない。
「比較的安全とされる円が買われて、株価が下落」という説明がどうも嘘くさい。

マイナス金利導入を宣言した通貨に、買いが集まるというメカニズムもかなり疑問だ。

今回の株価下落は、いうまでもなく「日銀のマイナス金利導入」がきっかけだったわけだが、なぜ日銀の狙い通りに円安にならなかったのか。そこには、ヘッジファンドのグローバルマクロなどの用意周到な「仕掛け」があったと見たほうが良いだろう。

日本の株式市場というのは、アベノミクスの原動力にされたこともあって、円安が進むと株価が上がる仕組みになっていた。これを逆手にとって「逆回転」させたのが、今回の株価暴落だと考えるのが自然だろう。つまり、為替で円を買ってドルを売るトレードを仕掛けて、あらかじめ売っておいた株価を押し下げる。

莫大な資金にレバレッジを掛けて増幅させるのがヘッジファンドだが、リーマンショック以後8年間も続いた世界的な量的緩和政策で、潤沢な資金を保有するリスクマネーであれば、簡単なオペレーションともいえる。

そもそも今回のマイナス金利導入は、サプライズを狙ったものかもしれないが、タイミングとしては最悪のものだ。米国経済がすでにピークアウトしていたことは、日銀の持つデータ類の中にも入っていたはずだ。米国経済がピークアウトしていたのであれば、ドルが売られることは分かっていたはずだ。ドル安円高のベースができているところに、マイナス金利を導入したために、リスクマネーに円買いの絶好のタイミングを与えてしまった。

そもそもリーマンショックのときも、東日本大震災の時にも、円は一気に買われた。これは長年の量的緩和政策で、莫大な緩和マネーが海外に流れている。いまや、日本は輸出で飯を食っているのではなく、海外に投資した資産から出る配当や利息で食べている。しかし、地震とか経済危機があると、円は一気に日本に逆流、つまり円が買われる。それが円高のメカニズムだ。世界有数の債権国ならではの悩みだ。

※しばらく、このブログを放置していましたが、いよいよかつてのリーマンショック並みの株価暴落が起きつつあるので、もう一度復活させたいと思います。ほぼ毎日、とまではいかないかもしれませんが、出来るだけ更新したいと思います。











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ヘッジファンド | マイナス金利

2016年01月31日

1月29日の日銀政策決定会合で決定した「マイナス金利」の導入は、その影響や効果のほどが窺い知れずに、市場は大混乱した。ECBではすでに導入しているマイナス金利だが、日本では歴史上はじめてのマイナス金利導入になる。

このマイナス金利導入によって、銀行などの金融機関は、今後日銀の当座預金に資金を預けておくには「金利(手数料)」を支払わなくてはならなくなる。このマイナス金利によって、10年ものの長期国債の金利も低下。初めて0.1%を割り込んで0.09%まで下落した。こうした影響で、早くも大和証券投信が短期国債で運用する3つの公社債投信の新規購入の受付を中止する、といったアナウンスをしている。

すでに導入済みの欧州では、一部の国で大口預金の一部にマイナス金利が適用されて、銀行にお金を預けると金利をもらう代わりに手数料と称するマイナス金利を支払わなければならないところが出ていると言われる。また、住宅ローン金利などが一部上昇しているところもあると言われるが、総じて言えば日本では一般の預金者などに対する影響は限定的と思われる。

ただ、注意しなけれけば行けないのは、国内の機関投資家は今後国債で運用できなくなるということだ。地方銀行や信用金庫といった中小の金融機関は、高度なスキルを持った運用担当者が不足しているため、これまでは国債を買って、その利息で利益を出してきた。日銀の当座預金にお金を寝かせておくだけで、0.1%の金利も付いた。

今回のマイナス金利は、日銀の当座預金の金利の一部に限定されているため、銀行の収益にすぐに影響が出ることはないと思われている。銀行間同士で資金を融通しあう銀行間オーバーナイトの資金に対してのみ、マイナス0.1%になる。全面的にマイナス金利を導入したら、日本国内の銀行はパニックになるところだが、さすがに日銀もそうしたリスクは避けた。

とはいえ、今回の日銀のマイナス金利導入によって、1月29日の国債の利回りは8年物までマイナスになった。もはや国債での運用は今後は難しくなると考えたほうが良い。そううなると困るのが、国債を中心に運用してきた年金基金や生命保険などの資産運用だ。とりわけ、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)などの年金基金は、、株安に加えて、国債でも稼げなくなる。これまで超低金利が続いて、年金基金の破綻が相次いだが、さらに拍車がかかるかもしれない。

マイナス金利という劇薬を、なぜ唐突に導入しなければならなかったのか。日銀の苦悩は、安倍政権の苦悩そのものだ。中央銀行の独立性などはとっくにの昔に信頼感を失っているが、それにしても後世に大きな負の遺産を残す政治をいつまでやるつもりなのか。また、黒田日銀総裁の市場との対話能力については、大きな疑問符が付いた。

個人投資家に残された対応策は、もうわずかしかない。いまさらだが、海外の銀行に口座を作って、資産の一部を避難させておく方法ぐらいしかない。香港に昨年誕生した「日本ウエルス銀行(NWB)」は、日本の新生銀行やマネックス証券などが出資して設立された銀行だが、取引のすべてが日本語で可能な画期的な銀行だ。資産防衛のために残された時間は意外と少ないかもしれない。

<日本ウエルス銀行(NWB)>
https://jp.www.nipponwealth.com/







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ソブリンリスク | マイナス金利

2016年01月06日

あけましておめでとうございます。

昨年は、あまり更新できずに終わってしまいました。とりわけ年後半は、多忙だったのと現在進行形の世界情勢や日本のアベノミクスに対して、どう判断すべきなのか。日々、ブログで書いてしまうのは簡単ですが、世界及び日本は、今や大きな岐路に差し掛かっているのではないか。そんな判断から、少々考える時間をいただきました。

2015年は、世界中が混沌とした時代に入り、各地でテロが発生し、右傾化が進みました。極端な言い方をすれば、世界は第二次大戦前夜に戻りつつあり、世界はまた経済の混乱を以前のような大規模な戦争という形で収束させようとしているのかもしれない……。そんな不吉な予感をさせる時代に入ってきました。

世界では、いたる所で右傾化勢力が勢いを増し、武力行使を前提とした政治が幅を利かせ始めています。経済が混乱すると、どうしても人間は生き残りをかけてボーダー(国境)を超えて生存を図ろうとします。人々が逃げ込む地では、どうしても移民排斥、人種差別といった保守派が勢いを増します。彼らが言うところの左翼やリベラルは理想を追いかけるだけで、非現実的と映るようです。

同様に日本でも、「日本会議」という超右翼の任意団体のメンバーが多数を占める政権が続いています。いつの間にか武器輸出が可能になり、ついには米国と一緒に世界中で戦争ができる法案も通過してしまいました。日本だけ何もしないでいいのか、という考えが数多く飛び交いましたが、日本は莫大な犠牲を払って二度と戦争をしない、という国づくりに着手しました。それをたった一人の政治家の登場によって覆されてしまいました。

さらに、日本の情勢を分かりにくくしているのが大手マスメディアの均一化です。記者クラブがいつの間にか政府広報、安倍政権の広報担当と化してしまった。ネットによる情報提供もありますが、それでも大手メディアの情報量には到底勝てるはずもなく、大手メディアは世論を巧みに操作しているのが現状です。

こんな状況では、とても正確で公正なジャーナリズムは機能しません。

こうした事態のすべての元凶は、リーマンショックだと私は思っています。第2次世界大戦の原因となったりも、もともとは1929年の大恐慌でした。昔も今も、米国は自国の利益しか考えない経済政策をとります。このコラムでも何度か指摘してきましたが、経済危機が訪れたときに政府が行う「金融緩和」や「量的緩和」は、度を越せば世界中に紙幣がばらまかれて「過剰債務」を生む。この過剰債務が、金融政策を逆転させたときに大きな障害となってあらわれます。

より深刻な経済危機を引き起こし、最終的には政治の右傾化を呼び、大規模な戦争に拡大して行く。戦争というのは、民族が生き残りをかけて戦うものであり、どんな状況に陥るのかわかりません。予測のつかない事態が起こるということです。

昨年の暮れ、米国の政策金利が9年半ぶりに引き上げられました。金融引き締めに入ったというよりも、正常化したとみるのが正しいかもしれませんが、ブラックマンデー、ITバブル崩壊、リーマンショック……。いずれも、米国の金利上昇期に発生しています。何があってもおかしくない状況に、世界は入りつつあるのかもしれません。

今年もよろしくお願いいたします。



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安倍政権 | 雑感

2015年10月23日

アジア第4位の豊かさ?

IMFの「ワールド・エコノミック・アウトルック 2015年4月」によると、日本の一人当たりのドルベースでの名目GDPは、3万6331ドル74セントとなり、世界第28位にまで転落した。アジア地域に絞れば、シンガポール、香港、ブルネイに次ぐ第4位で、5位の韓国との差はわずか8200ドルにまで迫られている。

<アジア地域>
1位 シンガポール……5万6319ドル
2位 香港……3万9871ドル
3位 ブルネイ……3万6606ドル
4位 日本……3万6331ドル
5位 韓国……2万8100ドル
6位 台湾……2万2597ドル
7位 マレーシア……1万803ドル

G7の中でも、イタリアがわずかな差で日本に迫っているが、日本が最下位になる日もそう遠くはないはずだ。その原因は何かと言えば、ひとつにはアベノミクスによる円安政策があるのだが、忘れてならないのはもっと根源的な原因だ。

急速な少子高齢化や20年以上に渡るデフレもあるだろう。しかし、それだけでは近年の日本経済の凋落の説明がつかない。グローバル化に後れを取る企業が多く、かつては世界一だった「メイド・イン・ジャパン」が、いまや「メイド・イン・コーリア」や「メイド・イン・チャイナ」にとって代わられてしまった。

この原因をキーワードで説明するとしたら、どんな言葉になるのか。私なりにまとめてみると、こんなキーワードで日本の凋落を説明できるのではないかと考えている。


●ガラパゴス化……単純に言えばグローバル化ができていない、ということになるのだが、国内に中途半端なマーケットがあるために、国内に視点を置いて世界に広がる巨大なマーケットに目が向いていない。韓国のように、6000万人程度のマーケットしかなければ、世界に出て行くしか方法がなくなる。日本も少子高齢化などの影響で、いずれはガラパゴスといった自虐的なことを言ってはいられなくなる。世界が日本に合うのを待つのではなく、日本が世界に合わせるしかなくなるはずだ。

●イエスマン体質……日本企業の成長力が衰退し、日本特有のシステムを機能できなくなっていることにいまだに気が付いていない企業があまりに多い。終身雇用制に固執し、いまだに縦割り社会を作っている。
極端な言い方をすれば、そもそも終身雇用制はいまの時代にそぐわない。終身雇用制があるから、部下は上司にたてつくことができないし、出世していく人間は「イエスマン」であり続ける必要がある。トップに上り詰めた人間はイエスマンのなれの果てだ。そういうトップは、当然のことながら周囲にイエスマンしか置かなくなるし、自分が一番だと思っているから、部下の箴言にも耳を貸さない。
企業がいつまでたっても終身雇用制にこだわり、賃金体系や昇進システムを終身雇用者=正社員重視に置いているために、労働力の流動性が一向に進まない。優秀な人間がいつまでも社内に留まるのはいいとしても、役に立たない社員まで滞留することになる。終身雇用制を廃止することが、イエスマン体質を払拭する唯一の方法だ。

●組織の硬直化……日本企業の大半は、いまだに女性の活用化が進まなかったり、セクショナリズムが蔓延っている。イエスマン体質と同様に、これも終身雇用制の弊害だが、終身雇用制を崩すためには、企業が中途採用や非正規社員を、賃金の面でも、昇進システムの面で平等に扱うように法整備を進めなければならない。ところが、政府や政治家の組織も硬直化しているために、到底出来そうもない。

●政府の機能停滞……1000兆円もの財政赤字に対して積極的な解決策を講じて来なかった結果、徐々に国民の資産が政府に吸い上げられていく構造になりつつある。法人税を下げて企業の流出は何とか食い止めようとしているが、法人税引き下げだけで、日本経済が上向くとは思えない。さらに、日本国債の格付けがすでに韓国や中国を下回っている状態で、いずれは金利上昇、急速な円安の進行、超インフレといったシナリオが日本経済全体を覆いつつある。
このままでは、2025年には財政赤字が2000兆円に達するとも言われる。個人レベルで、国の崩壊を目の当たりにしながら、自分の資産だけは守っていくノウハウを身に付けなければ、我々は生き残っていけない。

●規制緩和の不備……たとえば、日本の国土の7割を占める森林は、いまやスギ林だらけでまったく機能していない。大胆で思い切った規制緩和によって、国土の7割を活性化させることができるはずだ。
都市部の「容積率」緩和も一向に進まない。韓国は、通貨危機のときにソウルなどの容積率を大幅に緩和して、経済を立て直したと言われる。経済が破綻してしまったのでは、美しい街並みも無意味だ。
こうした規制緩和が、なぜできないのか。官僚が一部の政治家や政党と癒着して、実質的に「服従状態」になっている。キャリア制度の維持など、現在の公務員制度を守ることを見返りに、政権の奴隷になっている。カジノ構想ひとつ実現できない現実は情けないと言わざるを得ない。

豊かさを求めて若者が出稼ぎする社会?

こんな状況の中で、現在の安倍政権は名目GDP600兆円の実現を掲げたが、そのためには今後も効果のない異次元の量的緩和を続けることになり、出口戦略なき経済政策はいずれ失敗に終わる。日本企業が莫大な内部留保を抱えていることを「豊かさ」の象徴のようにいう人がいるが、少子高齢化社会の到来に対して、有効な政策を打ち出せない日本政府に対抗して、景気後退、経済破綻に備えていると見るのが自然だ。

優れた経営者なら、設備投資するより、これから訪れる超高齢化社会に備える道を選ぶのが自然だろう。とはいえ、ここで設備投資ができなければ、どんなに内部留保を蓄えても、全額外貨で保有するなどしなければ、とても日本経済の破綻に対応できるとも思えない。

そんな状況で、いま心配されているのが日本経済破綻の後にはどんな日本の姿があるのか、ということだ。たとえば、現在、シリア難民で欧州は大揺れに揺れているが、日本人自身が海外に難民となって出て行く状況も考えられないことはない。難民になるまで極端ではないにしても、海外に「出稼ぎ」にいく若者が急増する可能性はある。実際に、シンガポールや香港といった金融先進国には、数多くの日本人が働いている。規制でがんじがらめになっている東京マーケットよりも、シンガポールや香港のほうがビジネス・チャンスが大きく広がるからだ。現在はまだ金融セクターにとどまっているが、そのうち日本人を単純労働社として受け入れてくれる国が出て来るかもしれない。

海外に売るものがなくなれば、自分で海外に行って現地で稼ぎ、日本に送金するしかなくなる。「移民を迎え入れるなら今しかない」と主張する人もいるが、現在のような「日本方式至上主義」の風土やシステムでは、移民もそうそう多く来てくれないかもしれない。とはいえ、日本に移民として来てくれる人はいまなら多いかもしれないが、財政赤字が2000兆円になる頃、いったいどのぐらい外国人が日本に移民してくれるだろうか。

いつまでガラパゴスで居られるのか。日本には、そう時間が残っていないのかもしれない。




















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アベノミクス | 安倍政権

2015年10月03日

先進国の量的緩和は新興国に流れる?

IMF(国際通貨基金)が、9月29日に発表した「国際金融安定性報告書」の中で、主要な新興国の企業が抱える借金の総額が18兆ドル(2015兆円、2014年)になったと発表した。この10年間で4.5倍になったことになる。8年前に起きたリーマンショック以後、米国や日本、EU(欧州共同体)といった先進国が、率先して非伝統的、もしくは異次元の「量的緩和」をしてきたわけだが、その副作用が初めて表面化したものと考えていいのではないか。

リーマンショック以降、米国の中央銀行に当たる「FRB(米連邦準備審議委員会)」は、ヘリコプターからお金をばらまくような非伝統的な量的緩和政策(QE)を、QE1、QE2、QE3と続けて実施。最終的には毎月850億ドル(8兆5000億円、1ドル=100円として)もの「債券」を買い続けて市中にマネーをばらまいた。

周知のように、QE3は徐々に縮小させて2014年10月に終了。現在は次の「ゼロ金利政策」からの脱出段階に入っているわけだが、ここで疑問になるのが、FRBが大量に放出した緩和マネーはどこに行ってしまったのかだ。世界中に大量のマネーが約7年間にもわたって流れ続けたのだ。

まさに「過剰流動性」の世界だが、周知のようにFRBに続く形で、現在は日本銀行とECB(欧州中央銀行)が莫大な資金を世界中にばらまいている。日本銀行は、日本国債の7〜8割を買い入れ、ETFやREITなども買い続ける異次元の量的緩和を現在も実施中だ。「黒田バズーカー砲」と呼ばれる異次元の量的緩和は、一度ならず2度も実施され、株価が下落している現在、その第3弾を求める声が日増しに高まっている。

こうした量的緩和は、リーマンショックからの立ち直りのためにとられた政策だが、すべてはバーナンキ前FRB議長が始めたことだ。彼が、「30年代の大恐慌の原因は、FRBが資金を大量に供しなかったからだ」という考え方を唱える「ミルトン・フリードマン」の学説を信奉していることは有名だが、この学説が正しいかどうかはいまだにわかっていない。あえて言うなら、いま世界経済を使って「実験中」というところだ。

経済危機や金融危機に対しては、紙幣をバンバン印刷して、市中にばらまけば経済は自律反発して行く−−という考え方だが、ずいぶん都合のいい、誰もダメージを受けない夢のような金融政策と言っていいだろう。問題は、その大量にばらまかれた緩和マネーの行方である。

考えてみていただきたい、中央銀行が一般の銀行などにマネーを際限なく提供し始めたら、企業も個人も借金をして設備投資をしたり、住宅を建設したりする。みんなが同じことをすれば、世の中はバブルになる。投資していた不動産などの価格も上昇して、みんながハッピーだ。

政府も国債をどんどん発行できるから、公共事業とか公務員の給料なども支払い放題だ。本来なら、なぜ経済危機が起きたのか、その原因を追求して、場合によっては責任者を処罰して、構造改革をして初めて不況からの脱出を待つのが理想だ。政府が、金をばらまき続けることで、そうした過去の過ちはうやむやにされていく。日本の80年代のバブル崩壊も似たような経緯を辿った。

いうまでもないことだが、そんな時代はいつまでも続かない。再びバブルになりそうになって、中央銀行は慌ててお金の提供を中止する。結局、日本も80年代に作った大量の不良債権を抱えたまま、ずるずると時間を使ったものの、最終的には処理せざるを得なかった。負の遺産はいずれ、処理しなければならないということだ。このところ、ずっと指摘してきた「過剰流動性は過剰債務を生むだけだ」という考え方もここにある。

米国は、証券化商品などのデリバティブ・クレジットの世界で起きた信用収縮を、投資銀行を助ける形で救済したものの、強引な破たん処理で国民を次々に無一文にした。それでも、米国は再生できる社会制度のために救われたものの、海外では通用しない方法だ。とは言え、米国内の債務の破綻処理を進めて行く過程で、世界中に緩和マネーをばらまくことになった。

IMFが9月29日に発表した「新興国企業の借金2000兆円」は、まさに、米国がもたらした過剰流動性が生んだものであり、今後、米国が金利を引き上げてくれば、新興国は経済成長の原動力を失うことになるかもしれない。言い換えれば、莫大な借金だけが残ることになる。

先進国の量的緩和は自国の利益だけを考えたエゴではないのか?

そもそも先進国が自らのバブルに浮かれて経済危機を招き、その解決策のために中央銀行が際限もなくマネーをばらまくのは「先進国のエゴだ」という考え方も根強い。最近は、米国経済の回復が実現しそうなため、あまり声高にいう人は少なくなったが、ばらまかれたマネーは、金融のグローバル化によって、ヘッジファンドとかプライベート・エクイティなどによって、新興国の企業などに投資されて、投資という名の借金(債務)に代わる。

問題は、これまでにばらまかれてしまった緩和マネー、そして現在も継続している日銀やECBによってばらまかれる予定の緩和マネーがどこに行って、どんな影響を及ぼすかだ。日銀がばらまいている緩和マネーは、すでに底をつきかけているために、今後3回目が行われることになるだろうが、米国のように自国の株式市場にわずかでも流れて株価を押し上げてくれればいいのだが、外国人投資家に頼っている日本の株式市場では、外国人投資家が出て行けば、再び元の水準に戻ってしまう。

残りは、ヘッジファンドなどによって海外の新興国に流れて、そこでさらに過剰債務を生むかもしれない。結局アベノミクスは、これまでもそうだったように日本経済には恩恵を与えない。いずれは、日銀の異次元の量的緩和も「出口戦略」を考えなければならない。その時期は、国民生活が壊滅状態になった後になるのかもしれない。

凄まじい円安と超インフレによって、国民生活がガタガタになったと同時に、政府の財政赤字も相対的に小さくなる。その見通しが立ったところで、量的緩和を中止して金利も引き上げる。そんなイメージだろうか。たとえば、1億円の金融資産があって、十分な年金がある人、あるいはもらう予定の人でさえ、日々の暮らし困るような時代がやってくるかもしれない。アベノミクスの信奉者は、その覚悟を持って、一か八かで支持しているのだろうが、あまりにリスキーだ。

ポール・クルーグマンが、昨年9月に「日本は消費税を10%に上げればそれで終わり」と警告しているが、同時に「戦争リスクに備えよ」と警告している。最終的には、共に経済的に疲弊しきった日中が戦争になるかもしれないと予想している。戦争法案が通ってしまった現在、その可能性はゼロではなくなってしまった。これまでのように、個別的自衛権以外の戦争はしない国であれば、簡単に戦争には巻き込まれなかった。

ひょっとしたら「戦争によって日本経済(政府)を復活させる」という、とんでもない考え方をしているのかもしれない。いまや安倍政権が狙う究極のシナリオといっても過言ではないだろう。「どうせ米国が一緒に戦って、勝ってくれる」と考えていたとしたら、恐ろしいことだ。

IMFが発表した新興国企業の借金2000兆円は、それだけインパクトのあるデータだったと言っていいだろう。ただ、残念なことに、それを報道したメディアは数えるほどしかいなかった。

ちなみに、注目すべきは同じ「国際金融安定性報告書」の中で、IMFは現在の金融市場において、先進国、新興国共に「市場流動性」が低下している警告している。過剰流動性が過剰債務を産めば、その結果として信用収縮が起こり、市場流動性が枯渇する。要するに、リーマンショック時に起きたような恐慌状態が再び起こる可能性を指摘しているわけだ。結論を言えば、株式や債券、商品市況の暴落に警戒せよ、ということだろう。

IMF:国際金融安定性報告書概要

新興国企業の借金2千兆円に急増 IMF報告、返済不能も

ノーベル賞経済学者クルーグマン「日本経済は消費税10%で完全に終わります」(現代ビジネス)





















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過剰流動性 | 信用不安

2015年09月18日

米大手格付け会社の「S&P」が、日本のソブリン格付けを「AAマイナス」から「Aプラス」に1段階引き下げた。これで、S&Pも含めてムーデーズ、フィッチの3大格付け会社すべてが、日本国債の格付けを「シングルA」としたことになる。韓国の「ダブルA」より下で、中国もS&Pとムーディーズは現在も「ダブルA(フィッチはシングルA+で日本と同じ)」としている。韓国や中国の心配をしている場合じゃないということだ。

S&Pは、今後の日本経済の見通しについて「アベノミクスの効果はない」と判断したわけだが、当コラムでずっと指摘してきたように、アベノミクスはまやかしの経済政策であり、その経済的な効果は長期的に見れば疑問ばかりだ。株高や円安といった現象は、一時的なものに終わる可能性は極めて高く、S&Pもアベノミクスの経済政策に対してかなりネガティブな判断をしたということだ。

これまでも指摘してきたように、FRBや日銀、そしてECB(欧州中央銀行)が実施してきた「非伝統的」もしくは「異次元」の量的緩和策は、世界中に「過剰流動性」をもたらしてきた。過剰流動性は、究極的には人工的なバブル形成を狙った金融政策であり、最終的には「過剰債務」を生む。いわば「幻の経済政策」だと思っている。

そもそも現在のようなグローバリズムが進んだ経済環境の中では、中央銀行が金融政策として紙幣を印刷して、ヘリコプターから金をばら撒くような経済政策は、一時的に景気を上向かせても本質的な変革にはならない。莫大な資金を市中に流したところで、そのマネーは世界中の金融マーケットなどに流れて「投機資金」になるだけだ。最終的に、元のデフレに戻るか、最悪の場合は凄まじいインフレをもたらす。

中国がバブル経済に陥ったのは、中国のグローバリズムが不完全だったためだ。中国は、リーマンショック直後に4兆元という大規模な経済政策を実施したわけだが、景気対策によってもたらされたマネーは中国国内にしか流れなかったために、あっという間にバブルを形成してしまった。加えて、世界中から“緩和マネー”が中国に流れ込んだ。

日本をはじめとして、米国や欧州でどんなに大規模な量的緩和をやっても、マネーは世界の商品市場や株式市場、不動産市場に流れてしまう。その受け入れ先が中国だったわけだ。自国内や地域内でその効果を上げられない構造になっている。

とはいえ、米国や日本、EUが実施している金融緩和政策では、株式市場が上昇し、通貨安や法人税引き下げなどによって企業も潤う。表面的には景気回復を成し遂げているかのように見える。米国が、リーマンショックからすでに8年も経とうとしているにもかかわらず、いまだに金利を引き上げられないのも、中央銀行の非伝統的量的緩和に頼り過ぎた結果と言って良い。マネタリーベースを増やすことだけに尽力してきた結果が、現在の状況と言って良い。

一方、米国に追随する形で、異次元の量的緩和を核とする日本のアベノミクスだが、いまとなってはすべては戦争法案を通すための演出であり、「3本の矢」といったキャッチフレーズも、単なるまやかしだったのではないかという気もする。その証拠に、民間の活力を活性化するための第3の矢は、政権発足後2年半以上経過してもなお出て来ない。構造改革もなければ、歳出削減の努力もほとんどない。

唯一、緩和政策といえるのは武器輸出といった「戦争ビジネス」でしかない。国民は、構造改革や大胆な規制緩和を期待していたはずだが、安倍政権の狙いは自民党の大スポンサーである「経団連」が求める「武器輸出」だったことになる。日本は、長期に渡って「需要不足」と言われ続けてきた。確かに、戦争は膨大な需要を作り出すが、その犠牲は計り知れない。それがいかに採算に合わないものであるかは、すでに歴史が証明しているはずだ。

問題は今後だが、安保法案が片付けば経済政策に本腰を入れることになる、という希望的観測が金融業界では拡がっているが、その期待は裏切られるはずだ。安保法案によって防衛費が急激に増えるだろうし、安倍政権が業界のご機嫌取りではじめた公共投資の復活も、歳出を増やすことになる。

そもそも安倍政権は、日本の構造改革などやる気はないのではないか。本気で日本経済の回復を目指すのであれば、移民を受け入れ、米国や欧州のように経済の活性化に不可欠な「多様性」を追求して行く必要がある。米国の追随はしても、それ以外の国はどうでもいい。そんな姿勢が目立ちすぎる。

いまや日本の財政債務は対GDP比で250%にも達する。前人未踏の領域と言われて、ゆうに10年を超える。国家の破綻を歴史的に見れば、ここまで債務を拡大させた国が破綻しなかったことは一度もない。唯一、英国が第2次世界大戦直後の債務残高が200%近かったことがあるが、戦勝国となり、戦後の経済復興で息を吹き返した。

世界中に植民地があった英国と、主たる資源を何も持たない日本とでは比較にならない。アベノミクスが始って以降、国民の財産ともいえる年金資源を、株価を上昇させる道具として使い、健全な社会に不可欠といえる公正な報道をメディアに圧力をかけて歪ませた。

なによりも、憲法を勝手に解釈して変更させた時点で、安倍内閣は「クーデーター」を起こしたと考えていい。独裁政治を始めたクーデーター政権が、今後の日本をどう導くのか。独裁政治を許した責任とツケは、いずれ国民一人一人にかかってくる。








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