<人づきあいに必要な、精神的な距離の保ち方>

仲の良い間柄こそ、ストレスの原因

 「あなたのストレス源は?」と質問すると、「仲良しグループのお付き合い」「一対一の濃すぎる関係」など、仲の良い身近な人間関係を挙げる人はとても多いもの。  

たとえば職場では、「昼休みや飲み会でグチ大会になるのがイヤ」「周りに調子を合わせなければならないのがつらい」……。  学校では、「友達なのに陰では悪口大会になるのが苦痛」「自分だけのけ者にされるのがコワイ」……。  地域のママ友付き合いでは、「お互いの家の事情がまる見えになって息苦しい」「公園で親子ともに排除されないかと心配」……、こんな悩みをよく聞きます。  「1人になるのはイヤ。でも、付き合い始めるとベッタリになりすぎて……」「話せる相手がいるのは楽しいけど、つい悪口に発展したりグループ内でいざこざが起きてしまう」。

このように、友だちやグループなどの身近な人間関係では、楽しさと煩わしさが表裏一体になっています。

 ■人は無意識のうちに「距離」を保とうとする  最初は楽しかったはずの友だちやグループ、身近な人たちとの関係が、どうしてストレスの元になってしまうのでしょう? それは、お互いが「適度な距離感」を意識して付き合っていないからです。  まず、人は他人と接触するとき、無意識のうちに物理的な距離を置き、個人空間を守ろうとします。

この個人空間をアメリカの文化人類学者、エドワード・ホールは「パーソナル・スペース」と言いました。  ホールは、他人と個人的な話をするときには約75~120cm(お互いに手を伸ばして指先が触れあうくらいの距離)の個人空間をとろうとし、それより近づきすぎると不快感を覚えると説きました。つまり、いくら仲良くても、友達にあまり接近されすぎるとストレスになるのです。  人づきあいにはこうした「物理的個人空間」だけでなく、「精神的個人空間」も確保できないと苦しくなるのではないでしょうか? 

私は友だちや仲間と長く、楽しく付き合っていくためにも、お互い精神的な距離を意識して守っていくことが大事だと考えます。 ■精神的な距離の保ち方の4つのヒント  では、人づきあいにおける精神的な距離の保ち方について考えていきましょう。

私は、次の4つを意識していくことをヒントとしてお勧めしたいと思います。

1. 「共有時間」は自分で制限する  人づきあいが苦しくなるのは、時間を一定の人と共有しすぎているからです。  たとえば仕事では、1日8時間以上一緒に働いているのに、昼休みも一緒。さらに、休日には会社のサークル活動でまた一緒……こんな状態が続いていたら、仲が良くても息苦しくなるはずです。  公的な時間の共有は仕方がありませんが、昼休みや退社後、休日の時間は自分で意識的に個人的な時間と空間を確保していく必要があります。  たまには適当な理由をつけて自分1人で外に昼食をとりにいく。アフター5には習い事やセミナー、デートなどの予定を入れて、1人の時間や社外の人から刺激を受ける時間をつくる。このように、自分から積極的な時間制限を設けていくことです。

2. 「すべて」を自己開示しない  家族のことや台所事情、恋愛遍歴や自分のコンプレックス……こうした自分にまつわる事実を「すべて」分かち合えなければ、真の友情を築けないと思っていないでしょうか?  たしかに「自己開示」(自分の情報をありのまま伝えること)ができれば、他人との精神的な距離はぐんと近くなりますし、信頼関係も築きやすくなります。しかし、「すべての情報」を他人と共有しようとすると、受け止めてくれた相手への強い身内意識と依存的感情が生まれます。  なかには、他人の情報を握りたがり、それによって他人を支配したいと思う人もいます。気をつけましょう。

3. 「同調」しすぎない  相手が笑ったら自分も一緒に笑う、相手が泣いたら自分も一緒に泣く……自分自身が「鏡」のようになって同じ行動を返してあげると、相手は安心して心を開いてくれます。  こうしたコミュニケーションは、人間関係を深めるためにも大切なこと。とはいえ、相手に調子を合わせすぎてしまうと、相手からの期待はエスカレートします。  相手が愚痴を言い始めたときには、つい親切心から「それ本当にムカつくね」「私も頭に来た!」と同調して返すことを「親切」と勘違いしている人が多いものです。しかし、この同調の一言が、相手の際限ない愚痴を誘ってしまうのです。  ほんのたまにならいいでしょう。でも、いつも一緒にいる相手にいつも同調を繰り返すのはとても危険です。苦しくなって聞くのをやめようとしたときには、すでに相手からの精神的な依存が強くなっていて、「急に冷たくされた」「もう友だちじゃない」と恨みを買うこともあります。  「同調」は、人間関係依存のリスクを高める「パンドラの箱」なのです。むしろ、愚痴は同調ではなく、「そんなにつらい気持ちなんだね」と共感的に聞いてあげましょう。

4. 活動拠点は最低でも「3点確保」で  ここ最近の活動拠点は、主に「2点」に限定されていませんか?  たとえば、結婚してからの主婦生活は「家」と「子どもつながり」の関係だけ。仕事が忙しくて、「家」と「会社つながり」関係だけ。通学に時間がかかり過ぎるので、「家」と「学校つながり」の関係だけ……。  このように、自分がエネルギーを傾ける活動拠点が2点程度にまとまってしまうと、そこに限定された人づきあいが濃くなりすぎて、息苦しくなるのです。  人とのつきあいをストレスにしないためには、活動拠点を分散させること。ロッククライミングでも自分の安全を守るためには、「3点確保」が基本です。つまり、「両手と片足」「片手と両足」というように3点の安全ポイントを確保することにより、落下のリスクを分散させることができるのです。

 人間関係のリスクを分散させるためにも、活動拠点は最低でも「3点確保」でいきましょう。  主婦なら「家」と「子どもつながり」の関係に、それらとはまったくつながりのない「マラソンサークル」を加える。ビジネスマンなら、「家」と「会社つながり」の関係に、まったくつながりのない「バンド活動」を加える。学生なら、「家」と「学校つながり」の関係に、まったくつながりのない「環境ボランティア」を加える。このように、3点ともに方向性も色合いもまったく異質な活動拠点を設けることが大事です。  

友だちや仲間との関係は、細く長く大事に続けていきたいもの。その関係をストレスの温床にしないためにも、上のようなヒントを活用しながら、工夫して付き合ってみてください

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