ZEQU

2013年05月28日

魔法少女カナタTS ep.0

皆様こんにちは、奈津葵です。

今回でとうとう最後となりました、
魔法少女カナタTS・ショートストーリー

今回がパッケージ版発売前の
最後のショートストーリーということで、
今ブログの最後に
本編シナリオと、今回のショートストーリー

を書きました
ZEQU氏より、コメントも頂いていますので、
そちらも是非ご覧ください。

それでは今回で掲載最後となります、
第-1話お楽しみください。


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第-1話
「万戈飢夜~神余カナタ~」


◆◆

倦(う)んでいる。

膿(う)んでいる。

それを感じて、立ち止まる。

振り返ることもなく、立ち尽くす。

そのまま見上げた大都市の夜空は、死角に切り取られ、
まるで檻の中に押し込められたように、星々が瞬く。

その星々の光が差し込む路地裏に広がるのは、闇。

いかに人類の文明が進んだとしても、
夜の闇を遠ざける光を生み出す源が
化石燃料や原子力から“魔法”に変わっても。

人類が闇を駆逐する事は出来ない。

いやむしろ、人より遠のかされた闇は寄り合い、
重なり、その濃度を増す。

「はぁああああああああああああああああああああっ!!!」

その闇を塗りつぶすように、翡翠色の閃光が、路地裏に広がる。

しかしそれも一瞬。

まるで、弾かれた闇が押し返してくるように、
緑色の光は収束し、路地裏にはまた、闇の底に沈む。

「はぁはぁはぁ……」

その闇の底で、少女は荒い息をこぼし、肩を上下に揺らす。

神余 カナタ。

それが近しい者には、そう呼ばれる彼女の名だ。

いや、今のこの少女を見て、普通の人間は、
彼女をカナタとは認識出来ないだろう。

「また……手がかり、ない」

常人には、視認できない
魔法による特殊なフィルターがかかったカナタは、
落胆した声をこぼす。

その視線の先には、一人の男が俯せに倒れていた。

「コイツも、外れ……」

近年増えだした魔法を悪用した“魔法犯罪者”。

ここ数ヶ月、彼女はその全てを狩り、“否定”している。

数ヶ月前、偶然なのか、
それとも必然以前の必定だったのか、手に入れた力。

「……AzΩTh、解除」

それを行使し、闇夜を待って“魔法犯罪者”を狩る毎日。

「…………」

膿(う)んでいる。

倦(う)んでいる。

一体自分が何をしているのか?

いや、理由も目的もある。

だが、その2つを達成した後には……?

倦(う)んでいる。

膿(う)んでいる。

そして、

飢(う)えている。

そこまで考えた直後に、腹が鳴った。

「お腹、空いた……」

今の今まで忘れていた空腹に、体がよろめく。

たまらず壁に伸ばした手が、痛む。

「殴ったら……いた、い……な」

その事を知ったのは、この力を手に入れてからだった。

誰かを殴る、と言う事は結局、
それだけの痛みを自分にも与える事。

ただ痛みが食い込んで来るのは、
誰かを殴った拳だけじゃない。

「痛……い」

心が軋んで痛む。

けど、他に方法は、ない。

だからこそ、膿んだ思考の中膿み、飢える。

「お腹、空い、た」

それを誤魔化すように、意識を空腹に向ける。

空腹。

魔導機関AzΩThを手に入れたカナタが
その代償に選んだ“七つの大罪”の一つ。

つまりは、
“傲慢”“嫉妬”“憤怒”“怠惰”“強欲”“暴食”“色欲”
の内の“暴食”。

AzΩThの本来の力の万分の1も引き出せずにいる彼女が、
その力を制御する為にあえて選んだのがソレだ。

力の対価。

いや、体の芯と、魂の根幹にAzΩThを結びつけるために、
カナタはあえてそれを選んだのだ。

「お腹、空い、た……」

3度目の呟き。

空腹を感じる事が出来るならば、まだ自分はココにいる。

「円の、作ってくれたの……食べ、たい……」

彼の作ってくれた弁当を食べたい、
と思えるならまだ、自分は大丈夫なのだ。

「けど……」

けど、と思って、もう一度夜空を見上げる。

今自分がしている事を、彼が知ったら、どう思うだろう?

心配してくれるだろうか?

それとも怒ってくれるだろうか?

それとも……。

「ちが、う」

滲み出した思考を頭を振って散らす。

自分は、誰かに期待してはいけない。

したとしても、ソレを口に出してはいけない。

「アタシに……そんな権利……ない」

何かを思い出し、足を引きずるように歩き出す。

倦(う)んでいる。

膿(う)んでいる。

そして、

飢(う)えている。

倦むとは、行き止まりを前に前に何も出来ず、
進めず頭を抱え、うずくまること。

膿むとは、停滞し侵食され、自分が自分以外の何かに蝕まれること。

そして、だからゆえに、飢える。

「お腹、空いた……」

きっと、この空腹は、満腹だけじゃ満たされない充足感の枯渇。

一人だけのご飯は物足りない。

一緒に笑って食べて、笑い合える人がいたら、
それはきっと、幸福の瞬間。

自分以外の何かに、自分を。

自分以外の誰かに。

誰か一人でもいい、その人に、自分を肯定して欲しい。

ありったけの自分が、ココにいてもいいって、言ってほしい。

同時に、その人に、いてくれてアリガトウ、とも言いたいだけ。

それだけなのに。

「だめ」

けど彼女は、それだけすらも拒絶する。

魔法少女カナタは否定する。

だから飢えは止まらない。

迷走、以前の迷い足。

つまりは迷歩。

「お腹……空いた……な」

彼女の体と心の飢餓が、癒されるのは、
もう少し未来の話。


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(企画・シナリオ:ZEQU)

2週間、計4回ではありますが
普段のシナリオ形式とは別の形式のテキストを書かせて頂き
新鮮でした。

魔法少女カナタTS
魔法少女カナタTS
お陰様でダウンロード版は好評発売中
パッケージ版も今週末5月31日(金)に発売です。

スタッフ様のお力もあり、
単品でも十分楽しんで頂ける出来となっていますが、
私が過去にリリス様で関わらせて頂いた
「魔法少女イスカ」

「魔法少女スバル」
をプレイして頂けると、
チョピッっとですがお得感もアリ? です。

それではまた、
別の戦うヒロインでお会いできることを祈って。


lilith_soft at 19:19|PermalinkComments(0)

2013年05月23日

魔法少女カナタTS ep.0

皆様こんにちは、奈津葵です。
さて、今回もお送りいたします、
魔法少女カナタTS・ショートストーリー

今回第3回目は誰の話でしょうか。
楽しみですね~。

では第-2話です。どうぞ~。

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第-2話
「親友~賀茂 健一~」


◆◆

アレは、何時の事だったんだろう……?

けど何時か、を忘れても、決して忘れられない事が、ある。

「遠野、もう一度聞くが、気持ちは変わらないのか?」

コンクリで囲まれた一室。

ぶら下がったサッカーのユニフォーム。

サッカー部の顧問と、他のメンバーの視線。

「はい、オレ、サッカー部辞めます」

その中心で、もう一度頷いたオレの手の中には
「退部届」が握られていた。

「考え直せよ、今年は、お前と賀茂のお陰で
県大会突破出来そうなんだし、なぁ?」

「そうだぞ、逃げるのか? なぁ?」

オレに集中する引き留める声。

その声の本質は、オレの残留云々なんかじゃ無く、
自分達の進路にも関わる試合に向いているのは分かっている。

ついでに言うと、ソレ自体悪い事じゃない。

人間、一度限りの人生、できる限り自分のやりたいことをやって、
望む結果を導き出したいに決まっている。

「悪ぃみんな、いくら引き留めてくれても、オレ、もう決めたんだ」

だからこそ、オレは頭を下げる。

オレ自身がしたいこと、しなきゃいけないこと、
いや、オレにしか出来ないことをするために。

「ふざけんなっ!」

途端に上がる怒号。

「お前のワガママで、今年の県大会をダメにする気かよ?!」

「最低だぞ、遠野っ!」

最初に口火を切ったチームメイトに続いて、オレに集中する非難の声。

チラリと見た顧問の教師ですら、その瞳には怒気しかなかった。

「お前一人のせいで、ダメになるのかよっ!」

「すまない」

自分がどれだけワガママを言っているのかは、理解している。

「けど、決めたんだ」

だからこそ、オレは頭を下げ続ける。

「謝ってばかりじゃ、ワケわかんねぇだろうがっ!」

そしてもう一度、殴りかかってきそうな声を
チームメイトが上げた瞬間、だった。

「お前等、いい加減にしろ!」

いきなり、サッカー部の部室のドアが開き、
その声が飛び込んでくる。

「ぶ、部長?」

「まったく……。誰もグランドに出てこないから、変だと思ったら……」

明らかな動揺が走ったチームメイトと顧問を見据えながら
入って来たのは、サッカー部の部長である健一だ。

「先生も先生ですよ。なんですか、コレ?」

「ぐっ」

健一の真っ直ぐな視線に射貫かれ、顧問は息を詰まらせる。

「健一」

「それ、俺に寄越せ」

寄越せ、と言いつつ、健一は俺の手から「退部届」を抜き取る。

「部を辞めるときは、部の顧問か、部長、
そのどちらかがあれば、認可される、だろ?」

「け、けどよ」

「なんで、俺の方に来ないんだよ? アホか、お前」

「それは……」

それは、なんだか卑怯だと思う。

県大会が始まる大切な時期。

そんな時期に、健一とツートップを張っているオレが、
個人的な理由で退部するのが、
どれだけワガママなのかは、分かっている。

だからこそオレは、部長である健一ではなく、
顧問とチームメイト全員の許可を得ようとしたんだ。

「ほら、もう行けって、ココはサッカー部の部室、
部外者は立ち入り禁止だぞ?」

「賀茂、お前っ!」

「先生、話なら俺が聞きますよ。
一応、お前等もな、仮にも元チームメイトを囲んで、
なんの話をしていたのかを、な?」

「ぐっ、この」

“元”を強調して言った健一に、顧問やクラスメイトは口を噤む。

「け、健一?」

「いいから出てけ、結果は明日教えてやるから、
それにお前、ここより行かなきゃ、
そばに居てやらなきゃいけないヤツ、いるんだろ?」

「あ……」

思い出し、踵を返す。

「サンキュウな……健一」

慚愧の念に背中を引っ張られるノを感じながら、走り出す。

………。

……。

…。

そして……。

「円、退部届、通ったぞ!」

その翌日、ほんの少し顔を腫らしながら、
そう言った健一の笑顔を、オレは生涯忘れないと思う。

◆◆

教室背景

「円?」

「ん?」

放課後。

いつも通りに6限目の授業で寝こけてたオレを呼ぶ声に、
視線を上げる。

「健一か、どうした?」

「“どうした?”じゃないだろ? 授業、もう終わってるぞ?」

肩をすくめて呆れる健一から視線を教室に向けると、
そこには放課後特有のダレた空気が漂っていた。

「あれ? カナタは?」

そして当然、そこにいるハズのカナタを探す。

「なんか、急用が出来たからって言って、慌てて帰ったぞ?」

「急用? アイツが?」

珍しい。

「それで、お前は何の用だ?
モーニングコールは頼んだ憶えはないんだが……」

「それを言うなら、イブニングコールだろ?
いや、違うか……この時間なら何て言えばいいんだ?」

何故だか、そんな事で真剣に悩み始める健一。

けど、それも一瞬。

「まあ、いいや。それよりも今日、部活が休みなんだよ。
よかったら、一緒に帰らないか?」

「構わんが」

瞬時に話題を切り替えた健一に頷きつつ、オレは席を立った。

そのまま、健一の顔をジッ……と見つめる。

「な、なんだよ?」

「いんや、別に」

とある事情でサッカーを辞めたオレに対して、ずっと続けている健一。

あの夏の大会は、健一の見事な指揮により全国大会に出場。

しかし結果的には、全国大会で一回戦で敗退。

自分の力を過信してるワケじゃないけど、
あの時もし、オレがサッカー部に残っていたら……と、たまに思う。

けど、その時、オレの背中を押してくれた健一の事を思い出すと、
決して口になんてしない。

……それでいいと思う。

「だから、何ジロジロみてんだよ?」

「だから、別に」

それでも、その実力を認められた健一は
スポーツ特待生としてオレと同じ神扉学園に進学した。

「へへ……やっぱ、オレ、お前の事、好きだぞ?」

「なっ!?」

「もちろん、ダチとしてだが……身体を要求されても、困る」

「当たり前だ! アホッ!」

何故だか真っ赤になっている健一に、オレはニッカリ笑う。

賀茂 健一(かも けんいち)。

カナタと出会うずっと以前からの、オレの幼馴染みで親友。

少なくてもオレはそう思っている。

「ほれ、アホな事いってないで、帰るぞ? ゲーセン、寄ってくか?」

「あ、おれ、スーパーの方がいい。そろそろタイムセールの時間だ」

「主婦か……」

お互いの良いところも、悪いところも知っていて
、それでも続く友達関係。

多分、この関係は一生続く物なんだろう。
そう思うし、オレは信じている。


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さて、第-2話いかがでしたでしょうか。
次回更新分が最後のショートストーリーとなります。

次回更新は来週の火曜となります。
皆様おたのしみに~。


lilith_soft at 14:32|PermalinkComments(0)

2013年05月21日

魔法少女カナタTS ep.0

皆様こんにちは、奈津葵です。
前回の木曜に引き続き、
魔法少女カナタTS・ショートストーリー第3話
をお送りします。

今回は「忍」のストーリーですよ~。
それでは、どうぞ。
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第-3話
「ガール ミーツ ボーイ ~八鬼 忍~」

◆◆

魔法環境モデル都市【神扉市(かんどし)】。

世界史で初めて“科学的に”
魔法が確認されたこの都市の沖にある人工島。

「なあ」

その上に建てられた神扉学園で行われた入園式の直後の廊下で、
声を掛けられた。

「もしかして、迷ってんのか?」

「え?」

廊下_忍

多分、“彼”に一番最初にかけられた言葉は、
それだったと思う。

「制服のカラーの色、新入生だろ? オレも新入生なんだ」

言いながら、相手はニカッ!
と笑い、真新しい学年証を見せてくる。

「オレもツレとはぐれてしまってな、なんせこの学園、広いだろ?」

「…………」

馴れ馴れしい。

「何組? よかったら、一緒に行かないか?」

「…………」

鬱陶しい。

「オレは3組なんだけど、お前は?」

ウザい。

「放っておいてくれないかしら?」

気が付いたら、そんな言葉が唇のスキマから漏れていた。

「ん?」

「別に私は、迷ってなんかいないんだから」

気が付くとまた。

いつものように、語気が鋭く尖ってしまう。

「大体なんなの? アナタ、初対面から馴れ馴れしい」

ああ、まただ。

心の片隅でそんな事を考えつつも、止まらない。

「鬱陶しい」

目の前の、多分今日、同じく入園式を迎えた男子が。

いや、自分以外の全てが煩わしい。

「私に構わないで頂戴」

こんな気のよさそうな、その実間抜けな顔をしていても、
結局コイツも同じなんだと。警戒する。

子供の頃から「勘のいい子」に分類されていた自分は、
他人の善意や好意を真っ直ぐに受け止められないでいる。

「(どうせ……)」

例えるなら、普段一切喋らないクラスメイトが、
テストの前だけ、その範囲のノートを見せて欲しいと言うように。

「(どうせ、コイツもそうなんだ)」

経験のない知識で知っている。
実績だけ自分の物にして、
責任を他者に押し付ける汚い大人達のように。

他人は自分を利用する。するだけで、利益を搾取するだけだ。

「(都合のいいときだけ、薄っぺらい笑顔を向けてるだけ……)」

今はたまたま自分と同じ迷子を見つけて、
いい気になって同類項で括って不安を和らげているだけ。

「私の事は放っておいて」

自分の都合のいいときだけ、愛想笑いを浮かべ、
そのクセめいイッパイの虚勢を浮かべる。

それが、彼女にとっての自分以外の全て、だった。

だったのだが……。

「ほら」

「え? わきゃっ!」

いきなり、腕を掴まれる。

「ちょ、ちょっと?」

挙げ句に引っ張られるし、
まるで、迷子になった子供の手を引っ張る様に歩かされる。

「ちょ、ちょっと放して」

腕に食い込む自分以外の体温と、ガッシリとした異性の感触。

「は、放しなさいっ!」

その二つの不慣れな感触に、鼓動が加速する、
顔の毛細血管が一斉に開いてしまう。

「いいから、いいから♪」

全然よくない。

「いや~、正直、心細かったんだわ」

「え?」

けど不意に聞こえたその言葉に、彼女は少し眉を寄せる。

「ここって、結構レベル高いだろ?
ツレ、ああ2人いるんだけど、
一人は頭よくって、もう一人はスポーツ特待生でな」

歩きつつ、同学年の青年は照れ笑いを浮かべる。

「オレってバカだから、ツレに色々勉強教えてもらって
やっと入れたんだけど、初日からコレだよ。カッコわりぃ」

「…………」

照れるように、けど決して恥じる様子もなく。

「急に声をかけて、悪かったな」

「べ、別に」

そしてまたニカッ! と笑った青年に、
彼女は言葉を失ってしまう。

「バカなクセに、無理してレベル高いココ入った直後に、
迷子、ホント心細かったんだ」

アッケラカンに自分をさらけ出し、
その奧には、何も潜んでいないかのような笑み。

ソレに一瞬、見とれてしまう。

「ほら、コレが学園の地図、ココが何処か分かるか?」

「ま、まあ一応……」

「おお、“地図の読める女子”、頼もしい!」

ドカドカ……と他人の了解に遠慮無しに入って来るような、
礼儀知らずな雰囲気。

「そういえば、お前、何組なんだ?」

「さ、三組だけど……?」

「そっか、なら一緒だな」

だけど、不思議と悪い気は、しない。

「(不思議な人……)」

今まで自分の前に立つ人間は、
その全てが自分を警戒するか、
奇異な視線を向けていた。

知らず識らずの間に自分が他人との間に作っていた壁を、
アッサリと突破されるような雰囲気。

「あ、そうだ。名前」

不意に、思い出した様に、青年は彼女の腕を放して振り返る。

「オレ、遠野 円(とおの まどか)。よろしくな」

そしてまた、ニッカリ笑う。

「遠野……くん?」

「おうっ!」

どこか眩しい物を見るような彼女の視線に、
青年は笑顔で頷く。

「わ、私は……忍、八鬼忍(やがみ しのぶ)よ」

「やが……み?」

「やっつの鬼って書いて八鬼、へ、変な名前でしょ?」

気が付いたら、早口になってしまう。

腕は解放されたのに、どこか名残惜しくて、
もう一方の手で掴まれていた腕をさすってしまう。

挙げ句胸の高鳴りは、止まらない。

「八鬼、ね。憶えた。かっこいい名前だな」

「そ、そう?」

普段なら、読みにくい名前なんか褒められても嬉しく無いのに、
彼に言われると、不思議と嬉しくなる。

「とりあえず、コレから3年間、よろしくな!」

「え、ええ……」

戸惑い、それでも頷きつつ、直感的に実感する。

自分は、この青年に、
その眩しい笑みに惹かれている、と。

理由は、分からないが、そう思う。

「それじゃあ、案内頼むぞ、八鬼」

「もう、調子がいいわね」

「ああ、ソレだけがオレの売りだからな。
あ、あと料理も得意の部類かな?」

初対面の人間相手にも無遠慮。

それが何だか心地よくて、ムズがゆい。

だけど彼の眩しい笑みをもっと見ていたい。

「えと……遠野くん?」

「ん?」

「よ、よろしくね?」

「おうっ!」

その眩しい笑みが心地いい。

そして、その眩しさが自分の足元から延びる
影の濃度を増す理由になるとは、
今の忍は気付いていない。

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次回第3回は明後日の木曜日掲載です。
お楽しみに~。


lilith_soft at 10:00|PermalinkComments(0)

2013年05月16日

魔法少女カナタ ep.0

皆様こんにちは、奈津葵です。
本日は巫浄スウさんに代わり私がお送りします。

さて、
本日何故私が出現したかと言いますと……
皆様もご存知の通り、今月31日に発売となります
【魔法少女カナタTS】
魔法少女カナタTS

発売日まで残り2週間
そこで、発売に向けてこのブログ上で
特別企画
を行おうかと思います!!

どのような企画かと言いますと……。
本日から発売日までの火曜・木曜のブログにて
【魔法少女カナタTS】のシナリオを担当致しました
ZEQU氏
書き下ろし

魔法少女カナタTS・ショートストーリー
を4回にわたり掲載いたします!!

発売に先駆け、ヒロイン達が織り成す世界を
一足先にお楽しみ頂ければと思います!
購入を迷っている方などは、是非、一度読んでいただき
ご購入の参考にしてみてはいかがでしょうか。

それでは魔法少女カナタTS・ショートストーリー
お楽しみください。

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第-
「(魔法)少女になる一ヶ月前~遠野 円~」


◆◆

教室背景

「あ、あのっ! 神余先輩はご在宅でしょうか!!?」

……。

四限目の授業を終えてスグの教室に、その声が響いた。

ここは教室。

当然、誰かの家ではないので、「ご在宅」という表現は、
いくらなんでも変だ。

「あっ! わっ! ごめんなさいっ!
か、神余先輩はいられいますかどのなっ!?」

オレの心中ツッコミに応えるように、
教室の出入り口にいる女のコはドモリながら言い直す。

「えと……神余先輩は……?」

首元のカラーの学年を識別するラインからして、
ひとつ下の女のコ。

「……ん」

そして、馴れない上級生の教室を、
自信なさげに見回す下級生の女のコに応える影があった。

サラサラとした銀髪を揺らして立ち上がった小さな女のコは、
そのまま教室の出入り口に向かう。

「な、に?」

「あ、あの? えと、そのあの、その」

ス……ッと見据えた銀髪の少女に、
下級生は心中で色々言葉を選んでいるのだろう。

「こ、これ、私が作ったんです。よかったら食べて下さい!」

それでも何とかしぼり出した声と共に、
下級生の女のコは、可愛らしい紙袋を銀髪の女のコに渡す。

「あり、がと……」

「い、いえっ! 神余先輩に食べて頂けるなら、
私、幸せです」

双方の間に、明らかな温度差を感じる会話。

その直後に、下級生は顔を真っ赤にして踵を返す。

「きゃ~~~っ♪
神余先輩に手づくりお菓子あげちゃった~~っ!」

そのまま、銀髪の女のコに紙袋を渡した下級生は、
黄色い悲鳴を上げつつ走り去っていく。

……正直、色々と突っ込みたい所があるが……。

「青春だな」

詰まるところ青春とは、
ブレまくって迷って自分を探すことなのだ。……多分。

とりあえず、複雑な事情がありそな現状を、
オレこと遠野円(とおの まどか)は、都合のいい言葉で片付ける。

片付けている間に、どうやら菓子入りの紙袋を受け取った
銀髪の女のコはこっちにやってくる。

「円、お菓子、貰っ、た」

どこか途切れ途切れの声をこぼしつつ、
まるで青空を映したような瞳の少女は小首を傾げる。

「相変わらず、下級生に人気あんな、お前」

しかも、同性に。

「けど、メシ前だから、食べるならその後でな」

「ん……」

銀髪と碧眼。

目立つ容姿なのに、どこか希薄な存在感を纏ったオレの幼馴染み。

神余カナタ(かなまり かなた)。

ソレがこの少々風変わりな女のコの名前だ。

「メシ、食うか?」

「ん」

俺の提案を待っていたかのように、カナタは頷きつつ、
自分の机に置いていた弁当袋に手を伸ばす。

「天気、い、い」

けど不意に、その視線が窓の外に向いた。

春を過ぎて、もうそろそろ本格的な梅雨を迎える前の、
つかの間の晴天。

わずかに霞を帯びているが、いい天気だ。

「今日、いい、天気、だね」

切れ切れと言うよりも、一語一句口にしながら、
次の言葉を選んでいるような、不思議な喋り方。

その言葉を聞いていて、思い至る。

「今日は、屋上で食べるか?」

「ん」

カナタの行動の意味を理解したオレは、
椅子から立ち上がる。

そして背後にカナタの気配を感じつつ、
屋上に向かって歩き出した。

◆◆

屋上_カナタ

「うん、いい天気だっ!」

1000年以上昔から海外との貿易で栄える貿易都市、
神扉市(かんどし)。

その沖に前世紀になってから作られた
人工島の上に立つこの神扉学園の屋上は、
最高の昼食スポットだ。

「じゃあ、食おうか?」

「ん」

心地のいい潮風をホホに感じながら、
適当な場所に座る。

そして広げた弁当の量。

オレとカナタの弁当の比率は、1:4.

4:1ではなく、1:4。

普通サイズの弁当箱のオレに対して、
カナタのは重箱3段重ねである。

まあ、別段驚かない。

カナタがちっこいクセに、大食いなのは知っている。

加えて、カナタの弁当を用意してるのはオレなんだ。

そして、いつも通りの昼食の風景が始まる。

「んじゃ……食べるか?」

「ん……」

少なくても、ココまではそうだったんだけど……。

「ふなっ!?」

弁当箱を開けた瞬間、カナタが意味不明な音を上げた。

「ど、どうした?」

「ピーマン……入って、る」

どこか怖じ気ついたような声をこぼすカナタ。

そんなカナタの視線が向いているのは、
開いたばかりの弁当箱の一角。

「チンジャオロースがどうしたんだ?」

牛肉、タケノコ、ピーマンが織りなす中華料理の人気メニュー。

その翡翠色の輝きを見つめながら、カナタは固まっている。

「ピーマン……」

「あ……」

そしてカナタの言葉で、思い出す。

普段から何でも文句なしに食べるから、
ついつい忘れがちな大切な事。

「お前、ピーマン嫌いだったな」

「ん」

ジト目になりつつ頷くカナタが、
ピーマンだけは苦手なのを思い出す。

「けど、お前、子供じゃ無いんだから、
ピーマンくらい食べられるようになれよ」

それでも、カナタのために、心を鬼にするオレ。

「む~~っ……」

「な、なんだよ? 栄養面もちゃんと考えて作ってるんだぞ?」

「む~~~っ」

不満満点という視線をかわしつつ
オレは自分の弁当箱をカナタに向ける。

「ほ、ほら、ちゃんと食べたら、これ食べてもいいぞ?」

言いながら、先程カナタが下級生から貰った
お菓子が入っているらしい紙袋を揺らす。

「円、卑怯。ソレ、アタシ、の」

「そりゃ、そうだけど……」

恨めしそうな。

珍しくそんな感情を表にだしたカナタに、ため息。

「けど、まあ、苦手なのを入れたのは悪かったな、
ソレはオレが食ってやるから」

ちょっとイジワルをしたかな?
と思いつつ、カナタの弁当箱に箸を……。

「い、い」

……のばせなかった。

謝意をこぼしながら、差し出した箸を前にカナタは首を振る。

「ピーマン、食べ、る」

「いや、無理せんでも……」

「大、丈夫」

普段無口な上に、自己主張も少ないカナタにしては珍しい拒絶の言葉。

ヒョイパクヒョイパクとチンジャオロースを口に運んでいくカナタ。

その食べ方を見るに、味わっている様子はない。

「あむっ!」

それでも最後に大きくノドを鳴らして、飲み込む。

「ん……っ!」

その後で、カナタは弁当箱を差し出して来た。

「食べ、た」

チンジャオロースがあった一角を食べきったカナタは、
少し誇らしげにそう言う。

「無理して食べなくてもいいのに」

「ダ、メ。円が、作ってくれたの、だから」

正直言うと、もう少し味わって欲しかったけど。

けどそれでも、苦手なピーマンを食べてくれたカナタに
ホッコリとした気持ちになる。

「はは、ありがとな。ほれ、お菓子も食べるか?」

「んん、今は、いい」

差し出した紙袋に、カナタは首を振る。

「ん? いいのか?」

「今、は円のお弁当だけで、いい」

「…………」

もう一度、首をふりながら、カナタは弁当に箸を伸ばす。

「円、が、作ってくれたの方が、アタシ、好きだか、ら」

「ん?」

そして、不意に聞こえたその言葉。

「円、が、作ったのは、全部おいし、い」

それに続いた言葉に、また温かい気持ちになってしまう。

「はは、ありがとな」

気が付くとオレは、カナタの頭に手を伸ばしていた。

「ん……?」

そのままワシャワシャ……と少し乱暴に撫でる。

「んっ、んんっ……んんっ……んっ♪」

するとカナタはクスぐったそうに小さく呻く。

「痛かったか?」

「大、丈夫……んくぅん♪」

まるでノドを鳴らす猫よろしく、
カナタは気持ち良さそうな声をこぼす。

無口で無表情、つけくわえて無愛想。

クラスメイトにそう思われているカナタだけど、実際はそうじゃない。

「~~~~~っ」

濃度こそ希薄だけど、ちゃんと喜怒哀楽を持っている。

以前のカナタは、もっとイッパイ笑って、
イッパイ泣いていた事を、オレは知っている。

「カナタ?」

「ん?」

「明日は、カナタの好きな物、作ってきてやるからな?」

「んっ!」

ある時を境に、カナタは豹変してしまった。

まるで、全ての感情と主張、
つまりは自分自身の全てに、フタをしてしまったように。

「ごちそう、様」

まるで人形のように、カナタは毎日を過ごしている。

「円?」

「ん?」

「おいし、かった」

「そっか」

それでも、わずかに滲み出すカナタの心を、
もっと見たいから。

「(いや、違うな)」

また何時か、元のカナタの笑顔をみたいから、
オレはオレに出来る事に全力を尽くす。

ダチと女のコには笑っていて欲しい。

ソレがオレの信条だ。


―ж―ж―ж―ж―ж―ж―ж―ж―ж―ж―ж―ж―ж

次回のSS掲載は5月21日となります。
お楽しみに~。


lilith_soft at 16:34|PermalinkComments(0)

2011年09月01日

見えない所で……?

どうも、
季節の変わり目が近づくと、
途端に体調がおかしくなる
ZEQUです。

台風も接近する季節、
朝晩の寒暖差が出てきますので
皆様もお気をつけください。

さて、現在社内は
kageseku_wp
影のセクハラリスト」の開発から
ひと段落置いて、
topimg110812
対魔忍ユキカゼ」の開発に
本格的に入っているところです。


すでにご存知の方も多いと思いますが、
ユキカゼの専用ページの
ABOUTページ内に設定資料が
掲載されています。
今回のユキカゼの初回限定版特典
フルカラー24Pオフィシャルビジュアルブック」の
一項ではありますが、
実はユキカゼに限らず各企画の初頭には
こういったコスチューム案カラー案がユーザーの
皆様に見えない所で
多量に生まれていたりします。
物が物だけに極秘に分類される物の為、
滅多に表には出ない貴重品

その点でユキカゼの初回特典は
お得感は高いと思います。
なお、コチラもご存知の方が多いとは思いますが、
ユキカゼに限らず
初回発行版はショップ様からの
受注数を受けてからの
発行数を決めるので発売日に
品薄になってしまうかもしれません。
発売日に確実に入手したい方は
是非お早めにご予約ください。

それでは~。



lilith_soft at 17:09|Permalink
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