5月上旬に出勤して以来、約1か月ぶりの出勤。
膝の痛みが尋常でなく、歩行困難なため、途中から「病休」に切り替えた。
私が想定している退職日は6月末日で、その結果、その日まで年休を消化したら実は出勤する必要は全くないのだ。
しかし、私が提出した退職届が、今どういうプロセスに入っているのか、今後退職手続にどういう書類を出し、何をすればいいのか・・ということが今一つ掴めずもどかしい思いをしていたのだ。
これは、実際に職場に行って確認するほかない。
それに若干ではあるが、私物の整理も残っている。
最後の最後までと思って職場に残していた愛用のマグカップも回収しないといけない。

もちろん、行きづらい。
1っか月ぶりに姿を見せる中途退職する者に対する、「脱落者」「裏切者」「軟弱者」「ヘタレ」「負けイヌ」「負けネコ」「よくもまあヌケヌケと」・・みたいな冷たい目線が降り注ぐイメージ。
その「恐怖の出勤日」が刻一刻と近づいてくる。

上司のワニのN氏とは、どう対峙し、どういう態度、顔でいなせばいいのか。
まさか、噛みはしないだろうが。(笑)

オフィスに入ると「怖い」・・というより、檻の外から見る、見ようによっては愛らしいとも思えるワニのN氏と目線があった。
このN氏、それに菩薩系の責任者M氏に、(病気休暇で)ご心配ご迷惑をかけたことのお詫びを言う。

この私の悪夢のような最後の職場は、本部中枢に近いエリート集団で構成されている。
この職場に来て感じた最初の印象は「冷たい」「笑いがない」「温もりがない」ということだった。
久しぶりの、そして最後の出勤のこの日、そうした「冷ややかな目線」を恐れていた私にとって、この職場はいつもどうり冷ややかだった。
おかげで、そんなに「視線の痛さ」みたいなものは感じないで済んだ。
前の和気あいあいとした職場だったらどうだったろうか。
私が姿を見せた途端、それまで場を満たしていた歓声、笑い声が、まるで西部劇のワンシーンのように一斉に退いてしまって気まずい思いをしたのではなかろうか。

私が提出した「退職届」も滞りなく処理されているようで、6月末の退職が確定したのを確認できた。
午前中で、退職に伴う諸手付きでとりあえずやっておかなければいけないものも済んだ。
私物の整理も終わった。
昼から帰ることにする。

ワニのN氏に別れを告げる。
職務を「放棄」して去っていく私の「頑張ってください」という言葉に、(当然の事ながら)N氏返答に困っていたようだ。

職場の責任者である菩薩のM氏に最後に挨拶をしようと思ってしばらく待っていたのだが、離席が長引きそうなので、N氏にメッセージを託しそのまま帰ることにした。
エレベーターを持っていると、M氏が駆けつけてきた。
「長い間、本当にご苦労様でした。」
「長い間」・・という言葉に一瞬とまどった。
異動してきてわずか3か月、実質1か月・・本当は「短い間」だったのだ。

それを、そういう私の「我がまま」を一切なかったように、私のそれまでの職歴40年を加えて「長い間」とねぎらってくれたのだ。
何と思いやりのある有り難い言葉であろうか。思い返しても涙が出る。

M氏と、・・それにN氏にも幸有らんことを!。
N氏だって、超真面目過ぎで、私には「人間枠」を超えるように見えたかもしれないが、家庭にあっては良き夫であり、パパなのかもしれない。

こうして私の(おそらく人生)最後の出勤を終えたのであった。
定年退職時の花束も拍手も「別れの挨拶」も何もなかったのだが、M氏の最後の言葉は大きな花束よりよほどありがたかった。

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(職場から持ち帰った愛用のマグカップに焼酎を注ぎ乾杯!)
(続くかも)
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