ポール・グレアム「資金調達サバイバル・ガイド」を翻訳しました。
原題は「A Fundraising Survival Guide」で、原文は http://www.paulgraham.com/fundraising.html です。
翻訳にあたって人力検索とコメント欄でstripafe様、hidetox様、kennejima様、usedhonda様、taiga様のアドバイスを受けています。ありがとうございます。

資金調達サバイバル・ガイド

2008年8月

資金調達はベンチャー起業における2番目に大きい困難だ。最大の困難は、人々が欲しいものを作ることだ。潰れてしまったベンチャーのほとんどは、それをしなかったために潰れた。だが2番目の潰れる原因は、おそらく資金の調達ができなかったからだ。資金調達は過酷だ。

資金調達が非常に過酷な理由の一つは、単に市場が過酷だからだ。学校や大企業で人生の大部分を過ごした人々は、その過酷さにさらされていないかもしれない。通常、教授や上司はあなたに何らかの責任感を感じており、あなたが必死に努力をしたのに失敗したら、ねぎらってくれるだろう。市場はそれほど寛大ではない。顧客は、あなたがどれだけ頑張ったかなど気にかけない。ただ自分の問題が解決されたかどうかだけに関心を示すものだ。

投資家は上司が部下を評価する方法ではなく、顧客が製品を評価する方法でベンチャーを評価する。あなたが必死に努力をしたのに失敗しかけているなら、おそらく投資家はあなたの今のベンチャーではなく、次のベンチャーに投資するだろう。

投資家は少ししかいないので、投資家から資金を調達することは、顧客に製品を売ることより難しい。効率的な市場とは似ても似つかない。あなたに興味を持つ投資家が10人を超すことはありそうもない。それ以上の投資家と話すのは困難だ。だからあなたは、投資家の気まぐれな振る舞いに大きく左右される。

問題その3: 投資家は非常にランダムだ。私たちを含むすべての投資家は、無能なのが普通だ。投資家はしょっちゅう、自分たちが理解していないものに関して決定を迫られ、しばしば間違う。

そして多くが賭だ。投資家のタイプによって、投資額は5000ドルから5000万ドルまで幅があるが、普通、それらの金額はどんなタイプの投資家も大金と考えている。投資は重大な決断だ。

知らないことについて重大な決断をしなければならないので、投資家は非常に動揺しやすくなる。ベンチャー・キャピタルは起業家を振り回すことで評判が悪い。恥知らずなベンチャー・キャピタルはわざとそうする。だか最も良心的な投資家でさえ、日常生活から見て狂気の沙汰のように振る舞うことがある。ある日には投資家はすごく熱心で、今にも小切手を書きたがっている様子なのに、次の日に電話をかけても折り返しの電話がない。投資家はひやかしているのではない。ただ心を決めかねているのだ。[1]

三流の投資家でない限り、コロコロ意見を変える投資家は、互いに連絡をとりあっている。ベンチャーの投資家は皆、お互いを知っており、自分たちでは認めたがらないが、あるベンチャーに対する意見を決める最大の要因は他の投資家の意見だ。[2] この不安定なシステムに対する処方箋について話そう。通常、市場で見られる怖れと欲望のバランス感とは真逆だ。「お買い得」のベンチャーは、みんなに嫌われるために興味を惹かない。

プレーヤーが非常に少数の効率の悪い市場は、プレーヤーが独立に行動しないためにますます効率が悪くなる。その結果、まるで1つの端をさわっただけで全体が乱暴に伸び縮みする、多数の細胞組織からなる海獣のようなシステムができあがる。

Yコンビネーターは、これを改善しようとしている。起業家の数が増えたのに比例して、投資家の数を増やそうとしているんだ。両方の数が増加することで、効率的な市場のような何かが実現できることを願っている。tを無限大に近づけるほど、デモ・デーはオークションに近づく。

残念ながら、まだtは無限にはほど遠い。ベンチャーは今、私たちがいま住んでいる不完全な世界で何ができるだろうか? 資金集めでいちばん重要なのは落ち込まないことだ。ベンチャーの生死はやる気で決まる。資金調達の困難でやる気がくじけたら、本当にベンチャーがダメになるだろう。

ブート・ストラッピング(=コンサルティング)

将来の起業家は、今ごろ次のように考えているかもしれない。「なぜ投資家の言いなりになる必要がある? 資金調達はすごく苦痛なのに、なぜ資金調達をする必要がある?」

答えの一つは明白だ: 生き続けるのに必要だからだ。一般的に自分のベンチャーの収益を投資に回すというのはすばらしい考えだが、顧客はすぐには生まれない。何を作ろうと、損益トントンになるには一定量を売る必要がある。そこまで販売量を増加させるには時間がかかり、どれくらいの時間がかかるかはやってみないとわからない。

たとえば私たちはViawebをブートストラップさせることはできなかった。私たちは1ユーザあたり毎月約140ドルという、かなりの課金をしたにもかかわらず、収益によって私たちの雑費をまかなうのに少なくとも1年かかった。 私たちには1年間、会社を生きながらえさせるだけの蓄えはなかった。

「ブートストラップした」企業を詳しく調べたら、実際には起業家が貯金か定職によって資金をまかなったのでない限り、(a)めったにない幸運にめぐまれた、もしくは(b)コンサルティング会社からスタートして、徐々に製品を作る起業に変えていった、のどちらかだ。

コンサルティングは頼りにできる唯一のオプションだ。しかしコンサルティングは自由に使える資金とはほど遠い。たぶん投資家から資金を調達するほど苦痛ではないが、痛みはより長期間にわたる。おそらく何年にもなる。そして多くのベンチャーでは、その遅れは致命的になりうる。他に誰も思いつかない珍しいアイデアを思いついて仕事しているのならマイペースでもいい。ジョシュア・シャックターはウォール街で働きつつ、少しずつDelicious作っていった。みんな、それがいいアイデアだと見抜けなかったため、うまくいった。だがViawebとほぼ同時代、明らかにオンラインストアのソフトウェアと同レベルに必要とされるものを作っていて、時間の大部分を下請けの仕事に費やしていたら、不利な立場に立たされていただろう。

一般的にブートストラップ法はすばらしく思えるが、この明らかに未熟な領域ではわずかなベンチャーしか生き残れない。ブートストラップしたベンチャーは有名になるという事実こそ警戒すべきだ。ブートストラップ法がそれほどうまく行くのなら、あたりまえの手法になっているはずじゃないか。

起業が安上がりになってきたから、ブートストラップ法ももっと簡単になるかもしれない。だがベンチャーの大部分が、資金調達なしで済むようになるとまでは思わない。技術はものを劇的に安くすることがあるが、生活費が劇的に安くなることはない。

結論を言うと、資金調達という短くて激しい苦痛か、コンサルティングという慢性的な苦痛のどちらかの選択になる。苦痛の総量を考えると、資金調達のほうがマシだ。ふつう新技術は、未来より現在のほうがより価値があるからだ。

多くのベンチャーにとって資金調達の方がマシなのだが、それでも弊害はかなり大きい。簡単にあなたの息の根を止めることができるほどだ。資金を調達できなければ、会社を畳まなければならないだろう。だが、はっきり自覚できないかもしれないが、資金の調達のプロセスそのものであなたがすり切れてしまうことがある。

それを乗り切るためには、投資家を説得するテクニックとはほとんど関係のない一連のテクニックを使う必要がある。登山家が山の上り下りとはほとんど関係のないサバイバルのテクニックを学ぶ必要があるのと同じだ。

1. あんまり期待するな

資金の調達が多くのベンチャーの士気を失わせる理由は、単に困難だからというだけではなく、期待するよりはるかに困難だからだ。ベンチャーは失望によって死ぬ。だから期待が低ければ低いほど、より失望しにくくなるだろう。

ベンチャー起業家は、楽天的であることが多い。これは少なくとも時々、技術面で良い方に働くことが多いが、資金の調達法としては間違ったアプローチだ。投資家はいつも自分を失望させると考えておく方がいい。買収者も同様。私たちYコンビネーターの第二のスローガンは「取引は失敗に終わる」だ。どんな商談を進めていようと、失敗すると想定して欲しい。この簡単なルールの予測力は驚くべきものだ。

商談が進むにつれて、商談の成立を信じはじめ、成立することを前提にするようになる。これに抵抗しよう。自分を帆に結びつけよう。この期待こそあなたを殺すものだからだ。かけた時間に比例して、計画がだんだん固まってくるという他のほとんどの人間同士のつきあいのようには、商談は進まない。商談は土壇場でしばしば失敗に終わる。相手が最後の最後になって、彼らが欲しいものについて考えることをやめてしまうこともしょっちゅうだ。だから相談中の計画に関して、日常の直観を参考にすることはできない。商談に関しては、意識して直感をオフにして、病的にくらい悲観的になる必要がある。

これは思うより実行が困難だ。有名な投資家が、あなたに資金を提供してがっているように思えると、すごく舞い上がってしまう。資金調達がすぐ簡単にできると信じ込んでしまうのは楽だ。しかし、そうなることはめったにない。


2. 自分のベンチャーに集中し続けろ

資金調達をしている間も自分のベンチャーに集中し続けろというのは当然に思える。しかし現実にそうするのは難しい。多くのベンチャーは集中できなくなる。

資金の調達には、すべての注意力を奪う不思議な力がある。ある日に1回しか投資家との会議がなくても、その日はまるごとその会議で潰れるだろう。実際に会議をする時間だけではなく、往復や準備、会議後にそれについて考える時間もかかる。

投資家に会うことで気が散ってしまうことを防ぐ最高の方法は、おそらく会社を分割することだ。創立者の一人を選んで投資家と商談させ、他の人たちは会社を回し続ける。これはベンチャーの創立者が2人より3人のときに、また社長が開発責任者でないときにうまく行く。運が良ければ、会社のスピードは半分になる程度で済むだろう。

しかしこれは最善のケースだ。しばしば、資金調達の間、会社が止まってしまうこともしばしばある。そしてそれは、たいへん多くの理由で危険だ。資金調達にはいつも予想以上の時間がかかる。2週間の中断だと思っていたものが4ヶ月の中断になる。資金調達では本当に落ち込むことがある。そしてさらに悪いことに、資金調達の行動によって、あなたのベンチャーが投資家にとって魅力がなくなってしまうことがある。投資家は成長している企業に投資したがっているのに、4ヶ月たっても何も新しいものを生み出していない企業は成長しているように思えないので、興味が失せてしまうのだ。

対策は、ベンチャーを最優先にすることだ。投資家との会議の隙間に開発をするのではなく、開発スケジュールの隙間に投資家と会議をしよう。会社を進め続けるなら、つまり新たな機能をリリースし、アクセスを増加させ、取引を増やし、プログラムを書き続けるなら、投資家との会議も、もっと実りあるものになるだろう。自分のベンチャーを活発に見せるというだけではなく、自分自身の士気も上がるし、士気は投資家があなたを判断する主なポイントの一つだからだ。
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3. 保守的であれ

状態が悪くなるほど、最適な戦略はより保守的になる。万事が好調ならリスクを負うことができる。万事が裏目に出るなら、安全策をとりたくなるだろう。

資金調達のときは、いつも失敗すると考えることを薦める。その理由は、人間の甘い夢を見る本性と比較して、対処しているシステムはもともと非常に不安定なので、おそらく万事は想定と同程度か、さもなければあっさり、はるかに悪くなるからだ。

私は投資した大部分のベンチャーに、だれか評判がよい人が適当な条件で資金を提供してくれたら、それを受け取れと言っている。このアドバイスを無視して、うまくやったベンチャー、つまりもっと良いものを得るために良い申し出を蹴って、実際にもっとよい申し出を受けたベンチャーもある。しかし同じような状況にいるベンチャーに対して、私はやっぱり同じアドバイスをするだろう。ロシアン・ルーレットをしているとき、銃に弾丸がいくつ入っているかは誰にもわからない。

だから投資家が興味を持っているようなら、座らせていてはいけない。投資したがっている人の熱意が冷めないと仮定することはできない。本当のところあなたは(投資家自身でさえ)その熱意がお金に変わるまで、投資家が本当に興味を持っているかわからない。だから甘い夢を見ているなら、すぐにそれを捨てるか、もしくは投資家に小切手を書かせること。そしてすでに十分な資金がある時でさえ、甘い夢は資金を減らしてしまう。だから直ちに甘い夢を捨てよう。

ベンチャーは巨額の資金を調達することではなく、すばらしい製品を作ることで成功する。だから資金調達はさっさと済ませて仕事に戻ろう。

4. 柔軟であれ

ベンチャー・キャピタルが起業家にする2つの嫌な質問がある。「他のだれと商談しているか?」と「金額をどれくらいつり上げたいのか?」だ。

ベンチャー・キャピタルは、最初の質問の答えが得られるとは期待していない。念の為に聞いているだけだ。[3] ベンチャー・キャピタルは、2番目の質問には答えてくれると思っているようだ。だが私は、投資家に単に金額を言うべきだとは思わない。駆け引きのためじゃなく、ある金額まで引き上げることが必要となるような、ある決まった額を定めるべきではないからだ。

ベンチャーがある決まった金額の資金を必要とするという考えは、起業にはより資金が必要だった過去の時代遅れの習慣だ。工場を建てたり50人の人を雇う必要がある企業は、確かにある最低限の金額にまで引き上げる必要がある。しかしそのようなハイテクのベンチャーは、今日ではほとんど存在しない。

私たちはベンチャーに「貰える金額によっていくつかの違った道を選べる」と言うようアドバイスしている。5万ドル程度なら企業家の1年間の食費と家賃を賄うことができる。20万ドルなら事務所を持ち、何人かの学校の賢い知り合いを雇うことができるだろう。200万ドルならこういったものは吹っ飛んでしまう。メッセージ(メッセージではなく事実なのだが)は「たとえ何があっても、私たちは成功するつもりです」であるべきだ。より多くの資金があれば、単に成功する時期が早くなる。

起業家がエンジェル・ラウンドにいるなら、ラウンドの規模が直ちに変わるかもしれない。現実には満額を得ることができないとき、大きなラウンドに挑戦して、すでに持っている投資家を失う危険を犯すくらいなら、最初は小さなラウンドにして、必要に応じてだんだん大きなラウンドに進むのがよい。ラウンドがぜんぜん期待した規模ではない場合、あなたは「rolling close」、つまり株式を投資家の望むだけいっぺんに売却したくなるかもしれない。これは最初の投資家の購入準備が済んだ時点であなたは進むことができるから、行き詰まりを打開する助けとなる。 [4]

5. 独立していろ

20代前半の数名の起業家からなるベンチャーは、何か有益なことをするのに必要なコストを最低2000ドルにまで押さえることができる。法人の収益としてはごくわずかな額だが、起業家の士気と交渉条件に与える効果はとてつもなく大きい。YCで私たちは、自分の生活費を賄えるくらいの何かを作っている状況を「ラーメン代稼ぎ」と呼んでいる。一度「ラーメン代稼ぎ」の段階に達したら、すべてが変わる。大成功にはまだ投資が必要かもしれないが、今月でなくても良くなる。

ベンチャーを起業した時に、どれだけ経てば黒字になるのかはわからない。だがもう少しセールスの努力をすればラーメン代稼ぎの領域にたどり着けそうなら、その努力をすべきだ。

投資家は「ラーメン代稼ぎ」の起業家を好む。それは起業家が、単に技術的に面白い問題に取り組むのではなく、お金を稼ごうと考えていることを示すからだ。それはまた、コストを低くしようとする規範を持っていること、そして何よりも投資家を必要としていないことを意味する。

投資家がいちばん好きなのは、投資家がいなくても成功するように見えるベンチャーだ。投資家はベンチャーを支援するのが好きだが、その支援なしには倒産してしまうようなベンチャーは好きではない。

私たちは成功する人を選ぶ方法を学ぼうとしているので、YCで資金を提供したベンチャーがどうなるか予測するのに多くの時間を費やした。現在までに多くのベンチャーの経過を見てきたので、予測が上手くなったと思う。私たちは、成功しそうだと思っているベンチャーについて話しているとき、しょっちゅう「ああ、彼らは手伝わなくても大丈夫だ。うまくやれるだろう」と言っていることに気づいた。「本当に賢い」とか「すばらしいアイデアの持ち主だ」ではないのだ。 [5] 私たちが成功するベンチャーを予測するときに役立つ根拠となる気質は精神力、適応力、決断力だ。どの程度まで正しいかはわからないが、それらは成功に必要な気質だ。

投資家は少なくとも無意識ではそのことを知っている。投資家が投資家を必要としないベンチャーを好むのは、自分の手に入らないものを欲しがるからではなく、そういった気質のベンチャーは成功するからだ。

サム・アルトマン(訳注:LooptのCEO)にはその気質があった。人食い人種でいっぱいの島にパラシュートでサム・アルトマンを投下し、5年後に戻ってきたら、彼は王様になっているだろう。あなたがサム・アルトマンなら、投資家がいてもいなくても成功しますと言って得をする必要もない。(アルトマンはそういう人間ではなかったが、そう振る舞った)しかし万人がサムのような駆け引きの能力があるわけではない。私だってそんな能力はない。だがあなたがそうでなくても、数字が代弁してくれる。

6. 拒絶を個人的なものとして受け止めるな

投資家に拒絶されると、自分を疑いたくなってしまう。結局、投資家は自分より経験が豊富だ。その投資家が自分のベンチャーが不十分だと思っているなら、おそらく正しいのでは?

たぶんその通りなのだが、たぶんその通りではない。拒絶は慎重に扱うべきだ。拒絶を単に無視してはいけない。何かを意味しているのかもしれない。だが必ずしも落ち込むべきではない。

まず拒絶が何を意味するか知るために、それがすごく当たり前であることを理解しよう。統計的に言えば平均的なVCは拒絶マシーンだ。デヴィッド・ホーニック(August Capitalのパートナー)は私に言った。500~800のプランが持ち込まれ審査し、50~100について1時間の面接を行い、20の企業に興味を持ち、5社に真剣に興味を持ち細かい詰めをして、1年以内に契約に至るのは1~2社だと。つまり可能性は少ない。面白いことに取り組むすごい起業家であってさえ資金の提供を受けられる可能性はとんでもなく少ない。個人投資家はそれほどでもないが、ベンチャー・キャピタルはほとんどすべての人を拒絶する。ベンチャー・キャピタルのビジネスの構造として、良いベンチャーが何社やって来ようが、パートナーはそのうちのせいぜい1つか2つにしか投資しないからだ。

可能性の恐るべき少なさに加え、私が述べたように、普通の投資家はベンチャーの判断をさせると最低だ。すばらしいベンチャーのアイデアはふつう馬鹿げて見えるので、他のほとんどのものよりベンチャーの判断は難しい。良いベンチャーのアイデアは、良いだけではなく、斬新でなければならない。そしてアイデアが良くて、しかも斬新なら、ほとんどの人には悪いアイデアに見えなければならない。でなければすでに誰かがやっており、目新しくないはずだからだ。

だから他のほとんどのものよりベンチャーの判断は難しくなる。良いベンチャー投資家になるなら、賢い逆張り投資家になるべきだ。それは大部分が特に想像力があるというわけでもないベンチャー・キャピタルの問題だ。ベンチャー・キャピタルの大部分はもの作りをする人々ではなく、金勘定に長けた人々だからだ。[6] 個人投資家の大部分は自分自身が起業家だったので、目新しい考えを認めるのがより上手い。

だから拒絶されたら、何がダメだったかではなく、何が良かったかのデータとして使って欲しい。投資家が投資しない特定の理由を挙げたなら、ベンチャーを見て、それが正しいかどうか尋ねて欲しい。もしそれが本当に問題なら、修正しよう。でも彼らの言葉を単に鵜呑みにしないで欲しい。その分野の専門はあなたなのだから、あなたが決めるべきだ。

拒絶が必ずしもあなたのベンチャーに関して何かを物語っているわけではないが、姿勢は修正できる。何がダメか理解し、それを変えよう。単に「投資家はバカだ」とは考えないように。しばしば投資家は本当にバカなのだが、どの点がバカなのか正確に識別しよう。

拒絶を積み上げて、憂鬱の種となるごちゃごちゃした山にしないこと。それらを分類し分析すれば「だれも私たちのことが好きじゃないんだ」などと思う代わりに、自分たちには正確にどの程度の問題があり、それに対してするべきことがわかるだろう。

(ポール・グレアム「資金調達サバイバル・ガイド」(下)に続く)