7. (もしそれが適切なら)コンサルティング業にレベルダウンできるようにしておけ

前に述べたようにコンサルティングはベンチャーの資金を得るには危険な方法だ。だが倒産するよりマシだろう。それは無酸素呼吸にちょっと似ている。長期的には最適な方法ではないが、急場はしのげる。投資家からの融資をまったく得られそうにないなら、コンサルティング業に仕事を変えることで切り抜けられるかもしれない。

これはある種のベンチャーには向いている。たとえばGoogleには向いていないだろうが、ウェブサイト作成ソフトを作る企業なら、かなり自然にクライアントのサイト作成コンサルタントにダウングレードできるだろう。

いつまでもコンサルティング業に忙殺されないよう気をつけさえすれば、これにはメリットもある。顧客のためにソフトを使えば、ユーザをよく理解できるだろう。またソフト販売会社では得られないような自社のソフトを使ってくれる著名なユーザを、コンサルティング会社としてなら得ることができるかもしれない。

Viawebでは、私たちは最初のうち、仕方なくコンサルティング会社のように振舞っていた。なぜなら私たちはユーザ獲得に必死で、申し込んでくれたら商用サイトを作ってあげると申し出ていたからだ。だが私たちはその仕事には決して課金しなかった。自分たちをコンサルタントのように思って欲しくなかったし、サイトを変えるたびにいちいち電話されたくもなかったからだ。

8. 新米の投資家を避けよ。

新米の投資家は怖く見えないが、非常に神経質なので、最も危険かもしれない。特に彼らは投資量に比例して神経質になる。新米の個人投資家から2万ドルを得るのは、ベンチャー・キャピタル基金から200万ドルを得るのと同じくらいの仕事量が必要かもしれない。

一般に彼らの弁護士もまた未熟だ。新米の投資家は自分たちが自分たちの仕事に詳しくないと認めることができるが、弁護士はそう認めることができない。あるYCのベンチャーが、個人投資家と小さなラウンドのための交渉をしたが、彼の弁護士から70ページの合意書を受け取ることになった。そして弁護士は、彼のクライアントの前で決して自分のミスを認めなかったので、すべての厳しい文言を削らないと主張することになり、取引は流れた。

もちろん誰かが新米の投資家から融資を受けることになる。でなければ経験豊富な投資家など存在しなくなる。それでも新米の投資家から資金を得ようとするのなら、(a) 書類作りを含め主導権をこちらで握る、または (b) 誰か他の投資家が主導権を握っている大きなラウンドの一部を補充するためだけに彼らを使う、のどちらかにすること。

9. 自分の居場所を知れ

投資家に関して最も危険なのは、彼らの優柔不断さだ。最悪なのは長いノー、つまり何ヶ月もの会議の後でノーと言われることだ。投資家の拒絶は設計ミスに似ている。避けることは出来ないが、早く見つけるほど被害を減らすことが出来る。

だから投資家と話している間は、いつも自分の居場所の兆候を探すこと。投資家は条件書を申し出る可能性は? 最初に納得するためには何が必要だろうか? いつもこれら全ての質問をするべきだとは言わない。それでは面倒すぎるだろう。だがいつもそれらに関するデータを集めるべきだ。

一般的に投資家は、こちらから強く主張しない限り約束をしたがらない。情報量を最大限に集め、意思決定の数を最小にすることが投資家の利益となる。投資家を動かす最高の方法は、もちろんライバルの投資家だ。だが議論の焦点を絞ることも、何らかの助けになる。決心するためにはどんな具体的な質問をしたいか投資家に聞き、それらに答えよう。あなたがいくつかの障害をくぐり抜けたのに、投資家が新しい問題を持ち出し続けるなら、最終的に彼らはいつかは折れると仮定しよう。

投資家の意志に関するデータを集めるときには訓練が必要だ。さもないと投資家の「企業家を導きたい」という願望があなたの「投資家に導びかれたい」という願望と結びつき、印象がまるで不正確になるからだ。

データを利用して戦略に深みを与えること。たぶんあなたは数人の投資家と話すことになるだろう。彼らがいちばん「Yes」と言いそうなものに焦点を絞ろう。投資家の潜在的な価値は、Yesを言うときの金額にYesを言う可能性を掛けたものだ。2番目の要素に最大の努力をすること。その理由の一部は、投資家の最も重要な性質は、単純に投資をすることだからだ。しかしまた前に述べたように、起業家に対する投資家の判断を決める最大の要因は、他の投資家の判断だからだ。あなたが数人の投資家と話を進めており、そしてどうにか1人に「Yes」を言わせることができたなら、他の投資家は急にあなたに興味を持つようになるだろう。だから熱心な投資家に焦点を合わせても、あまり乗り気でない投資家を切り捨てたことにはならない。熱心な投資家を説得することこそ、あまり乗り気でない投資家を説得する最高の方法なのだ。

将来

私はいろんなことがそれほどやっかいにはならないだろうと楽観している。起業がもっと安上がりになり、また投資家の数が増えるのに従って資金の調達は簡単になるか、少なくとも単純になると私は望んでいる。

当面は資金調達プロセスの崩壊が絶好のチャンスとなる。ほとんどの投資家は自分たちに迫っている危機をわかっていない。投資家からの資金調達は、企業の存続を脅かすものと考える必要があると聞くと投資家は驚くだろう。投資家は「決心にもう少し情報を必要としているだけだ」と考えている。彼らは「もう少し情報が欲しい」と言う投資家が他にも10人いて、彼らと話しているせいでベンチャーが何ヶ月も止まってしまうことに思い至らない。

投資家は投資家を相手にするコストをわかっていないため、自分たちに取って代わる潜在的なライバルの余地が大きいことも理解していない。私は自分の経験から、投資家がどれほど早く決断できるかを知っている。私たちはかつて最短では20分(申し込みを読むのに5分、インタビューに10分、質疑応答に5分)で投資したことがあるからだ。もちろんもっと大金を投資するなら、時間をかけてもよい。だが私たちが20分で決断できるのだから、数日以上が必要だろうか?

ベンチャー・キャピタルという保守的な業界であってさえ、このようなチャンスがいつまでも手つかずのままではないだろう。だから今ある投資家が、より意志決定を迅速にし始めるか、または迅速な意志決定をする新たな投資家が現れるだろう。

当面のあいだ起業家は、資金調達を危険なプロセスだと考える必要がある。幸いなことに私はここで最大の危険をなくすことができる。最大の危険は驚きだ。つまりベンチャーが資金調達という困難を過小評価することだ。ベンチャーは初期段階を順調に進むが、資金調達の段階になって、それが驚くほど困難であることを知り、がっかりしてあきらめてしまう。だから私はあらかじめ言っておこう。資金調達は大変だよ。

注釈

[1] 投資家が決断できないとき、彼らは時々それについてまるでベンチャーの特性であるかのように「時期尚早なようですね」と言う。だがタイムマシンでGoogleが創立された時点に戻れたら、起業家がいくらと言おうと投資するだろう。正しいベンチャーなら、起業の1時間後に投資したって早過ぎはしない。「時期尚早です」という言葉の本当の意味は「私たちには、あなたが成功するかどうか、まだわかりません」なのだ。

[2] 投資家は互いに直接的、間接的に影響を及ぼす。投資家はホットなベンチャーの周辺の「うわさ」によって、互いに影響を及ぼすが、起業家を通じることで間接的にも影響を及ぼす。多くの投資家があなたに興味を持つと、投資家にとってあなたの信用ははるかに増し、魅力的になる。

うわさに左右されることを認めるベンチャー・キャピタルはいないだろうが、本当は影響されているのだ

[3] 最初の質問に対する最善の方法は、「名前を挙げることはできません」と言って、他の多くのベンチャー・キャピタルと話しており、条件はすべてあなたの思い通りというフリをすることだ。それをうまくやれるなら、そうして欲しい。そうでないなら、そんなそぶりはしないで欲しい。ベンチャー・キャピタルをあしらってやろうとする小細工ほどベンチャー・キャピタルをイライラさせることはない。

[4] 急いでラウンドを拡大するデメリットは、評価額が初期に固定されてしまうことだ。だから急にみんなの興味を集めたら、何人かの投資家を断り、考えていた以上に会社を売却する必要があるかもしれない。だがこれは幸せな悩みだ。

[5] ベンチャーに賢さが重要でないとは言わない。私たちはあるレベルをクリアしたYCのベンチャー同士で比較しているのだ。

[6] だが全員がそうというわけではない。ほとんどのベンチャー・キャピタルは心理的に背広組だが、最高のベンチャー・キャピタルはそうではない。不思議なことに最高のベンチャー・キャピタルはベンチャー・キャピタルっぽくないのだ。

この原稿を読んでくれたトレバー・ブラックウェル、デヴィッド・ホーニック、ジェシカ・リビングストン、ロバート・モリス、フレッド・ウィルソンに感謝する。