コールセンター little soul cafe     リトル ソウル カフェ 下北沢のSOUL BAR    (ソウル バー)        :100円レコードコーナーに寄ってみよう 143

2019/11/03

Ronnie McNeir Keep On Giving Me Love 1990 Motorcity
Ronnie McNeir / Keep On Giving Me Love
12inch Single


100円レコードの残骸を拾いに行くお仕事へ出向き Ronnie McNeir が1990年にリリースしたシングルを購入。昔は中古盤屋で売れ残って放置されてるのをよく目にしたけど、最近はあまりお目にかかることはありません。どこかで話題になることもなく30年が経過しようとしてますので忘れないように手に取っておくことに。とはいってもリリース元を確認すると Motorcity Records となっており、チープなつくりなんじゃないのかなあとテンションも下がるのでありました。

Motorcity Records については以前も書きましたが、繰り返しておさらいすると。60、70年代にモータウンで活躍するも当時はシーンから遠ざかったアーティストを招集して、彼らを再度表舞台に立たせて新作を作ってあげていた親切なレーベルのイメージ。89年からリリースが始まり、お金がショートして92年頃に倒産するまでに録音した曲の数は770曲と膨大な数にのぼり、参加した過去のモータウンのアーティスの数も相当な組数になります。倒産後はマイアミの Hot Productions が短期間営業を引継ぎ、90年代半ばまで作品はリリースされました。

レーベルを経営していたのは Ian Levine というイギリスの音楽業界では名の知れた男。彼は子供の頃からモータウンのレコード収集に夢中になり、70年代にはDJとしていわゆるイギリスのノーザンソウルのシーンに深く係わり、オールディーズにモダンソウルやディスコの新しい要素を組み入れ進化させた一人。同時にソングライター・プロデューサーとしても活躍、Barbara Pennington、Evelyn Thomas 等の新人発掘や、AVI レーベルのアーティストを手がけました。80年代前半になると、日本では後のユーロビートに発展するハイエナジーと呼ばれる新種のダンスミュージックのジャンルを確立し、たとえば Miquel Brown の So Many Man So Little Time や Evelyn Thomas の High Energy といったワールドワイドなヒット曲は彼が手がけた作品。90年代になってからは Take That のデビューアルバムに制作陣として参加してました。

Ian Levine が当時のポップなダンスミュージックのマーケットに係わるのが嫌になったかどうかは分からないけど、子供の頃から好きだったモータウンサウンドやそこに在籍していたアーティスト達に注目して、昔のソウルの輝きを取り戻そうとなるのは自然な流れなのかな?イギリス人らしいソウルミュージックに対する愛情がいっぱい詰まっているといいたいところだけど、レーベルの運営はディストリビューターの問題など、予想していたよりずっと難しかったようだし、シンセで作ったバックトラックもそれほど評判がいいものではなかった。せっかく往年のソウルアーティストの作品を録音するのなら、生バンドでしっかりしたサウンドのもとでという意見が当時多かったようだけど、Ian Levine 本人も後になってそれを認めている。また当時レーベルのスタッフで、現在は Expansion Records の運営に携わる Ralph Tee も当時の作品に対しては同様の意見のようです。

実際にレコードを買っていると、この Motorcity Records の一連の作品郡というのは、なかなか手が出しにくいのは、上で書いたソウルフルなボーカルは聴きたいけどどうしてもこのレーベル特有のポップなシンセサウンドが耳につくからなんだけど、それは今だからいえることで、90年頃という時代を考えれば、ある程度はこういう方向性になってもしょうがないのかなとも思えなくはない。それに Ian Levine 本人がもしかつてのモータウン流ヒット曲量産工場的な理想像を自分のレーベルに描いていたなら大量のインストトラックを用意しておく必要があっただろうし、それを生バンドでお金と時間をかけてという発想はなかったのかも。もちろん当時のイギリスではアシッドジャズなどに見られる生バンドのムーヴメントみたいなのはあったけど、あくまでも違う路線を狙っていたわけですし。

このレーベルからはシングル、アルバム、コンピなど大量の作品が出ており、ごく一部しか聴いたことがないけど曲単位ではなかなかいい作品もあるにはあるし、第一線から退いて過去の人となった人たちに再度チャンスを与えた点は評価されるべきなのはいうまでもありません。その後のUKのソウルシーンにも影響を与えたはずだし、生楽器の重要性を再認識するのにももしかすると役立ったのかもしれない。
イギリス人とアメリカのソウルミュージックが密接に関わり合いながら進化する過程で一時的に脚光を浴びたレーベルとして、個人的にはなかなか興味深いといえます。

今回の Ronnie McNeir のシングルはR&Bとハウスを交差させた当時よく見られたスタイルだけど、ボーカルもメロディーもいい雰囲気で、 Motorcity の中での隠れ好曲ではないかなと。

Ronnie McNeir / Keep On Giving Me Love

(20:00)