今まで、「自殺の問題(1)-世界的な問題」「自殺の問題(2)- 生きることをあきらめてしまうのはなぜですか」をアップして来ました。今回は、自殺の背後にある根本的要因を取り上げます。
どんな人の場合にも,引き金となる事柄が自殺という反応を引き起こすわけではありません。ストレスとなる状況に面しても,大部分の人は自分の命を絶つようなことをしません。では,ある人たちが,大多数の人たちとは異なり,自殺が引き起こされる根本的要因はなんでしょうか。
根本的要因
「死を決意するかどうかは,多くの場合,物事のとらえ方による」と,ジョンズ・ホプキンズ大学医学校の精神科の教授,ケイ・レッドフィールド・ジャミソンは述べています。そして,「ほとんどの人の精神は,健全であれば,どんなことが生じても,それを自殺の正当な理由とするほど悲観的な見方をすることはない」と付け加えています。つまるところ,ある人々を自殺へと追いやる圧力に対して,思いと心がどう反応するかということです。
米国立精神衛生研究所のイブ・K・モシュチツキーは,根本的なものも含め多くの要素が絡んで,自殺行為に至る,と指摘しています。そうした根本的要因には,精神障害,依存症,遺伝的素質などが含まれます。引き金となる直接的な原因だけでなく,根本的要因にも対処しなければならないのです。これらの幾つかを検討しましょう。
精神障害
これらの要素の中でも真っ先に挙げられるのは,うつ病や双極性気分障害,精神分裂病,アルコール中毒,麻薬中毒などの精神障害や依存症です。欧米での調査によると,自殺の90%以上はそうした障害と関係があります。
事実スウェーデンの研究者たちは,その種の障害は全くないと診断された人たちの自殺率が10万人のうち8.3人であったのに対し,うつ病の人たちの場合は格段に高く,10万人のうち650人であることを発見しました。また専門家たちは,自殺につながる要因はアジア諸国でも同様であると述べています。

うつ病は自殺の根本的要因の一つ
近年の医学の研究によると、脳の化学作用が原因になり、うつ病が引き起こされるケースが多いようです。脳の中では,膨大な数のニューロンが電気化学的に情報の伝達を行なっています。枝分かれして広がった神経線維の末端には,シナプスと呼ばれるわずかなすき間があり,そのすき間では,神経伝達物質が化学的に情報をやり取りします。
最近の研究によると、神経伝達物質の一つセロトニンの量は,当人の,自殺に至る生物学的もろさと関係があります。「脳科学探険」(Inside the Brain) という本は,「セロトニンの分泌が少なくなると,人生の幸福の泉がカラカラに干し上がってしまい,生きる意欲を失い,うつ病や自殺のリスクが増えていく」と説明しています。
とはいえ,うつ病と,引き金になる出来事とが重なったとしても,自殺は避けられないわけではありません。近年薬物治療によって、そうした脳内の化学作用によるうつ病を治療できることが明らかになってきています。非常に多くの人は心痛やストレスに対処しています。
同教授は,絶望感が強まって耐え切れなくなると,自殺の衝動を抑える精神機能が徐々に弱くなることを発見しました。その状況を,絶え間ない圧力によって車のブレーキが磨耗することに例えています。しかし、、自らも自殺を試みたことのあるジャミソン教授は,「事態は改善されるという信念がある限り,人々はうつ病に耐えることができるようだ」と述べています。
そうです。うつ病に対処する必要があります。聖書の神から得られる助けを活用しつつ、病院でうつ病の適切な治療を受けるならば、自殺に至りかねない無力感に首尾よく対処できるでしょう。
アルコール
お酒は、適量をたしなむ程度であれば、ストレスを解消し緊張を解きほ
ぐしてくれる楽しい飲み物です。しかし、国内外の研究では自殺者の約3分の1以上の人が直前にアルコールを摂取していたという報告があり、さらに「アルコール依存症」の人はそうでない人と比べて、自殺リスクが約6倍高いという報告があります。
データによると、自殺率が日本で第一位の秋田では飲酒者率と自殺死亡率がともに全国で最も高いのです。また、各都道府県の飲酒者率と自殺死亡率との間には有意な相関があるとのことです。また、旧ソ連諸国では、アルコールが原因の自殺が多くなっています。そして、1980年代の旧ソ連でウオツカの生産が抑えられ、自殺率が減ったというデータがあります。
どうしてお酒を飲みすぎると、「死にたい気持ち」が高まってしまうのでしょうか。お酒を飲むと、絶望感や孤独感、憂うつ感などの陰鬱な感情が増え、自分に対する攻撃性が高まり、衝動的な行動を起こしやすくなる、視野が狭くなる(もう死ぬしかないと思い込むなど)、といった心理的変化が起こると考えられています。聖書も飲みすぎが人に不安や心配を抱かせ、人の判断力を異常にしてしまうと述べています。(箴言23:29-35)
遺伝的素質
遺伝的素質が多くの自殺の根本的要因ではないか,と考える人もいます。確かに遺伝子は,人の気質の決定に関与します。また,他の家系より自殺者の多い家系があることも,幾つかの研究で明らかになっています。しかし,「自殺の遺伝的素因があるということは,自殺は避けがたい,という意味では決してない」とジャミソンは述べています。
では,さらに積極的な見方を持ち,ある程度の生きる意欲を取り戻すにはどうすればよいでしょうか。次回は、「自殺の問題(4)−助けを求める」を取り上げます。
【参考資料】
「自殺のサインをみのがすな」,農山漁村文化協会発行。
ロナルド・コチュラック著,住友 進訳,日本能率協会マネジメントセンター発行。
以上はウィキペディアなどネットの情報や目ざめよ2001年10/22号を参考に再構成したものです。自殺の問題は(1)〜(7)の予定です。
[関連する記事]
[はてなダイアリーの最近の更新]














































































