一日入院(空腹の記)メロンは美味しいものである

2010年08月12日

旅は道づれ

s-病棟の朝

平成3年頃ボクはこの病院で20日間ぐらい入院生活を体験したことがあった。
だから今回はたった1日だけの入院であったけれど、約20年前の病院生活が思い出されてある種の感傷に浸ってしまった。


当時と明らかに違っている点はいろいろあるけれど、誰もかれも必要以外のあいさつや会話がないことである。今度の病室は6人部屋で、4人だけが入居していたが、向き合いの方ですら、カーテン開放の時でも、顔を見合わせても黙礼一つしなかった。奥の1人は出入時にオレの前を通るのだが無言である。

朝、看護婦(看護士というそうだが此処では看護婦さんとよんでいた)さん、管理人(?)その他いろいろな人の代わる代わるの出入りがあった。それでも用件だけの会話で、誰一人朝のあいさつをする人はいなかった…。掃除の方も2組入って来たが、無言で掃除機をかけ無言で帰っていった。


    
旅は道づれ          菊池国夫
 こんなタイトルの言葉を、現代の若者の何人が理解できるのか分からなくなってしまった。しかし私たちの少年時代には老若男女を問わず、なかば常識的な諺でもあった。
 そんなことを古い書棚を整理しているうちに思い出したのは、次のような詩に久しぶりに邂逅したからである。

    夜汽車            大木 実

 いつの旅であったろう
 となりあわせた女のひとが
 窓にむかって泣いていたのは
 その背なで安らかそうに幼児が眠っていたのは

 また いつの旅であったろう
 むかいあわせた老人が
 手紙をしめして行く先をたづね
 哀しい身のうえを語ったのは

 燈火(ともしび)も暗く すちいむも通わぬ
 田舎の小さな町から町へゆく終列車

 ああ あのひと達
 一時間ほどいっしょに過ごしただけなのに
 おそらく生涯 二どと会わないであろう
 何でもないあのひと達なのに――――  (昭和23年刊「路地の井戸」より)
 (略)

この菊池さんの「旅は道づれ」は、《エッセー通信》と題する13ページ弱の冊子に載っている、冒頭のエッセーである。
菊池さんは県北にお住まいで、障害者の画家の息子を持つ、著名なエッセイストである。ボクはお会いしたことはないが、この冊子がボクの手元においてあるということは、同じく県北の方で、厚誼を頂いている文筆活動さかんな元農協専務理事のMさんから送られてきたものであろう。
ボクもやはり古い書棚から最近見つけ出したもので、1日入院の読書の糧に病院まで持ち込んできたのである。
味気ない1日入院を体験し、改めて「旅は道づれ」に描かれた戦後間もないころの極めて日常的な姿に、ノスタルジアを強く覚え引用させて頂いた次第である。

live05594 at 10:27│Comments(4)TrackBack(0)

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この記事へのコメント

1. Posted by ゆき   2010年08月12日 20:45
谷さん今晩はトラバ有難うございます
一日の入院ではたいしたことがなかったのと安心しています
熱中症がはやっています 今日も短歌の会で話題になりました 目がくらくらして倒れてしまい 病院で点滴をしたとのこと 水分を取らなくてはだめな層です 皆さん寝るときもペットボトルを枕元に置き飲むそうです
自分は元気なのでそんなことに縁がないと思っていたとのことでした
立秋が過ぎたとは言えまだっまだ暑い日が続きます
お体ご自愛くださいませ
2. Posted by 純情おばさん   2010年08月12日 21:21
タニ様お見舞い申し上げます。
前回数回の記事を読んで、心配申し上げておりました。
でも1日だけの入院で済んだのだとしたら、ホッと致します。
結果をみて、もう少し長くなるのであったら、「神様がくださった休暇と思ってゆっくりなさってください!」と言いたいと決めてあります。
大木実さんの「夜汽車」の詩、私は何故か知っております。
今よりはるかに若く、はるかに感受性の強かった純情は、うっすらと涙ぐんで情景を想像したものでありまする。
日本人の人情とやらも地に落ち、人にはかかわらないが得、という通説ができてしまったようですね。
でも吾が姉が入院した数年前の当地の病院は、もう少し、会話がありましたよ。スタッフの方達も積極的に話してくれたような気が致します。
さぁ、自分がもし大部屋に入院したとして、積極的に話題を提供するだろうか、だんまりを決め込むだろうか、今思案中です。
どうぞお大事になさってください。
3. Posted by tani   2010年08月14日 20:35

ゆきさま
メッセージ有り難うございました。検査時間が長かったので、「ひょっとしたらひょっとするのかな」という不安がよぎったことも事実です。
しかし杞憂のようでした。
病院もお盆休みなのでしょう、検査施術結果などの説明は23日です。
そろそろ缶ビールをグエ〜ットやってみっかなどと考えておりまする。
今日は知友の新盆参りに行ってきました。田舎なので、ご馳走が山のように出ましたが線香だけあげて退出しました。
今日は割合涼しかったですね。そんでわ。
4. Posted by tani   2010年08月14日 21:16
5 純情さま
お心のこもったお見舞いの詞有り難いです。
大木実は小生の若かりし頃の、個性的名優でした。
詩も書く〜んだなぁなどと、思っていましたら別人でした。
ネットで検索すると、鴻巣市にお住まいだった詩人なのですね。

菊池国夫さんはイバラッケン大子町の方で、息子さんは先天性小児まひ者でありながら、天才的絵画の制作をなされています。
http://www1.odn.ne.jp/~ccq93630/←ホームページです。
田舎に住んでおりましても、方今は施錠してあるご家計が多く、
いや〜ぁ、あいさつを交わす人は少なくなりましたねぇ。
嗚呼!

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