夜になると、肌寒くなる季節がやってきましたね。夏ももう終わりです。昨年は今の時期でもまだまだ暑かったのにな~。

 本題に入ります。

事例(内田民法Ⅱ<第三版>p139より引用)

 靴下の卸売業者であるX会社はY会社からパンティー・ストッキングを購入し、小売店に転売した。しかし、その商品には消費者が着用後にはじめて判明する欠陥があった。転売先からの通知で欠陥を知ったXは、転売代金の値引きをしたことによって被った損害の賠償をYに請求した。これに対してYは、Xが欠陥を知ってから訴訟を提起するまでに3年以上が経過していることを指摘し、1年以内に権利行使をしていないから瑕疵担保責任の追及はできないと主張した。Xの請求は認められるだろうか。


ここでの論点は

1民法566条3項但書の「損害賠償の請求」は裁判上の請求であることを要するか。
2瑕疵担保責任による損害賠償請求は、民法167条の消滅時効の適用をうけるか。

の2点です。


1について
 この点について、判例は「裁判上の権利行使をするまでの必要はない。」としています。
確かに566条3項は文言上「請求」と記載しているのみで、裁判上の請求まで求めていません。他の724条や167条は「行使」と規定されており、566条はあえて違う表現を使っているとの解釈も可能です。
 しかし、文言上以外の理由はないのでしょうか。通常の時効や除斥期間内が裁判上の請求を求めている理由には、民事訴訟による既判力により権利関係を確定させる必要があるからだと考えます。 とすると、民法566条も民事訴訟による権利関係の確定の要請は働くのではないでしょうか。
 もしくは、566条3項が求めているのは、権利関係の安定ではなく、あくまで将来被告になりうる者にその通知をさせることなのでしょうか。そう理解すると、566条があえて1年という短い除斥期間を定めたのも納得できます。1年以内に訴訟を起こせというのは、現実的に厳しいと感じるからです。
 1の論点については、文言上では納得できましたが、実質的なことを考えた時には判例の考えには賛同できなかったです。


2について
 判例は「瑕疵担保による損害賠償請求権は、売買契約に基づき法律上生ずる金銭支払請求権であって、これが民法167条1項にいう「債権」に当たることは明らかである。」としている。
 この立場については、全くもってその通りだと思いました。もし、消滅時効の適用がないとすれば、566条の1年間の除斥期間内に売主に対して担保責任を問う意思表示をすれば、その後どれだけの期間がたっても訴訟を起こすことができてしまい、時効制度の趣旨を没却する例外を作ってしまいます。