今回は、本日発売されたステレオサウンド(212号)の当店の記事を掲載します。

このページの読者の方から、先日お便りをいただいた。

「はじめは、このページ(LP鑑定法)を読んで全く意味がわかりませんでしたが、何回か繰り返して読みながら、自分のコレクションをチェックして鑑賞しているうちに、同じ録音・ジャケットのレコードでも、プレス時期やプレス国が違うと、コンポ―ネント(例えばカートリッジ)を交換した時と同じように音楽の聴こえ方が変わってきて、感銘度が全く違ってきますね。」

我が意を得たり、とうれしくなった。

 

これからは、もう少しマニアックな「LP鑑定法」について話してみよう。今回は、一番質問の多い、ドイツ・グラモフォン(DGG)レーベルの「赤ステレオ」についてだ。

 

赤ステレオジャケット

クラシックファンなら知らない人はいないDGGレーベルでは、ステレオ録音は1950年代の末期から始まった。しかし、まだその頃は、モノラル全盛の時期であったので、ステレオでカッティングされたLPを、そのままモノラルシステムで再生しないように(当時のモノラルシステムでステレオレコードをかけると音溝がだめになってしまう)、ユーザーの注意を喚起するため、ジャケット上方のDGG独特の黄色い額縁(?)の下方の「STEREO」の表示部分を赤で塗りつぶしたものがある。これをオーディオファイルは、「赤ステレオ」ジャケットと呼んでいる。(図1

図1



このジャケットの仕様は、1960年代のなかごろくらいまで使用され、DGGのレコード番号でいえば、138で始まるレコードのほとんどにこのジャケットが存在する。(例外あり)この頃のDGGには、カラヤンのベートーヴェンやブラームス、ベームとベルリンフィル、そしてフリッチャイやケンプなどの名盤がひしめき合っている。

これらの名盤はベストセラーとなり、それ以降もずっと長い間プレスされることになるが、後年のものは、さきほどのステレオの表示が、赤地に白文字から、黄色の背景に黒文字となる。(図2


図2

 

このプレス時期の違いは、中身のレコードのレーベルの仕様からも区別することができる。

レーベルの外周のチューリップのすぐ内側に著作権に関する注意が金文字で印刷されているが、その初期のものはドイツ語で印刷されているのに対し、後期のものは英語となる。(初期プレスものの文章は、ドイツ語の「すべて」を意味する「ALLE」で始まっているので、ファンたちは「ALLE」盤と呼ぶこともある。(図3

図3


その後の盤は、この部分が「MADE IN GERMANY」となっている。(図4


図4

 

ここで、ちょっと厄介な問題がある。

当時のDGGでは、このジャケットやレーベルの製品の管理が完璧ではなかったらしく、「赤ステレオ」ジャケットのなかのレコード本体が「MADE IN  GERMANY」である盤が時々ではあるが存在する。(その逆もあり)そのため、レコードショップでは、細心の注意を払ってほしい。

なお、当店の商品説明には必ずジャケットとレーベルの画像を表示している。ちなみに、1965年頃以降のDGGのレコード(レコード番号でいえば、139で始まるもの)には「赤ステレオ」ジャケットは存在しないが、中身が「ALLE」のものが、何種類か存在することが確認されている。

 

音質の違い

さて、肝心のサウンドについてであるが、続々と私の手元を通過するLPを試聴したうえでの結果、同じ演奏・録音でもかなり印象が違ってきこえるものが数多くあり、ものによっては、演奏の評価さえ変えてしまうものもある。

具体的には、シャープでタイトな音色の「ALLE」盤。ソフトでマイルドな「MADE IN」盤と言ったらいいだろうか。

好みの問題もあるので、なかなか優劣はつけがたいが、この違いは大きい。カートリッジを交換した時の音の変わりようを想像していただければよいと思う。それくらい、この世界は奥が深い。