LP日記

LP、クラシック音楽やオーディオに関する情報です。

カテゴリ: 板おこし

初期LPレコードのCD化にあたり、まず問題になるのは、どのイコライザーカーブを選ぶか、ということであろう。

実は、この問題は結構複雑である。
というのは、このLPにはこのカーブ、というレコード会社の資料がないので、諸説が数多く出ているのが現状だ。

そこで、今回はこのシューマンの4番の第一楽章を、きよとさんにお願いして、何種類か作ってもらった、そしてそれを試聴し、きよとさんと意見を交換したが、最終的には「NAB」か「FFRR」が最終候補にのこった。

さて、この両者のうちどちらかを使うかという最終決定は、あれこれ悩んだあげく、「FFRR」とした。

そのポイントは、イエス・キリスト教会(JCK)のアコースティック(音響)が一番生に近いか、ということであった。

私は、ここを数回訪れ、オルガン・室内楽・オーケストラの生音を聴いたことがある。

ここの音響のポイントは、明瞭感と厚みのある残響であると思う。

教会としてはちょっと小ぶりな、 JCKの残響時間はさほど長くはない(そのため響きは非常にクリアーに聴こえる)、そしてその響きはかなり重厚に感じられる。

直接音が聞き手に到達してから、比較的早めにやってくる反射音(初期反射音)の量が多いからだ想像される。

これが、録音スタジオとしてのJCKの特徴でなのではないか。

さて、この音響イメージを一番再現してくれるという観点でイコライザーカーブという観点で試聴した結果、FFRRが最終的にのこった。

確かに、これを聴いてみると、いままでの復刻盤とはちょっとテイストの違った再生音となっているが、少なくとも私には、JCKの音響がけっこううまく再現できたと思う。

この点については、いろいろな方のご意見をお聞きしたい。

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「小さな教会」

カラヤン時代のベルリンフィルの第一コンサートマスター レオン・シュピーラー氏と何度かお会いしたことがある。

その際に、いろいろと貴重なお話を伺ったのであるが、レコーディングに関する話のとき、彼はよく

「あの小さな教会では・・・

と言っていた。

その小さな教会とは、もちろん、イエス・キリスト教会のことである。

私も初めてここを訪ねたときに思ったのであるが、実はここはヨーロッパの教会建築としてはかなり小さな方である。

室内にフル編成のオーケストラが入ると、スペースの余裕がほとんどなくなってくる、ましてや、ヴェルディの「レクイエイム」のような合唱を伴うような曲を録音する時には、その配置に苦労したことがあると、シュピーラー氏は語っていた。

その音響であるが、教会としては小規模なので、残響時間はさほど長くはない、測定データは手元にないのではっきりとしたことは言えないが、聴感上は通常のコンサートホールとほぼ同じ(2秒前後)と感じる。

そのあたりも、レコーディングスタジオとして非常に使いやすい要素となったのであろう。

DGGの録音チームは、戦後すぐに、このダーレム地区にある教会に目をつけ、録音を始めた。
晩年のフルトヴェングラーの記念すべきベルリンフィルとの録音、そして、若くしてこの世を去った、フリッチャイの数多くの録音、そして、1950年代末からのカラヤンの数えきれない名盤の数々である。

シュピーラー氏は、彼がコンサートマスターとしてこの教会で弾いたベストレコーディングとして、カラヤン指揮のワーグナーの「神々の黄昏」をあげてくれた。

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今回、復刻したCDの一つである「シューマン/交響曲第4番」が録音された、ベルリン・イエス・キリスト教会についてちょっと説明を。

1950年代から70年代まで、DGGのベルリンフィルの録音の本拠地であったベルリン・イエス・キリスト教会は、ベルリンの中心街から、地下鉄で約15分ほどのところにある、「ティールプラッツ」駅から徒歩で約5分ほどのところにある閑静な住宅地に立つ小さな教会である。

DGGのスタッフは、よほどここの教会が気に入ったのか、ベルリンフィルの本拠地、フィルハーモニーホールが完成してからも10年以上経ってもここを録音会場として使用した。

そして今でも、録音会場やオーケストラの練習場としても活発に使用されている。

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さて、手元にある今回の素材(「田園」:VALP525または1041は計3枚、シューマン/交響曲第4番:16063LPは計2枚)を聴きながら、ベストのコンディションのものを選ぼうとしたが、これが、実に難行であった。

どれもほとんど同時期のプレスであるが、音質がみんな違っている。そして、コンディションンもさまざまなのである。
また、再生する装置によっても、出てくる音や、ノイズの出方はさまざまであった。

昔、友人から聞いた話、
「LPは同じロットでも、厳密にいうとそれぞれが、違う音質なのである!」
を思い出した。

そこで今回は、再生をお願いした喜代門氏にお願いして、各LPのさわりを実際作業に使うシステム(エラックのプレーヤー)でデジタル化してもらい、それを試聴して、ベストな盤を選んだ。

「田園」の両面の冒頭には、残念ながら軽いノイズがある盤を選んだが、音質重視でセレクトするとこれがベストになってしまう。

また、各面を(あるいは各楽章ごとに)聴き比べて、一番コンディションの良い面(あるいは楽章)を選んでデジタル化する案も考えた。しかしそうすると、音色にばらつきでてしまい、ちょっと違和感が生じてしまうので、あくまでもベストな盤を選び、それをまるごと収録することにした。 

これらの復刻CDのお求めは、こちらからどうぞ。

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さて、この3枚からベストコンディションの一枚を選ぶために、まずは、レコードのクリーニングを行った。

私の手元には、キースモンクとハンル社の二種のクリーンニングマシンがある。私にとっては、この二台は「オーディオアクセサリー」ではない。
立派な「コンポーネント」の一つと考えている。

この2台のマシンの威力は絶大で、単なる「クリーニング」の為ではなく、音質の向上にためにはなくてはならないものなのだ。

新品のレコードでも、クリーンングの前後では音質がかなりちがっくてくる。

クリーニングした後では、音質がよりクリアにそして、立ち上がりがはっきりとしてくるのである。

今回は、かなり古いレコードだったので、「クリーンニングして試聴」とうパターンを、最低でも3回繰り返した。

試聴して、「針を通す」という作業も、立派なクリーニングの一行程である。

クリーンニングでとれきれずに、レコード表面に浮いた埃なども、針を通すことによってとれることがあるからだ!

洗浄後の洗浄液の写真を見ると、無色透明だった洗浄液が濁っている。

レコードはかなり汚れている。

この作業だけでも3枚となると、半日かかった。

(写真は、ハンルのマシン) 
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これから、今回のフルトヴェングラーの初期LPのCD化(板おこし)について、作業をすすめながら、感じたことや、苦労話をあれこれと書いてみたい。

CDでもいえることかもしれないが、同じ音源でも生産国や生産(プレス)時期によって再生音は違ってくる。
とくにLPではそれが顕著である。

さらに、フルトヴェングラーのように、録音からすでに60年以上経過したものでは非常に多くのヴァージョンが存在して話はどんどん複雑になってくる。

今回のCD化にあたって、この「田園」は、オーストリアで生産された最初期盤を使用した。

私は、いままでフルトヴェングラーの「田園」はすでに30種類以上の盤を聴いてきたと思う。

音のまとまりの良さでは、イギリス盤がすばらしく、重厚なムードではドイツ盤、きらびやかさではフランス盤が光
っているが、このオーストリア盤もとても素晴らしい。

この盤の良さは、何と言っても「艶っぽさ」である。

ウィーンフィルの美音がこのうえなく、魅力的なのである。

私は、この盤を過去何回かウィーンで入手した。
手元には、同じ盤が3枚あった。 

今回は、そのオーストリア盤を素材とすることにして、3枚を丁寧にクリーニングマシンで洗浄して試聴してみたが、そこには、「第一の壁」がまっていた。008

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