2024年09月08日
大阪市立東洋陶器美術館
青花 牡丹唐草文 盤
元時代14世紀、景徳鎮
９月７日（土）に大阪市立東洋陶器美術館へ行く。ここのコレクションは倒産した安宅産業の会長がそろえた中国・朝鮮の陶磁器が基礎になっている。石油施設に対する投資の失敗が原因で安宅産業は破綻した。しかし彼が収集した陶磁器は、資産を引き継いだ住友グループから大阪市に寄贈され、その後もいろいろな人の寄付を受け現在に至る。１０００点余りの展示品は、安宅栄一会長のお眼鏡にかなった逸品ぞろいであるという。ある個人の美的視点で、集められた美術品というのも興味深い。
近所、8700歩、73.4�圈�21.6%
★
左：ラウンジから大阪中央公会堂がみえる
右：ラウンジメニュー
淀屋橋から歩いて１０分くらいのところに、美術館はある。今回はセクション３から見た。
左：安宅コレクション韓国陶磁セクション
右：粉青掻落 蓮唐草文 扁壺（朝鮮時代１５世紀）
ぬめっとした質感が魅力的な壺。
左：粉青掻落 牡丹文 瓶（朝鮮時代１５世紀）
右：青花 鯉文 扁壺（朝鮮時代１６世紀）
扁壺というのは二枚の皿を合わせて形成し、低めの高台と口をつけたものである。朝鮮宮廷の画家が描いた青い鯉の絵柄は珍しいそうだ。加賀前田家の伝来を収集。安宅栄一氏は丹念にこのような陶磁器を集めていったようだ。
休憩の間に置かれた壺（カササギと猫）
１８世紀の朝鮮王朝の官営工房で作られたこの壺には、猫とカササギが描かれている。この猫は、美術館のマスコットにもなっている。
左：色絵 相撲人形（１７世紀、有田窯、輸出用）
右：三彩壺（奈良時代８世紀、奈良県生駒郡出土）重文
日本陶磁器も少しだけコレクションされている。よく見る柿右衛門皿などは置いていない。この美術館の主眼ではないのだろう。
左：在日韓国人実業家李秉昌の寄贈品コーナー(1999年から）
右：青磁 輪花形托（高麗時代１２世紀）
日本で活動した韓国人実業家の寄贈品も多い。彼は、比較研究のために各時代の中国陶磁器も集めており、別の部屋で展示されている。
左：青磁陰刻 牡丹文 輪花形盤（高麗時代１２世紀）
右：青磁陽刻 蓮弁文 鉢（高麗時代１２世紀）
牡丹文の盤は、青磁の透明なガラス質の奥にくっきり花が浮き出る。蓮弁文の鉢は、仏僧の食器だったようで、４枚重ねて使われた。一番大きなものには飯が、次に汁、菜、最後の一番小さな鉢には浄水が入るそうだ。普通の寺だと金属製か。
左：青磁鉄地象嵌 詩銘 瓶（高麗時代１３世紀）
右：青磁練上 盒（ゴウ）（高麗時代１２世紀）
青磁鉄地象嵌の瓶は酒壺。側面に漢詩が書かれてある、「酒は温めれば毒が消え、茶は冷めれば香りを失う。この酒を飲まずにいられようか，佳人と才子のつかの間の逢瀬に」（酒為無温無毒 茶因冷不香 此酒不可不飲 佳人才子刹逢）。漢詩は、何となくわかってしまうところが面白い。
左：粉青象嵌 蓮花文 角杯（朝鮮時代１５世紀）重要美術品
右：粉青象嵌 鳳凰文 扁壺（朝鮮時代１５世紀）
角杯は遊牧民族の酒器。この時代でこの磁器は祭器として使われたと思われる。
白磁陽刻 葡萄文 水注と花瓶
左：青花 文房具（朝鮮時代１９世紀）
右：青花 山水文 角瓶（朝鮮時代１８世紀）
左：織部（１７世紀、美濃窯）
右：色絵 牡丹椿文 八角壺（１７世紀 有田窯）
桃山時代以降の日本の陶磁器もあった。代表作例として集めたのかもしれない。
左：色絵 菱畳地瓢箪文 大皿（１７世紀、有田窯）
右：色絵 秋草文 徳利（１７世紀、京焼・古清水）
日本の陶磁器だが、色がつくとで、とてもあでやかになる。
左：色絵 椿文 輪花向付 （１８世紀、尾形乾山）
右：織部 耳付小壺（１７世紀、美濃窯・織部）
尾形乾山の向付などまさに現代でも通用するモダンさだ。
ここから別室の中国の陶器に移る。これらは李秉昌が朝鮮陶磁器を研究する際に、対比のために幅広く集めた中国のものだ。
左：紅陶 双耳壺（新石器時代＜斉家文化＞BC23C~BC16C)
右：灰陶 布目文 杯（戦国時代 BC5C~BC3C）
左：灰陶 三足盒（前漢時代、BC2C）
右：青磁透彫 三足香炉（西晋時代、3~4C)
左：青磁 果実形連盒（五代〜北宋時代、10~11C)
右：白磁 杯（隋時代、7C)
左：青磁 輪花碗（五代〜北宋時代、10~11C)
右：黒釉白斑 水注（唐時代、8~9C)
左：三彩印花 花文 稜花長盤（遼時代、11C)
右：緑釉貼花 瓔珞文 瓜形水注（遼時代、10~11C)
左：黒釉掻落 牡丹唐草文 壺
右：東アジアの主要窯跡
左：加彩 宮女俑（唐時代、7C)
右：青磁 天鶏壺（南北朝時代、6C)
天鶏壺 部分
左：緑釉 楼閣（後漢時代、2~3C)
右：部分 射手
古代中国の陶磁器は、ほとんど地中の墓の副葬品として出てくる。それを明器（冥品）という。主人を仕える俑や生前の生活を支える器などである。
左：三彩貼花 宝相華文 壺（唐時代、7~8C)
右：三彩貼花 宝相華文 水注（唐時代、7~8C)
三彩 獅子（唐時代、８Ｃ）
類似品が陝西省の慶山寺跡（７８１年）から出土しているので、８世紀のものと推定される。唐三彩が仏教寺院でも使われたようだ。造形力が秀逸。
左：白釉黒花 風花雪月字 梅瓶（金時代、12C)
右：緑釉黒花 牡丹文 瓶（金時代、12C、磁州窯) 重文
右は重文だが、左の白釉の梅瓶のほうが私の好みである。
左：青白磁 瓜形水注（北宋、11C、景徳鎮）重文
右：木葉天目 茶碗（南宋、12~13C、吉州窯）重文
青白磁とは白磁の胎土に鉄分のある透明な青みを帯びた透明釉をかけたもので、「影青」と呼ばれる。伝統的で優美な形。木葉天目は本物の桑の枯れ葉が焼き付けられている。
左：白磁銹花 牡丹唐草文 瓶（金時代、12C、定窯）重文
右：青磁刻花 牡丹唐草文 瓶（北宋時代、11~12C、耀窯）重文
青磁 鳳凰耳花生（南宋時代、12C、龍泉窯）重文
この作品と次の作品は自然の光で見てほしいと、天窓のある展示室にある。昼の１１時ころの陽の光で見るように作ったというので、ちょうどよい時間であった。
飛青磁 花生（元時代、14C、龍泉窯）国宝
国宝とか、重文と書いてある品物は、よく見えるという心理があるが、しかしこの鉄色が飛んだ青磁の花瓶はなまめかしい。無知蒙昧な私でもよいと思う。
左：景徳鎮官窯（宮廷用の窯の作品群）
右：青花 蓮池魚藻文 壺（元時代、14C、景徳鎮）重文
最後の部屋は宮廷用の景徳鎮窯で作られた作品群だ。さすがに圧倒的な存在感の品々。素人の目から見ても素晴らしく思える。
左：青花 宝相華唐草文 盤（元時代、14C、景徳鎮）
右：釉裏紅 牡丹文 盤（明時代、洪武帝、14C、景徳鎮)
鮮やかな青の発色は、コバルト顔料であり、輸入物の原料だった。その輸入が細ったときに、右のような銅顔料を使用した盤も作られた。
青花 枇杷鳥文 盤（明時代、永楽帝、14C、景徳鎮）重文
これらの大皿は、イスラム諸国へも輸出された。絵柄も、人物を描かず草花模様や鳥類だ。
左：青花 内府銘 梅瓶（明時代、永楽帝、14C、景徳鎮）
右：瑠璃地白花 牡丹文 盤（明時代、宣徳帝、15C、景徳鎮）重文
右は前田藩江戸藩邸跡から、同型の破片が見つかっている。多く輸出されたと思われる。
法花 花鳥文 壺（明時代、15C）重文
左：中之島中央公会堂
右：建設中の北浜ビル群
順路の最後のほうに行くに従い、あでやかな陶磁器にお目にかかれる。ここの逸品１０１点を解説した本を購入したが、序文に、多くの作品があるが、あなたの感性で好きになる作品を見つけてくださいとあった。確かに絵画などではその歴史、背景や作者を知り、それをもとに絵を解釈するという方法に頼り気味であるが、陶磁器についてはそのようなやり方を取ることができない。情報量は極端に限られていて、目の前の似たような陶磁器のみである。曇りのない目で見るしかない。
前回訪問
end
この記事へのコメント
1. Posted by ＪＦＫ 2024年09月09日 14:29
いやいや眼福々々です。
貴写真も良いですが、私も自分自身の目で鑑賞したいものです。
美術品の場合は目を主体に味わうということになりますが、料理の場合は舌と鼻を主体に味わうということになります。
料理の場合は同じ料理でも素材の質の相違などによって味わいが変わりますし、料理人の技量によってもぶれることがあります。高い料金を払ってハズレに当たると残念至極です。
その点、ちゃんとした美術館や博物館ではそのようなことが無いので虚心で鑑賞できるというものですね。
本質でないことを書いてしまいました。メンゴメンゴ。
貴写真も良いですが、私も自分自身の目で鑑賞したいものです。
美術品の場合は目を主体に味わうということになりますが、料理の場合は舌と鼻を主体に味わうということになります。
料理の場合は同じ料理でも素材の質の相違などによって味わいが変わりますし、料理人の技量によってもぶれることがあります。高い料金を払ってハズレに当たると残念至極です。
その点、ちゃんとした美術館や博物館ではそのようなことが無いので虚心で鑑賞できるというものですね。
本質でないことを書いてしまいました。メンゴメンゴ。
2. Posted by kincyan 2024年09月09日 21:38
>JFKさん
さすがに目利きの人達が集めただけのものなのでしょう。よくわかりませんが、なんとなく高貴な感じがする陶磁器たちですね。磁器のツボとなると全くわかりませんが、滑らかな肌を持つ陶器は、美しい。しかし、なんでも鑑定団の出品者のように自分のものににしたいとは思いません。公共のものなのでしょうねえ。まるで女性を愛でるしかなくなった爺さんの趣です。この東洋陶磁器美術館は1600円なのですが価値ありです。
ぜひ、ここを見てから向かい側にある鰻屋に行きたいものです。今度大阪で会ったら行きましょうね。
さすがに目利きの人達が集めただけのものなのでしょう。よくわかりませんが、なんとなく高貴な感じがする陶磁器たちですね。磁器のツボとなると全くわかりませんが、滑らかな肌を持つ陶器は、美しい。しかし、なんでも鑑定団の出品者のように自分のものににしたいとは思いません。公共のものなのでしょうねえ。まるで女性を愛でるしかなくなった爺さんの趣です。この東洋陶磁器美術館は1600円なのですが価値ありです。
ぜひ、ここを見てから向かい側にある鰻屋に行きたいものです。今度大阪で会ったら行きましょうね。
