2010年03月30日

「ボブ・ディラン」なんて、いない。

近年行った往年の大物アーチストのライブでは、
どれも、惜しげもなく名曲を披露するパターンだった。
ローリング・ストーンズ、ポール・マッカートニー、
エルトン・ジョン、イーグルス、
そして、去年のサイモン&ガーファンクルや
キャロル・キング。みんな、そう。

この人も、確かに、「惜しげもなく名曲」を
やってくれているのだけど、まるで違った。
何の曲か、すぐにはわからないほど、
アレンジはもちろんのこと、
メロディーまで違っている。
あらかじめ、情報は得ていた。
「変わってないのは、歌詞だけだ」と。
それにしても!である。
さらに、場所は、
大物アーチストらしからぬライブハウスだ。

つまりね。
こういうことなんだと思う。
「ボブ・ディラン」なんて、存在しないのだ。

時代と共に変わり続けた
「ボブ・ディラン」というものがいて、
ぼくらは、みな、その時々で彼に出会い、
人それぞれに、彼はかつてこうだったとか、
いまはこうあって欲しいとかいう、
ボブ・ディランのイメージを持っている。
でも、それは所詮、音楽産業がもたらしたものだ。
何よりもまず、彼は、パフォーマー
(いま、そこで演奏する人)なのだ。
レコードやCDになった音源を原型として、
ステージでそれを再現してみせる
アーチストではない。
真のパフォーマーなら当然、
いま彼がやりたいスタイルで、演奏する。
ステージでパフォームしているディラン(だけ)が
ボブ・ディランなのであって、
ぼくらが、レコードやCDで出会ってきたディランは、
ボブ・ディラン、その人ではないのだ。

いやー、でもね。圧倒されました。
みんなが知っているディランを
やる方が楽なんじゃないだろうか?
でも、それは、いちばん自分を裏切り、
楽しくないことなのだということを、
彼は知っている。
音楽を聴いた、と言うより、
その生き方に触れた、圧倒された、
という方が正しい。
(28日、Zepp東京にて。)
  

Posted by liverary at 11:08Comments(0)TrackBack(0)

2010年03月29日

小さなこと。

3月中の納品で、大忙しだったポスプロ
(CMの編集やダビングなどするスタジオ)も
ここに来て、さすがに閑散としている様子。
そんななか、広島と尾道で撮影したCMが、
昨日、フィニッシュした。
4月からのオンエアーに、
もう一日の猶予もなかったんじゃないだろうか?

普通なら、東京か、その近郊で撮影した、今回のCM。
それを、あえて広島や尾道で撮影したわけだけれど、
結果的に、とてもいい試みになったと思う。

撮影しながら、何度も
「東京だったら、とてもじゃないが、
こんなところで、こんなこと撮影できていないな」
と思った。
病院や、学校や、電車での撮影はもちろん、
街の中心地で、カメラが移動するためのレールを敷いたり。

でも、編集しながら、
しみじみ「よかったなぁ」と思ったことは、
そんな「大きなこと」じゃなくて、とても「小さなこと」。

学校帰りの男の子が背負っているランドセルに、
ぼくは、お母さんが作った巾着をくっつけたいと思った。
ところが、小道具の人が用意した巾着が、
手違いで撮影現場にない。
さて、どうしよう?
担当の人たちが、バタバタしている時に、
ふと、そこにいたロケーション・コーディネーターF君の
義理のお兄さんに聞いてみたのだった。
「こどもが、学校に持って行く巾着を探しているのですが、
この近所で、心当たりはありませんか?」
F君の義理のお兄さんは、
尾道の近く、三原市に住んでおられて、
今回のロケ場所探しにも、いろいろお骨折りいただいた。
それで、撮影現場にも、見学に来ておられた。

「あ、ちょっと待っててください。」
撮影現場の近くに住む、
小学生のお子さんがいる知り合いを当たってくださり、
あっという間に、かわいいアップリケがついた
愛情たっぷりの巾着が、撮影現場に届いた。

たった、それだけのこと。

今回は、東京でキャスティングした役者さんたちが、
広島と尾道に集結しての撮影。
でも、「ちょっとした脇役」は、
さすがにそういうわけにも行かず、「現地調達」。
工場長さん役で、ホンモノの工場長さんに
出てもらったのだけど、これが、なんともハマリ役だった。
ハマリ役も何も、ホンモノなんだからあたり前だけれど、
気安く出演していただいたからこその結果だ。
こんなことも、東京だったら、あり得なかったと思う。

onomichi

そう、たった、それだけのことだ。
でも、そんな小さな偶然や出会いがあってこそ、
できあがったCMは、キラリ、光るものになる。
ぼくは、そう信じている。

小さなこと。
それがあるからこそ、地方での撮影はいいのだ。
しみじみ、そんなこと思いながら、
この春、羽ばたいて行くCMが、
またひとつ、できあがった。
  
Posted by liverary at 12:22Comments(4)TrackBack(0)

2010年03月25日

仕事、再開。

昨日は余計なことを書いて、
関係者を心配させてしまった。
もうすっかり熱も下がって、今日から、仕事開始!
広島と尾道で撮ってきたフィルムを、
これから鎌倉に移動して、仮編集しなくちゃ。

ところで。
快復に向かっていることを感じながら、
しみじみ、思い出していた。
広島の酒は、うまかったなぁ、と。

京都・伏見、神戸・灘と共に、
広島・西条は、
日本酒の三大名醸地だそうだから、
驚いている方が、無知なだけなのだろう。
軟水のため、甘口になるそうだが、
むしろ、一般に「辛口」と言われて、
妙にサラサラして口当たりのいい酒より、
よほど味わいがある。

記憶に残った銘柄に、
亀齢(きれい)と雨後の月。
辛いとか、甘いとかいう表現を、
そろそろ止めた方がいいと思えるほど、
複雑でしっかりした旨味がある。
もちろん、いやな甘さなど残らない。

広島の酒は、うまい!
驚くほど、たくさんの銘柄もある。
ブームになってもおかしくないくらいだ。

それにしても、ちょっと元気になったら、
もうそんなこと思い出したり、考えたりしている。
馬力がある方でも、無理がきくタイプでもないけれど、
こうして、ときどき、高熱を出すくらいで、
なんとかこれまでやってこれたのも、
そんな性分のおかげかもしれない。
  
Posted by liverary at 10:58Comments(0)TrackBack(0)

2010年03月24日

撮影は、無事に終了・・・

広島と尾道で、2日ずつ。
なんとか、天候に恵まれて、
無事に撮影を終わってみれば、
天気予備だった昨日は、朝から雨。
それに、自分の声を聞いてビックリ。
扁桃腺が腫れ上がって、
他人のような低音になっている。
ずっと食欲がなかったり、
熱っぽかったりしたけれど、
とうとう本格的に風邪を引いたようだ。

それにしても、
天候と言い、自分の体調と言い、
ギリギリセーフだった。

新尾道からこだまに乗り、
福山でのぞみに乗り換えて、
東京に戻るなり、直行したのは病院。
昨夜から、高熱に悩まされながら、
ひたすら寝ている。
明日からの編集作業に備えて、
体調を戻さなければ。
  
Posted by liverary at 08:57Comments(2)TrackBack(0)

2010年03月23日

髪を切りました


バッサリとっ!!

もう何年も長めだったように記憶していますが
このたび思うところあり、
え〜い、それはもうザックリ切りましたとも。
首のスースーするほどのボブにしてもらいました。
後などは30センチ以上きったのではないでしょうか。
美容師さんもウキウキでざくざくハサミを入れてくれました。

短くなってまず新鮮なのはシャンプー 。
スルっと手から髪が終了してしまうんですね〜。
ドライヤーをかけてもそう。
ブラシをいれてもそう。
なんてあっさりしたものなんでしょう!
性格までさっぱりしそうな勢いです。

そして新しい発見は首にお天気を感じること。
暖かい日差し、冷たい風、肌寒い空気…。
半袖になりたての腕にくる感触より
繊細に感じ取れる気がしますね。

思うところというのは
詳しく説明するととても複雑で
長くなるのではしょりますが
短く言えば、
「生きていこう!」
って事です。
短すぎますか?
はしょり過ぎですね。

でもそういうことです。
あれしよう、これしようと希望に溢れる気持ちも
理不尽な出来事に傷つき、落ち込む自分も
何の役にもたてない無力さへのモヤモヤも
全部ひっくるめて
「今日一日を生きていこう」って
思います。
そんな覚悟で頭を軽くしてみたのでした。
(山岸由美)
  
Posted by liverary at 08:49Comments(3)TrackBack(0)

2010年03月21日

ホッとPHOTO:はるのにおいで。

やっぱりあったかくなってくると、
河原に行くのも、ウキウキ気分。
20100321-1
まわりの草たちも、ウキウキと背伸びしてます。

20100321-2
ユキヤナギの白い花も、今が満開。
風にゆられて、光にゆれて。

20100321-3
ダイコンの花も、あちらこちらで、ちらほら咲きはじめています。

20100321-4
川べりにおりてみました。
川の水も、ちょっとずつぬるみはじめています。

20100321-5
夕暮れも、うっすら春色。
ハンナのこころも、うっすら春色。

20100321-6
川の向こうから、春がどんどん近づいてるよ。
だって、春のにおいでわかるんだもん。
  
Posted by liverary at 14:29Comments(0)TrackBack(0)

2010年03月19日

フィルム・コミッションは、ありがたい。

広島に向かう新幹線の中。
今日の午後から撮影をはじめて、
明日からの3日間は、「こってりした」中身で撮影だ。

今回は、広島と尾道のフィルム・コミッションの方に、
ずいぶんお世話になっている。
フィルム・コミッションは、ほとんどの場合、
県庁、市役所などの観光課の一セクションで、
その地方で撮影される映画やCMに、撮影場所の案内や提供、
エキストラの手配など、便宜を図ってくれる組織だ。
いまでこそ、あたり前のように、
ぼくらは「フィルム・コミッション」と言っているけれど、
10年以上も前なら、日本には存在すらしなかった。

ぼくがはじめてその名前を耳にしたのは、
80年代後半のアメリカで。
ロス・アンゼルスやニューヨークのコーディネーターが、
どこかの州のフィルム・コミッションに
あらかじめコンタクトを取ってくれていて、
ぼくら日本の撮影隊が乗り込むと、
たくさんの資料から、撮影に協力的な家や
企画にふさわしいロケ場所を紹介してくれた。
とても合理的で、公平。
映画であろうが、CMであろうが、
合衆国のクルーであろうがなかろうが、
資料もサービスも、オープン。そんな印象だった。

それが、いまじゃ、日本でねぇ。
隔世の感、とはこのことかもしれない。

でも、一口にフィルム・コミッションと言ったって、
人ありきなのだろう。
今回は、広島も尾道も、観光課の仕事としたら、
何のメリットもないと思うけれど、
とても熱心に対応していただいた。ラッキーだった。
いい人(いい担当者)に出会えて、
はじめて、いいフィルム・コミッションだったと言える。
アメリカのように、「合理的でオープン」とは行かない
ところが、かえって、日本的でいいのかもしれない。

でもねぇ。
あくまでも、観光課の一セクションなのだ。
映画のように、どこそこのフィルム・コミッション協力
と出るわけではなく、撮影した場所が、
観光誘致につながるわけでもないCMのことだ。
その協力のあり方にも、限界があると思った方が自然だ。

それなのに、あそこまでやっていただいた。
今回に関しては、そういうことなのだと思う。

フィルム・コミッションはありがたい、
でも、頼りすぎちゃいけない。
あたり前のように、フィルム・コミッションというものが
存在するいま、むしろ、そろそろ、
そういうことを考える時期かもしれない。
  
Posted by liverary at 11:37Comments(0)TrackBack(0)

2010年03月18日

ギター、と言えば、この人。

もう20年以上も前から、
「今回は、アコギで」となると、
必ずと言っていいほど登場するのが、吉川忠英さんだ。

言わずと知れた、アコースティック・ギターの名手。
メイン、サブ、いずれの時も、ギターが重要となれば、
忠英さん!と相場は決まっているのだ。
彼を越す人が、まだ現れないのだろう。すごいことだ。
(忠英さんにやってもらった仕事で、
例えば何があったかな?と考えていたら、
これを思い出した

今回は、「弟思いの姉」という設定のCMで、
忠英さんに、ご登場願った。
会うのは、年に一度か二度だけだが、
「お久しぶりで」と挨拶を交わす。
お互い、20年選手(いや、それ以上?)だものね。

常に、何本かのギターを用意して
スタジオ入りする忠英さん。
ギターを持ち替えながら、
「こんな感じかな?」と探る。
あらかじめ彼が考えてきてくれた、
のどかなメロディーを聴いて、
「もう少し、フォスターみたいに軽快に」
とオーダーしてみると、瞬く間に、
それらしいメロディーを奏でてくれる。
ふと思いついて、「ライ・クーダーみたいに、
切ないのは?」と振ってみたら、
「ちょっと待って」と、調弦して、
あっという間に「パリ・テキサス」風。
さすがに、それでは、悲しすぎる、
と注文をつけてみたら、
いつの間にか、ほどよい哀愁を帯びた
メロディーが鳴りはじめた。
プロデューサーのWさんが、
「これは、ハワイアンですね」と言う。
なるほどね。やさしく、懐かしく、
それでいて、サラッとした風のようだ。

というわけで、
なんとも素敵な音楽ができあがった。
でも、印象に残ったのは、
その音楽よりも、忠英さんとの雑談の方だ。
そう言えば、蓼科の家に行ったとき、
諏訪の方で、忠英さんのライブがあるという
チラシを見たことを思い出した。
それで、「あちらの方には、たびたび?」
と聞いてみたら、「たびたび」も何も、
なんと、いま、年に100何十本かのライブを、
地方の小さなホールばかりでやっているのだそうだ。
それも、信州で、特に精力的に。

「もう、東京のライブハウスが
いやになってしまってね」と、忠英さん。
わかる、わかる。
もしCMで、
「地方の小さなライブハウスのコンサート」
みたいな仕事があったら、ぼくだって、
「精力的に」やってみたいと思うもの。

今度、ぜひ、信州で
忠英さんのライブを聴いてみたいと思っている。
「寄席みたいに楽しい」雰囲気らしいから。

さて。
今日は、明日からの広島行きを前に、
忠英さんに奏でてもらった音楽で、
一本CMを完成させなくちゃ。
  
Posted by liverary at 11:09Comments(1)TrackBack(0)

2010年03月17日

シナハンしながら、ロケハンしている。

桜よ、早く花開け、
と言わんばかりの晴天に恵まれて、
朝から、快調にロケハンをこなし、
次々にロケ場所を決めて、東京に戻ってきた。

いや。
「快調に」も何も、
すでに延べ6日間もロケハンしたし、
撮影は、明日の実景撮りから、スタートだ。
ギリギリセーフもいいところ。
どうして、毎回こうなるのだろう?
めちゃくちゃスケジュールがなかったわけでも、
タレントの都合に合わせたわけでもない。
理由は、たぶん、こうだ。

シナハンしながら、ロケハンしている。

今回もそうだけど、CMには、
おおまかなストーリーや状況設定はあるが、
背景というものが、まったく抜けている。
主人公は、会社勤めのサラリーマン。
でも、どんな会社?
中流家庭。は、いいとして、
奥さんは、どんな趣味?
家族の住む家は、マンション?一戸建て?
家路と言うけれど、
どんなところに住んでるの?

映画だったら、当然のようにある
設定や背景というものがないから、
正解を探すことは難しい。

多くの人が共感できる、
企業イメージに合う、
余計なことが気にならない・・・そんなこと。
あとは、ぼくの好み。

正解も、時にははっきりした手がかりもないまま、
家や、会社や、通勤や通学の道を探しはじめるから、
簡単にロケハンが終わるわけがないのだ。

でも、ロケハンしながら、点と点が結びあうように、
急に、バラバラだった場所がつながり、
くっきりストーリーが浮かんでくる瞬間
というものがある。
ロケハンも終わる頃(終わらなければならない頃)、
ああ、なるほど、主人公は、
こういう会社に勤めていて、
こんなところに暮らし、
奥さんはこうで、こどもはああで、と、
イメージが像を結ぶ。

後付けも、いいところ。
そう、シナハン(シナリオハンティング)どころか、
シナリオを書きながら、
ロケハンしているようなものだ。

それにしても、ギリギリになって
いろんなことを決めて帰ってきた。
それができたのも、「どこにでもある暮らし」を、
いつものように都内近郊ではなく、
あえて、地方都市(広島と尾道)にしたから。
これからのCM撮影を考える上で、
おもしろいテストケースになったと思う。
その「総括」は、また、改めて。
  
Posted by liverary at 10:53Comments(2)TrackBack(0)

2010年03月16日

今日こそ。

昨日から、また広島に来ている。
でも、生憎の雨。
そのせいかどうかはわからないけれど、
なかなかいいロケ場所に出会わない。
あらかじめ見ていた場所、写真で確認していた場所が、
どこも、よく見えてこない。
やっぱり、「天気の悪い日はいいロケハンにならない」
というジンクスは生きているのかな?

日が暮れて、タイムアウトになった後、
大勢のスタッフといっしょに、
制作のD君のお兄さん紹介という、小料理屋へ。
なんでも、広島転勤中に、行きつけの店だったのだとか。
カウンターとテーブルだけの小さな店は、貸し切り状態。
いつもギリギリまで撮影場所が決まらない
ぼくの仕事に慣れているのか、
京のおばんざい風の料理に癒されたのか、
みんな、明るさを保ってくれているのが、救いだ。

一夜明けた今朝は、すっきり晴れ渡っているみたい。
さぁ、今日こそ、いいロケハンにしなければ。
撮影は、もう週末に迫っている。
  
Posted by liverary at 06:56Comments(2)TrackBack(0)