2006年02月

2006年02月27日

いつも日本はアメリカ一辺倒ですが、最近、イギリスの金融関連統制制度がちょっと注目されているようです。英国の証券規制は伝統的に自主規制機関による自主規制に大きく依存してきました。しかし、自主規制機関による規制では十分な効果を上げることができなかったことから、業種ごとの自主規制機関を統合することになりました。そして現在、英国の金融サービスに関する規制はFinancial Services Authority (以下、「英国FSA」といいます)によって統合的になされています。従来は別個の規制主体によりなされていた銀行監督機能と投資サービス規制機能をSecurities and Investments Board (SIB)に統合することを英国の大蔵大臣が決定し、そのSecurities and Investments Board (SIB)が1997年10月に名称をFinancial Services Authorityに変更し現在に至っています。また、Financial Services and Markets Actに従い様々な権限が英国FSAに委譲されました。

以上のような改革がなされましたが、英国FSAは今なお政府から独立した保証有限会社(a company limited by guarantee)という民間団体であり、規制を受ける金融サービス業界からのファイナンスで運営されています。この英国FSAはFinancial Services and Markets Actにより次の4つの目的を推進することとされています。

金融システムの信頼の維持 (market confidence)
金融システムに対する一般の人々の理解の促進 (public awareness)
消費者に対する一定の適切なレベルの保護の確保 (consumer protection)
金融犯罪の抑制 (reduction of financial crime)

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(10:53)

2006年02月26日

Skypeを使ってイギリスにいる親戚にテレビ電話をしてみた。コンピュータに小さなカメラをセッティングして通話してみたが、音質は電話以上で画面で相手が見える上、通話料金はかからない。国際電話が何時間でも無料だ。

最近ジャパン・タイムズでも特集記事を載せていたが、本当に既存の事業をぶち壊すような変化の時代にいるのだ、ということを実感した。Skypeに対して盗聴をすることも難しいそうで、便利である反面、アルカイダなどの犯罪組織に利用される場合の捕捉が難しくなるそうだ。

日本の刑事訴訟手続きにも影響を与えることになる(もう与えているのかもしれないが。)のだろうか。

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(22:34)

2006年02月23日

上場申請を東京証券取引所に行う場合の準備のひとつとして「申請のための有価証券報告書」のドラフト作業があります。この報告書はIの部とIIの部に分かれていてIの部が関東財務局に提出される有価証券届出書と実質的に同じで公衆の縦覧に供されます。IIの部はIの部より、関連会社の記載、役員の記載その他の部分等、全体的により詳細な内容となっています。

米国証券法のルール144AとレギュレーションSを使ってグローバル・オファリングをする場合は(以前、詳しく書きました。)、日本語のIの部とIIの部などを参考にしながら齟齬のないようにオファリング・メモランダムを作ってゆきます。どのような表現方法を使うかなどは、多くの類似サンプルを参考にします。また、LIVEDGARという証券情報提供サイトを使っていると、そこで様々なサンプルを取得することができます。先日は、昨年末に会計年度が終了する多くのアメリカの企業及びその代理人の為にLIVEDGARからダイレクト・Eメールが送られてきて、10K(有価証券報告書)のFinal Checklist for Form 10-K Filingを提供してくれました。10Kの記載項目ごとにリサーチができるようリサーチサイトにリンクが張ってあり、最後の追い込みのためには便利のようです。広告ですし良さそうだったのでその宣伝文句を載せます:

The Form 10-K filing deadline is quickly approaching for companies whose fiscal year ended on December 31, 2005. LIVEDGAR can help you put the finishing touches on your Form 10-K filing, whether you need to research the reporting of material deficiencies or locate specific language for late filings related to financial discrepancies.

For example, LIVEDGAR's 10-K Section Search, with its 26 check boxes for each unique part and item of Form 10-K, pinpoints information on any specific Form 10-K topic. Additionally, the ability to define search criteria such as key words, ticker, exchange, location, SIC and date enables you to conduct granular research on any timely and important disclosure matter.

To save you time in the coming weeks, GSI has added the following search statements to the Topical Research Library. Simply click on any subject of interest to immediately begin your research.

また、上記のようなグローバル・オファリングではなく米国証券法に基づく登録を行った場合は継続開示としてフォーム20Fを出し続けなければなりませんが、サンプルとして野村ホールディングスのウェッブ・サイトでSEC提出書類が見れます。日本語の有価証券報告書と20Fを見比べて読んでみるのもいい勉強になるかもしれません。

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(22:39)
株式会社がいずれかの証券市場に上場する場合、公開会社としての体制を整えるために、かなり前から準備作業をはじめることになります。具体的には会社内にプロジェクトチームを設置して主幹事証券会社を選定する等といった体制の確立、資本政策の策定等、IRなどの内部管理体制の整備、関係会社や特別利害関係人との取引の整理、申請書の作成といった作業を2〜3会計年度前からはじめたりします。その中でも一番初めにするのがプロジェクトチームの設置で、全社で準備作業をするめる為に会社の各部署から担当者が参加するようにしたりします。

日本では、公開準備においては主幹事証券会社が中心的な役割を果たしますが、アメリカでは法律事務所の役割も大きな部分を占めるそうです。ただ日本でも様々な不祥事をきっかけにコーポレート・ガバナンス、コンプライアンス体制の充実などの必要性が非常に高まっていますので、法律事務所が食い込む割合がより広がるかもしれません。また、日本の取引所だけでなく外国の取引所への同時上場や、すでに日本で上場している会社が外国で上場する場合には、外国法事務弁護士事務所の役割も重要となります。

以前準備作業をしたときに、複数の取引所で上場する場合に、準備する会計書類の基準をどうするか議論がありました。多くの場合、日本の会計基準とアメリカなら米国会計基準の2通り準備するのですが、相当自信があるらしく米国会計基準一本で行けないかといった意見が出されました。外国会社が日本に上場する場合には「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」等で、日本より厳しい米国会計基準が認められることはあります。そこで東京証券取引所に電話で聞いてみたのですが、日本の企業が日本の取引所に米国会計基準で上場申請するケースは東証の担当者の記憶ではないらしく、結局米国会計基準一本ということにはなりませんでした。

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(00:18)

2006年02月22日

西武鉄道株やライブドア株に関する個人投資家の被害者を募る弁護士事務所が出てきている。記者会見した弁護士だけでなく、ネットで募集をかけている弁護士事務所があったりする。それに対してネットで弁護士倫理の観点から公開質問状を出している弁護士もいたりして錯綜している。募集をかける弁護士の隠れた意図はなんなのか。

日本にはクラス・アクションや懲罰的損害賠償の制度が基本的にないので、どのようなことがアメリカで行われているかということのイメージがつかめない。そこで面白おかしくそのような制度のイメージをつかむ題材としてJohn GrishamのThe King of Tortsという小説がいいかと思う。内容は小説である以上、ある程度非現実的な部分を含むが作者自身が弁護士なので基本的に悪くない。

なんでもそうだが、面白い題材を読むと頭に残りやすいので、しっかりした内容の小説はイメージをつかむためにはいいと思う。昔勉強した日本史は司馬遼太郎の本を読みまくって自然にいろいろ覚えてしまったし、法律や会計の分野でも様々な小説があるのでお勧めだと思う。


(13:02)

2006年02月20日

親戚の会社で外国人を雇っていたがその外国人である被用者が使用者に対して団体交渉を要求してきた。小さな会社であり、労働問題などはなかったので何事かと思ったが、その被用者の要求を聞いてたまげた。

その被用者は定時に出勤し定時に帰宅していたし、外国人なので普通の日本人より給料も良かった上、有給休暇も1ヶ月以上あった。従って、他に何らかのハラスメントなどがなければ団体交渉の根拠が見当たらなかった。ところがドッコイ、何を言ってきたかというと、小さな会社だったので就業規則を労働基準監督署に提出していなかったことや、ある分野に関して営業の許可を正式に行政機関から取得していないことを根拠に「金銭」を要求してきたのだ。しかも、独立系の労働組合に加入してその書記長とかいうひとを引き連れて金銭の要求をしていた。

確かに、中小企業によく見られるように行政法規のコンプライアンスに不備があったが、その不備を直せという要求ではなく「金銭」を労働組合と一緒になって要求していた。具体的な労働条件が非常にいいこのケースでは被用者側に「損害」が全く発生しておらず、「金銭」を要求する根拠に欠けていた。

日本ではかつてイデオロギー的な政治対立を背景に、使用者と被用者の労働運動が盛んだった時期がある。この時期の労働運動や学生運動に共感する部分は個人的には全くないが、この時期の労働運動には少しは反骨精神や理想というものを抱いていたように思える。そもそも憲法28条が団体交渉権を認めたのは、過去において国家及び使用者がその有利な立場を悪用して不当に労働者を搾取した経験から、福祉国家の理念に基づき労働者の健康で文化的な生存を実質的に保障するという、崇高な理念を具現するためだったと記憶している。強い使用者と弱い労働者という図式を前提に法によって対等な立場にしようとしているのだ。そのような理念を無視し、そんなに強い立場とはいえない中小企業の使用者に対して合理的根拠のないことを理由に金銭を要求するのは、正に「総会屋」と同じだ。

弁護士の人に聞いてみたのだけれど、最近は独立系の労働組合が沢山できており、そういうところがかつては総会屋が担ってきた行為を引き継いでゆすりたかりを繰り返す例が多いそうだ。まともに労働組合活動をしている人もいるのにこんな「総会屋的労働組合」が増えると、まともな人たちが迷惑を受ける。また、英語を喋る白人などの外国人は日本では不必要にチヤホヤされる傾向があるので少し自惚れていて何でも許されると思っているのだろうか。将来、会社法の教科書では「総会屋」にかわって「総会屋的労働組合」が取り上げられるかも知れない。


(20:04)

2006年02月19日

ラグビー学生日本一の早稲田とプロのラグビーチームである東芝府中との試合が今日あり、やはりプロラグビーNo.1の東芝府中には学生はかなわなかった。久しぶりに学生ラグビーが先週社会人プロチームを破ったので話題になっており、土曜日に早稲田の練習場を見たときには多くの観客が練習を見に来ていた。

プロのラグビーチームと学生では学生が勝つはずなさそうだけれども、実際、学生は大学の授業にほぼでることもなく練習をしているので学生チームもプロの範疇にいれてよいといえなくもない。しかし、やはり学生は卒業してゆくのでプロのチームよりは選手層に差がでざるをえない。

私も一昨年前まではラグビーの練習をしていた。ホブゴブリンというパブで見つけた東京クルセーダーズというチームが、オールフランス(フランス人主体)というチームとジョイントで水曜日の午後8時から10時まで駒場東大のグランドを借りて練習をやっていた。ただ残念なことに昨年からグランドが借りられなくなり練習に参加しなくなったので体重が増えてしまった。

東京クルセーダーズはイギリス人が比較的多いチームで、英語の教師もいればイギリスの金融会社やゴールドマンサックス、モルガンスタンレーといった米国(ケイマンかも)の投資銀行で働いているひともいる。大英帝国は没落したけれどもイギリスは金融分野ではまだ結構がんぱっているので、投資銀行等の日本支店に勤めるイギリス人があつまってラグビーをしている。英語を母国語とする人にとっては、自国の会社だけでなく米国、オーストラリア、ニュージーラント、香港等の会社に就職する選択肢がある。日本語を母国語とするとそのような選択肢は広がらない。英語が流暢だと単純になにかと選択肢が広がるのが現実でスタートラインがそもそも違うといえる。日本人からすると釈然としない気持ちにならざるを得ないだろう。

(23:07)

2006年02月17日

以前、不良債権のサービシングをしていたとき、債務者のひとつが民事再生手続きを開始することになったので再生債権の届け出をした。不良債権となった債権は、銀行から売られる前に担保物権を任意売却や競売をして無担保になっていることがよくあるが、その場合、任意売却や競売以後は弁済をストップしてそのまま放置されていることが多い。その債権が不良債権として銀行から放出されるまでには相当の期間がたってしまう。そしてすでに期限の利益を喪失して遅延損害金が発生しているととらえることができるケースでは、ハゲタカ投資家が債権を買ったときには遅延損害金の理論的な額は相当なものになる。

上述の民事再生のケースでも遅延損害金が発生しているケースでしかも相当時間がたっていたので、その分を計算すると遅延損害金だけですでに元本額を越していた。理論的に正当である以上、すべての金額を再生債権として届け出たが、債務者は元本額を念頭に再生計画を立案しようと思っていたらしく、債務者の代理人弁護士から遅延損害金をあきらめてくれるよう頼まれた。遅延損害金があまりにも大きくなっていたので気の毒とは思ったけれども、他の債権者の利息等の放棄の依頼はしていないとのことだった。

一応、その弁護士の依頼をアメリカの投資会社に伝えてはみたけれども、遅延損害金の額が他の債権者より大きいからといって、アメリカの投資会社の利息等だけあきらめてくれというのは説明がつかなかった。案の定、他の債権者も平等に利息等を放棄するならいいが、ひとつの債権者だけあきらめろのいうのは説得力がなく、拒絶された。「遅延損害金が突出しているのだから、まあそこはなんとかお願いしますよ・・・。不良債権の購入価格は安いのだろうから元本だけでも十分に利益が出るでしょ・・・」といった非論理的で情緒的な理由は驚くほど全く通じない。理論的な説得力が勝負だ。

(21:31)

2006年02月15日

親戚の家に未公開株購入の勧誘FAXがきました。発行会社は実在するのですが、勧誘会社がヤフーでも帝国データバンクの企業情報でもヒットしませんでした。勧誘する会社は証券業の登録が必要ですが、そのような会社は帝国データバンクの検索には少なくとも引っかかるはずです。しかも、「株主としてふさわしくない方の登録はお断りしてます」とか書いてありました。黒です。

(23:42)

2006年02月14日

主債務者の死亡と保証債務に関してはいろいろコメントをいただきましてありがとうございます。様々な論点とあわせていろんな考え方のパターンができるかもしれませんが、まず第一歩は主債務者死亡の場合に債務は存続するのか消滅するのか、という点を決めることとなると思います。

主債務者が法人で破産終結した場合の最高裁の判例は、主債務は消滅することを前提にしています。保証債務の附従性の例外については、破産法253条第2項に条文上の根拠が見出されるので保証債務は存続すると言い得るようです。この構成でいくと、自然人である主債務者が死亡した場合は条文上の根拠が見出されず難しそうです。(訂正:コメントのとおり、253条第2項の類推適用です。間違えてすいません。よって、破産以外では条文上の根拠がないということになります。)

とすると、「保証債務を存続させるのが妥当」との価値判断をとる場合、自然人が死亡しても保証債務は存続するということを前提にしたほうがよさそうです。時効の援用の可否の論点とも組み合わせて択一の問題が作れそうですね。平成15年度重要判例解説などが参考になりそうです。


(18:03)

2006年02月13日

前回掲載した、個人である主債務者が死亡し、相続人全員が相続放棄をした場合に保証債務はどうなるかについてコメントをしていただきました。それは相続人全員が放棄した場合は相続財産法人になって主債務は存続するかもしれないのでは(間違ってるかもしれないけど)、とのご指摘でした。確かに、プラス財産がある場合やプラスとマイナス財産がある場合には法人になるはずです。ただ、今回のケースは債務しかない(この点自体が本当かどうかは別として)ことを前提にしています。

相続事件を多数処理している裁判官や弁護士の方ならご存知なのかもしれませんが、私はそういう案件に携わったことがないので正直良く分かりません。ただ、相続財産法人ができるのは、相続財産を処理するためで、事後において相続人が発見されればその人に相続財産が帰属しますし、相続人がいなければ当該相続財産は国庫に帰属させるという、その目的の為に存立すると思います。とすると、債務のみの為に相続財産法人ができるのか、できたとしたら債務は最終的には国庫に帰属するのか、ちょっと変な感じかします。また、死亡した人のためではなく保証人の保証債務を弁済させる目的のために主債務に法人ができるというのも変な気がします。ちゃんと調べたわけではないので良く分かりません。

現実には、プラス財産が本当になかったのかを確認させるために相続財産管理人の選任をクライアントに提案しましたが、コストがかかるので、明確な返事がないままうやむやになってしまいました。一般に、不良債権は担保付の債権を目玉にして、それを売却するときに無担保債権をくっつけてバルクで売却します。そのような無担保債権をポンカス債権といったりしますが、ポンカス債権は債権の額面額よりかなり安い金額で売却するのが一般的です。そのようなポンカス債権の回収にどこまで費用をかけるかは経営判断となります。また、一般に債権の売主である銀行は、不良債権のバルクセールの買主にえげつない回収をしないよう合意させます。

いずれにしましても、これは私が前にいた事務所の昔の案件で今どうこうしようというものではありませんが、一般論として理論的にどうなるのかがはっきりしないので時々思い出すのです。


(13:15)

2006年02月11日

昨年、以下のようなブログを書いてみましたが、いまだに良くわからないので、もう一度掲載してみます。どうおもいますか。

再掲載

アメリカのハゲタカ投資会社の為に不良債権のサービシングをしていたときのことです。ある債務者が死亡しましたが保証人がいました。歯医者さんの親子でお父さんがバブル期にいろいろ投資に手を出しバブル崩壊で不良債権化してしまった事案です。主債務者であるお父さんと保証人であるその子供の両者とも歯医者さんで法人ではなく個人です。ある程度の回収が見込まれたのですが、主債務者であるお父さんが高齢のためなくなりました。そこで、保証人である子供の歯医者さんに弁済を請求できるかです。

考え方としては、主債務者が死亡して全員相続放棄がなされたので、主債務は権利義務の帰属主体がなくなり消滅。よって保証債務も付従性により消滅。よって請求不可。

もうひとつの考え方としては、保証制度そのものの存在意義から主債務者が死亡したような場合のために保証人を設定するのだから主債務者が死亡しても保証債務は別個独立に存続しつづける、というものでしょうか。

前者の方が理論的にすっきりするようにも思えますが、債権者としては後者が当然と考えます。法人の場合の似たようなケースで判例か裁判例があったかと思いますが、どう考えるべきでしょうか。



(23:55)

2006年02月10日

不動産の証券化・流動化の案件は私のいる事務所の大きな収益源のひとつだ。最近は不動産投資会社が相次いで上場して話題になったりしている。そのような投資会社が物件を見つけてきてディールが持ち込まれるタイプもあるが、銀行がお金の貸し出しを長年繰り返しおこなっている顧客の財産状態を見ながら、フィー・ビジネスとしてディールの提案を行う場合もある。

銀行が通常のコーポレート・ローンの貸出しを行う場合、ローンを取得しようとするお客の財務諸表等を提出してもらい面談して顧客の要望をまず聞く。銀行の支店での扱いの場合、支店での分析と意見を示して貸出し承認の依頼を本店などの管轄部署に上げると、リスク管理部門のアナリストが顧客の状況を分析し稟議が通れば通常のコーポレート・ローンの貸し出しが行われる。この過程で貸出金利の設定が行われるが、お客が低金利を要望する場合がある。銀行自身の資金調達コストとの関係でもう少し高い金利を設定する方が妥当な場合でも、アナリスト等によるその企業の分析により、不動産の証券化・流動化等のフィー獲得の可能性があれば貸出金利は低く抑えられることがある。いずれにしても、銀行はそのようなディール提案を行うことにも力を入れている。

以上のような前提を経てディールが法律事務所に持ち込まれると、タイムスケジュールが驚異的にきついことがこの業界では多く、大変な準備作業となる。契約が成立してファイナンスをつける銀行の貸出しが実行されることをクロージングと言うが、クロージング日に必要な契約書等の法律書面は合計で分厚いバインダーで3冊から4冊になることが多い。このクロージングに至るまでの数日間(数週間)、必要書類のチェックリストを作り、それを確認しアップデートしながら全ての書面を揃えることになる。契約書の数がとても多くてわけが分からなくなることがあるし、英文契約書などはサインするページがどこだか分からなくなりそうなことがある。というのは、契約書には別紙として、すでに締結している契約書の写しや契約書のフォームをつけることが通常で、契約書本体のサイン・ページとアッタッチメントのフォームのサイン・ページとを取り違えてしまうことがあるからだ。場合によっては、アッタッチメントの厚さのほうが本体の契約書よりも太くなることがあり紛らわしい。

あまりにも書類の分量が多いので、クロージングの前日にプリ・クロージングを法律事務所などで行うことにして、そのときまでに全ての署名者の署名を揃えておく。そして次の日に、通常、ファイナンスをつける銀行の会議室でクロージングの運びとなる。ただ、このプリ・クロージングが真夜中からスタートすることが常態になっており、そのまま家に帰る暇もなく次の日のクロージングになだれ込むことがある。

このようなディールを担当すると、残業代は驚くほどタンマリと付くが、健康で文化的な最低限度の生活を送ることができなくなるので、私はなるべくかかわらないようにしているが、たまに、やむなく巻き込まれてしまう。


(14:58)

2006年02月08日

最近、投資顧問業の登録申請を行い始めたのは不動産の証券化・流動化を行っていた会社だ。これは、証券取引法が改正され匿名組合契約が有価証券とみなされてしまった為に、ダブルSPCのストラクチャーを使うと、親SPCと子SPCの匿名組合契約のアドバイスが投資顧問業の範疇に取り込まれてしまったからだ。有価証券に関するアドバザリー・ビジネスは、投資顧問業法と証券取引法の二つの法律の縛りがあるので、業務の方法を考える場合に両者に抵触しないよう注意が必要になる。特定のSPCの締結する匿名組合契約すべての取りまとめをしてしまうと証券業の免許が必要になってしまう。

だだ、不動産の証券化・流動化の会社の投資顧問業の登録をやってみて感じたのだが、今までの株式などを対象とする投資顧問業とはかなり毛色の違うもので、証券化・流動化のケースを投資顧問業の範疇に取り込むのはかなり無理があるように思われる。不動産の証券化・流動化での報酬は、投資用不動産物件を買ってきて、当初出資額の数パーセントの報酬を取った上、空室率等を考慮した賃料キャッシュフローに加えて、2年後ぐらいに物件を売った売却益を合計した総額キャッシュフローを基準にIRR(内部収益率)を算定して成功報酬などを決める。今まではダブルSPCストラクチャーでは子SPCに対してアセット・マネージャーとして報酬を得ていたのを、それを分割して親SPCの部分で投資顧問料として報酬を取る体裁になる。しかし、その場合、総体としてのキャシュフローは一定でそれをどういう名目の報酬として取るかだけで、投資顧問業としての報酬を上(親SPC)でとり、アセットマネジメントとしての報酬を下(子SPC)でとるということになるが、投資顧問業がなければアセットマネジメント料等としてもらうだけで、報酬総額は以前と変わらない(報酬を取りすぎれば市場原理で投資家がこないだけ)。

投資顧問業の登録の際には、顧問料を従前のアセットマネジメント料の算定方式をそのまま当てはめようとしたが、関東財務局の担当官も不動産の証券化・流動化の案件に精通しているわけではないので、証券化一般の話や、内部収益率(Internal Rate of Return)の説明(投資→運用→回収という一連の投資行動を通して利回りを見るもの)などをしながら担当官にストラクチャーを理解してもらったうえで登録をすることになった。自分自身の勉強にはなったが、不動産の証券化・流動化の案件について、匿名組合契約がみなし有価証券となったからといって投資顧問業の範疇に取り込むのは相当の違和感を感じざるを得ず、将来、投資顧問業法を改正してこの法律では有価証券の範疇から匿名組合契約をはずす方がいいのではないかと思った。浦和の関東財務局の方とお話したときに私の意見をいってみたが、将来パブリックコメントとして意見を出してくれとかわされた。いずれにしても違和感だらけだった。


(12:36)

2006年02月06日

最近、日本社会の高齢化・成熟化が急速に進む中、膨大な個人金融資産、拡大する年金資産の運用のニーズの多様化から、外資がアセットマネジメント事業に乗り出すケースが増えています。アセットマネジメント事業を始める第一歩は、投資顧問業者の登録を湯島にある関東財務局に行う手続きです。

投資顧問業とは、株式、債券などの有価証券に対する投資判断(有価証券の種類、銘柄、数、価格、売買時期等の判断)について、報酬を得て専門的立場から、投資家に助言を行う業務です。投資顧問業には二つの種類があります。ひとつは投資助言のみを行い、投資判断は投資家自身で行うものでそれを投資助言業務といいます。もうひとつは、 投資判断と投資に必要な権限を投資家より委任されているもので投資一任業務といいます。前者は個人でも財務局に登録することにより業務を行うことができます。後者は法人のみで、よくある例は、アセット・マネジメント会社です。投資一任業務は投資信託に似ていますが、投資信託は投資信託委託業の免許が別に必要になります。投資一任業務を行うためには投資助言業務の登録を先にしておかなければならず、同時申請はできません。登録は、申請書が完成し正式に申請する前にだいたい3回くらい財務局に出向いて担当者に内容を説明し、1回目の面談時に「投資顧問業者質問表」をもらいますので、それに記入しその後それをもとに面談がつづきます。面談後、申請書が完成したら正式申請を行い、約1ヶ月半くらいで登録が完了します。登録ができましたら営業保証金(主たる営業所につき500万円)の供託を行い、それを財務局に届出ると業務が開始できるようになります。

外資が申請を行う場合、取締役に親会社の大物を入れてしまうと、兼職状況の記載が膨大なものになったり、投資一任に進む場合の兼職承認手続きが面倒なことになります。また、外国の公証人に公証してもらった書面を集めたりする必要が出てくるので事務的に面倒なことが多いです。

投資顧問業の登録ができると次に投資一任に進むわけですが、投資顧問業の登録の面談は関東財務局でやるのに、投資一任は金融庁の証券課で面談をやります。しかし正式申請は関東財務局に行うといったように結構ごちゃごちゃしています。


(17:57)

2006年02月04日

皇室典範の改正作業は何かと難しそうだ。伝統を重視すれば改正案には当然反対だし、現代社会の常識に従えば改正案に反対する理由はない。象徴天皇制は憲法が認めた平等の例外だが、憲法上の例外を最小限にして人権規定の原則に沿う形が望ましいとの価値判断をとれば皇室典範を改正するほうがすっきりする。しかし、皇族も生身の人間なので、自分以外の人が勝手にいろいろ決めるのはいい気はしないだろう。ただ、男系の伝統が残っていることが尊いというのは釈然としない。誰だって人間として現在存在している以上、天皇だろうが一般市民だろうが男系の経路は誰にだって生物学上たどってゆけるのであり、ただ単に家計図が残っているかいないだけの違いだからだ。

一番いいと思うのは皇族の伝統をそのままにする代わりに憲法上の位置づけからはずして人間国宝のようなものとして残してゆくという選択のような気がする。そうすれば男尊女卑を存続しようと彼らの勝手といえなくもない。ただそうすると憲法改正が必要で旧世代がまだ生きている今は無理があるかもしれない。また、特定の血統の一族にだけ適用される特別人間国宝法のようなものをつくれるかは、法律の一般性等の論点を議論しなければならない。なかなか難しくて面白い。

(23:48)

2006年02月03日

司法試験の合格者が増大すると就職が厳しくなるといわれている。アメリカの大手弁護士事務所は弁護士の数が合計で1,500人から2,000人いるが、そのような大手の弁護士事務所は完璧な学歴社会だ。一定レベルのロースクールで一定以上の成績をおさめなければ門前払いとなる。東京事務所にいる日本の弁護士資格保有者は東大出身者しかいない。その中の一人は現在ある法科大学院で教えている。時々ロースクールの学生をつれて事務所を見せて回っていることがあるが、そのロースクールの学生がこの弁護士事務所に就職できることはないだろう。なかなか厳しい社会だ。

(23:01)

2006年02月01日

契約書の体裁・形式は様々ですが、かつての日本では契約書で詳細に取り決めておかず曖昧なままにして、あまり意味のない相互協力の努力義務的な記載を多く定めることが多かったのかもしれません。そういう日本的で牧歌的な法律実務もグローバル化の進展とともに変化し、規模の大きな日本の法律事務所では欧米流の詳細な契約書の作成が一般化して久しいそうです。

Representations & Warranties(表明保証条項)も、もともと日本の法律実務ではない欧米流のもので、例えば買主は売主に対してより多くの表明保証条項を記載させ、後に補償やディスカウントに利用したりすることが多いそうです。表明保証の具体的中身は力関係などの様々な要因で決まってゆきます。

この表明保証条項については保険商品が開発されていることは以前述べましたが、M&Aでのこの保険の利用目的は以下のようなものが考えられます。

買主側
’篌腓虜睫各睛討北簑蠅あり、上限額の高い補償条項を取り付けても有意義ではない場合の補償の補完
▲ロスボーダー取引の場合で、補償条項の履行が実際には困難と考えられる場合の補償の補完
G篌腓表明保証に消極的で補償に消極的な場合の補償の補完
な篏の存続期間の補完
デ篌腓僕弋瓩垢詈篏額を低くして、他の買主よりも有利な交渉を行いたい場合
η篌腓紡个垢詈篏請求を回避して買収後における売主との良好な関係を維持したい場合

売主側
”縮席歉攵鮃爐竜載を要求して補償を要求する買主も含めて幅広い買主層と交渉したい場合
▲螢拭璽鵑粒猟
G箋僂靴浸業からのリスクの遮断

これから日本も買収が多くなると、様々な法律技術のみならず、保険商品をも絡めた複雑で総合的な戦略・戦術をとるところが交渉を勝ち抜いてゆくのでしょう。

(22:59)