2006年03月

2006年03月30日

どこの国でも司法試験に合格してロー・ファームに入所した新米アソシエートをどのように育てていくかは試行錯誤のようだ。何百人もの弁護士がいる事務所では画一的なシステムを作ってある事務所もある。例えば新しいアソシエートが入所すると、特定の専門分野のひとりのパートナーがメンターとなり、シニアのアソシエイトが連絡役のリエゾンとして新米アソシエートをサポートし、かつ新米アソシエートをあらゆる場面に巻き込むようにして経験を重ねるようにしていたりする。ただ具体的な運用の態様は各プラクティスエリアによって様々だったりする。このようなシステムのメリットは、メンターとよい関係が構築できればそれは新米時代だけでなく一生のものとなることもあり、いいチームができ収益にもつながるということだ。しかし、どこの事務所でも人格的に問題のある人はいるもので、そんな人がパートナーでメンターになってしまったら苦痛の日々が始まり退職に追い込まれることもある。ただ、これはどんな事務所や会社でもあることであり、労働力の流動化が一般的な今日では転職すればいいだけといえる。

このようなシステムだけでなく、レクチャーを開催したり、分野ごとの勉強会を設けているところもある。そしてこの勉強会にはパラリーガルも参加させてもらえることが多く、大いに実務の勉強になる。例えば、ロースクールに行く前に実務体験としてパラリーガルになった場合はこのような勉強会に積極的に参加するといいだろう。

また、外国法事務弁護士事務所では、アメリカの弁護士の為にContinuing Legal Education Programに基づくレクチャーを開催するところもある。これは日本にいるアメリカの弁護士が受講しなければならないものだが、パラリーガルも単位に関係なくついでに受講できる。これに参加するのも大変勉強になる。

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(10:12)

2006年03月29日

M&Aに至る前に二つの会社がまず相互に協力関係に入ることがある。その一環として一方の会社の新株式を他方の会社が引き受けることがあるが、その手続きの中で忘れやすいもののひとつに有価証券通知書の提出がある。新株発行の対象が1名でも発行価格の総額が1億円を超えると有価証券通知書の提出が開示府令6条に基づき必要になる。有価証券通知書は有価証券報告書と異なり公衆の縦覧に供されるものではないので投資家保護の為の情報開示ではない。財務局・金融庁が有価証券の発行状況を把握して募集・売出しの届出の潜脱を防ぐ趣旨だそうだ。記載内容は簡単なので大して大変ではないのだが、開示府令6条に基づく有価証券通知書の提出は法律上の根拠がなさそうなので、釈然としない法律に基づかない負担だ。このような有価証券通知書に関して、クライアントからの提出依頼自体が新株発行後であったことがあり、急いで準備して提出したことがあった。案の定、期限を過ぎていたことについて注意を受けたが、法律上の根拠もないくせにデカイ顔するな!と内心思った。が、無意味にけんかしてもしょうがないから我慢しておいた。

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(12:06)

2006年03月27日

外国法人の有価証券に関連して、日本で様々なファイリングの為に添付書類を集めて翻訳したりすることがある。その中でも、英領ケイマン諸島と米国デラウエア州の書類を取得することが多い。ところで、デラウエア州の証明書を見ていたときに気づいたのだが、表題の「デラウエア」という記載の下に「The First State」と書いてある。この由来がわからなくて釈然としない思いをしていたが、どうでもいいのでそのままにしておいた。しかし先日ちょっと調べたら、「The First State」というのはデラウエア州のニックネームとのこと。由来は、デラウエア州が1787年12月7日にアメリカ合衆国の憲法を当初の13州のうちで一番最初に批准したことにあるそうだ。公式にデラウエア州のニックネームになったのは2002年5月23日で、結構最近のことのようです。

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(18:37)

2006年03月24日

MBO(Management Buy Out)やMEBO(Management and Employee Buy Out)とは、一般に対象会社役員等の経営陣(および社員)と金融投資家(買収ファンド)が、共同で対象会社の支配株式を買い取る取引をさす。MBOというと会社の経営陣が公開会社を買収するように感じることがあるが、経営陣にそんな金があるはずはなく、あくまでも買収ファンドと共同で買収を行うということになる。むしろ実質的な買収者は、優先株で投資し議決権の多くを握る買収ファンドと言うべきことになる。MBO の実質は、買収ファンドが相対的に小額の自己資金を株式性資金の形式で投資し、残りの買収資金をノン・リコースローンで調達するLBOの一形式なのだそうだ。MBOの過程で上場企業が非公開化することにより、買収防衛の効果があるとか経営がやりやすくなるとの指摘があるそうだが、買収ファンドの唯一の目的は内部収益率(Internal Rate of Return)をなるべく高くして儲けることにある。内部収益率は短い期間のうちに多くの資金がかえってくると高くなるので、買収ファンドとしては、株式性の資金として投資した資金を、再上場や事業の売却により回収しようとするのであり、MBO成功後の経営陣の経営努力により株式性資金の価値を向上させて利益を得るわけでなないらしい。確かに、契約書の中には内部収益率が一定率以上の場合に成功報酬がもらえるという規定があったりするが、そういう場合だと長期間買収ファンドが資金回収に動かないはずはないことになる。

法律事務所で契約書の準備やデューデリをする場合には以上のようなことまで立ち入ってアドバイスすることはないだろうが、いろいろないい本を見つけて勉強しておくといい弁護士になれるのではないだろうか。

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(10:11)

2006年03月23日

新会社法の施行を前に新しい会社法の教科書が出版されている。新会社法には法律より下位の法規範も含めて解説することになるが、今度の会社法は様々な新しい制度が導入されるので、実務上は買収防衛策など、いろいろな新しい設計が可能になってくる。ただ、法律上の選択肢がかなり広まる反面、ある具体的な設計が上場企業としては不適切なものも多くなってくると思われる。例えば、取得条項付株式により一定の事由が発生したときに発行済株式を強制取得できるよう定款も整えておくと、非常に強力な買収防衛策ができてしまうかもしれないが、買収提案に対してNeverと言えるような設計は上場企業としてふさわしくない。

東京証券取引所では、買収防衛策導入に際しては事前に相談することとしたようだが、以後、様々な事例が検討されていくと、上場にふさわしくないケースをある程度規則により規制したり、その他の会社法に関する事項に関しても上場企業としての細目的な規定が東京証券取引所の規則として整備されてゆくと思われる。そうすると会社法の教科書でも、法律、府令などだけでなく、証券取引所規則も加味して解説したほうが全体像が見やすくなる。

会社法で証券取引所規則などまで入れてしまうと改定が頻繁に行われるので本のタイムリーな出版が難しくなってしまうというデメリットがあり得る。しかし、大学教授も今後は昔ながらの本の出版ではなく、E-Bookを作ってダウンロード形式で本を売っていったらどうだろうか。出版社が介在しなければ売買対価の多くが、費用を差し引いても大学教授の手取りになるのではないか。小さな改定でもどんどん改訂版を出せば貧乏な大学教授もけっこう儲かるのではないか。どうでしょう。

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(12:48)

2006年03月22日

世界中で使われている書類の標準的な大きさは「A4」だと思う。しかしアメリカではそれを無視したレター・サイズというちょっと正方形に近い大きさがよく使われている。契約書をA4で作成すると、アメリカから送られてくるサインのページはレター・サイズであるので、サイン・ページだけがちょっとはみ出ることになり、見た目が悪い。日本の会社のサインがない場合は、すべてレター・サイズにしておけばいいのだが、大抵、持ち寄られるサイン・ページは各当事者ばらばらになってしまい体裁が悪くなる。もうちょっとアメリカも世界の標準にあわせればいいのにと、体裁の悪い契約書を見るたびに思う。

(16:06)

2006年03月17日

先日、ロサンゼルスの弁護士の依頼で日本の法人のリサーチをし、現地まで行って状況を確認したりした。ロサンゼルスの弁護士と電話で話をして内容を整理してから現地調査に行き、帰ってきてからメールで報告しておいた。法律事務所は文書の作成が本質なので、英語さえできれば相手がどこの国にいようがあまり関係ない。たまたま仕事の依頼がロサンゼルスの弁護士だったけれども、東京の事務所にいる弁護士からの依頼と特に変わることはない。事務所が各国にある法律事務所だと国境の存在をつい忘れてしまう。以前にも、「世界的ローファーム」と「ネットワークの恩恵」で同じようなことを書いた。

世界的ローファーム

ネットワークの恩恵

また、ネットワークを駆使したデューデリをM&Aの案件でやることがあった。例えば、イギリスの会社のアメリカにある子会社を日本の会社が買収するような場合、デューデリの為にEデータルームをセットアップすることがある。普通デューデリをする場合、対象会社の会議室や第三者の場所をデータルームにして様々な文書を部屋に缶詰になって片っ端から確認してゆく。しかし、英・米・日本など数カ国の国にいる弁護士が参加する場合、文書をPDFやその他のソフトにしてサイバー・スペースにデータルームを作り、関係者だけにパスワードを配って関係者だけがアクセスしてデューデリをする。このようなことができるようなシステムを法律事務所によっては独自の厳重なセキュリティー・システムのもとに作っているところがある。このような場合も国境をあまり感じなくなる。

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(17:52)

2006年03月13日

アメリカでは弁護士が契約書を作成するための手助けをする情報提供サイトがいくつかある。前にもLivedgarという有料サイトが有価証券報告書の作成に便利であることを書いたが、M&Aに関する契約をドラフトするときに必要な情報提供のサービスもしている。以下のような具合だ。

Before you draft your next agreement or contract, look to GSI's LIVEDGAR for the powerful research tools and information that will help you conduct targeted research and prepare the agreements, contracts and documents associated with your important M&A transactions.

LIVEDGAR's Precedent Authority allows you to conduct extremely granular research, drilling down to the specifics of any key M&A agreement including document title, clause name, definition and jurisdiction, providing you with the information needed to help you prepare your own materials.

日本にもこういったサービスをする会社が現れるかもしれない。

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(20:24)

2006年03月10日

今日は卒業式が行われるところが多いようで、着物姿の学生らしい人たちを電車でみかけた。ところで、アメリカのロースクールの学生は休み期間中、将来の就職活動の一環と実務体験として夏休みならサマーアソシエートとしてローファームで働く。サマーアソシエイトについては以前「サマーアソシエート」と題して記事をかいた。

サマーアソシエート

日本での卒業シーズンである今は、アメリカでは卒業とは関係なく単なる春休みなので、現在、アメリカからロースクールの学生がインターンとして期間限定で東京事務所で働いている。アメリカではロースクールに入る前にパラリーガルとして働いたり、ロースクールに入ってからもサマーアソシエートやインターンとして就職活動の意味も含めて働くことが多い。

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(12:56)

2006年03月08日

最近は外国投資法人に関する届出書の提出ラッシュになってきている。分厚いOffering Memorandum の中から法とガイドラインで要求される情報を探し出して届出書を作り、添付書類とあわせて金融庁に提出する。今日は金融庁に届出書を提出した後に昼食をとって帰ってきた。金融庁の入っている合同第四庁舎の2階に渡り廊下が財務省につながっているのでそこを通って財務省に入り、財務省の地階にある「テゾリーナ」という名前のレストランでランチをとった。ちょっと暗いレストランだけれども禁煙なのでたまにここで食事をとる。それにしても財務省の中は何もかもが古めかしい。エレベータも途中で壊れてストップしてしまうのではないかと心配になるくらいだ。趣があるともいえなくはないが、昔の学校の校舎みたいな雰囲気だ。

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(19:09)

2006年03月06日

そろそろ復活祭に関連する行事がはじまってきている。私は熱心なクリスチャンとは言えないが、父がカトリックで母が英国国教会のキリスト教徒であり、私自身も幼児洗礼をカトリックで受けたのでたまに教会に行くことがある。この間の日曜日は灰の水曜日後の日曜日だった。ところで聖書の中には「契約」という言葉が多く使われている。例えば、創世記の中で、神がノアとその息子たち及びその子孫と契約を立てる、という記述がある。この契約とは、神と人との双方によって結ばれるのではなく、神の一方的な約束によって立てられる、との説明が書いてあった。この法的性質はなんなのか、約款みたいなものか、なんて思ったりした。その他のいろいろな部分でも「契約」という表現が多く使われる。

宗派はどこであれ、キリスト教文化圏での法感覚は宗教的な日常生活の中に溶け込んで人々に染み付いているようだ。このような文化的背景が刑法や憲法の思想の中にも入り込んでいるが、キリスト教と関係が薄い日本の法文化に、西洋諸国の法律を輸入した明治以後の歴史とその混ざり具合は、なんだかごちゃごちゃして面白そうだ。


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(23:59)

2006年03月03日

銀行も自己の営業を行うために資金が必要だが、その資金調達の方法のひとつに貸出債権の証券化・流動化がある。貸出債権からの元利金の支払いキャッシュフローを引き当てに証券化・流動化を行うのが基本となる。証券化・流動化した証券等の償還までの期間中は、信託財産にいれておいた貸出債権は弁済期の到来などにより消滅するので、それに対応して絶えず新たな貸出債権を信託財産に補充してキャッシュフローを確保してゆくことになる。

信託財産に補充される貸出債権について最近面白い話を聞いた。それはいままで銀行貸出の中心を占めていた昔ながらのコーポレート・ローンの割合が低下してきてシンジケート・ローンやノンリコース・ローンの割合が急増してきたということだ。昔ながらのコーポレート・ローンは銀行取引約定書とペラペラの紙切れの金銭消費貸借契約書のセットであることが多いが、シンジケート・ローンやノンリコース・ローンだと、もっとまともな契約書らしく分厚くなっていたりする。そうすると、規定の中に債権の譲渡には事前の幹事銀行の承諾を要求するするなど、実質的に譲渡禁止特約の機能を有する条文が入っていたりして、債務者や第三者に知られずに債権を信託財産に入れるのが難しくなる。実際には黙って信託に債権を入れても誰も何も言わないし、多くの銀行でこっそり同じことをやっているかもしれないけれども、定期デューデリをする場合にそのような条文を見つけてしまうと、事前の幹事銀行などの承諾をとっていないので、机上論としてのリーガル・リスクはレポートに書かざるを得ない。しかし、あまりリスクをレポートに書かれてしまうとそのシリーズの証券化の格付けが悪くなる危険があるので、シンジケート・ローンやノンリコース・ローンを証券化・流動化に組み込まないようにする。そうすると今度は、証券化・流動化に組み込むことのできる、基準にあったコーポレート・ローンの数が減っているので、補充ができないとキャッシュ・フローが途絶えてデフォルトになってしまう。このような場合は、新しいシリーズの発行を取りやめ、信託財産に組み込める債権について当初設定していた基準を設定しなおすなどの対応をとって、出直す必要が出てくるようです。

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(10:21)

2006年03月01日

昨年6月開催の株主総会で定款を変更して授権株式数の増加を行った上場企業は数百社にのぼるそうだ。その多くが資金調達の機動性確保を定款変更の理由としていたが敵対的買収防衛の観点からの説明を加えていた会社が数十社あった。買収防衛を目的とする場合は、敵対的買収者に遭遇したときに買収者以外のものに新株を発行して買収者の持株比率を薄めることを想定している。

多くの会社が資金調達目的を授権株式数増加の根拠にしているが、そのような会社で全く買収防衛策の意図がないところはないのではないか。株主に対する説明責任が重視される昨今の状況からすると、買収防衛の意図を定款変更の理由に明確に加えるべきだと思う。

また、株主の側もボーっと授権株式数の増加提案に対し、承諾していいのか考える必要がある。現取締役が資金需要の存在さえ説得力をもってでっち上げられれば、授権株式数の増加を現取締役に安易に認めることは、将来の支配株主の選択権をいわばフリーハンドに近い形で与えてしまうことになりかねないからだ(もちろん明確に株主に事前に説明をするのならいい。むしろ適切な説明と設計がなされた場合には逆に、授権株式数に4倍の上限があると適切な効果が得られるのか、という問題にもなる)。株主サイドとしては、買収提案が株主価値の増大に資する場合には、現取締役の保身を許すのは株主にとっては不利益で、むしろ買収提案を受け入れることの方が合理的な場合がある。次の株主総会に出席する予定の株主はその点を考えて質問をしてみてはどうだろうか。授権資本についての取り扱いは、少なくとも上場会社について東京証券取引所の規則として何らかの取り決めをしておく方がいいかと思う。

全く関係ない事例だが、以前、外国会社が日本に進出する際、外国会社の為に日本に株式会社を設立したことがある。授権株式は発行株式の4倍まで設定できるのでどうするかを外国会社に聞いたことがあるが、そのとき外国会社から、定款に規定する「会社が発行できる株式数」と「設立に際して発行する株式数」を同じにしろとの明確な指令を受けたのを思い出す。日本に設立される法人の取締役に不必要に権限を与えない趣旨だった。

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(10:39)