2006年11月

2006年11月28日

昔、大学時代に旧司法試験を受験していた私の友人の中には、学生の間に合格しなかったので受験を諦めて就職していった人が結構いた。その中には、法律知識を生かしたい、ということで大企業の法務部に就職していったひともいた。いままでの日本の大企業では終身雇用を前提にそのような新入社員を教育していって、数年たつと外国のロースクールに会社の費用で出してくれることが多かったと思う。そして、外弁法成立20周年セミナーのパネリストだった三井物産の法務部長のように法務部の社員として出世してゆき、法務部長として執行役員になってゆくパターンも普通に考えられることだった。今までの大企業の法務部はこのように終身雇用を前提とした独特の組織がガッチリ出来上がっていたが、今後、法曹人口が増大してゆくとどのように変化していくのだろうか。日本の司法試験がアメリカのように数回がんばって受験すれば受かってしまう制度に変化してゆくと、弁護士資格がとれてしまう以上、法務部の社員も弁護士資格を保有するひとの割合が増大することになるかもしれない。外資系の会社の法務部の中には、弁護士とパラリーガルの集団、といった感じで、小さな法律事務所の体裁のところも多い。もし法曹人口が増えるのならば、法務部の人間も出世するためには弁護士資格が必要になるかもしれない。事実、前述の三井物産の法務部長・執行役員もニューヨーク州の弁護士資格は持っている。多分、今までの日本の司法試験では会社の意向で日本の弁護士資格を社員にとらせるということは、合格の可能性が読めないからあまりなかったのかもしれないが、数回がんばればとれるニューヨーク州の弁護士資格はとっておこうという発想があったかもしれない(なんともわかりませんが)。日本の弁護士資格がとりやすいようになると、企業の法務部でも、仮に新入社員として法務部にいてがんばっても、司法試験に受かった若い人が後から入社して自分の上司になってしまうことも出てくる可能性がある。大企業だと子会社がいっぱいあるので、本社の法務部が子会社の法律事務の処理をすると形式的には別法人である以上、弁護士法72条違反になる可能性があるので、弁護士資格のあるひとがいれば便利だろう。今後、いままでの日本独特の企業の法務部がどのように変化してゆくのかも注目したい点だ。
ただ、企業の法務部と弁護士事務所ではどのような弁護士が必要とされるかは違いが残るだろう。ビジネスセンスやコミュニケーション能力がより必要とされるし、三井物産の法務部長・執行役員の話では、法務部の人にはゼネラリストになることを要求しているそうだ。弁護士事務所では専門化が進みスペシャリストを取り揃える傾向があるかもしれないが、商社の法務部のようなところでは、様々なケースのなかから問題点に気づく能力が必要とされて、その気づいた問題点については外部の専門弁護士に依頼すれば良いとのこと。重要なのは、問題点を発見する能力なので、専門性ではなく広い知識・経験のほうが必要とされるそうです。これは企業によっても必要とされる能力は様々だろうが、扱う事項が多い商社の場合は上記のような傾向があるそうだ。

ロンデート


(12:11)

2006年11月17日

昨日、弁護士会館2階の講堂で外資系法律事務所と日本の大手法律事務所の比較などを主題に講演、質問等がなされた。パネリストは、モリソン・フォスター、フレッシュフィールズのパートナーと日本側は長島・大野・常松のパートナーが弁護士として参加した。それに加えて、クライアント・サイドの会社のインハウス・ローヤーとして、GEインターナショナルインクのニューヨーク州弁護士と三井物産の執行役員・法務部長である日本人(ニューヨーク州弁護士)がパネリストとして壇上に並んだ。
いろいろ外国の弁護士事務所と日本の弁護士事務所との違いがあげられたが、日本の事務所は比較的、持ち込まれた問題に対する答えを提供するだけである傾向があるが、外資の大手法律事務所は、法律問題に関するリスクマネジメントの分析とそれに対処する方法の提案をする傾向があると指摘されていた。また、日本の事務所は実際のディールで発生する可能性の高い面を重視して契約書を準備する傾向があるのに対して、欧米の弁護士は特定のディールで発生する可能性が10%以下の最悪の事態や最上の事態について分析して契約書を準備する傾向があるのではないかとのことであった。まあ、全体的な印象では、単純に依頼されたことにだけ応えるような弁護士ではだめで、さまざまな提案も含めてアドバイスできるようでなければ国際競争は勝ち残れないようだ。長島・大野・常松のパートナーは、外国オンリーの案件について外資系法律事務所とそもそも競争する気はないのであって、国内の案件だけは特に、外資系法律事務所には取られないつもりだそうだ。もちろん、長島・大野・常松のような優秀な弁護士集団であればすでに提案型のコンサルティングはやっているだろうし、国内の大きな案件はしっかり押さえられるのだと思う。ただ、日本はすでに先進国となっており、経済の一般的な傾向として先進国では金融関連事業が重要となるし、製造業であっても海外への進出は当然の前提であり資金調達も世界規模で行われることが多い。そうだとすると、証券の発行は先進諸国の監督機関とのかかわりが不可欠だし外国の投資家も当然出てくるだろうから、大きな案件を手がけるのであれば純粋に国内だけで済むような場合はどうしても少なくなってゆかざるを得ないと思う。そのような状況の中で、外資系弁護士事務所が日本での業容を拡大して日本人弁護士をどんどん増やしてゆけば、大きな日本の弁護士事務所であっても危機を迎える危険がある。
講演の後の懇親会で、メリルリンチ証券で働いていた日本人弁護士とお話をした際にその先生が仰っていたのだが、日本の弁護士事務所は大手でもパートナーが自分の顧客を囲い込み、他の弁護士との連携が少なく、事実上ばらばらの多人数の弁護士の寄せ集めである傾向がある。そのような弁護士事務所のマネジメントの状況だと、外国の事務所のように案件の処理が迅速になされない場合があるので、日本の事務所のマネジメントの意識改革がなければ、合併で規模を大きくするだけでは競争には勝てないのではないか、とのことであった。日本の弁護士は比較的「一国一城の主」という意識があるようだが、法曹人口の拡大が続けは、大手法律事務所の弁護士はより会社員的になってゆくだろうし、むしろそうでないと、ばらばらの弁護士の寄せ集め状態から改善がなされず競争の勝ち残ることが難しくなるのかもしれない。三井物産の執行役員法務部長も、外資系弁護士事務所と日本の大手法律事務所とではスピード感が違うと指摘していて、日本の事務所は本気で依頼に対処していないのではないかと疑うこともあるそうだ。マネジメント改革をして一致団結したスピード感と提案型リーガル・サービスをクライアントに提供できるかどうかが、日本の事務所生き残りに必要なようだ。また、日本の大手事務所の弁護士はニューヨーク・バーを多くの場合とりに行くが、提案型が重視されるのであれば、使いもしないニューヨーク州弁護士資格よりむしろMBAを取ったほうが実際には役立つのだろうと思う。
まあ、日本の事務所が改革を断行するにしても、外資系法律事務所が本気で業容を一定規模以上にしてきたら、日本の事務所は例の事務所みたいに空中分解するかもしれない。今後の動向が楽しみだ。

ロンデート


(17:57)

2006年11月13日

最近、業務の性質上履歴書を取得することが非常に多い。そこでなんとなく感じることだけれども、日本人は個人情報保護法の施行もあって履歴書を送ることに警戒感を持っている人が多いようだ。それに対して、欧米人からは、頼みもしないのに自分の履歴書をどんどん送ってくることが多い。欧米人のほうが履歴書送付に警戒感を持っているのかと思ったが逆の傾向が実際にある。何故だろうかとちょっと考えたのだけれども、一つの理由は日本の履歴書は不必要に個人情報が記載されすぎているからではないかと思った。配偶者の有無や扶養家族数などを記入する定型フォームが一般で、しかもバカみたいに手書きにすることが多いと思う。そのような体裁だと、よりプライベートな感じで、見ず知らずの人に情報が渡ることは気が引けると私も思う。
それに対して欧米の人の履歴書は学歴や職歴がメインで、且つ、自分がどんなにすばらしいのかということをアピールする内容になっている。そうだとすると、「自分はこんなにすばらしいんだ」という書面がたまたま事故で流通してしまっても、むしろいい内容だからどうしても隠さなければいけないと言うほどのものではなく、かえって思わぬ誘いがくるかもしれない。
欧米の人から、しかも外国にいる人からどんどん履歴書を送ってくるのは、以上のような書面に対する認識の違いが根底にあるのではないかと最近思っている。

ロンデート


(10:59)

2006年11月06日

先月末にSBIが所得隠しをしていて税務署からその事実を指摘された、と大々的に朝日新聞を中心に報道された。政治献金ともからめていかがわしいことをSBIがやっているような印象を読者に植え付けるようなセンセーショナルな報道振りだった。一般に、投資銀行では税金を合法的に払わないストラクチャーを日々考え続けているのであり、ストラクチャーによっては後から税務署が否認して課税処分をしてくることはよくあることだ。そんなことを恐れて、税金が低く抑えられるストラクチャーの考案を日々しないわけにはいかない。SBIの詳細は全然確認していないので本当に問題があるのかも知れないが、新聞は投資銀行などの金融機関が日々努力してストラクチャーを考える作業を、悪知恵を絞って国民を欺く悪徳集団のようなイメージで報道しまくる。全く違う問題でも、最近高校の履修不足について進学学校を悪いイメージで報道することがあったように思う。まあ、実際必要科目を教えないのは悪いのではあるが、受験を目前に控えた生徒に受験に関係ない授業を教えなくてはいけないカリキュラム自体に現実を無視した側面があり是正が必要な気がする。更に、工場労働者の偽装請負問題も朝日新聞がセンセーショナルに報じているが、これも実際の需要にあった法整備をするべきで、労働組合の過剰な要求を受け入れすぎずに(もちろん無視しすぎるのも不当ではあるが)、現在のがんじがらめの規制を具体的状況にあった常識的な内容に改正すべきように思う。
いずれのケースでも新聞は概してセンセーショナルに報道するが、新聞側も発行部数を伸ばして利益をあげなければいけない株式会社であることを考えると無理もないとも言える。要は、新聞を読む側が新聞報道を常に懐疑的な視点で鵜呑みにせず冷静にとらえることが重要であることを忘れないように頭の片隅に入れておくことなのかもしれない。

ロンデート

(14:52)