2009年05月

2009年05月22日

アメリカ最高裁判事の候補者リストにカナダ生まれのGennifer Granholmが加えられたそうです。もし彼女が最高裁判事に指名されれば、7人目の外国生まれの最高裁判事が誕生するそうです。彼女がカリフォルニアに移住したのは4歳のときですが、米国市民権を取得したのは移住から17年後の1980年とのこと。合衆国憲法では出生地、公民権の有無、年齢その他法曹のバックグラウンドについての必要条件を示していないそうです。直近の外国生まれの最高裁判事は、日本の憲法の教科書でも憲法訴訟の部分で司法消極主義者としてよく登場するフランクファータだそうです。フランクファータはオーストリアのウィーン生まれでアメリカへの移住は12歳のとき。そのとき英語は喋れなかったそうです。フランクファータがフランクリン・ルーズベルトによって最高裁判事に指名されたときも出生地を理由に反対する議員はいなかったそうです。

昨今の経済危機においてアメリカ没落論がブームですが、外国生まれで帰化した人材の最高裁判事への登用や移民の多さと人口が増加し続けている点などに触れると、アメリカの幅の広さを感じます。経済危機でアメリカの中産階級が没落して借金返済を今後数年にわたって継続しなければならないのも事実ですが、日本と違って移民が多く人口が増え続けている点は経済的には大きな強みでもあります。

フランクリン・ルーズベルトによるフランクファータの最高裁判事への任命は、世界経済の大きな流れの転換期における裁判所のスタンスの先例です。現代の経済は非常に高度で複雑ですのでパターナリスティックに裁判所が積極的になるのも合理的とも言えるかもしれませんが、多数の選択肢の中で何が良いのかが分からない状況では、民意に任せるのも合理的です。裁判官は経済の勉強も必要であり、微妙なバランス感覚が不可欠で難しい時期ですね。例えば高度経済成長期に確定した労働法関連の判例は、成熟した低成長経済下ではその正当性を支える社会的事実に変化がありますが、立法的解決はねじれ国会や利害の対立で難しい状況です。実際に法律が改正されるまで裁判所は手元にある訴訟をどうしたらよいのかなかなか難しいですね。

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(12:53)

2009年05月18日

昨年末から今年の第一四半期にかけて世界的なローファームでRedundancy consultationが行なわれていましたが、5月に入ってから次第に収束に向かっているように感じられます。ところで、今回の経済危機の影響が強くなる以前から、イギリスではリーガル・サービスに関する規制緩和や伝統的な法律事務所形態に対する改革の議論がなされており、ビジネス・ロー分野の新しい時代の法律としてThe Legal Services Actが話題となっています。

討論会なども実施されており、リーガル・サービスのコモディティー化とアウトソーシング、新しいテクノロジーの有効活用、パラリーガルの組織的有効活用による弁護士業務の雑務的仕事からの分離・分業化、Billing systemの多様化、法律事務所に対するExternal investmentの試み、など、リーガル・サービスのモデルの変化について議論がなされています。リーガル・サービスの将来を専門的な研究対象とする大学教授の著作なども出版されています。日本でも法曹業界の改革を唱えた異端児的な弁護士が本を出版し自己の著作をアソシエート等に送りつける事件が最近あるようですが、イギリスでは立法的な動きも手伝い議論が盛んになっています。バブル期のリーガル・サービスのGolden Ageにおいては新しいテクノロジーの導入には消極的であった弁護士事務所のシニア・パートナーのなかには、昨今の経済情勢の劇的変化に直面して態度が柔軟化してきているとの指摘もあります。法律事務所の改革というものは経済が好況なときには現状維持的な共通したマインド・セットが支配するのでなかなか難しいですが、差し迫った危機に直面すると何かをしなければならない雰囲気になるのかもしれません。詳しくは確認していませんが、新法の中の面白いシステムのひとつは、法律事務所に外部から投資を許し、その第三者的な投資家の視点で結果的にクライアントへのサービスの向上とコスト低下を実現しうるようなシステムを準備しているらしいことです。

このようなリーガル・サービスの改革に対してはBilling systemを改革したくない法律事務所と改革を促すクライアントとの綱引きがあったり、Confidentialityや Legal risk managementなどの非常に難しい問題もありますのですぐに大きな変化が現実的に発生するとは思いにくいですが、少なくともおおっぴらに議論はなされている点でオープンなようです。もし少しずつでもさまざまな改革が行なわれてゆき、中長期的にコスト面でも改善があるとすると、外資系法律事務所は「高い」という固定観念は次第に変化するかもしれません。少なくとも、今までの円安バブル期に「安い」イメージをクライアントに刷り込んできた国内法律事務所は、円高が定着することによりフィーの格差が縮小してきており、今後外資系法律事務所のコスト改革がじわじわと実現してゆくと、世界的ネットワークのない国内法律事務所の中長期的な競争力は減る可能性があるかもしれません。日本の将来の経済のグランドデザインが明確でない現時点では将来何が発生するかはなんとも言えませんが、大きな経済の流れを注視しながら、その法曹業界への影響を情報収集に努めながら観察してゆこうと思います。

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(12:42)

2009年05月14日

Skaddenはアジアのinternational arbitration and litigation practiceをスタートするためにロンドンのパートナーを香港に移したそうです。またSkaddenはM&A及びファイナンスのパートナーをシンガポールにも補充しています。ロー・ファームが世界的なリストラクチャリングを進めると同時に、アジア地域の業務を増強している模様です。

話は変わり、最近日本企業の国内工場の縮小とアジア地域への製造拠点の移転のニュースがよく新聞等に掲載されています。日産もマーチの製造を全てアジアに移すと新聞で報道されていました。極端な円安とアメリカの旺盛な消費に支えられて国内で生産された製品が売れていた状況が一変したために、コモディティー的な商品の製造は海外に移す傾向が製造業の間で加速しているようです。需要の急減に加えて円高傾向が定着したので、国内で生産するコモディティー的商品が今後売れる見込みがなくなったためですが、将来円安バブルが再来することは考えにくい以上、工場労働者の解雇は経済の流れのなかで不可避であり、派遣労働者等の機械的な単純労働者の需要回復はあり得ず、まさに「ない袖は振れない」状態です。そこで、最近は労働関係の紛争で弁護士需要が増加していますが、中小の法律事務所ではグレーゾーン金利バブルの次のバブルとして労働問題バブルで潤っている事務所が多くなっているようです。大手法律事務所は一般に企業側につき、特に小さな法律事務所が被用者側について和解金目当てに頑張っているようです。この傾向に便乗詐欺のようにくっついている死滅直前だった一般労組も妙に元気復活しているようです。このような一般労組やその訴訟を代理する弁護士との交渉は後味の悪い不健康なものです。経済成長を前提とした労働基準法や関連判例・裁判例は、成熟した低成長経済のもとでは現実的ではない場合も多くなってきているようです。具体的な事案次第ではありますが、社会運動家的な弁護士の活動は、長期的な経済の大きな流れからすると社会的害悪になる危険もあり得ます。

アメリカの消費に依存した経済成長が望めなくなったからといって、製造業も円高を利用してアジア地域に出てゆく傾向があるように、経済のグローバル化は止めようがありません。そして、それに伴って国内の法制度も変化させる必要もあり、共通言語である英語の重要性も高いままです。また、多極化するグローバル経済では世界的なネットワークがより重要になるかもしれません。

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(14:05)