2009年04月13日

シカゴを拠点とする中規模のChapman and Cutlerという法律事務所は、現在の景気の減速への対処としてさまざまなコスト削減策を実施しています。パートナー会議にこじつけて行なわれるパートナーの一種の事務所旅行の中止、その他の経費削減だけでなく、人員削減及びアソシエートの給与の削減など、可能な手段を実施しています。また、司法試験に合格したばかりのアソシエート1年目の弁護士への給与も16万ドルから14万5千ドルに引き下げる可能性があるそうです。1年目の弁護士への給与は2007年までのバブル景気に比例してニューヨークを中心に16万ドルまで急上昇していました。給与の上昇はアワリー・レートの全体的な上昇につながり、クライアントからは苦情が出されていたこともありました。しかしそれが、急上昇前の金額に戻る可能性が出てきたことになります。

Chapman and Cutlerは経費削減に努めつつも、他方では2月にニューヨーク・オフィスを新たに開設しており、当該オフィスでの採用は継続しているそうです。そして新規採用する弁護士の給与を抑えて、事務所の低コスト構造を達成できれば、クライアントにもより低いアワリー・レートを提供出来ることになる、と目論んでいるようです。

もし、弁護士給与を抑えたストラクチャーに次第に外資系大手法律事務所も構造改革してくると、それがアワリー・レートへも次第に反映されてゆく可能性があります。アメリカでの傾向が日本にも持ち込まれるようになると、場合によっては四大法律事務所等の日本の法律事務所にとっては脅威になる潜在的な可能性があるかもしれません。東京にある外資系法律事務所で働く弁護士には、一昔前と異なりバブル期に四大法律事務所から移籍した優秀な弁護士が多くなってきており、業容も拡大してきたことから法律業務の質は四大法律事務所に負けるものではなく、ただ、フィーが高い点がクライアントに躊躇を感じさせる大きな問題点だったと言えます。しかし、アメリカ本土での給与の減少傾向が一般化した上に円高が定着することになると、四大法律事務所の強いセールスポイントであった安いフィーと外資系法律事務所のフィーの格差が縮まってくる可能性が出てきます。東京の弁護士のアワリーレートは200ドル、300ドル、400ドルといったようにドルで決められている外資系法律事務所も多く、その場合、円高になれば自動的にフィーが減少します。そして、かつてのように円安バブル当時の為替レートに戻ることはない、との意見が多いようです。

世界経済は今後多極化してゆき、日本企業も生き残りをかけてアジア全体で活動する選択肢を選ぶことにもしなったとすると、その企業活動をサポートする法律事務所も世界的なネットワークがあること自体がリーガル・サービスのクオリティーだけでなく重要性を持ってくる可能性があります。外資系法律事務所のコスト改革と円高傾向が定着することになると、フィーの減少による格差の縮小が発生し、世界的なネットワークのない日本の大手法律事務所の競争力が中長期的に下がる可能性もなくはない、かもしれません。今後の動向を見守ってゆくことにいたします。

Asian Legal Jobs

(13:56)

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