西東京市にある西武鉄道池袋線ひばりヶ丘駅では、2018年度末から2020年度にかけて、駅舎のリニューアル工事が実施されており、トイレの改修工事も行なうと告知されていました。このトイレ改修(表題の通り、実際には移転)工事が8月末に竣工していたとの情報を8月末に他サイトで入手しており、今回イベントの打ち合わせで出身高校に行った後に新トイレを見てきました。
▲一部訂正あり(10/23)
ひばりヶ丘駅は、池袋線 池袋-飯能間の開業から約10年後となる1924年に「田無町」の駅名で開業しました。当駅は当時、北多摩郡保谷村(あとの保谷市)に位置していましたが、当時、現在の田無駅、および同駅が属する新宿線はまだ開業しておらず、旧田無町(後の田無市)の北端に近い位置に当駅が開設され、同地域への玄関口となっていました。1927年に村山線(現在の新宿線)が開業して現在の田無駅が設置され、1945年に池袋線を運営していた「武蔵野鉄道」と新宿線・国分寺線・多摩川線を運営していた「(旧)西武鉄道」が合併して現在の西武鉄道が成立してからもしばらくは「田無町駅」と「田無駅」が共存する状態が続き、その頃はさぞ紛らわしかったのではないかと思いますが、戦後、近辺にあった軍需工場跡地が日本住宅公団(のちに住宅・都市整備公団を経て現在の都市再生機構)により「ひばりが丘団地」として造成されたことから、1959年に現在の「ひばりヶ丘駅」に改称しています。駅周辺、特に南口にはパルコ・西友などの大型店が建ち並び、本来の田無町(→田無市)に設置された新宿線田無駅周辺と共に西東京市の商業の核となっていますが、駅の利用者数は僅差(1日平均乗降人員レベルで2,000人ほどの差)で当駅より新宿線田無駅の方が多いようです。
駅周辺は東京都西東京市、東久留米市と埼玉県新座市の市境・都県境が近接(これに加え、2001年の西東京市成立前は田無市と保谷市の市境もあった)しており、埼玉県民の当駅利用客も多いようです(また、北口を出るとすぐ新座市になる。このため、当駅北口から発着するバス路線は他に都内に停留所がなく、東京都シルバーパスが使えない)。
(停車種別:各駅停車・準急・快速・急行・通勤準急・快速急行)
当駅は古くより橋上駅舎となっていましたが、2003年〜2005年にかけてバリアフリー化などを図るため、大掛かりな改築工事が施工されました。
この改築工事により駅舎付近はホームと一体になった大きなドーム状の屋根が掛けられ、特にエスカレーター付近(10両編成で5号車あたり)は大変開放感のある造りとなりました(後に竣工する東急元住吉の現駅舎にも似たような雰囲気)。
橋上駅舎2階部分(エスカレーター上)から見下ろしたホーム・線路です。30000系は2番線に入線する下り電車です。もちろんこの工事の時にトイレも改修されているので、当駅のトイレはそれほど古いものではありませんでした。
ですが、2003年〜2005年の駅改築工事では南口側はエレベーター・エスカレーターを設置して美しく整備されたものの、北口側は用地の関係もあって改築できず、出入口は階段だけしかないままの状態が長らく続きました。西東京市の鉄道駅バリアフリー化の方策に伴って、近年になってようやく北口のバリアフリー化が具体化し、2018年になってようやく北口のバリアフリー化と駅前広場整備が完了し、それまで歩いて5分ほど離れ、都県境を超えた新座市域に位置していた北口のバス乗り場(主に東武東上線朝霞台駅、志木駅方面への路線が出ていた)が今年になってから北口のすぐ前に移設されました(旧バス乗り場は「栗原五丁目」バス停となった)。
この北口の整備に前後して、ひばりヶ丘駅駅舎のリニューアルが発表され、トイレの改修(実際には移転)と、駅改札を出てすぐ前にある店舗のリニューアルが発表されました。
この時のリリースではトイレ改修工事と一緒に南口エスカレーターの改修工事が告知されており、それらの工事竣工は「2020年度」とアナウンスされていましたが、トイレの工事は思ったより早くに竣工し、8月29日(木)から新しいトイレの使用が開始されました。
改札前の店舗はリニューアルのほか、増床が予定されており、現在はその工事のために閉鎖されていて、竣工は2021年度が見込まれています。
■ひばりヶ丘駅トイレ 移転前
●器具カラー:ペールホワイト(製造終了、TOTO色番号:#N11)
●多機能トイレ(だれでもトイレ)のドアは自動(手かざしセンサー式)
●撮影日:2006年5月31日
以前のトイレは改札口を入って左奥(上り3・4番線に下りるエスカレーターの手前)にありました。
点字表記付きのトイレ内部案内図です。男性用トイレの器具設置数は洗面台3台、小便器4台、大便器個室2室(和式・洋式各1室)となっていました。女性用トイレの個室数は3室(和式1+洋式2)であったようです。男性用トイレは室内をパーティションで2つに仕切れる構造になっていました(西武では他に池袋駅の男性用トイレも同様の構造になっているほか、この構造は同時期に東急で流行した)。
洗面台はTOTOのL230DSを使用していました。入口から見て右側に2台(この写真)、左側に1台で計3台設置されていました(このような配置になっていたのはパーティションで区切れる構造を取っていたため)。蛇口は自動水栓アクアオート(TEL70BX)でした(後に一部TEN40AXに取り替えられていた気がする)。中央のライニング内側にゴミ箱が設置されていました。また、後に2007年秋ごろにフック、2009年度下期に液体石鹸が追加されています。
小便器はTOTO製CeFiONtect仕様の「小便器ユニット」(光電センサー式フラッシュバルブ・ジアテクト内蔵)、UTEU23D(リップ高さ350mm・陶器部品番UU721DRU)を1台(一番左側)とUTEU13D(壁掛式・陶器部品番UU521DRU)を3台の計4台使用していました。一番左側の1台(UTEU23D)には手すりを併設していました。2007年秋ごろにフックが追加されています。
大便器個室は2室(和式・洋式各1室)ありました。入口方向から見て右側に和式個室、左側に洋式個室が設置されていました。和式便器はTOTO製CeFiONtect仕様のブローアウト式便器CU139Rを使用していました。洗浄装置は光電センサー式フラッシュバルブ(オートクリーンC)となっていました(後にアクアエースに取り替えられていたかもしれない)。手すりは便器前方に横手すり1本の配置となっていました。西武線上で和式のブローアウト便器は、他に下井草でも見たことがあります。
洋式便器はTOTO製CeFiONtect仕様の壁掛式ニューボルテックス便器CU467P(標準洗浄水量9L)を使用していました。洗浄装置は光電センサー式フラッシュバルブ(オートクリーンC)を使用していました。便座はこの当時普通便座でしたが、2011年春の温水洗浄便座第1期集中導入(これは筆者が便宜的にこう呼んでいるもので、西武の公式な呼び方ではない)の時にLIXIL(INAX)のシャワートイレP CW-P22M(「ビデ洗浄」無し)が設置されています(西武の駅トイレでは基本的にTOTOの便器が使用されているが、例外的に“第1期集中導入”で設置された温水洗浄便座はLIXIL(INAX)シャワートイレであり、この結果一時期西武の主要駅の多くでTOTOの便器にLIXIL(INAX)シャワートイレが設置されていた。トイレ自体の改築のほか、故障などによる交換では便器に合わせてTOTOウォシュレットになるケースが多いため、2019年現在西武の駅トイレでLIXIL(INAX)シャワートイレは激減している。ちなみに、プリンスホテルなど西武グループのホテル・レジャー系施設で温水洗浄便座を後付けしたところはLIXIL(INAX)シャワートイレが入るケースが多いようで、他氏サイト「プリンス備忘録」を見るとちゃんとTOTOの便器にTOTOウォシュレットを載せたケースの方が少ないのではないかとすら思うぐらい)。個室内には手すりも設置されていました。
トイレ入口には、ティッシュペーパー販売機が設置されていました。西武鉄道では駅トイレへの紙の常備が東京の大手私鉄の中では遅い部類(2004年度頭ぐらいに紙完備になった)であり、紙が完備されるようになった後も2006年頃までに施工されたトイレでは入口に紙の販売機が設置されていました。一般トイレに温水洗浄便座が付くようになったころ、紙の販売機の使用は停止されたように記憶しています。
多機能トイレ(だれでもトイレ)です。便器はTOTO製CeFiONtect仕様の壁掛式ニューボルテックス便器CU467Pを使用していました。洗浄装置は光電センサー式フラッシュバルブ(オートクリーンC)を使用していました。小型手洗器、オストメイト用洗浄水栓(便器上面設置の固定式)も設置されていました。洗面台はTOTO製CeFiONtect仕様のL270Dを使用していました。蛇口は自動水栓アクアオート(TEL70BX)が設置されていました。器具配置は右勝手となっていました。一般トイレに2011年頃に温水洗浄便座が設置された後も、多機能トイレには温水洗浄便座が設置されませんでした。
多機能トイレにはベビーシートも設置されていました。ベビーシートはTOTOのYKA24を使用していました。このように比較的新しいトイレで、正直なところこのトイレに手を入れるんなら西武線上には先に改修すべきトイレが他にもっとあるんじゃないかとすら言いたくなるところでした。
2019年9月21日時点の旧トイレ跡地です。
トイレ移転の告知ポスターです。新しいトイレは従来のトイレのちょうど真向かいのような位置に移設されました(おそらく、改札外から入る店舗のスペースだったところを転用したと思われる)。同一位置での改修ではなく移転なので、仮設トイレは設置されなかったのではないかと思います。元のトイレの場所は店舗か何かに改装されるのでしょうか。■ひばりヶ丘駅トイレ 移転後
●器具カラー:ホワイト(TOTO色番号:#NW1)
●多機能トイレのドアは自動(押しボタン式)
●撮影日:2019年9月21日
新しいトイレは従来のトイレの真向かいということで、改札口を入って右奥の下り1・2番線ホームに下りるエレベーターの手前に移りました。入口には音声案内装置も設置されています。
点字表記付きのトイレ内部案内図です。男性用トイレの器具設置数は洗面台2台、小便器5台、大便器個室(全て洋式)4室です。女性用は大便器個室5室の設置となったようで、比較的新しいトイレにわざわざ手を入れたのは単なる設備のグレードアップというよりは、器具台数の増強を主眼に置いたものだったのかもしれません。一方、男性用を中で分割する構造は採用されず、また男性用の洗面台は以前より1台減っています。
洗面台はTOTO製CeFiONtect仕様の壁掛ハイバック洗面器(新型)LS135DMを2台使用しています。蛇口は自動水栓アクアオート発電タイプ(TENA125AW)を使用しています。液体石鹸も備え付けられています。フックも設置されています。中央に手指乾燥機(クリーンドライ高速両面タイプ)が設置されているほか、両端のライニングにゴミ箱が組み込まれています。洗面台は1台減ってしまっていますが、このスペースならゴミ箱を1か所だけの設置にして一回り小さいLS125系を使用すれば3台設置できたのではないかと思います(ただ、LS125系の石鹸対応モデルは蛇口が右に寄ってやや使いにくいのが難点だが…)。
小便器はTOTO製CeFiONtect仕様の自動洗浄小便器UFS900R(リップ高さ350mm)を5台使用しています。一番手前の1台には手すりを併設しています。フックも設置されています。Calmicサニタイザーも取り付けられています。床はシート張りであるものの、フローリング調となっており、ライニングや洗面コーナーとの境界にある衝立が木目調となっていることも相まって落ち着いた雰囲気となっています。
大便器個室は4室(洋式×4)あります。便器はTOTO製CeFiONtect仕様の壁掛式サイホン便器C550NU*(標準洗浄水量6L)を使用しています。洗浄装置は光電センサー式フラッシュバルブ(オートクリーンC、点検蓋に停電時用洗浄ボタン付)を使用しています。便座はウォシュレットP TCF585YR(「音姫」付 蓋なし仕様 標準ピクト採用)を使用しています。個室内には手すり・非常ボタンも設置されています。西武の駅トイレだと、複数の洋式個室があるのにウォシュレットが1室しか設置されないケースが多かったのですが、ここでは全室にウォシュレットが設置されました。
一番手前の1室は個室内にベビーチェアが設置されているほか、手すりがI字型ではなくL字型のものになっていました。*TOTO C550NU=C550SU(2004年12月発売、標準洗浄水量8L)を洗浄水量6Lで使用できるように改良した機種。今年4月1日の出荷分よりC550SUから切り換える形で発売。外見は全く同じで、見分けることは困難。構造は従来のフチ裏あり・ボックスリム構造・複数穴吐水のまま。
多機能トイレ(だれでもトイレ)です。西武の駅トイレでは初と思われる、TOTOの「コンパクト多機能トイレパック」を使用しています。便器は壁掛ニューボルテックス便器CS530P(CeFiONtect仕様、フチなし形状・トルネード洗浄採用 このセットでの洗浄水量は大4.8L)を使用しています。給水はタンク式となっています。便座はウォシュレットアプリコットP AP2AK(「温風乾燥」・「洗浄位置調節」・「きれい除菌水」付 「音姫」無し)TCF5840AUPRです。ウォシュレットのリモコンと便器洗浄スイッチはボタンを押したときの力で発電する「エコリモコン」となっています。小型手洗器・背もたれも設置されています。器具配置は右勝手です。
多機能トイレ内のオストメイト対応設備(給湯機能付)です。「コンパクト多機能トイレパック」に付帯したものです。汚物流しはSK117(CeFiONtect仕様、洗浄水量4.8L)です。蛇口はシングルレバー混合栓で、スパウトを引き出してハンドシャワーとしても使用できます。洗浄スイッチは「オートクリーンC」同様のタッチスイッチ式ですが、給水はこちらもタンク式となっています。オストメイト対応設備側にも紙・液体石鹸が備え付けられています。右側に大きめのゴミ箱が置かれています。
多機能トイレの洗面台は、「コンパクト多機能トイレパック」に付帯の樹脂製・カウンター一体型のものを使用しています。蛇口は自動水栓アクアオートです。液体石鹸も備え付けられています。手指乾燥機は多機能トイレには設置されていません。
多機能トイレ内には着替え台、ベビーシート、ベビーチェアも設置されています。着替え台はTOTO製、それ以外はCOMBI製です。ベビーチェアとドアボタンの距離がやや近いように見えますが、乳児の手の長さを考慮するとこのぐらいの距離があればうっかり子どもがドアボタンを押してしまうことはないのではないかと思います。多機能トイレのスペースはあまり広くなく、下手すると改修前より狭くなったのではないかという印象を受けましたが、TOTO「コンパクト多機能トイレパック」の採用によりオストメイト対応設備の別置き化もなされており、実用面では問題はないのではないかと思います。
#訂正…西武の駅トイレではすでに2017年1月竣工の高田馬場駅橋上連絡口トイレ改修で「コンパクト多機能トイレパック」が採用されていた
<評価>…器具台数が増加したほか、全室ウォシュレット完備、多機能トイレ(だれでもトイレ)では独立したオストメイト対応設備(給湯機能付)を用意しているなど、設備は以前のトイレよりも向上しているのは間違いないですが、残念な点として、近年問題になっている多機能トイレへの利用集中を防ぐ方策が殆んど取られていないことが挙げられます。近年、一定以上の規模の駅トイレでは一般トイレ内でもベビーカーや車椅子などでの入室を考慮したスペースが広めの個室を用意するのが標準となりつつあり、例えば西武においても2015年に竣工した池袋駅のトイレ改修ではかなり広めの簡易多機能型個室が用意されていますが、当駅新トイレではそういった個室が用意されず、男性用トイレ内への乳幼児用設備の用意はベビーチェアが1室にあるだけでした。当駅トイレの場合、以前のトイレが利用者数に比して器具数が少ない印象が否めないものであったことから、器具台数の増設を主軸に置いた結果簡易多機能型個室の設置は難しい、ということになったのかもしれませんが、ベビーチェア付きの個室をせめてもう1室用意したり、車椅子での入室対応は無理にしても1室を跳ね上げ式オストメイト用洗浄水栓併設にする(参考:東京ビッグサイト)ぐらいのことはできるんじゃないか、と思ったものでした。
また、もう1点残念な点として、多機能トイレ(だれでもトイレ)のベッド系設備が多目的シート(介助ベッド)とはならずベビーシート止まりとなってしまった点も挙げられましたが、これはここの多機能トイレが狭いので、そもそも多目的シート(介助ベッド)を設置するほどの余裕が取れなかった可能性もありそうです。
西武鉄道では、最近電車の車内トイレにおいて、40000系は普通列車用車両としては最高に近いレベル、001系「Laview」は間違いなく在来線車両最高レベルの設備を備えて登場し、感心したものでしたが、これらの車内トイレや、あるいは4年前に竣工している池袋駅トイレ改修での充実した設備を考慮すると、どうも今般のひばりヶ丘駅トイレはちょっと残念な印象を受けざるを得ませんでした。※「ウォシュレット」はTOTOの登録商標です。