2018年03月

2018年03月26日

3/26

額に3色信号機をつけて、両手は踏切の黄色と黒の棒、首からなぜか社員証をぶら下げている。

それはこないだのプリキュアに出てきた敵で。てんで、ふざけてやがる。強いわけがない。結果ハートのビームを喰らって死ぬ。死因すら、かわいいに持ち込む女の子のストイックさ。



*******


「え?あたしが4人目のプリキュア!?」


そのセリフ。10代になってすぐくらいのタイミングで口にしたかったものの。まさかのアサラーで口にするとは。
新卒で入った会社、良くも悪くもない会社。結婚するまでだから、まぁいいかと言いきかせて。
そう言えば、先月の話。3つ上の先輩が寿退社していって、ウワベではみんなお祝いムードで手作りアルバムまで作ったけれど。個々の負担が増える業務。女同士のささやかな嫉妬。
女子トイレの鏡は他人の陰口で曇る。
という、現状を踏まえ、「え、あたしが4人目のプリキュア!?」

全て投げ出して、戦わないといけないけれど。引き継ぎ、今後の生活の不安。混じって変身どころじゃない。
円満なプリティ退社などなく。
地球のために大変だろうけど頑張ってねという優しいお言葉の、裏ばかりさぐる。
世界の平和よりも、守りたいのは私生活。




*******

退院が決まり。
近い上司にすぐに電話報告。
そして職場でライン知ってる方々、ひとりひとりにご迷惑をおかけしましたと送る。
流石にしんどくて、文章コピーエーンドペーストだけど。ああこの時間、遅番が誰と誰かわかんないけど一緒に上がって同じタイミングで携帯見られると、ズルしてるのバレるなあとか。
お詫びのお菓子はどのくらいでかい箱のがええのかなぁとか。デパ地下のあそこの店なら安くて大袈裟なのあるかなとか。あの人とあの人には個別でなんかせんないかんのかなぁと。大変だこれは。仕事を休むとは。
そして、生きてるだけでひたすらお金かかるなぁと。8度見した今回の入院の請求書。アワワワワワワワワワワ。
しかし得たものは大きいのじゃないか。はっきりと見えてきた人間関係や信頼。人の優しさ。空気読む人読まん人。そうとでも言っとかなきゃアワワワワワですし。




******


術後、管抜けるまでの四日間は笑うだけでも痛いから。なるべく笑わないように。しかし観る動画はお笑いばかり。
水曜日のダウンタウンの企画で。
サスケ×ホームセンターみたいなのあって。ホームセンターで買い物した道具を使ったらサスケ攻略できるんじゃないかみたいな説で。
サスケに命をかける真面目なおっさんが。そり立つ壁という傾斜が90度ある壁で。本来は駆け上がるその壁のステージで脚立を使うと言い出し、もうそれがおかしくておかしくてたまらんくなり。痛くて痛くて、でも笑いたくて息できなくてパニックになり。携帯を投げ出した。あれは幸せな痛みだろうか。


夜になり。
ベッドの頭側の角度。上げておかないと、傷が開くから仰向けで寝れないので。出来るだけ上げる。リモコンでゆっくりと、ウィーンと盛り上がるベッド。振り返ると僕の背中、そこにも、そり立つ壁。
そり立つ壁になっており。もうダメだ、動画の続きを観ようと。またのばす携帯。退屈なんて、思う暇なかった。





******

消灯までの僅かな時間。
ギャルはまたあのいつものベンチ。椅子の上で膝を抱え。珍しく通話も休憩で。孤独を満喫。指先は髪の毛をくるくるして。キティサンダルは左右、カカトだけひっついて150度の角度で開く。
何も変わらず。

向かいのベッドの人は生活保護と年金だけで。今回の入院費が払えないのも知ってる。60過ぎても金ない人はほんとにない。パない。生々しいほどない。結婚してなくて、新しい家を借りる保証人がいないことを採血しに来たナース捕まえてひたすら話す。チャプチャプと下品な音を立ててご飯を食べる。しかしおしゃべりが好きで性格は明るい。明るいてすごい。今夜はオペで今頃CCUか。痛みと戦っているんだろか。
斜め前のガンの人は4日前くらいに退院したけど、昨日から入った人もまたガンだ。
カーテン一枚のプライベート。
漏れに漏れる個人情報。でも僕は顔を知らない。みなさんのお顔。
明日退院する。10時までにチェックアウトしないと怒られる。













23:48

looseness at 23:48|PermalinkComments(0)

2018年03月22日

3/22

夢はしっかりと見る。
短い眠りの中でも。
今日ライブなのにコード進行を覚えてなくて、確認しようと焦って電話をかけているところから始まり。
極楽に10人くらい兄弟がいて、電話をかけるけど、1番下の2歳くらいの子が出て「ごめん!お兄ちゃんに代わってよ!」って何回も言うけど何にも喋らず。どうしようどうしようてとこで目が覚めて。あ、そう言えば入院していたと。
ペラペラのパジャマの背中は湿っており、こんな夢で汗をかくなんてと。虚しい気持ちになる。と、同時にあぁ俺実は焦っているんだなぁと痛感もする。
よく夢に今の自分の心理をえぐられる。時間が勿体無いから、この時間を利用してラップを考えたり、今パソコンでできる来月の仕事のこと少しでもやろうとか思ったけどやめた。
そもそも時間のことを勿体無いと思ったりするから焦るのかなと考えたから。
時間は、ただそこにあるもの。
そう捉えるようにした。
観ても観なくてもいいようなドラマを何となく観た。



オペ当日は緊張もせず。
両親に、「じゃ」と告げ、今更けどカッコつけてオペ室に速足で入る。ドラマで見ていたオペ室よりも照明が多く明るいなあなんて印象で。何だか社会見学でもしてるような気持ちで。背中に太い針が入り、やっぱり当たり前のように痛いなぁなんて思い。
全身麻酔がポタポタ流れるけど全然眠くなく、このまま目が覚めたまま切られたらどうしようなんて思っていたら「中村さん、終わりましたよ。」と。
4時間ちょいの時間がたっていたらしいが、ほんとに一瞬だった。
せわしく流れて行く天井と次々変わる人の顔。鎖骨の激痛で息苦しく酸素マスク外しちゃう。戻されるを繰り返す。
自分の足が価値のない置物のようにそこにあり、頑なに動かず、膝を立ててもらってもパタリ倒れる。邪魔だなと感じ、もうメルカリに出してもええと投げやりにもなる。


朝まであと12時間。時計もなく、たまに体交してくれるナースが時刻を教えてくれる。2時くらいかなぁ思ってたらまだ0時ですごくがっかり。あんなに長い夜は本当に初めてできつかった。
いま大きな地震きたら、真っ先に死ぬなぁとか。そしてそんな状況の人たちが常に地球にはいるんだなぁとか。当たり前だけど、普段考えないことを考えた。
氷棒という、アイテムがあり。
棒の先にガーゼを巻いて、その部分を軽く湿らせて凍らせたシンプルなやつで。
味はなし。どプレーンなそれ。
激しい口渇と痛みを紛らわす為に、結局朝まで僕はその棒を5本貰った。
子供の頃に食べた生協アイスをなぜが思い出した。唇を湿らせて、少しだけ飲み込んだ。
隣でばあちゃんが娘の名前を何度も呼ぶ。看護師が娘のふりして対応する。少し安心するが、また忘れて呼ぶループ。かわいいなと、思った。



翌日、病棟に戻り、やっと携帯さわれた。僕は携帯のこと大好きなんだなぁとか思った。
連絡をくれてた人たち、当たり前のように感動した。
その感謝すら、時間が経つと忘れるのかなぁとか思ったけど。その頃また病気になるのかなとも思った。
あれもこれも大切だと思って、どこか必死だった人間関係けど。実はあれとこれしか大切なものはないと、また気づいた。



******

痛みがない時間帯を見て、ひたすら廊下を歩く。
看護助手のおばさんだけ、「いょ、中村くん」と声をかけてくれる。明るいなぁと思う。
洗面所、爺さんがまじめに髭を剃っている。どんな体の状況でもたくましくのびる髭は、何か真っ直ぐな意志すら感じる。
誰に会うわけでもないけど、整容すること、生活にリズムをつけることの大切さ。教わる。
病棟一周する時間をストップウォッチで測る。歩き出した頃は7分だったタイムが今日は最速で5分に。
そして何周しても、東病棟1番端っこの窓際の1番眺めええベンチ。わしも座りたいベンチ。そこにアディダス3本ラインジャージにキティサンダルの点滴ギャルがいることに気づく。点ギャルはいつも一瞬だけ僕を見るが、すぐに視線を正面に戻し、ずーと電話をしてる。
おかんと上司にしか電話をかけてない僕からすると、何をそんなに話すことがあるのだろう、思うが。点ギャルは話す。次来てもまだ話してる。
まだ話してる。
うけるー、って怒ったような顔で言う。
頑なに病院着に着替えず、ややオーバーサイズスエット。
足元キティちゃんはゴールド×ブラックの配色で頭にハイビスカスをつけている。
ばりカラバリ豊富と、ドンキ行ったらいつも思う。無個性に見えて、実は個性出せる。ベランダ用に欲しいけど、やや高くてためらう。

外の気温を知らない僕は、ニュースキャスターが言ってた寒の戻りという言葉を鵜呑みにしてたけど。
白いとこもやや黒い、動物園のパンダみたいなキティは黙って主張して来た。
てか、ハイビスカス。
まじハイビスカスやし。
世の中には楽しいことしかねぇ。
どんな状況でも芯の強さを感じる。ギャルには。だから憧れる。
僕は思う。ギャルはパネェと。
パネェのだ。
パあったことなんて一度もない。
いつもパネェ。
良くても悪くてもまじやばい。
だってやばいものはやばいから。














22:16

looseness at 23:16|PermalinkComments(0)

2018年03月18日

3/18

病室から宇宙へ。
少し遠い。
保健室の天井には、不規則に並ぶ点々の模様があって。それらを繋げれば冬の星座くらいは作れる。3時間目くらいは潰せる。

しかし真っ白。なんて退屈な天井なのでしょう。宇宙まで、やや遠い。
宇宙兄弟て漫画も、2巻の途中で読むのやめちゃったしな。僕は宇宙に縁がないのだろう。火星移住計画。あれどうなったの。GEOないとしんどいし、火星人、ぬるぬるしてそうけんやめとくけどさ。



バックホーンの初めての呼吸でという曲を繰り返し聴いているのは。
200円入れて洗濯し、乾燥機は100円。
真っ白な天井よりはいくらかましの乾燥機の中。色んな表情を見せながら回る己の下着やタオル。タオルは色とりどりにしておいて良かったなとか。くるくるを眺めながら、いろはすを飲む。


洗濯機の銀河の中〜。て曲あったなぁと思い出し。あ、バックホーンだと。
大学生のとき、みんなバックホーン好きだったね。今熱心に聴いてる人は減って、「懐かしい」ていう少し悲しめな音楽になってしまったのかもしれないけども。バックホーン。
日常と宇宙が奇跡的につながるようなあの曲。イントロのコードはミスって抑えたやつをそのまま採用したてあの曲。
赤ちゃんの時、初めて呼吸して体に入れた酸素はほんの微量だが、死ぬまで肺に残っているていうあの曲。
死んでやると、飯を炊きながら日々を超えるあの曲。
思い出したらもうたまらなくなって。ずっとリピート。夕方四時過ぎ、隙を見つけて院内に忍び込む西日とマッチして、痛みを忘れるほど心地よかった。

目の前にあるもの。想像のつくもの。
それらを変わらず愛すこと。日常のことをけして退屈だとは思わないこと。
それが大人だろう。
もう僕に宇宙はいらない。初めての呼吸で好きだと確かに言うべきけど。みんなありがとうとか、好きまでの回り道が遠すぎて息を切らしている。


******

今朝。
一気に2人が退院し、4人部屋なのに僕の病室はあの斜め前のガンの方の2人きりになり。
今日はナースコール5回程度。
なんか苦しいと。来てくれと。しかしそれが抗がん剤の副作用だから特に処置もできず。看護師の対応も様々だ。
何度も自分で体温を測る音。そしてはぁはぁと息を切らす音。カーテン一枚ごし、すごくリアルに伝わる。
痛いの痛いの飛んでけー。
今幸せな誰かのところに。じゃなく、宇宙。そう想像を超えたどこか深いところへ。その時だけ必要だ宇宙が。












23:16

looseness at 23:17|PermalinkComments(0)

2018年03月17日

3/17

人生でこんなに長い時間休むて、もしかしたらだけど、おじいちゃんになるまでないのかもとか考えてみたり。

有り余る時間に期待して、買ったけど読んでなかった本を持ち込み、得意げにベッドテーブルに山積みにしてみるが。なぜか読む気にもならず。栞に挟む細い紐がだらしなく垂れている。ほんならこの本、一生読まんなと。
僕は文字が嫌いなんだろうと気づいたり。


少し生活のペースを落とせ。誰かからきっとそう言われてる。そう信じてる今回の入院。


毎日何かしらの検査があって、どれも初体験で。MR検査室では、アップテンポなダンスナンバーが流れていて。恐らく患者をリラックスさせようていう意図なのだろうと、予想はつくが。
せまいコックピットみたいなとこに吸い込まれるとき。陽気なリズム。白い巨大な丸みを帯びた機器。子供のころに来たスペースワールドの何かのアトラクションに乗る感覚に近く。妙に懐かしさが支配した。
何で閉まる前に行けんかったかなぁとか。そんな呑気なこと考えてるうちに輪切りにされるお腹。


痛みがないときはなるべく丁寧に歯を磨いたり、ゆっくり爪を切ったりして過ごしている。
YouTubeはとっくに飽きた。関連でGLAYのベース弾いてみた動画出てくるとやはり、胸がチクリ痛むときもあるが。それにも慣れ。

点滴のポタポタと、窓から見えるブックオフの旗がハタハタなびくのを交互に見ながら。痛みが和らぐのを待つ。
夜になると上司に状況報告をラインでする。わざと美味しそうなご飯やお酒の写真を送ってくる人。夜中まで相手してくる人。正直くそ救われてる。人の優しさは、いちいち胸を指す。みんなありがとう大好きとか、そんな幼くてぬるいものじゃなくて。1人1人に、言葉じゃなくて誠意でお返しを。あちら側未来の方向へ勢いをつけて転がす絨毯。セレブだから、綺麗な道を歩きたいの。



******


屁の音。

屁の音で判別できるようになったのは個室から4人部屋にうつって2日目くらいで。
カーテン一枚で仕切られたプライベート。薄いようだけれど、実は厚く。常に閉まっており。菓子折りを持って今度隣に引っ越してきました的な挨拶なんてあるわけなく。未だに僕は同じ病室の人の顔をしらない。

互いになるべく生活の音を立てぬよう気を使いながらひっそりと暮らす。家族が来た時など、たまに聞こえる話し声から想像する顔は国語の教科書に写真付きで載っている昔の詩人の色んなパーツを合体させて作った架空のもの。答えあわせはまだできてなく、2日がたち。手がかりは屁。

右横の方は健康的な音。斜め前の方はこもったような怪しい音。
顔も知らないけど、今のは隣の人だとか自然と分かるようになっていた。
昼でも静かなこの空間。だから響く屁の音。

******


それが今日は珍しく、隣と斜め前が何かのきっかけで急に世間話を始めた。
簡単な自己紹介を済まし、何で入院してるかっていうその話題から入る。

「肺に穴が空きかけててね。いやでもよかったですよー。疑ってたガンじゃなかったですからね。」

と、隣がまず自分の病状から説明し始めたとき。僕はカーテンの裏。妙にヒヤヒヤしていた。
というのも、斜め前の人が何度か看護師に抗がん剤の副作用の話をしていることや、家族に電話をかけて今度来るとき県民共済とアフラックのハガキを持ってきてと頼んでるのを聞いていたから。
なので、ガンじゃなかったから良かったと嬉しそうに話し始めた瞬間ヒヤリとした。よりによってそれは言うなと。

ところが斜め前は落ち着いた様子で自分はガンであること、ステージ等。家族のこと。仕事のこと。少しジョークまで交えて楽しそうに話した。
これが受け入れる強さかと。
カーテンの向こう、ほのかに自分の中で芽生えるふつふつとした気持ちを感じた。
今夜も消灯時間をすぎて、暗くなった室内。廊下からさす少しの明かり。テレビに突き刺したイヤホンから僅かに漏れるタレントの笑い声。それよりも存在感のあるあの斜め前の屁の音。低音をえぐる不健康な大腸。
明日洗面台でたまたま歯磨き一緒になったら少し話そう。そして夜は長い。こんな長いて知らんかった。















23:47

looseness at 23:48|PermalinkComments(0)