2018年10月

2018年10月04日

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能ある鷹は、じゃないけど。

爪を隠す彼女達。その表面にうっすら塗られているものは何やら美しい。色味はなく、透明だけど艶やかに見える魔法の一塗り。色味がないという控えめなところが進学校っぽい。
なんでも親指と同じ身長の小人がどこからかバケツとハケを持ってやってきて、眠っている間に仕上げてくれるという。
100均のコスメコーナーには、小さな瓶の中にぎゅっとメルヘンが詰まっている。



指先が静かに主張する。
授業の隙間。おしゃべりの隙間。窓辺で膨らんだカーテンの中。
黒板消しをクリーナーにかけるその右手。
と、同時に静かに隠れる。頭髪検査の朝。スカートの丈。顧問の教師の目。



能ある鷹。
せっかく立派な爪なのに。
隠しすぎて隠しすぎて、出す前に死んじゃったらもったいないじゃんと。彼女達の言い分。
若さに甘えることもするけど、大人になることも知っている。




もう一人の能ある鷹の。
爪はぼろぼろ。先は欠けていたりいなかったりの自由な形で。表面に写し出しているのは戦後のフィルム映像のよう。隙間には黒い汚れがつまっている。
彼の名は男子。理由は簡単、爪を噛むから。
幼児性の抜けないその行為を繰り返す理由は、癖というより何というより。ただただ淋しかったり暇つぶしだったり。愛情不足。子供の頃はそんな風に言われていたけれど、今は決定的にちがう。昼休みという途方もなく長い時間の消化の為に爪が必要だ。
彼も同じく爪を隠す。





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文化祭というものは秋に開催されるイメージだが。
進学校では5月。受験勉強の追い込み期とかぶらないようにして、おそらくその日程。

進学校。と、言ってもまわりに公立が四校くらいの小さな小さな地区での話。井、どころか洗面台に溜めた水たまり程度で威張ってるカエル。
内向的な性格の方が多い進学校では、入学して1ヶ月くらいで男女交際なんて始まる気配もなく。リュックの底、分厚い辞書で潰れた弁当を一人で食べる者も多く。仲が良い者同士も、どこか探り探りな会話を繰り返す昼休み。

友達が欲しいなぁと、願うけれど。犬にすら人見知り。
そんなとき、何とかして話すキッカケを。個性を。キャラクターを。注目を。

と、考えた結果、当時流行ってた着せ替えのできるauのガラケーを購入し。ヒョウ柄のプレートを装着して。そこに、そんなに好きでもなかったけれど、モーニング娘のメンバーの小さい人形のストラップを10人くらいつけてジャラジャラにするという手段だった。


痛い。
を、越えてもう激痛だ。
ロキソニンいるやつだ。
が、そんなことをやるしか当時は手段がなかったんだなぁと考えると、自分のことなので胸が痛み。不器用さは子猫のように背を丸めて、かわいらしいなと今、思う。


作戦は見事に成功し、変なやつおると。みんなから次第に話しかけてくれることが増えた。ここのサイト、モー娘の画像いっぱいあるよと、メールで教えてくれる人もいた。そんなに好きでもないのに、月額315円払って、モーニング娘の画像を保存した。もう引き返せないところまで来ていた。



そういう流れがあり。
5月、初めての文化祭の出し物。
まだまだ結束の甘いクラスでは、時間をかけずに簡単にできる出し物が採用され。
有名人の顔をパソコンに取り込んで、その顔のパーツを別の芸能人の顔に当てはめて、福笑い的に、面白い顔を作りましょうというクソみたいな出し物になった。
そんなに好きでもない、加護ちゃんの画像を雑誌から切り抜いて、パソコンに取り込む。
山城新伍のサングラスの奥に、加護ちゃんの可愛らしい細い目。緩んだ小さな唇。
不気味でいびつなその作品。作ってるときは面白くて、仲間内ではケラケラ笑ってたけど。
文化祭当日。
科学室に貼り出された加護城新伍は、誰の足も止めることができず、静かに天井を見上げていた。

















22:58

looseness at 22:57|PermalinkComments(0)