トリケミカル研究所の売買に関して

 昨日提出したトリケミカル研究所の変更報告書について様々な憶測が飛び交っているようですが、私が一連の売買についてレオスと共謀したという事実は一切ありません。以下にこちらの認識と見解を示します。

1.変更報告書提出の経緯について

 まず大量保有報告書および変更報告書の提出期限ですが、提出義務発生日の翌日から5営業日以内となっており、今回で言えば4/21(木)がその期限でした。私としては昨日ではなく今日提出するつもりでいたため、昨夕は自宅で休んでいたのですが、レオスの大量保有報告書が提出されたことを知って慌てて帰社し、こちらも提出することを決めました。そうでなければ、私とレオスの双方が大量保有しているという前提で今日の場が始まってしまうからです。

 そのため、提出時間がEDINETのクローズ時間(17時15分)の直前となりました。その時の状況については、17時のアポで来社していた方に待って貰って対応していたので証言は取れると思います。 

2.同日に大量の売買が重なったことについて

 これは偶然としか言いようがありません。事前に示し合わせていなければこれほどの大量の取引が発生するはずがない、という疑問に対しては、私が買った時の1日3.4%もの取得については同様の疑問は起こらないのか?という問いを投げかけたいと思います。

 ちなみにその時の売り手は、好決算を見越して安い時に5%近くまで仕込んでいたあるファンドマネジャーでした。なぜ知っているのかと言えば、そのファンマネは知人で、私が大量保有報告書を出した後に彼と話す機会があったからです。当然彼としては安く仕込んだ株をいいところで売ったつもりでしたが、その後に株価が急騰していくのを見て大いに残念がっていました。

 つまり、5%前後の玉がまずそのファンマネから私に移り、そして今回私からレオスに移ったということです。規模の大小はあれど、小型株投資をやっている人なら、同じ有望株を複数の知り合いが持っていたり、その仕込みが仲間内で競合していて知らず知らずのうちにオークション状態になっていたことが後でわかったというような経験はあるのではないかと思います。

 小型株の場合、 大型株のように多様なオーダーが常時交錯しているわけではなく、たまたまその日いた売り手や買い手が次の日も現れるとは限りません。なので、この価格ならいくらでも欲しい、あるいは売りたいというハラさえ決まっていれば、買える時に買えるだけ買う、売れる時に売れるだけ売るというアクションはそれなりに起こり得るものだと思います。

 当日は朝からとてつもない大口のオーダーが出ていて私も気付いていたので、売りながら「ひょっとしてとんでもなく安値で売らされているんじゃないか?」という疑念を何度も持ちましたが、5%を超えるポジションを持っていたため、きちんと数量を売り切ることを重視して当初のプラン通りに動きました。そしたらなんと4%以上も売れてしまったと言うのが真相です。

3.保有割合が5.57%であったことについて

 これもたまたまそうなっただけです。私の中でこれぐらいの価格なら「大量に」買ってもいいというレンジがあって、当然それは流動性の範囲内で収まるポジションよりもシビアに決まります。そのレンジ内で買えたのがそれだけの数量であっただけのことです。実際、以下に示すように3/22以降は100株足りとも買えていません。もし「出口」がわかっているならもっと買っているはずではないでしょうか。

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 そもそも大量保有報告書の提出に関しても色々と誤解があるようですが、これはそういうルールになっているから仕方なく出しているだけで、もし任意であれば私なら絶対に出しません。ステルスで買い続けることによってより安くより多くの数量を買うことができるし、売る時にも自分が売り始めたことを公にせずに済むからです。特に後者については日本ライフラインの売却時にそのデメリットを痛感しました。実際にやったみた感覚として、買った直後はいいですが、最終的なイグジットまで考えればどう考えても大量保有報告書の公表はデメリットの方が大きいと感じます。

4.短期間での売却となったことについて

 私は以前から「投資期間は株価によって決定されるもの」と言って来ましたが、それが全てです。 この銘柄については3月23日の会社説明会に参加した後、外部機関を通じて4月4日に社長ミーティングを行い、一連の調査を経て「今これぐらいの株価まで来たらフェアバリューだな」というイメージを持っていました。その水準は今と半年後、1年後では当然異なりますが、思いのほか到達が早かったので1ヶ月での利益確定となりました。最初からそういうスパンで売買しようと思って買っていたわけでは当然ありません。

5.本件における片山、レオス双方のメリットについて

 客観的に考えていただいても、全くないと思います。

 まず私の方ですが、確かに今回得たキャピタルゲインは絶対額としては大きな金額ではあるものの、全体の資産額からすればそこまで大きな影響を与えるものではありません。一方で、一度このようなことをして嫌疑をかけられれば、その事実はずっとついて回ります。これ限りで大儲けをして足を洗うということならともかく、これからもずっと投資を生業としていく私にとって、それによって私や私の銘柄の印象が悪くなることのデメリットは計り知れません。

 レオスにしても、2008年の厳寒期からひふみ投信をスタートして、血の滲むような思いを続けてようやく1500億円を超えるAUMを運用し数々の賞を受賞するに至ったというのに、私如きに個人的な便宜を図るためにその積み重ねを無に帰するような愚挙に出るとは到底思えません。

 また、仮に話が決まっていたのだとすれば、それこそ表に出ないように5%ルールに抵触しない数量で行っていれば、今私がこのような文章を深夜に貴重な睡眠時間を削りながら書く必要も最初からありませんでした。5%未満に収めるでもなく、目一杯買うでもなく、わずかにはみ出る程度の数量でこうしたことが起きたこと自体が偶然の産物であることの証拠です。



 以上です。狭い日本の小型成長株市場で戦っていれば同様のことは今後も起きる可能性はありますが、私は自己の調査と判断に基いて投資を行っているのであり、 それ以上でもそれ以下でもありません。そのことは、ここに改めて明記させていただきたいと思います。なお、本件に関して追加で何らかのアクションを行う予定はありません。

(C84)東方マネーをニコニコ静画に公開しました

http://seiga.nicovideo.jp/watch/mg165713


 2013年夏のコミックマーケット84で発表した同人誌、「東方マネー」をニコニコ静画で公開しました。以下は注意書きです。

0.画像ファイルが非常に大きいため、モバイル通信環境での閲覧は非推奨です。
1.これは同人誌であり、特定の取引や手法を推奨するものではありません
2.発行は2013年8月であり、現在とは前提となるルールや市場環境が異なる場合があります
3.本書は同人誌なのであくまでもエンタテインメント作品としてお楽しみください
4.ご本人への確認がとれないため、コスプレページは除いてあります 


 以前から公開したいと思っていた作品でしたが、連休中の時間を使ってやっと実現することができました。僕の同人誌は基本フォトショップで作っているのですが、この作品はデザイナーさんとコラボして作ったので自分でpsdファイルを持っておらず、入稿用のpdfしか手元にありませんでした。なので、pdfをAdobeReaderのスナップショットで取り込んで、JTrimで切り取るという強引な手法で画像化しています。そのため若干の不具合があるかもしれませんが、その際はご了承ください。

 僕は何事にもまったく頑張ることのできない人間で、これまで何かを死ぬ気でやったと誇れる経験はほとんどないのですが、この作品を作るのに費やした1ヶ月間は自分の中でも人生頑張ったランキングの五指に入ると自慢できます。 

 何しろ企画が本格的に立ち上がったのが締め切りの1ヶ月ちょっと前で、その時に決まっていたのは「雑誌みたいな同人誌を作ろう」というコンセプトだけ。記事の内容も全くメドがついていませんでした。そこから、でもやるんだったらガチで行きたいし、マネー誌でパロディやるなら○aiしかないよねということで、実際にマネー系のムックなどのデザインをされていた方を紹介していただいて、本業をこなしながら同人誌の全44Pのデザインを手掛けることを引き受けていただきました。

 最終的にはその方のスタジオの東方好きな別のデザイナーさんがたにも協力していただいて、最後の方は明け方までやり取りを繰り返してギリギリのところで作品を仕上げることができました。そこで初めて知りあったご縁で何の義理もないのに、どうしてあんな無謀なチャレンジに付き合って下さったのかと本当に感謝しかありませんでした。

 また、イラストも過去の作品でご一緒させていただいていた数名の方には土下座する勢いで枚数を描いていただきつつ、それで埋まらない部分は必死のメールでひたすら依頼突撃をしまくって、なんとか必要な最低限のボリュームを揃えることができました。皆さんご自分の原稿がある中でこれまたよく引き受けて下さったなと思います。

 今回はアップしていませんが、表紙を飾っていただいたlenfriedさんもコミケ直前に突貫で撮影に付き合ってくださいました。平日しか空きがないということで有休をとって東証まで撮影に行ったら、知人のディーラーに見つかったり警備員に追い返されたりしたのも今では良い思い出です。

 そんな経緯がありまして、この作品は非常に多くの方の血と汗の結晶でできているのですね。僕のテキストはともかくとして、デザインもイラストも素晴らしいものが出来上がりましたし、妥協せずやり切って良かったなと思います。

 それを埋もれさせておくのはなんだかもったいないとずっと思っていて、こんなに遅くなってしまいましたがこの度のネット公開という運びになりました。特に最後のコンテンツなど、今思い返すと恥ずかしくなるような文章も沢山ありますが、一人でも多くの方に楽しんでいただけたら嬉しいです。

 なお、販路の途絶えた在庫が未だにオフィスの隅に2000部ぐらい積まれてあります。需要があれば私書箱でも開設して、 返信用封筒を入れて送ってくれたら本を入れて送り返すという処分方法でもやってみようかと思っております。

可能性と蓋然性のお話、そーせいホルダーは時価総額1兆円の夢を見るか

 そーせいが株価10,000円の大台を突破した。リーマンショック後の安値は91円だったから、とうとう100倍高を達成したことになる。

 2年前の8月、私は投資クラスタのオフ会にて、以前からツイッターを通じて知り合っていた若者にそーせいについての見解を求められた。そーせいに最初の大波が訪れていた時で、当時彼は信用を使ってそーせいを買っていると言っていた。うろ覚えだが、シーブリやウルティブロと言ったワードもそこでは出ていた気がする。

 私はそんな株を信用で買うのは危険だからやめておいた方が良いとアドバイスした。そーせいに関して何らかの具体的な知見があったわけではない。ただ、日本のバイオ株の歴史はその悉くが上場ゴールによって紡がれており、まともなものは一つもないと思っていた。また、個人投資家からアナリストに転じて数多くのIRミーティングを精力的にこなしていた頃であり、まだ若くキャリアも浅い彼に対して少しおごった気持ちもあったのだろう。ともかくも多少の上から目線をもって、無謀なことはよせと私は意見した。

 それから2年間、彼はそーせいと田村社長を愚直に信じて持ち続けた。具体的な金額はわからないが、以前聞いていた話からするとこの相場で一財産築いたはずだ。ひょっとすると大台に迫っているかもしれない。まだ30歳になるかならないかぐらいの若さだったはずなので、大いにめでたいことだし素晴らしい快挙だと思う。2度3度あった半値押しを耐え抜いた彼の強烈な意志の力が報われたことは喜ばしい。

 と同時に、その時からヒントを与えられながらついにこの相場に参加すること叶わなかった己の無能さにあきれ果てている。ちょうどそんな思いを募らせていた折、書店でたまたま手に取った本の内容が非常に良く、今の自分を叱咤するような言葉に溢れていて多くの気付きを得られた。

 手法などの話はほとんどなく、相場というものに対する心がけや気の持ちようを説く内容で、投資本ながら兵法や戦争論、柳生新陰流などの武道からの引用が多数を占め、冒頭から終わりまで頷かされることがとても多かった。著者の言わんとするところを読み取るには一定の経験が必要と思われるので読み手を選ぶ本だが、個人的には名著と呼ぶに値する作品だと感じた。 

50年超の投資実践でつかんだ「最後に勝つ」相場の哲学 賢者の投資、愚者の投資

 その中の一節に、可能性と蓋然性についての話があった。可能性というのはその事象が起こり得るか否かを論じるもので、例えば日経平均が40000円まで上昇する可能性と10000円まで下落する可能性はいずれも存在する。だが、来年のうちに日経平均が30000円まで上昇するかという話になれば、その可能性はかなり低いと言える。しかし、可能性はあるかないかの話なので、この場合は蓋然性が低いと言うべきだという話である。

 投資に絶対はないという言葉がある通り、相場においてはあらゆる可能性が存在しており、それを明確に否定できるケースの方が稀である。従って、投資家が通常考えるべきは蓋然性の方になるのだが、投資家はしばしばこれを混同する。 

 私が資産1億円の大台を突破し飛躍するきっかけとなったのが、2010年のシナジーマーケティングの相場である。当時クラウドコンピューティングという概念が市場に認知され始めた時期で、そこに米国の巨人であるセールスフォースドットコムと日本企業として初めての資本業務提携を結んだのがこのシナジーマーケティングであった。

 株価は初物を好む。私はかねてから、「市場はクラウドコンピューティング関連の本命銘柄を欲している」と考えていたので、この材料を知って雷に打たれたような衝撃を受けた。そして、それまでに取ったことのないようなリスク量で大勝負をかけることを決意し、資産を一挙に倍増させることに成功した。

 しかし、今から考えればこれは典型的なテーマ株投資であり、今でいうところのイナゴ株の値動きであった。事実、その年からシナジーマーケティングの業績は一向に上向かず、4年後に私の売値の遥か下でヤフーに買収された。当時の自分にはテーマ株投資をやったという意識は全くなく、純粋にこの提携を契機としてクラウドコンピューティング時代の波に乗り、業績が大きく伸びていくと考えていた。ただ、その実現を待つ前にそうなった時に想定されるフェアバリューを上回ったため、利益確定を行っただけの話である。

 だから、仮に株価が吹き上がることなく私が株を持ち続けていたら、その後の業績不振で数年にわたる塩漬けを余儀なくされていた可能性はあったし、その過程で大きな損切りを強いられていたかもしれない。そう考えると、この投資は資産が倍増したという意味で試合には大いに勝ったが、その後4年経っても業績に反映されなかったという事実は勝負に負けたことを示していた。

 それが2010年のことである。果たして今の自分ならどうか。低かったPERにテーマ性のプレミアムが付くことは理解できる。資本参加が報じられた当時のPERは、増収増益のIT企業なのに10倍前半だった。3連続ストップ高の後で買ってもなお10倍台だったことを記憶しているので、全く同じ状況なら(今の市場環境でPER10倍台で寄り付くことはありえないが)試合には参加したことだろう。

 でも数年内に株価の数倍化を肯定するほどの業績貢献は難しいと考えて、大勝負はしないはずだ。売り時も早まったかもしれない。ちなみに買値から3倍で売ったシナジーマーケティングはその後さらに2.5倍上昇した。材料が出る前からで言えば12倍近い暴騰だが、結果を見れば完全に市場の見込み違いだった。

 これをどう捉えるかは各々の感性やスタイルに依ると思うが、経験を積めば見込み違いに終わりそうだという現実的な見方ができるようになる。まさにこのシナジーマーケティングのように、期待先行しながらも結果が出ない、ビジネスを拡大させることは投資家が思っているよりも遥かに難しく、事業提携一つでどうにかなるものではないという事例を山ほど目にすることになるからだ。

 こうして、投資家は経験と知識を積み重ねることで蓋然性を見極める力を持つようになっていく。すると必然的に、ある力を失うことになる。それが「勘違い力」である。

 あの時の私はシナジーマーケティングが本当に時価総額数百億円の巨大企業になる可能性があると思っていた。経験のある投資家からすれば根拠の無い買い煽りだと批判されるような飛躍したロジックをいくつも脳内に展開し、その度に密かに興奮していた。妄想広がるその可能性だけを頼りに勝負をしかけたが、蓋然性については深く考えなかった。いや、考える力がなかった。 だが、同じような投資家が瞬間的には多くなったために、試合には勝つことができた。

 すなわち、かつてシナジーマーケティングで大儲けした投資家が、こんにちのシナジーマーケティングには乗れないということである。それがある意味での健全な成長だとも思っている。いつまでも勘違い力によってのみ相場を張っていたら、いつか壮絶な失敗をやらかすに決まっている。今でも他人から見れば多くの勘違い力にまみれているとは思うが、昔よりは遥かに蓋然性を重視した投資ができるようになった。その代わりに短期での株価上昇は見込めなくなったが、それはそういうものとして受け止めるしかない。

 話を大きく戻そう。私は若者にそーせいに関する重大なヒントをもらっていた。だが、その蓋然性はおろか、可能性についてさえ検討することを怠った。どうせ日本のバイオ株に本物はないという思い込みから、巨木の苗を手にする機会を自ら手放したのだ。

 国内にこもり、長年の安定的な事業を続けるだけの企業が業績を大きく拡大させる可能性はない。つまり蓋然性もゼロである。だが、そーせいがここから1兆円企業に育つ可能性はある。一般的な表現で言えば「その可能性は僅かにある」となるが、あるかないかで言えば確かにあるのだ。

 そして数々のプレスリリースによってその蓋然性が少しずつ高まってきたために、市場からの評価が変わって株価にも反映された。今の段階では1%が10%になったぐらいの話(この表現は適当なのでホルダー諸氏にはスルーしていただきたい)かもしれないが、当たる確率が10倍になったと参加者が見込めば、それだけ賞金が下がる=株価が上昇するのは必然だ。

 投資家はある銘柄のストーリーに出会った時、その可能性の検討については常に肯定的であらねばならない。清らかで前向きな心を持って、あるという前提でその銘柄の良い所を探してやるのである。しかし、あると見込んで蓋然性を考える段になったら、猜疑心の塊へと態度を豹変させなければならない。

 この相反する2つの心を自分のうちに同居させ、それでいて混同することのないようにすることができなければ、可能性のみを信じて見込み違いを繰り返すか、蓋然性を重視するあまり多くの機会を逸するかというバランスの悪い投資家ができあがる。

 その昔テーマ株で大儲けした自分が、いつの間にか後者となってファンダメンタリストを自称するようになり、その悪癖がますます強くなっていることを私は正しく認識してこなかった。だから、今年も数多くの機会を逃してきた。特に、そーせいのように蓋然性は低いが可能性はあり、そのストーリーが実現した時のポテンシャルがとてつもなく大きい場合には逃したショックや喪失感は一段と大きくなる。

 年を取ればそれだけでも自動的に感性は鈍磨していく。これからは初心に帰って、あの頃のような純粋な気持ちで一つ一つの可能性に向き合っていかなければ、これ以上の成長はないだろう。私が今そーせいの連日の株価上昇を苦々しく見ていることは事実だが、この苦味を感じられなくなったらそれこそ投資家としての天井である。そのことを教えてくれたそーせいと彼には感謝しなければならない。だから、最後はこんな言葉で締めくくりたいと思う。

−私はそーせいの株価上昇が憎いのではない。そーせいの可能性を信じられなかった自分自身が憎いのである。

 鋼の意志を貫き通した長年のホルダーに栄光あれ。 

村上ファンドと阪神電気鉄道の思い出

モノ言う株主として一世を風靡した村上世彰さんが証券取引等監視委員会の強制調査を受け、大きな話題を集めています。昨日は大引け間際にその一報を聞いて、関連銘柄をショートしました。こういう瞬発力の求められるトレードを得意としない私が、今回ばかりはすぐに反応できたのも何かの因縁かもしれません。

 私が村上さんの存在を知ったのは今から10年前、村上ファンドが阪神電気鉄道の買収に名乗りを上げ、表舞台で大々的に取り上げられた時のことでした。当時、阪神電気鉄道は連日の大幅高で急騰していましたが、材料は阪神タイガースが優勝間近であることぐらいしかなく、市場でも概ねそのように解釈されていたと思います。

以下、クローズアップ株式さんから画像を引用します。


阪神百貨店ストップ高!阪神電鉄は8.99%の上昇! タイガースマジック点灯効果はすさまじい

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阪神電気鉄道ストップ高。出来高も尋常ではない。

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阪神電鉄が二日連続でストップ高です! 

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 そこで、信用取引口座が開設されたばかりだった私は、「これは近いうちに材料出尽くしで下がるに違いない」と確信し、初めての空売りポジションを取りました。なまじ企業業績に関心を持っていただけに、ファンダメンタルズではとても長期的に維持できない株価にあると考えたのです。

 ところが、9日27日の昼休み中にニュース速報が流れると状況は一変します。 村上ファンドの介入が明らかになったことで、後場から寄らずの買い気配となり、株価は3日連日のストップ高。大幅な株不足に陥っていたこともあって、800円程度の株価に対して4日で80円という超高額の逆日歩がつき、これが多くの売り方の心を折りました。


阪神電鉄3日連続ストップ高。村上ファンドによる株式大量取得の影響あり。

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 その時の私といえば逆日歩はおろかTOBという言葉でさえロクに把握しておらず、第一報が入った時も、それが自分を含む売り方が処刑台に送られたことを意味するのだと言うことを即座に理解できませんでした。

 翌日は終日の寄らずストップ高。気配の出る朝8時15分から大引けの15時まで、祈るような気持ちで無慈悲な買い気配を見つめていました。特に大引け前は、ここにぶつければ利益が出るのだから爆弾を落としてくるかもしれないと期待しましたが、そんなことは当然起こりませんでした。


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 その日の夜、大幅に毀損した口座残高を見ながら、ようやく事態の深刻さを飲み込んだ私は様々な計算をしました。後もう1日ストップ高したら、口座の数字はマイナスになります。しかし、どう考えても今は異常な高値。ここを凌げば損は大きく減らせるという見立てもできるため、長期戦に備えて金策も考えました。

 でも、万が一さらに株価が上がっていき借金した分まで失ってしまったら、学歴も職歴もない自分が再び這い上がることは困難になる。だから、借金だけはどうしてもできないと思いました。数日後には追証で強制決済になることは既に決まっており、後はどれだけ被害のマシなタイミングで損切りできるかという撤退戦の覚悟を決めました。

 そして速報から2日後の9時台、ようやく売り注文と買い注文が全株一致して、売り方は長い長い買い気配から解放されます。この日は1000円台に入ってストップ高の値幅が200円に拡がっていて、始値は丁度その半分の+100円からのスタートでした。

 この寄り付きで、私は前日のシミュレーションに従ってポジションの一部を損切りしました。残りは少しでも株価が下がったところで外して多少なりとも口座にお金を残す算段でしたが、寄り付きから株価は怒涛の勢いで上がっていき、わずか10分でストップ高に到達します。

 1500円までは行く、いやいや2000円まであると言う声も聞こえる中で、その勢いはまるで株価が永久に上がっていくような恐怖感を売り方に与えました。「もう1日張り付いたら借金になる」。その未来を想像した時、私には成り行きでポジションを決済する以外の選択肢は残されていなかったのです。

 結局、私は1245円のストップ高で残りの玉を損切りしました。終値は前日比-115円の930円。まさに歴史的なド高値でした。10000株のうち3000株を寄り付きで買い戻し、残り7000株を1245円のストップ高で買い戻したわけなので、もし残した分を大引けまで我慢することができれば220万円違っていました。開戦前の資産が600万円強で、全てが終わった時の口座残高はほとんどゼロでしたから、あまりにも大きすぎるワンクリックだったと言えます。


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 その後、還付金で戻ってきた資金に給料を足してある銘柄で勝負をし、運良く大きな当たりを引けたので比較的早期に相場に復帰することができましたが、 村上さんに退場させられた直後は、絶対に復活して倒してやる!などと思ったものでした。

 ショートした2銘柄は今日の寄り付きで買い戻しました。全くの偶然ですが、利益額はほとんど600万円ぐらい。今となってはその重みもまるで違いますが、なんだか10年かけてあの時の損を返してもらったような気がして、思わず文章を書きたい衝動に駆られました。

 個人的には、コーポレートガバナンスコードの導入などもあって10年前よりも風向きが良い方に変わっていると感じていたので、こんなことになってしまったのは残念です。 良くも悪くも、その後の10年間お茶の間に株式市場のことがあれほど話題に登ることはなかったので、そういうダークヒーローが一人ぐらいいた方が世界は面白いんじゃないかという気はします。


村上さん

7/25 名古屋講演会のお知らせ

直前の告知で申し訳ありません…。
今週土曜日に行われる名証IR EXPO2015の特別講演を務めることになりました。

資料は今作っていますが、投資に対する考え方や心構え、いくつかの相場のヒントをお話しようと思います。相変わらず具体的な話に乏しく、これを聞いたから明日から勝てるという話は多分ないので、そのつもりで来ていただければ幸いです。

申し込みは下記から行えます。
よろしくお願いいたします。

http://kabuberry.com/?page_id=172 

「勝つ投資 負けない投資」 出版しました

このたび、初めての本を出しました。


勝つ投資 負けない投資

 

今回の本は、巨大運用機関の現役ファンドマネジャーであり、人気投資ブログ「仙人の祈り」で多くのファンを持つ小松原さんとの共著という形になっています。

小松原さんとは人の縁で繋がり、そこから一緒にやろうということになったのですが、打ち合わせを重ねて互いの投資観を交わすたびに、この人は本当に能力があり、そして何より投資が好きなんだなという事がわかるようになっていきました。小松原さんは運用者としても抜群に優れていますが、それよりも投資家として信頼のおける人物であったということが、今回組むことになった一番の決め手と言えます。

そんな小松原さんと決めた今回のコンセプトが、「誠実な投資本」を作ろう、というものでした。 実はこの本、元々は人気投資ブロガーであった小松原さんのところに単著の企画として持ち込まれたものに、後から僕が入る形になっています。

小松原さんは当初から、どんな時代にも読まれる普遍的な入門書を残したいと考えていました。投資のやり方そのものは時代によって流行り廃りがあり、幾人ものカリスマ投資家が現れては消えていくのがこの世界の常です。こんなことを書いている僕も、数年後には失敗していなくなっているかもしれません。ですから、やり方や人にフォーカスした内容では読み手にとって誠実なものとはなりにくい。そういう考え方がこの本の根底にはあります。

とは言え、僕は”現時点で”実績を残している個人投資家という触れ込みで起用されているわけですから、「これはあくまでも僕という人間がたまたまこのやり方で上手く行っただけに過ぎませんが」という前置きをした上で、自分なりの考え方、取り組み方を語っています。

僕がこの本で伝えたかったことはたった一つで、それは「自分の頭で考えろ」ということです。投資本を一冊読んだくらいで勝てるようになるほどこの世界は甘くありません。だからこそ、そこに勝ち続ける機会が存在します。

そして、誰かにとっての勝ち方はその人にしか見つけることができません。だから、僕は敢えて自分という人間がわざわざ本を書くならこういうことだろうと思うことだけを書いていきました。

なので、人によっては何も語っていないように感じるかもしれません。せっかくお金を出して買っていただいたのでそれ自体は残念なことですが、しかしそれこそが狙いでもあります。投資において万人に通ずる内容にしようと思えば当然誰もが知っている内容にしかなり得ないし、そうであれば僕が書く必要はないからです。

そんなことを考えながら、現状で僕の持てる限りの誠実さを振り絞ってこの本を書き上げました。恐らく、僕が現役でいる限りはこの先にまた投資の本を書くことはないと思います。 

引退して墓に入る前か、破産してお金に困れば全てを記した何かを出す気になるかもしれないですが、これから僕がやりたいと思っていることと、自分がやる以上は最高のものを作りたいというポリシー、そして読者への誠実さを全て満たそうと思うと、「これ以上のことは何も書かない」という結論になることがわかりました。

それがどんな内容になったのか、もしよければ一度読んでみていただけたら嬉しいです。 

パイの大きさには限りがあるという話


MarketHackにネット広告に関する興味深い記事が続けて投稿されていました。

その記事によると2004年から2014年の間に、ネット広告市場の規模は130億ドルから1,420億ドルに増えました。これは年率換算+27%です。

これに応じてネット広告がグローバルの広告市場全体に占める割合も、4%から26%へと増えました。つまり広告主は紙などの従来の媒体からネット広告へ予算をシフトしているわけです。

問題はグローバルの、すべての広告市場で見た場合、10年間の年率換算成長率は僅か+1%に過ぎないという点です。

スーザンは「これは理屈に叶っている」としています。なぜなら消費者が広告に接する時間は限られているし、企業が宣伝広告費に割ける予算は、ほぼ一定だからです。

すると地上波、ラジオ、紙メディアなどの既存媒体から、あとどのくらいネット広告がマーケットシェアを奪えるか? ということに注意を払いはじめるべきだというわけです。

これでグーグル、フェイスブック、ツイッターという広告モデルを採用しているネット企業は売上高面で全て落胆すべき決算を出したことになります。

何かが、変わってきている……

このひとつ前に、元カリスマアナリスト、スーザン・デッカーの主張を紹介しましたけど、未だ読んでいない人は必ず読んでください。

「ネット広告市場が、鈍化している!」という認識が米国の投資家の間に広まり始めています。これは関係各社のPER(=評価)が下がる前兆です。

この議論は今になって始まったことではないですが、投資の世界ではこのような象徴的な出来事があると、しばしば急速に広まっていくことがあります。

僕は一時期、アドテク関連の情報を徹底的に漁っていたことがありました。レオスに入った直後なので2年近く前だと思いますが、ユーザーがウェブサイトを閲覧した瞬間に、まるで株の売買のようなプロセスで広告が入札されているという話を聞いて非常に興味を持ったのです。

それで色々考えてみたのですが、最終的に出た結論は今回の引用記事と同じものでした。 企業のマーケティング予算という制約がある限り、どんなにアドテクが進化しようが既存プレイヤーとの奪い合いにしかならないと思ったのです。なので、投資アイデアとしてはそれまで横並びで成長してきたネット広告のプレイヤーの中で優勝劣敗が進むだろうというものになりました。

ちなみにその時に見ていた企業の中に、2013年にナスダックでIPOしたRocket Fuelというアドテク企業があったのですが、13年10月に66ドルまであった株価は現在8.75ドルまで下落して、時価総額は430億円ほどになっていました。

ネットは非常に便利ですが、ビジネスという面で見れば、基本的にはリアルの市場から売上を切り取って来ている形になっています。かつては海のような大きさだったリアル市場に対してネット市場は水たまりのようなものでしたが、産業によって色合いは違うものの、総じて今はその差が縮まってきています。米国では既にネット広告費がテレビ広告費を上回ったそうですが、こうなると、プレイヤー間の競争はますます激しくなっていきます。

スマホゲーム市場でもこれに近いことが起きていました。グリーとDeNAが耕した土地を、後からやって来たネイティブ勢が非常に効率よく刈り取ったために、ネイティブゲームの企業はここ1,2年で物凄い成長性を見せましたが、ここからは市場全体の成長率に収斂するようになっていくのではないかと思います。

今、売上高が10億円にも満たないようなアドテク系、マーケティング系のIPOが雨後の竹の子のように出てきています。 今はまだ規模が非常に小さいので、年率何十%という高成長をたやすく実現できますが、これがもう少し大きくなってきた時には必ず壁にぶつかることになると思います。

これらのうちの幾つかは、実際に成功して素晴らしい企業に成長していくと思いますが、それら全てに今付けられている企業価値を正当化するだけの業績が実現できるかと言うと、なかなか難しいような気がします。

売上高10億円、純利益1億円の会社にPER100倍がついて時価総額100億円。 こんな企業が10社あれば時価総額の合計は1000億円になりますが、今の日本で1000億円以上しているネット企業がどれだけあるかと言う話です。

無限に思われたネット市場の成長性も、場所によっては少しずつ限りが見えてきているように思います。ビジネスをする際にも投資をする際にも、その売上はどこから来ているのか?顧客のサイフは潤沢か?ということを少し意識した方が良いタイミングなのかもしれません。 

以上、毒にも薬にもならない当たり前の話でした。 

【告知】叶内文子さんとWebラジオやります!【意見募集】

 来年から岡三オンライン証券さんのスポンサーで、ラジオNIKKEIなどでアナウンサーをされている叶内文子さんと、株のWebラジオをスタートします。詳細はまもなく岡三オンライン証券さんの方から公開されますので、いましばらくお待ちください。

 それに先立ち、今月の19日にプレ放送をニコニコ生放送で行います。映像ありです。今までとは違うインタラクティブな面白い番組にしたいと考えており、そのためのアイデアを皆さんから募集します。このブログ記事に非公開でコメントするか、 hakurei.cm@gmail.com までドシドシご連絡下さい。

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 やる以上はこれまでにない新しいもので思いっきり盛り上げたいと思っています。皆さんのご協力お待ちしております!

【人材募集】マーケットリサーチ職

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[FireStorage(登録不要)] http://firestorage.jp/download/3682c9151c5b8b7fa46e47044686988611a1061e

PC向けPNGファイルZip/中画質(38.1MB)
[FireStorage(登録不要)] http://firestorage.jp/download/a6bfbfbcf32ffea879c1af6a02a74e3ef3546fe3

PC向けPNGファイルZip/超高画質(94.7MB)
[FireStorage(登録不要)] http://firestorage.jp/download/67345923eaad49299c02c31c2f29fb6cbfa5dd20

ニコニコ静画(ダウンロード不要) http://seiga.nicovideo.jp/watch/mg104826


 上記URLからダウンロードを行って下さい。ファイルサイズが24MB〜94MBと大きいので、Wifi環境でのダウンロードをおすすめします。

 2010年末のコミックマーケット79にて頒布した最初の同人誌「東方粉飾劇」の電子版を無料公開しました。同人書店での取り扱いも今年で終了し、事実上流通経路がゼロになってしまっていましたが、コメントで再販の要望があったので電子化という形で対応しました。内容は2011年1月の第二版から変わっていません。

 本当は利便性や認知度を考えてKindleストアに上げたかったのですが、無料の書籍の登録が出来なかったので暫定的にDLマーケットに出しています。会員登録が必要ですが、FBやツイッターのアカウントでも登録出来ます。もっと良いアップロード先があればご連絡いただけると幸いです。

 再びマーケットが活況になっている今だからこそ、株式市場ではこのような不正が起こりうるのだと言うことを頭の片隅にでも置いていていただければと思います。


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