エフオーアイが破産申請した。上場の5年も前から粉飾を行い、直近の売上はほとんどが架空。そして公開からわずか6ヶ月での破産。規模はともかく、その悪質さでは日本の株式史上最悪クラスの事件になるのではないだろうか。

 そんな事件を回顧する機会があった。聞いた話を総合すると、「上場審査に関わったプロたちの目が節穴で、何の疑念も持たずに審査を通した」と言うのはやはり考えにくいようだった。その上で会社に騙されたのか、あるいは承知しながら手を貸したのかはわからない。だが、ここまであからさまに不審な点があり、審査段階で東証への情報提供があったとまで報道されているのになぜ防げなかったのかと言う疑問は残る。

 東証は主幹事や監査人がOKと言ったものを再審査するほどの手間はかけられないしその体制も整っておらず、監査人も海外まで出向いて検収状況を確認するのは費用や人員の面で難しいようだ。何しろ監査報酬を出しているのはクライアント自身だ。高い費用をかけた上に厳しくされて問題が起こったのではたまらない。むろん大手監査法人、大手証券なら万が一のことが起きたときのリスクを考えて普通は自制するところだが、ビジネスである以上は金が出るなら引き受けるところが現れてもおかしくはないと言う事なのだろう。

 もちろんこうして事件となった場合にもっとも直接的に被害をこうむるのは一般投資家なので、東証は何やってるんだ!監査人仕事しろ!主幹事は連帯責任で腹を切ってしね!と言うのは当たり前のことである。しかし、停滞する日本経済にとって新興企業の活性化は重要な課題でもある。エフオーアイ一社のために制度を複雑化し上場へのハードルを上げるのはデメリットも大きい。現実的にどこまでやるべきかは慎重な議論が必要なのだと思う。

 明確に行われるべきは経済事犯の厳罰化だろう。今回の公募に際してエフオーアイが調達した金額は実に60億円にもなる。人の人生を定量化するのはいささか問題があろうかと思うが、生涯賃金が今や2億円とも言われている時にこれだけの金額を詐取したのだから相応の報いを受けるべきだ。結局のところ犯罪とてリスクリターンの世界なのだろう。ねずみ講のような古典的詐欺でさえ何時まで経ってもなくならないのはそういうことだと僕は思っている。

 事件の発覚以降、エフオーアイが昨年のクソ株ランキングに入っていたことについて聞かれることが何度かあった。07年のIXI、08年のプロデュースと立て続けにショッキングな粉飾銘柄が出たが、どちらも有望な新興企業と目されていて自分も真剣に投資を考えた時期があった。

 特にプロデュースは危なかった。ソニーやシャープとの取引をほのめかしたり、ノキア向けに数十億の大型受注が決まったなどと社長が決算説明会でフカシまくっていた。今となってはよくもまーあんなに平然と嘘をつけるものだと思うが、当時はすっかりそのグローバルな展開力に夢を見てしまっていた。なんせあのゴールドマンサックスも「強い買い推奨」でレーティングをつけていたぐらいだ。エフオーアイほどにわかりやすいB/Sでもなかったので騙されるのは無理もなかった。

 買いを探っている途中で発覚したので良かったが、自分も被害者になる寸前のところに身をおいていたわけだ。そうなれば今頃は株を続けていられなかったかもしれない。どれも時価総額がそれなりにあったから探せば大変な思いをした人が必ずいるはずで、それは決して他人事とは思えなかった。

 仮にエフオーアイが目論見通りに成長してそれを疑ったことが自分の汚点となったとしても、別に風説の流布や誹謗中傷を行ったわけではないのだからその時は頭を下げれば済む話だ。それよりも万が一にも事が起こったとき、ささやかでも警鐘を鳴らしておくことで1人でも難を逃れる人がいてくれたらと考えたのだ。

 この市場では多くの理不尽なことが起こる。だが、今回の件のようにしっかりと観察することで事前に兆候を察知出来る場合もある。そんな風にして回避出来ることなんて、数えきれないほど起こる理不尽な事象全体に比べればごくごく一部に過ぎないかもしれない。でも、そもそも一般投資家が自らの力でどうにか出来ることなんて限られているのだ。それならば、せめてこうした回避し得る地雷だけは踏まないような努力をしていきたい。改めてそう思わせられる事件だった。

 もっとも、今回のエフオーアイを超える粉飾事案が今後発生するとも思えないが。