世界に蔓延する最も致死率の高い感染症をランキング形式で紹介する。
※致死率とは、死亡者数を感染者数で割った値であり、当記事では、致死率の最も高い近年の感染症の比較を行っている。

10.破傷風(致死率50%)

破傷風菌
破傷風菌

土の中に存在する嫌気性の破傷風菌が、ヒトの傷口から侵入することで発生する感染症である。
発展途上国においては、数十万~百万程度の死亡数が推定されており、その大多数が乳幼児である。
(成人の死亡率は約50%であるが、乳幼児にいたっては80~90%にもなる。)

症状 骨折を引き起こすほどの強烈な筋肉の痙攣

 破傷風菌は神経毒と、溶血毒を身体中に作り出し、全身の筋肉麻痺や痙攣を引き起こす。
初期症状として、口が開きにくい、舌のもつれなどが現れる。
その後、歩行障害や背中の筋肉が硬直化し、全身が弓なりに反るなどの重篤な症状が現れる。
最悪の場合には、筋繊維が強力な力で収縮することにより、背骨が骨折し、死に至る。

破傷風
破傷風患者を描いた絵画

破傷風の末期は、これらの発作により、体中の骨がバキバキ折れる音とうめき声で、もがき苦しんで悲惨な最後を遂げる

治療法 予防ワクチンあり  

初期においては、ペニシリンなどの抗生物質が有効である。
中期においては、効果は薄くなり、菌を完全に殺すことができないため、菌から産出される毒素を中和する治療に徹する。
予防ワクチンが非常に有効であり、日本においては小児定期予防接種のワクチンに含まれている。
 


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9.黄熱(致死率50%)

黄熱
ウイルスの宿主、ネッタイシマカ

黄熱ウイルスを保有するネッタイシマ蚊によって感染する感染症である。
主に熱帯アフリカや、中南米で流行しており、毎年20万人が感染し、3万人以上が死亡している。
また、死亡患者数の90%がアフリカに集中している。

症状 黄疸(おうたん)がみられる

潜伏期間は3~6日であり、最初は風邪のような発熱、頭痛の症状を示す。
軽症の場合には、発症後3~4日で、そのまま回復することもある。
しかし、重症例においては、数時間~2日後に再燃し、 眼球や皮膚などが黄色く染まる黄疸(おうたん)や、黒色嘔吐、鼻や歯からの出血、血便などがあらわれ、死亡する場合がある。

黄疸
黄疸:目の部分が黄色に変色している

治療法  特効薬なし、予防ワクチンあり

現在、一旦かかってしまった際の特効薬はないが、ワクチン(17D)により事前に予防することが可能である。
アフリカの国々、ブラジルなどの中南米に行く場合には、最寄りの検疫所で予防接種を受けることが推奨される。

黄熱病感染地域
黄熱病感染地域

8.鳥インフルエンザ(致死率54%) 

鳥インフル

鳥インフルエンザが鳥類から人に感染して起きる伝染病である。
このウイルスは、野生のアヒル、カモなどの水禽類と共生しており、若鳥の20%がこのウイルスに感染しているとの報告が挙げられている。

ウイルスは、腸の中で増殖し、糞便を介して他の鳥類に感染する。
一般的な鳥インフルエンザでは、感染しても宿主は発症することは無い。
しかし、ウイルスの中にはニワトリなどに感染すると非常に高い病原性を持つウイルス(高病原性鳥インフルエンザ)があり、これが鳥から人に感染し、2003年~2005年の東アジアで大流行した。
この間、1億羽のニワトリが処分され、349人の感染者、216人が死亡した。

このウイルスは鳥から人に感染するのみで、人から人に感染することはない。
しかし、今後ウイルスが突然変異し、ウイルスに対する免疫が無いために最大5億人もの死亡者数を出すパンデミックが起こる可能性も指摘されている。
H5N1
H5N1発生地域(赤色:家畜のみ、深赤:ヒトにも感染)

症状 風邪の症状と同じ

大流行したH5N1亜型のウイルスでは、発熱、せき、筋肉痛、結膜炎などの症状がみられ、重症化した場合には肺炎などによって死に至る。
症状の重さは、感染者の免疫によって変化するが、全身の臓器において増殖が起こる強力なウイルスであるため、非常に致死率が高い。

治療法 タミフルが有効

tamihuru

H5N1に対する確実な治療法はない。
しかし、タミフルを使用することで、ウイルスの増殖は抑制できる。
これらのウイルスを予防するためのワクチンが既に製造されているが、H5N1型は絶えず変化し続けているため、ワクチンが使用できる処置は限られている。
そのため、パンデミック(大流行)が発生した際に、ワクチン製造会社が迅速にかつ大量にワクチンを作る事が求められる。

7.腺ペスト(致死率65%) 

クマネズミ

げっ歯類(特にクマネズミ)が保有するペスト菌が人に感染することで発症する伝染病である。
人への感染経路として、ノミがウイルスに感染したネズミの血を吸い、次いで人が血を吸われることで発症することが多い。
14世紀のヨーロッパではこの伝染病にかかると皮膚が黒くなり致死率が高いことから黒死病と呼ばれ、恐れられていた。ペストの大流行により、ヨーロッパの当時の人口の3割(約3000万人)が命を落としたとも言われている。

症状 初期:リンパ節の腫れ

2

ノミなどに刺されて感染した場合、まず刺された部分のリンパ節がはれ、次いで股関節近くの鼠径部のリンパ節が腫れて痛み、こぶし大の大きさまで腫れ上がる。
ペスト菌が体中で、毒素を生産することで、意識が混濁し、心臓が衰弱して、ほとんどは1週間くらいで死亡する。
また、敗血症状が出る場合が多く、皮膚のあちこちに出血斑ができ、全身が黒いあざだらけになる。
通常、何も対処がなければ致死率は50~70%に達する。

ペスト患者
ペスト患者

治療法 ワクチンで予防可

ペストの治療には、抗菌薬が非常に効くため、初期に治療を行えば、死亡率は20%以下まで落ちる。
予後の後遺症もほとんどの場合残らない。また、ワクチンでの予防も可能である。


現在、ペストは流行はしていないが、毎年少なからず死亡する事例が報告されている。
それらのほとんどは人が直接、げっ歯類を捕食したために発生したことがわかっている。

6.Bウイルス感染症(致死率70%) 

アカゲザル
アカゲザル

この感染症は、アカゲザルなどの霊長類が保有するBウイルスにより人へ感染する。
1932年にアメリカのポリオウイルス研究者であるBrebner, W.がアカゲザルに咬まれ、急性進行性髄膜脳炎で死亡したものが最初の報告とされている。

この感染症は世界でも40例程度であり、人への感染力は非常に弱い。
Bウイルスは主に東南アジアに常在し、日本にも存在しているが、現在、人への感染は確認されていない。
また、人への感染のほとんどは、サルに咬まれることによる。

症状 初期に強い痛みとかゆみ

初期症状として、感染部の激痛、かゆみ、感染部周囲の水ぶくれ、潰瘍、リンパ節が腫れる症状がみられる。
中期では、発熱や感覚異常がおこり、晩期になると、頭痛、吐き気、嘔吐、意識障害、脳炎の症状を示し、死亡に至る。

治療法 特効薬あり

感染初期においては、アシクロビルなどの有効な特効薬があり、中期以降の悪化を防ぐ事ができる。
しかし、事前に予防可能なワクチンは実用化されていないため、サルを取扱う人は、飼育や消毒に対して、十分に注意しなければならない。

5.マールブルグ熱(致死率80%) 

マールブルグ熱
マールブルグウイルス

感染源となるマールブルグウイルスは、1967年に西ドイツのマールブルクでポリオワクチンの研究者たちに発見されたもので、現在までに400人近くが死亡している。
自然界での主な宿主は不明であるが、様々な野生動物(サル、コウモリ、鳥類)から感染することがわかっている。
また、感染者の血液、体液、分泌物、排泄物などとの接触により人から人への感染も報告されている。
主な発生地は中央アフリカであり、2005年にアンゴラで発生した集団感染では、388名の感染者のうち、324名が死亡している。

現在でもこのウイルスに対する不明点は多く、空気感染や飛沫感染するのかについても明らかになっていない。

症状 風邪に似た症状 終期には血液凝固によるショック死

潜伏期間は3~10日程度、感染初期では、皮膚の発疹発生が特徴的である。
初期症状として、全身の倦怠感、発熱、頭痛、下痢、嘔吐、筋肉痛などが見られる。
1~2日後には吐血、下血する。
最終的には、体中で血液が凝固し始めるはしゅ性血管内凝固症の症状が見られ、ショック死する。

治療法 なし

現在のところ、治療法は全くなく、予防ワクチンも無い。

4.エボラ出血熱(致死率83%) 

エボラウイルス3dモデル
エボラウイルス3Dモデル
 
コウモリと共生するエボラウイルスが、霊長類や豚などの家畜、鳥類などを媒介にして、人が捕食することで感染する。
人から人への感染は、体液や血液などによって伝染し、空気感染することはない。
このウイルスは、脂質で覆われているため、石鹸やアルコール消毒に非常に弱く、公衆衛生が整備されている先進国で流行する可能性は低いと見られている。

一方で衛生環境の悪いアフリカを始めとした発展途上国では、注射針などの医療器具の使い回しや、衛生意識の低さなどから感染者数は増加している。
エボラウイルスは、一般的なインフルエンザウイルスに比べて、非常に感染力が強く、インフルエンザウイルスが、体内に数百個~数万個入らないと感染しないのに対して、エボラウイルスは1個のウイルスが入っただけでも感染する。
そのため、途上国においては、衛生環境を充実させることが非常に重要になってくるだろう。

症状 全身からの出血

潜伏期間は通常7日程度。
発病は突発的で、発熱、悪寒、頭痛、筋肉痛、食欲不振、嘔吐、下痢などの症状があらわれる。
進行すると、全身に出血、吐血、下血がみられ、死亡する。致死率は最大90%以上にもなる。

エボラ出血熱感染者
エボラ出血熱患者(イメージ)

治療法 なし

現在のところ、治療法はなく、有効なワクチンもない。症状の晩期になると、マールブルグ熱と同様に血液凝固が始まるため、抗凝固薬の投与が行われているが、直接的な治療法は確立されていない。


現在、ギニア、リベリア、シエラレオネ、ナイジェリアの西アフリカで大量感染しており、感染者3967人のうち、2105人が死亡している。(9月5日時点)

エボラ出血熱感染地域
エボラ出血熱感染地域

3.後天性免疫不全症候群(AIDS)(致死率90%) 

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ヒト免疫不全ウイルス(HIV)が、ヒトの免疫細胞に感染して破壊し、病気に対する免疫力を極端に低下させるAIDS(エイズ)の発症を引き起こす。
HIV感染者のほぼ100%がAIDSを発症するため、適切な治療が施されなければ、数十年後にほぼ死亡する。

しかし、HIVは非常に弱いウイルスであるため、普通の社会生活をしている分には、感染者と暮らしたとしても、感染することは無い。
感染のほとんどは、性的な接触によるものである。
感染者の血液・精液・母乳などから、傷のある皮膚に進入することで感染する。


現在の感染者数は世界で5千万人に達しており、そのほとんどがアジアやアフリカの開発途上国である。

特にアフリカには、2940万人(全患者の70%にあたる)が羅患しており、南アフリカ共和国、ボツワナ、スワジランド、ナミビア、レソト、ジンバブエ、ザンビアの7か国においては人口の15%以上が感染している。
特にボツワナにおいては、全国民の約40%にも上り、平均寿命を大きく低下させる要因となっている。

世界のHIV2009
引用:http://bit.ly/1tCJwyB

日本の患者数  男性患者が圧倒的

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日本においては、平成25年度の新規HIV感染者数は、男性が280件、女性が13件と世界からみれば非常に少ない。
一方で、エイズの感染者数は全体で2万人であり、現在も少なからず増え続けている。
その原因のほとんどが男性間の性的な接触によるものであり、これが新規感染者に男性が非常に多い原因となっている。

症状  初期、中期は風邪と区別が付かない

潜伏期間が5年~10年と長く、それまで症状が無いケースも多いため、発症するまで気づかないことが多い。
潜伏期間においては、ウイルスは盛んに増殖を繰り返し、免疫細胞が減少し続ける。
免疫細胞がウイルスによりほとんど壊滅すると、最初は体重の急激な減少、慢性的な下痢、極度の疲労、めまい、口内炎、発熱、せきなどの風邪に似た症状が見られる。
その後、普通の生活では絶対にかかることのない様々なウイルスや病気に感染し、死に至る。

※潜伏期間中においてもHIV検査は有効であり、不特定多数との性的接触を行った場合には、定期的に検査することが推奨される。

治療法 完治は非常に困難

抗HIV薬の発展はめざましく、現在では、複数の抗HIV薬を組み合わせる多剤併用療法により、通常の寿命を全うすることも可能になっている。
しかし、この療法は開始すれば、一生継続しなければならず、副作用などもみられることから患者への負担は非常に重い。

2.炭疽症(致死率92%) 


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炭疽菌

羊やヤギなどの家畜や野生動物からヒトに炭疽菌が侵入することで発症する感染症である。
ヒトからヒトには感染は起こらない。

生物兵器としての利用 (空気感染)

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大陸弾道ミサイル

炭疽菌(たんそきん)の芽胞を吸い込むことで空気感染する。
非常に致死率が高いことや、増殖力が非常に強いことから、生物兵器としての開発が行われている。

また炭疽菌は、保存期間が1年から7年と長く、長期間利用が可能であることも、生物兵器としての利用価値を高くしている原因だ。
旧ソ連においては、大陸弾道ミサイルにこの生物兵器を搭載していたとされている。

症状  黒いかさぶたが特徴的(皮膚感染の場合)

炭疽菌が皮膚の小さなキズから侵入すると、1-7日後にニキビのような小さな発疹が現れたあと、黒いかさぶたができ、高熱がでる。
この間に適切な治療が行われれば80%近く助かる。
その後、インフルエンザのような症状を示し、高熱、せき、血痰により呼吸困難に至り、死亡する。
炭疽症
炭疽症による黒いかさぶた

治療法 初期:抗生物質により治療可能

ペニシリンやテトラサイクリンなどの抗生物質により、症状初期ならば治癒可能である。
ワクチンによる予防は、副作用が非常に強いため、推奨されていない。
予防法としては、炭疽症にかかった家畜地域の肉を食べずに殺処分し、汚染物などを焼却、消毒するようにすることが重要である。

1.狂犬病(致死率100%) 

狂犬病
狂犬病にかかった犬
 
狂犬病ウイルスを保有する 野生動物(ほぼ犬)に咬まれることで発症する感染症である。
世界で毎年約5万人の死者を出している危険な感染症の一つとなっている。
狂犬病は水などを恐れるようになる特徴的な症状が出るため、恐水症とも言われている。


(動画)水を怖がる狂犬病の子供

発症後の致死率は99.99%であり、2014年においても、生き残った症例は5例しかない。

症状  音、風、水を怖がる

症状初期は、風邪に似た症状を示すほか、咬傷部位にかゆみ、熱感などがみられる。
中期には、不安感や水を飲もうとすると喉の筋肉に痙攣が起こり始めるため、恐水症状を示すようになる。
喉が乾いていても、水を飲み込めなくなるため、患者は非常に苦しい時を過ごさなければならない。
また、風の動きや光にも過敏に反応するようになり、精神錯乱におちいる。
その2日後から、7日後には全身の筋肉が麻痺し、呼吸困難により死亡する。

狂犬病患者
狂犬病患者、精神錯乱状態におちいるため、暴れないように手足を縛る

治療法 なし

発症後は、ほぼ100%死亡する。

感染前であれば、ワクチンの接種により予防が可能である。
これは、犬においても同様であり、日本においては、飼い犬の市町村の登録や、毎年1回の狂犬病ワクチンの予防接種が義務付けられている。

また、外国旅行において野生動物に咬まれた場合は、よく傷口を消毒し、すぐに発症予防のワクチンを接種することで、発症を未然に防げる場合がある。
参考:List25:http://bit.ly/1thuKJI