2007年11月14日

AM3:17 アミーゴ横須賀

半ば崩壊したショッピングモール、天井の亀裂から差し込む月の光で少しだけ明るい中通りをゆっくりと歩いていた。

いつもの生活リズムに戻ってから夜を持て余すようになり、最初は動画サイトでも見ながら時間を潰していたが、
身体はインドアライフを好まないらしく色々と考えた結果、定番のGTへ繰り出すことに。

「とはいえ……アミーゴは失敗ですね」

後ろに視線を向け、独り言をもらす。
背後にはアミーゴの名物とも言える、大量のリビングデッドが骸(と言っても吊下さんではない)となって転がっている。

「でも引き返すのも面倒ですしねえ……あら、無理か」

独り言を呟きつつ今日の方針を考えていたら、視線の先にまたリビングデッドが……
その情景に思わず笑みと言葉が出た。

「良いね、考える余裕が無いのって」
だろ、だからここ好きなんだよねェ

聞いたことのある声に思わず、視線を隣に向ける

「……江間?」

そこにはオレンジのツナギとゴーグルの男が立っていた。
こんな時間に何故……?

「どしたの。片付けよーぜ」

問いかけようとしたところを遮るかのように、小振りな頭がついた長めのハンマーをくるくると振り回すと、
彼はこちらの行動を促す。

「……ああ」

心の中に漠然とした『なにか』を飲み込み、僕は頷いた。


一人では難しいものも、二人では簡単になるもの。
実際、僕と江間だと属性は偏るがほとんどの範囲をカバーできるので大量のリビングデッド相手でも問題は無かった。
僕が戦端を開き、江間が戦槌を叩き込む。
江間が叩き込んだ弾丸の雨の中を僕が走り敵を討つ。
これで大体の敵は片付いてしまう。

結局、彼と合流してからアミーゴ攻略まであっという間だった。

しかし、今日の彼はいつもと違っていた。
この時間に居ることもそうだが、何よりも……戦い方が変だった。

……これだったのか。
胸中に抱いた『なにか』の一端を感じつつ、僕はリビングデッドの首を跳ね飛ばし、
そして地上を這っている鮫に立ち向かう彼の背中を見つめた。


――作業――

江間という男の戦い方を表現するにはこの言葉が当てはまっていた。
ハチさんのように勢いだけで戦わず、渕埼寅靖のような相手を制する戦いでもない。
長柄の戦槌を以って効率的に壊し、潰し、倒す。

黄金と刃の人間にも近い戦い方をする人間はいたが、それよりもさらに効率を追求していた。

……が、今日はその作業の出来がすこぶる悪い。
力任せに戦槌を振るい、勢いで押し込む。
石突で目を穿ち、衝動的に滅多打つ。
その動きは非常に感情的で作業と言うにはほど遠いものだった。

「終了」

鮫の頭部をスイカのように叩き潰し、江間はこちらに向けて言い放った。
まるで何かを押えつけているように……。


――ガゴン、ガゴン!
自販機で炭酸飲料の缶を二つ買い、そのうちの一つを投げ渡す。

「どうした、江間?」
「…何が?」
ぶっきらぼうに答えると、ゴーグルも外さずに缶を見つめ
飲み口を自分の顔から離して缶を開けた。
ガスが飛び出す音と噴出した飛沫が床を濡らす。

「んー何って……普段と違うからさ。なんか遭ったかと思いまして?」
イタズラをスルーされ内心残念に思いつつも疑問を口に出す。

自称セクシーメイツは持っている飲み物を一口飲むとゴーグルを外し口を開く。
「…ン、ちょい落ちてるだけ。悪ィ」
それから眩しさに慣れるかのように目を擦りはじめる。

「ふーん……それだけですかねえ」
その様子を見ながら、答えてみる。

……何だろう、答えに納得が出来ない。
何か覚えがある感覚、その感覚に答えるかのようにますます募る疑問。

ふと……思ったことをそのまま口に出してみた。

「……なんだか、自分なんてどうでもいいなんて感じなんですけど」

「…誰のこと?」
橙の瞳が不思議そうにこちらを見つめる。
何かバツが悪いと言うか、余計なことを言ってしまったような気がして彼の顔から視線をそらす。
視線が逃げた先には彼が愛用しているゴーグルがあり、
そこに映る覆面を被った少年に話し掛けるように、僕は言葉を続けた。

「いやね……そんな感じに見えたから」
「……そう?」
首をかしげて笑う江間。
「鈍くてごめんねェ」
まるで何か誤魔化すような笑い声。

「んー気のせいです、忘れてくださいな」
こちらも答えて笑ってみる。
ゴーグルの中の少年は何か誤魔化すような顔をしていた。

「…で、お前はどうすんの、帰る?」
「そうですねえ……もう少しで朝になりますから、そうなったら始発にでも乗って帰りますよ」

そう答えると起動を解除し、私服に戻る。

「じゃあ、また学校で」

眼鏡をかけてそう言うと、僕は駅のほうへ歩き始めた。












『どうでもいいのは誰?』



luchakage at 00:33│Comments(0)TrackBack(0)SS 

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