01
依頼をこなすため、とある島の洞窟を訪れた一行。
その依頼とは、行方不明になった少年の捜索であり、イオは張り切って先導していた。

ねぇー、誰かいるのー? いるなら返事しなさーい!
おーい! ……う~ん、反応がねぇな。 こっちの道じゃねーのか?
02
もっと奥でしょうか? 魔物がいそうな雰囲気ですけど……
魔物っ!? いいわね、じゃあ奥に進みましょ!
おいおい…… なんではしゃいでんだ? 魔物がいたら困るじゃねーか。
03
ふふん、好都合よ。 魔法を振るうチャンスだもの!
旅を続けて、最近自信ついてきたのよね! もっと戦えば、どんどん魔力も──
イオちゃん、いました! 依頼の子供です! で、でも……!

04
うぇ~ん……! おとうさん、おかあさ~ん!
グルルルルッ!

05
ヤ、ヤベェ……! 魔物に囲まれてやがる!?
よーし、あたしに任せて! ……えい
グオッ……!?
06
ふっふーん! さーて、お次は!?
グアァ……!
すごいです、イオちゃん! 本当にパワーアップしてます!
あぁ、そうだな! イオのヤツ、いつの間に……
07
って、おい! あの子供はどこいったんだ!?

08
うわあぁぁん! だ、誰か助けてぇ……!
グオォォォン!

09
あああっ!? ウソ、ちょっと目を離した隙に……!
に、逃げて! ……ダメ、間に合わない!?
グオオオオッ──
え…… ま、魔法……!?
10
フフ…… どうも騒がしいと思ったら。 危なかったわね、坊や?
あ、ありがとう……! 食べられちゃうかと思ったよ!
ス、スゲェな姉ちゃん! 魔物が一瞬で吹っ飛んでったぜ!
たいしたことじゃないわ。 それより、貴方達も怪我はない?
11
はい、私は…… あ、イオちゃんは大丈夫ですか?
…………
おい、イオ?
……ん、平気よ。

12
そう、良かった。 じゃあ残りの魔物も手伝うわ。
その代わり、薬草を集めるの助けてね?


少年の救出を労い、村長が宴会を催すと、村人達は口々に女魔導師を称賛した。

13
聞きましたよ、魔導師様! すごい魔法を使うんですってね!
いやぁ、感動したぜ! あんたの銅像を建てさせてくれ!
そんな、気になさらないで。 当然のことをしたまでだもの。
14
…………
でも、ほんとスゲェよな! あんな魔法、見たことないぜ!
フフ…… 貴方達だって良い腕をしていたわ。
まだ若いけど、騎空団なのよね?

15
はい、そうです! 私達、星の島イスタルシアを目指してるんです。
へぇ、星の島? 面白いじゃない。 ……気に入ったわ、貴方達のこと。
どうかしら。 この私を仲間にする気はない?

おおっ!? もちろん大歓迎だぜ! なぁ、冷凍マグロ!
16
フフ、ありがとう。 ただ、ひとつ条件があるの。
魔導師は私ひとりで充分…… 他の魔導師は解雇してほしいのよ。

……っ!?
17
ええっ!? そ、それは……
そういう主義なの。 私がいれば百人力よ? それは洞窟で証明したはずだわ。
い、いやぁ…… 姉ちゃんが強ぇのはわかるけどよ。
……ずっと探してた。 命を預けられるような仲間を、ね。
貴方達も私の魔法が必要でしょう?

18
……ストーップ!
ん……? どうしたの?
19
え、え~っと…… ちょっと説明不足だったみたいね。
あたし達、帝国軍に追われてるの!
すっごい危険なのよ~? 考え直したほうがいいんじゃない?
帝国軍に? ……へぇ、腕が鳴るわね。
20
あぅ……! あ、あと、ほら、他にもね? むさいオッサンの団員もいて……
ラカムは汗クサイし…… オイゲンはお酒クサイし……
と、とにかくなんか色々クサイの!
おいおい……
そういうわけで、普通のレディには無理だと思うな!
21
フフ、楽しそうじゃない。 そういうのも騎空団の醍醐味よね。
はぁ……!? な、なんなのよ…… あんた全然わかってないわ!
団長はマグロだし、ビィはトカゲだし、ヘンな連中ばっかりなのよ!
あ~あ、やんなっちゃう! ほんとに最低最悪な旅なんだから!

22
イ、イオちゃん……
最低最悪…… そう、本当に辛い旅だったのね。 お嬢ちゃんにとっては。
なっ…… お、お嬢ちゃんですってー!?
23
お、落ち着けよ、イオ。 この姉ちゃんも悪気はねーみてぇだし……
あーっ! トカゲはコイツの味方するの!?
え、ええっと…… イオちゃん、とりあえず話を──
24
ふーん、あっそ! あっそあっそあっそ!
じゃあ仲間にすれば!? 優秀な魔導師だもんね?
あたしは辞めればいいんでしょ!?
……ばーか!

25
イ、イオちゃん! はわわ、出てっちゃいました……
ご、ごめんなさい。 私、何か気に障ること……
あぁ、姉ちゃんは気にすんな。 ……でもどうする、冷凍マグロ?

森の奥の木の下で、イオはひとり膝を抱えていた。

26
うぅ……ぐすっ…… あたし……さいていだ……
あんなひどいこと…… もう……ほんとにもどれないよ……


足音が聞こえ、イオが顔を上げると…… そこには冷凍マグロの姿があった。

27
……っ!
冷凍マグロ、なんで……?

>迎えにきた
うー…… も、もう仲間じゃないんですけど!
お節介はやめてよね。
28
…………ありがと。
え、ルリア達も探してる?
そっか、迷惑かけちゃったな……
…………

29
あっ……あの、ね?
あたしの杖と服って、師匠が魔力を込めて作った物なの。
なのに、依頼の子を守れなくて……
あの魔導師にも敵わなくて……
師匠の弟子なのに! 特別な杖も持ってるのに!
ねぇ、あたしどうしたら──

30
グルルルルッ!
魔物っ!? し、しかも、すごい大群……!
うぅ、でも今度こそ……!
あんな魔導師に負けないんだから!
はあぁぁぁ!

グオォォォン!
31
え……? ま、魔法が出ない……?
も、もう一度! ……とりゃあぁぁ!
ど、どうして…… ねぇ、どうして冷凍マグロ!?
32
魔法が…… 魔法が使えないっ……!


迫り来る魔物の大群、突然のスランプに陥るイオ。
窮地に陥った二人は、この危機を切り抜けられるのか。
夜の闇に魔物の咆哮が響き渡る……

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