2009年07月05日

おやすみプンプン

おやすみプンプン 1 (ヤングサンデーコミックス)おやすみプンプン 1 (ヤングサンデーコミックス)
著者:浅野 いにお
販売元:小学館
発売日:2007-08-03
おすすめ度:4.0
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ぼくのバイト先は夢の空間である。少なくともぼくにとって。何千何万もの書籍がぼくに買ってくれとばかりにその表紙を輝かせる。今回紹介する「おやすみプンプン」も表紙買いしたマンガのひとつだ。
このマンガ、雑誌の「ダ・ヴィンチ」かなんかに取りあげられて巷では有名な作品である。つい最近新刊が出たが、この種類のマンガにしては早いペースで売れている。
今日見たら、すでに在庫は残り1冊であった。新刊でしかも人気のある作品はお客様優先で販売する。それがサービス業というものだ。ぼくは接客業の神様の啓示に従い行動しなければならないし、そうしようと思った。しかしぼくはまだその新刊を手に入れてない。次の瞬間、客の目がつかない場所に「おやすみプンプン」の新刊はひっそりと隠された。これを見つけたとある思想家は、「神は死んだ」と高らかに宣言したらしい…。
客にとったら非常にクレームものである。でも正直に告白すると、実は「1Q84」の時も同じ罪を犯している。ほしいものはほしいのだから仕方がない!本屋の欲望を甘く見てはいけない!

さて、「おやすみプンプン」がどういう話かというと、ある種の成長記である。「プンプン」という名前の少年が小学校、中学校、そして高校と成長していく第二次性徴真っ盛りなお話である。…こう書くとなんかバカみたいだけど。いや、大げさに書こうと思えば書けるのだろうけど(書けないかも知れない)、そうするとぼくの解釈が多分に含まれるし、ぼくはまったく違う読み方をしているかも知れない。これくらいがちょうどいいと思うことにする。
ただ、このマンガにしか無い特徴を紹介すると、それは何と言っても主人公(とその家族)の姿である。主人公の描き方は物語を作る上で大変重要だ。特にマンガではなおさらそのデザインには注意が払われる。ドラえもんの姿はあれしかないし、星飛馬の目には炎がともっていなければならない。しかし「おやすみプンプン」の主人公プンプンは一見するとラクガキのようである。そして読み進めていくうちに、それが本当にラクガキであるという確信を得ることになる。他の登場人物や背景が非常に細かく描き込まれている分、プンプンのラクガキ具合がさらに際立つのだ。ちなみに上の画像は1巻の表紙だが、そこに浮彫りされているトリみたいなのが、プンプンである。まぎれもなく。
著者の浅野いにお氏は新進気鋭の作家、だそうだ。彼が主人公の姿にアレを選んだという事実は何とも難解であるが(描きやすいからだろうか)、ぼくはプンプンのこのデザインが好きだ。プンプンがこの姿だからこそ物語が成り立つのだという気がしてしまう。ストーリーがエグイだけに余計そう思う。これがベストなのだと。なんか騙されているような気もする。
俺は他の人間と違うぜ!そう思う人は少なくとも読んでおいた方が良いんじゃないかなぁ。「読まなきゃアンタはモグリだ!」そんな作品である。「プンプン読むなんて、あなた童貞ね!ステキ!」そんな作品である。

読んでね(はあと)

lucky_tail at 05:40│文学・映画・音楽・マンガ