IFRS最前線

IFRS(国際会計基準)のコンサルティング実務を行っている筆者が、現場で感じたことを書き綴ります。

IFRS第16号リースの公表

2016年1月13日にIFRS第16号「リース」が公表されました。
10年以上かけて審議されてきたわけですが、結果として借手の会計処理に大きな変更が加えられることになりました。当初、アメリカと共同で開発されたもののコンバージェンスは実現せずという残念な結果に終わりました。

借手は原則として全ての「リース」について、リース負債と使用権資産をオンバランス。
リース料支払義務とリース資産の使用権を金銭評価して財務諸表に計上します。
あまり大騒ぎされていないようですが、対象範囲には不動産のリースも含まれますので実務に与えるインパクトもそれなりに大きいでしょう。

例外として、少額リースと短期リース。これらは従来のオペレーティング・リースのような処理を行う事が出来ます。少額か否かは絶対基準、つまり企業ごとの重要性の基準値によるのではなく、おおよそ5,000$以下か否かを目安に判断。それなら中古で購入すれば・・・となれば、「新品価格で」との条件付。残念でした。加えてよく見ると”車は少額リースではない”との注意書きが。

コンサルの現場でも、すでに検討を開始していますが、航空機、運輸、小売業は大きな影響を受けそうですね。









最近のIFRSの動向

今年の5月以降、今までにない数のIFRSに関するお問い合わせを頂戴しています。

IFRSを専門としない会計士さんから、「顧問先のお客様が検討なさっていらっしゃるので」とご紹介いただいたり、任意適用をご検討の会社さんからセカンドオピニオンとしてご利用いただくこともあります。
その中のいくつかの会社さんとは実際にお仕事をさせていただく機会に恵まれました。

ご相談内容は多岐にわたりますし、守秘義務の関係もありますので詳細に触れる事は出来ないのですが、
全体の傾向として気付いたことをいくつか。

1.財務情報の位置づけ
IFRSの任意適用と言いますと、J-SOX適用時と比較される事が多いのですが、その時と比べて、関係者の意識が変わりつつあるような感触を得ています。

J-SOX時は、企業側は制度の必要性が希薄なまま、「内部統制報告書」に監査証明をもらうという意識が強く、他方、監査法人・コンサルタント側に関してはビジネスとしてのJ-SOXに集中したためか、工数が増える傾向にありました。いずれも”この制度自体の目的とするところ”や”実効性”についての議論が不十分であったのではないかと感じております。

IFRS任意適用に関する成果物のひとつは「監査報告書」ではありますが、企業が作成した「有価証券報告書」は成果物として世の中に出、一般の目にさらされますから、とにかく作って監査法人に適正意見さえもらえさえすればよいという理屈は通用しません(今の時代にそのような発想をお持ちの会社さんは少ないとは思います)。

昨今は、伊藤レポートに代表されるように、市場からの要求が強まってきたこともひとつの要因とは思いますが、どの会社さんも会社の実態をきちんと示したいという事で試行錯誤なさっています。今後はこれらを非財務情報と絡め、統合報告として完成させていくことになるのでしょう。

いずれにせよ、きちんとした財務資料を作成しようという意気込みが感じられ、好感を持っております。
私の周囲の会社さんだけ、という事も有り得ますが・・・。まさに財務資料が投資家とのコミュニケーションの手段のひとつと位置づけられつつある、そんな印象を持っています。

2.のれんの非償却問題
他方、のれんの非償却に代表されるようにIFRSの「テクニカル」な側面に注目が集まっているのも事実です。
のれんの非償却に関しては、”諸刃の剣”であることを理解しつつ、ビジネスのみならず、金融的な側面からもきちんと検討しなければなりません。利益が増えて良い、などとIFRSを表面的に捉えていると会社自身が痛い目にあってしまいます。この点に関して社内できちんと分析や判断が行われているのかは更なる検討の余地があります。

2009年からIFRS適用のアドバイザーをさせていただいていますが、
いよいよIFRSが本格化してきたという現実を日々ひしひしと感じています。

ワールドがIFRSを遡及適用

ワールドが、IFRSを任意適用をしました。

ワールドは2005年に非公開化していますので、現在は上場していませんが、有価証券報告書提出会社です2015年5月15日に有価証券報告書が開示されましたが、何と2014年3月期の日本基準の有価証券報告書までも、IFRSに遡及修正しています。

ワールドは昨日、全店舗の15%前後にあたる400~500店を2016年3月期中に閉店すると発表しました。併せて10~15の不採算ブランドを廃止。さらに17年3月期の営業利益目標100億円を掲げていますから、IFRS適用もこうした戦略の一環でしょう。個人的にはどのブランドがどのようにリストラクチャリングされるのか、気になるところです。

それにしても、訂正報告書を提出してまで適用日を早めたかった理由は何なのでしょう。
有価証券報告書を参照し、手がかりをつかみたいと思います。

遡ってIFRSを適用するとは、面白いことをなさいますね。

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