金曜までお預けかと諦めながらも、諦め切れず、書店をのぞいてみるのも人情というものでしょう。
どうせ売ってないのは分かっていますよ、と達観したような顔で本棚を物色すると、あるじゃないですか、メフィストさん。うわぁい嬉しいな、と小躍りする40歳の男。
レジへ持っていく前に早速、目を通します。いきなり一行レスから見るのが負け犬の通例です。さぁ、1ページ目は、ない。2ページ目は、ない。3ページ目は、ない。4ページ目は、ない。
あれ? ないじゃん。もう一度最初から見返す。あれあれあれ。
またかよ。
えーっと、前回出したのは8月31日の金曜日で、9月3日には着いていたはずなのですが、それで間に合わずに次回に回されたとなると、やっぱり月末必着のスケジュールでないとダメってことかよ、などと愕然としながら、万が一を考えて座談会に上げられたタイトルも拾って行きましたら、ありました。
座談会の肴になっておりました。なんつーか、力抜けました。ふぅ。
タイトルは『エレファントトーク』。ちなみに元ネタは、キング・クリムゾンのアルバム『Discipline』中の1曲から。
以下、私の評の部分だけ引用してみますね。

L 次は『エレファントトーク』。キャッチコピーは「携帯願望、進行中。」です。辰さんお願いします。
辰 交通事故にあった主人公が、一年後に携帯電話になって突然、甦る。その携帯は実の妹のもので、なぜ自分が携帯になったのか、死ななければならなかったのか。その原因を探っていく話です。
丑 すごい発想! 面白そうですね。
辰 人間の意識や感覚が電子回路に取り込まれるという、サイバーパンクSFのようなアイディアが面白くて上げました。ですが、なぜ自分が携帯になったのかというところに、科学的な説明がないと、読者は納得しないだろうなと思います。
L この方も常連の方ですね。寅さん、どうでした?
寅 面白かったです。奇想天外な発想に加えて、ちょっとしたアクションシーンもあって、エンタメ感が高い。なぜ携帯になったのかというところは、ファンタジーにする方法もありますよね。あとは、妹と兄、母の関係やエピソードをもうちょっと書き込んでもよかったかなという気がしました。
卯 携帯に意識が乗り移る理由はきちんと書いてほしかったです。まだ、ファンタジーとSFのどっちつかずで、ただの不条理劇に見えてしまいます。携帯電話になった主人公を動かすために、周りを都合よく動かしてしまうストーリー作りと、主人公視点での禁断の愛はどうかなと思いました。
P 発想がとても面白い! ただ細かいことを言えば、携帯があまりにオールマイティなところは引っ掛かりました。
辰 矛盾もある。マイクを通さないと会話できないのに、周りの風景は意識を飛ばすだけで見える。主人公の視界がカメラのレンズを通してのみだったら、見える時と見えない時がでてきて面白いのにね。
P そうなんです。電源のON、OFFで行動に制限があるだけなので。例えばポケットの中では音声しか聞こえないから言葉だけで推測するとか、外を見るために主人公がどう携帯として頑張るのかを見せることで、もっと面白さを出せたのでは?
子 たしかに面白くなりそう!
P 熱い兄貴にお節介な妹、昔優しくて今悪者の男、義理堅い友人……って、何十年前のマンガですか! キャラクターが類型的ですよ。設定は面白いのに!
L 設定に光るものはあるけど、説得力がまだ足りていないようです。頑張って下さい!

座談会に取り上げられたのは「01」以来の、2度目です。実に4年ぶり。まさか「13」が取り上げられるとは思っていなかったので嬉しいのと同時に、驚きの方が大きいです。上記の通り、いつもに増して「ショーモナイ」話だったので。
「01」の時より批判的な意見が多く、とても参考になります。私に欠けているモノがよく分かる。一行レスだけでも有り難いのに、こんなに言葉をいただけて、マジで涙が出そう。昨日、「報われねぇ」とか日記を書いていたばかりなので、ちょっとは「報われた」ことにものすごく救われたというか。
私の「13」制作の経緯は、まぁ、一年に渡る実録が残っていますから(苦笑)、興味のある方は読んでもらうとして、大雑把に言ってしまえば、「13」は、枚数少なくて、短期間で書けて(笑)、読みやすい文章で構成することを第一に考えて作りました。
また個人的には、主人公が携帯電話なので(笑)、ヒロインの女の子(主人公の妹)と会話する際に、携帯で電話をかけているように、彼女の耳にあてて密着しなければならないってシチュエーションが、萌える、と思ったのでした。変態ですね、私。理想としては、市川春子さんのマンガ作品のようなフェティッシュな雰囲気が出せればいいなぁ、とか夢想していたり。『25時のバカンス』とかメッサ好きなので。
主人公とヒロインの関係性が、まず書きたいモノのメイン。なので、ストーリー的には割りと素直に書いてます。意外性のようなモノはほとんど組み込んでいません。キャラクターが類型的なのも、複雑なキャラ造形だと枚数が嵩んでしまうからで、作品内での各キャラの役割分担を明確にして、推敲の段階でどんどんと単純化して行ったのですね。兄妹や母親のエピソードがもっと欲しい、という意見があるので、メインキャラだけでも膨らませた方が良かったかな。
それと、座談会に上げられているように、一番最初の稿では、携帯電話になった主人公が、ポケットの中では周りが見えず、音だけで判断するという制限を書いていたのですが、あとで取っ払ってしまったんですよ(苦笑)。所詮、人間が携帯電話に変わってしまうようなバカバカしい話なのに、そこんところを厳密に書いても矛盾だらけになってしまうと思ったからです。マイクで拾わなければ音が聞こえないとか、カメラで見なければ視覚が確保されないとか、人間の五感を携帯電話の機能に割り振るのも考慮しましたが、科学的に処理するのは無理筋すぎると判断しました。未来の話ではなく現代を舞台にしていたので余計です。
書きたいコトは、主人公とヒロインの置かれた特異な状況だけだったので、それを優先的に考えて、主人公の能力は曖昧にしてしまいました。
冒頭にカフカの『変身』のラストを引用したりして「不条理劇ですよ」と予防線を張ったりしましたが(笑)、内容的には、主人公の謎をフックにしたストーリー展開なので、中途半端だったと反省しています。失敗したなぁ。いっそ、実は未来の話でした、みたいなどんでん返しを用意した方が良かったかも。
長期化した制作期間の内にモチベーションがどんどん下がって行って、「人間が携帯電話になる!」という当初想定していたインパクトは薄れ、設定上の粗ばかりが目立つようになってしまいました。単純化した故のストーリー上のご都合主義にも嫌気がさし始めて、結果としては、その「設定」や「物語」に真正面から向き合って問題を解決せず、安易に逃げてしまったようです。
もともと私は「物語」に対して懐疑的な人間だし、自分の理屈っぽさを嫌っているので、特にそっちへ流れる傾向が強いです。もっと「物語」に対して真摯に取り組まねばなりませんね。
今回座談会に上げられた主たる要因は、やはり枚数が少なく文章がまともだったからだと思います。少なくとも、これまで投稿した作品の中で「13」は最も文章が洗練されていました。これだけが他作品に比べての「13」の取り柄だったのです。パッケージングという意味で、このレベルまでの推敲は不可欠だと感じました。まぁ、そこまで引き上げるのに一年かかったわけですけど(苦笑)。
あと、エンタメ感が高いと言われたのは、凄く嬉しいなぁ。だって、一生懸命、エンタメにしようと努力しているので、正に報われた感があります。アクションシーンは好きです、自分でも割りと得意だと自賛してます(笑)。ただ積み重ねの上での仕込みなので、全編アクションシーンのみ、という作品は難しいんですよね。せめてクライマックスにはアクションを入れたい。ミステリ作品であっても。
設定のキテレツさが評価されたのもありがたいです。これまでの作品もそうですが、変な設定を好んで捻り出しているところはあります。インパクト重視。というか、私はそっち方面でしか勝ち目がないと思っているので、進む方向性は間違っていないと確証を得て安心しました。
今、書いている「14」も、まぁ変な設定ですが(笑)、「13」ほどのインパクトはないかもしれません。現在の進捗状況で、その変な設定は、「13」同様、曖昧にしか提示されていないので、教訓を生かして上手く理屈を付けた方が良さそうですね。またキャラクターモノとしての側面を強調しているので、これがまた類型的と言われると自分のキャラ造形にとって致命的。頑張って新鮮なキャラに仕立て上げたいと思っています。
何というか、ものすごくモチベーションが上がりました。昨日までどん底だったのに、ゲンキンなものですね。まぁ、創作従事者なんて基本的に褒めれば伸びる人ばかりだと思います(笑)。頑張って前に進むための活力を補充できました。メフィスト編集部の方々、ありがとうございました。

あー、自分のことに夢中で忘れてた、メフィスト賞同時に二作受賞って、スゴイですね。過去には事例があるようですが、私が投稿を始めてからは初めてです。受賞者のおふたりはおめでとうございます。
そしてとうとう前々回の受賞作『図書館の魔女』が刊行ですか。これはマストバイ。受賞当時から読みたくてウズウズしていたので。出来れば電子書籍も同時発売して欲しいのだけど、流石に無理かなぁ。ガツッと分厚い上下巻を揃えるのも良いかな。

拍手レス
有難うございます。
実は私、携帯電話、持ってないんですよね、個人では(苦笑)。会社から持たされているだけで、電話以外の機能をほとんど使ったことがないのに、こんな小説を書いてしまいました。もちろん調べましたが、普通なら調べるまでもない常識さえ知らなかったので、書いてる時は「なんでこんな不得手なネタで、わざわざ書いてるんだろう?」と愚痴ってました。
思い付いた時は、流石にこんなバカネタで書く奴は他にいないと、オンリーワンを目指して思い切りよく突っ走ってしまったんですね、過去の記事を読んで思い返してみると。結果的には「そこだけ」評価されたようなモノなので、方向性としては間違っていなかったようです。
メフィスト賞は、設定の奇抜さを受け入れてくれるところ、ありますよね。変な発想を考え続けるのも骨が折れますが、割りとそういう作業自体が好きなので、メフィスト賞向きだと自分では思っています。まぁ、数年メフィスト賞のみに限定して書いて来て、得られた経験則というか、傾向と対策に則っているわけですが。
課題は、その変な設定を、変なまま投げ出さずに、エンタメとしてキチンと回収しなければならない、ということでしょうね。今回の批評を次に生かさねば。
清少納言の話もかなりぶっ飛んでいると思います。座談会での扱われ方も似てるように思えて何か凄く親近感が(笑)。これからもお互い頑張りましょうね。

有難うございます。初の一行レスと言うことは、座談会の常連さんですか? スゴイ。
何というか、自分よりスゴイ方々にこのブログを読まれていると思うと恐縮してしまいます。つまらないブログで申し訳ないです。
確かに座談会の常連さんが、一行レスになってしまうと落ち込むでしょうね。私は常連とはいえ、一行レスが平常運転なので、ほとんど気にならない、というか、自分とは何の関わりもない他者(プロの編集者)に、一言でも批評してもらえるだけで本当に有り難いというか、それだけでモチベーションが上昇するような人間なので、結果を見て落ち込むようなことはまずありません。当然、落選が悔しくはあるのですが、落ち込むというよりは、逆に燃えます。
落ち込むのは、誰にも目を通してもらえず、自分の方向性が正しいのかも判断がつかず、ただ黙々とひとりで書き続けるしかない状態の時です。
批判的な内容であっても反応があればそれを足がかりにできますし、座談会を読んで他の人がどんな作品を投稿して取り上げられているのか、また受賞した作品の傾向を読み取ったり、得るものが沢山あるので、落ち込んでいる場合じゃないという感じですかね。
多分、メフィスト発売後の数週間が、一番生き生きしているんですよ、私。今回は久しぶりに座談会に取り上げられて、更に超浮かれていますが。
私の場合、とにかく才能がないので、トライアンドエラーを繰り返すしか方法がありません。奇抜だ、と思われる設定を、傾向と対策から努力して捻出しているわけで、ハタからみればかなりカッコ悪い。才能のある人は、努力せずとも特異な発想を持っているものですし、そういう人、実際に知っていますから。
だから、あまり参考にはならないかも知れませんが、どんな反応でも全部プラスに転化してやる! という貪欲ささえあれば、落ち込んでいても直ぐに立ち直ることができるんじゃないでしょうか。
これからも頑張って行きましょう。

おおお、ご無沙汰しております。お久しぶりです。
前回座談会に上がった際にもコメントをいただいていたのに、何の返事も書けずに申し訳ありませんでした。あの頃はブログの拍手コメントという機能自体を知らなくて、気付いた時にはもう時期を逸していて、失礼を致しました。
更にすみません、最近アニメを観ていなくて(何だかんだと『ジョジョ』だけは観ていますがw)、御作のフォローを怠っています。せめて『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』や『世紀末オカルト学院』の演出回はチェックしたいと思っているのですが……。
何の因果か、現在、小説を書いています。でも、基本的には私も映像寄りの人間なので、最初に思い浮かぶイメージはやっぱり映像なんですよ。この「13」で言えば、ヒロインの女子高生が携帯電話の主人公の指示を受けながら耳に彼を押し当てつつ街中を走り抜ける、という画が最初に思い浮かんで、これをクライマックスに持って来れないかと逆算して話を作ったりしました。ちゃんと作中にそのシーンが出てきます(笑)。イメージボード的にシーンを想定した方が、文章も書きやすくて生き生きした感じになるようです。
そしてもちろん、この小説が映像化したらどんな画になるだろうかと妄想したりもします。私的には舞台劇風に、携帯を持つヒロインの隣に黒子の格好をした主人公が立っている、みたいなシュールな画で撮れば面白いかと考えていました(笑)。会話する時はその黒子が彼女の背後から耳元へ囁きかけていたり。バカげた設定の話なので、そのくらいのインパクトが画にも欲しい、なんて。
小説なので、文章でしか表現できないような書き方もしていますし、そうでなければならないとも思っていますが、無理やり映像に変換する作業も、妄想としてはとても楽しいです。それは別に自作に限ったわけではなくて、例えば円城塔さんの作品を映像化するにはどうすれば良いのかを考えるのも面白いんですよ。そういう遊びが作品作りに活かせれば良いのですがね(苦笑)。

有難うございます。誕生日の時に「何かいいことがあるようにお祈り」して頂いて、その効果が覿面でした。
こうして座談会に上げられなければ、私が書いていた小説の内容をお知らせできないのがもどかしいところですね。長期間ブログに進捗状況を書いていても、読者さまには具体的に何のことだかさっぱり分からないのだもの。ホント、皆さん、こんなブログを良くのぞいてくれているなぁ、と改めて呆れ、いや、感心しています。
メフィスト編集部の方々には、面白がってもらえたのが何より嬉しかったですね。やはりエンタメ作品は、できれば一言で端的に表現できるような内容が望ましいと実感しました。携帯電話にした理由は、上記に書いたようなフェティッシュな趣味だったり映像イメージだったりもするのですが、いつも身につけている親しみ易いギミックという特徴が欲しかったからなのです。ただ、幾ら奇想天外な話でも、例えば靴下を擬人化して他者の興味を惹くのは難しい。奇抜すぎては読者が着いて来てくれないので、そこは適度なモノに落ち着かせる必要がありました。まず「会話する」という状況を受け入れやすくするのに携帯電話が最適だったのですね。ショーモナイネタですが、これでも色々と考えながら作っているのです(笑)。
この「13」では受賞には至りませんでしたが、今後も投稿は続けていきますし、出来れば一行レスの常連から座談会の常連へとステップアップして、より受賞へと近付きたいです。来年のことを言うと鬼が笑いますが、コンスタントに面白い作品を作り続けて行きたいと思っています。