2階層を往復するだけのエレベータUIはどうあるべきか?オランウータンだってデジタルネイティブです

2013年05月06日

月一連載の楽天koboちゃん、今月は筆者の帰省の都合で発売日が若干遅れてしまった。全国4,000万人のkoboファンの皆さんをおまたたせすることになり誠に申し訳ない。ただ、不思議なことに筆者に対しkoboの発刊が遅れていることについての問い合わせは一切なかった。これでは誰も期待していないかのようではないか。そんなことあるわけないのに。ねえ?

コンテンツ数130,000コボ突破

2013年5月4日時点の日本語書籍数は132,720 コボ。今年に入ってから毎月5,000程度の緩やかな増加ペースに落ち着いている。仮にこのペースが続いたとしたら昨年末のコミットメント20万コボに到達するのは来年7月となってしまう。さすがにそろそろ楽天のkobo撤退が見えてくる頃だ。

例によって、内訳を見てみよう。

  • 日本語コンテンツ総数132,720コボ(前月比104%)
  • 青空文庫を含む無料コンテンツが20,215コボ(前月比100%)
  • 楽譜が29,720コボ(前月比100%)
  • 復刻版古書が3,769コボ(前月比100%)
  • 画像1枚だけからなるバーチャルアートが2,195コボ(前月比100%)
  • パブーの有償コンテンツ(バーチャルアート除く)が4,133コボ(前月比103%)
  • 残りは72,688コボ(前月比107%)

上記のようにここ最近の増加分はほぼ通常の書籍で占められており、kobo販売当初に見られたように数を揃えることだけを目的とした、なりふり構わぬ水増しはなりを秘めているように見受けられる。20万のコミットメントもなかったことにされているようだし、コンテンツ数だけを追い求める方針は遅まきながら転換されたように見える。



Amazonに勝つという事だけを高らかに謳いあげた事業戦略説明会

楽天は2013年4月4日、楽天ブックスと楽天koboの事業戦略説明会を開催し、次の構想を掲げた。

2020年に日本の電子書籍市場を年間1兆円まで伸ばし、楽天は市場シェア50%の5000億円を取りたい。それが我々の使命だ。

2012年の国内の書籍の売上規模はおおよそ1兆円なので、2020年に電子書籍市場を1兆円にするためにはすべてを置き換えることが必要だ。現状の遅々とした国内電子書籍市場の展開を見れば、かなり高い目標といえるだろう。一方で、楽天の2012年の連結売上高は全体で4,424億円に過ぎず、会社の規模から見ても電子書籍だけで5,000億円はちょっと辛い数字だ。そもそもどう見てもKindle1強の国内市場において、トップシェアとなる50%を獲得するとはいかなる根拠があっての発言なのか?

2012年7月に電子書籍市場に参入した楽天は、これまでのサービス展開のなかで「品ぞろえの充実以上に、売れ筋書籍の電子化が急務であることが分かった」と説明。2013年夏までに「楽天ブックスでの通常の本の売れ筋ベスト1000タイトルのうち、80%を電子化してkoboで販売できるようにしたい」(三木谷社長)と語った。開始当初はこの割合が10%に過ぎなかったが、今は50%まで来ているという。

数だけ揃えても意味が無いことに今頃気づいたのかと言いたくなるが、売れ線の書籍がラインナップに加わるのは消費者としても歓迎すべき点だ。夏までにベストセラーの8割をkoboラインナップに加えるために、約2万冊を楽天負担で電子化するなどの施策を実施するとともに、来場した出版社への協力を呼び掛けたようだが、仮に楽天kobo独占販売という条件が付くならばその呼びかけに応じる出版社は極めて少なくなるだろう。万が一2万冊ものベストセラーが楽天koboでしか買えないとなれば、起こるのはkoboへの人気集中ではなく、電子書籍の忌避だ。そんな状況になってしまっては元も子もない。三木谷氏が本当に日本の電子書籍市場の発展を目指すならば、そのような方策は取らないと信じたい。

一方で、独占条件がつかなければ楽天koboの差別化とはならない。みんなAmazonで買うんじゃないだろうか? 多くの電子書籍ストアで新刊本が紙と電子で同時発売されるのが日常化したとして、どこに楽天koboで買う必然性があるのだろう?

楽天としてのユーザー獲得戦略については、楽天ブックスとの連携強化を進め、4月中旬には楽天ブックスで販売している書籍の商品ページにkoboの電子書籍の表示を開始。紙の書籍を購入しにきたユーザーに電子版をアピールするとともに、まだ電子書籍化されていないコンテンツについては紙の書籍の販売ページへの誘導なども進めていくとした。

楽天としては楽天ブックスとの連携強化に活路を見出したいようだが、Amazonやhontoなど競合他社は既に行なっている施策であり、これが起爆剤になるとはとても思えない。実際、戦略発表会に来たパートナーからも厳しい声も聞かれたようだ。

説明会の最後には、楽天に賛同する出版社の社長陣が登壇。最後に講談社 代表取締役社長の野間省伸氏のコメントで幕を閉じた。「koboがサービスを開始し、それを契機にAmazonも参入してきた。2012年半ば以降、非常に電子書籍の売り上げが拡大している。まず第一歩が終わったのかと思っている。現状、正直なところAmazonの力が強い。是非楽天に頑張っていただいて(2020年の売り上げ)5000億円を目指して欲しい」(野間氏)

出版社としてもAmazon 1強になるのは望む所ではなく、その対抗馬としての役割を楽天koboに期待しているというところだろうか。対抗馬ならまだ良いが、噛ませ犬の可能性も否定しきれないところが辛い。

講演の最後には、電子書籍でグローバルに競争できるプラットフォームは、世界シェア55%のAmazonと、同じく20%の楽天(kobo)しかないと強調(アメリカを除けば、互角のシェアとも)。そのうえで、あらためて業界関係者に協力を要請した。

三木谷社長は、Amazonへの対抗策を顕にしたが、出てくるのは実現性があるかないか分からない数値目標だけで、どのようにkoboというプラットフォームを出版社そしてユーザーに愛される存在に育てていくのかについて殆ど語られなかった。出版社が過半のシェアを有するAmazonではなく楽天を選択し、ユーザが楽天から安心して電子書籍を買うようなそんな施策が無いと、とてもAmazonのライバルとは成り得ない。それとも三木谷社長はそういうものが無いとしても、みんな楽天を選ぶと信じているのだろうか?

三木谷氏は「現在の世界シェアはアマゾンが約50%、コボが約20%」と分析したうえで、「今後は業者の合従連衡が進み、2020年には世界で3~4社に集約される。そうなれば、楽天が国内で50%のシェアを得るのは自然なことだ」とシェア拡大に自信をみせた。

それのどこが自然なことなのかさっぱりわからないのだが、誰か教えてくれませんか?

 繰り返し指摘されていることだが、電子書籍とは単にデジタル化された本を販売するというものではなく、紙から電子への読書行動やそれに伴う産業構造の変化を伴って進行しているものだ。プラットフォームがオープンであるか否かもそこに大いに関わる。

 楽天がこれまで強みとしてきた「店舗と利用者の対話を演出する」というバザール型のビジネスモデルを電子書籍においても推進するのであれば、参加店舗たる出版社が何を望み、市場においてそれをどう実現したいのか、また消費者が求める利便性とどこに齟齬が有り、どう調整していくのか――そういった課題を丁寧に拾い上げていく必要があるのではないだろうか? 電子書籍のタイトル数やプラットフォームの規模といった数値目標だけでなく、むしろ、紙と電子のハイブリットとなるプラットフォームへの参加者に対して、対話を通じて見えてきた課題解決への着実・誠実なマイルストーンを示していくことこそが、koboの未来につながっていくはずだ。

具体的なビジョンもなく、シェアの半分を取ろうとするkoboの戦略がAmazonへの対抗心を煽るだけというのは寂しい限りだ。

高解像度端末kobo Aura HD登場

楽天子会社であるKoboは、1440×1080ドットの解像度をもつ6.8インチ端末kobo Aura HDを発表した。画素密度は265dpiとなり、高密度化が進む液晶に比べても遜色ない解像度を実現している。カナダと英国では4月から、その他の国では5月から発売開始で、希望小売価格は169.99ドルとなっている。

ただ問題は、日本において必要なことは新ハードの投入ではないということだ。

iOSアプリ投入も話題にならず

Koboは4月19日、日本向けにkoboのiOSアプリの提供を開始した。Appleストアで無償で入手することが出来、iPhoneやiPadといった端末でkoboの電子書籍を読むことができる。英語圏では以前から提供されていたものだが、日本語EPUB3対応版は昨年夏よりリリース待ちとなっていた。

楽天の解説によれば、専門端末の席巻する海外と異なり、携帯小説の体験がある日本ではスマートフォンアプリが受け入れられる余地が大きいという。また、日本では大きな地位を占める漫画というコンテンツを考えても、ページ送り速度が早く、カラー表示も可能なスマートフォン/タブレットの特性は好ましい。肝心のアプリの出来の方は、じっくり時間をかけて仕上げただけあって、見開き表示に対応していないことを除けば、かなり高い完成度を実現しているようだが、最大の問題は全く話題になっていない点だ。

いい、がゆえに残念。本当に残念。デバイス版kobo のリリースからなぜ8ヶ月もかかったのか、そもそもさかのぼれば、なぜ kobo の国内販売スタートがあんなドタバタになってしまったのか、なぜネガティブレビューを妙な屁理屈こねて削除してしまったのか、なぜ Wikipedia を一冊の本としてカウントしてしまったのか、なぜもう少し書籍の弾がそろってからオープンしなかったのか、なぜ無料配布なんぞをして初期購入者から愛想を尽かされてしまうような真似をしてしまったのか、なぜ、なぜ、なぜ。

既にAmazon、Kindleの優勢が確立し、koboは無いよねという評価がほぼ確立している状況で、いくら良いソリューションを提供してもなかなかユーザに届かない。ネットが完全アウェイ状態なのがキツすぎると思うのだが、その状況を作ったのは三木谷社長本人なので同情の余地はない。辛抱強くユーザに望まれるサービス改善を継続し、少しずつ状況を改善していくしか無いだろう。

海外でも状況は不利に

国内ではぱっとしない状況において楽天koboが拠り所にするのはおよそ20%に上る世界シェアだが、その状況にも陰りが見え始めていることが、『KoboとSonyは電子書籍の競争でなぜ形勢不利なのか』という海外電子書籍状況を扱う記事で明らかにされた。それによれば、今後数年で、ソニー、Kobo、Barnes & Nobleが存在感を失っていく可能性があるという。

ソニーとKoboは今後数年で市場から消え、米国、カナダ、英国で市場シェアが落ち込む可能性が非常に高い。その理由は何だろうか。それは電子書籍の価格でも新刊タイトルの入手可能性でも、無料のハリー・ポッター本でもない。ユーザーは意味のある体験を提供し、ほかにはないソフトウェア機能を持つエコシステムに引き寄せられる傾向にある。AmazonはX-Ray、Ivona、音声機能付き辞書、Prime加入により毎月提供される無料電子書籍、大量の書籍を検索可能なネットワーク、自社で保有する出版社、キュレーションされたアプリストアなどを備えている。Amazonはオーディオブックを販売する唯一の企業でもある。顧客がAmazonの電子書籍リーダーとタブレットに引き寄せられるのは、他とは違うからだ。

記事ではKoboに欠けているのは、魅力あるソーシャル体験を提供する自社プラットフォームを中心としたエコシステムであると指摘している。Koboがこの先生きのこるためにできることは、Overdrive社との提携によるSDKの組み込みや、Autography社の買収に寄る自社出版プログラムの強化、iOS内での書籍販売、自社ソーシャルコミュニティの開発などが挙げられるという。エコシステムの強化のために、積極的に必要な技術を持ち名声を確立した企業を買収することが必要だと記事では指摘している。

先の事業戦略説明会においては、ここに挙げられているようなソーシャル機能やエコシステムの強化などについてはほとんど触れられておらず、三木谷氏の想定する戦略の中にこれらの要素は含まれていないか、優先度が極めて低い状況にあると考えられる。確かに国内市場ではこれらの要素に対して投資をするのは時期尚早という感があるが、海外市場では思い切ったテコ入れをしないとどんどんシェアを削られるジリ貧状況にあるのだ。楽天に買収されたことでKoboの戦略決定に狂いや遅延が出ているのではないか、と心配になる。

Kindleにあって楽天koboにまだないもの

エコシステムの欠如については、国内においても指摘されている。たとえば、本とeBookの公園 ― 21st century Book Story ―さんは次のように指摘されている。

Koboにないものとは、ばらばらに存在する著者とプラットフォーマーと読者の間をつないでいくメディアの存在です。koboについて極めてユニークなレポートを更新しているブログメディア「月刊楽天Koboちゃん」は参考になるものの、そういった存在ではないようです(笑)。

誠に残念ながら楽天koboちゃんは、楽天koboとユーザをつなぐような存在ではなく、現時点ではむしろ遠ざけているような状況だ。一方で、Kindleに目を向ければ、きんどうつんどく速報など良質な情報メディアが登場し、情報提供を行なっている。その対抗として楽天koboちゃんの名が真っ先に挙がってくる状況こそ憂うべきものだろう。

一方、無限の地平はみな底辺さんも同様の指摘をされている。

実は楽天は大きなチャンスに恵まれていて、皆が外資のアマゾンに日本のインフラを握られる事に恐怖している時期なのだから、普通に日本商法の美徳を全面に出して商売すれば、楽天は普通に勝てていたのである。だが、楽天経営者の三木谷氏は劣化ダーティーアメリカンの様な振る舞いを繰り返し、自らへのネガティブキャンペーンを行ってしまった。おかげで、酔狂人や知的層が楽天そのものに見切りを付けてしまい、楽天への好意的なフォローが期待できない状態に陥ってしまったのである。

現に、koboの解説サイトはキンドルに比べて絶対数が少ない。外資のキンドルと比較して、日本企業の同形サービスの解説サイトが少ない、と云うのが実は全ての解答であるのだ。

社長が脳天気なことを言っている間にも、状況は徐々に悪化している。残された時間は案外少ないのかもしれない。

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lunarmodule7 at 20:26│Comments(2)TrackBack(0)

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この記事へのコメント

1. Posted by メボチャン   2013年05月08日 20:00
5 月刊楽天koboちゃんを毎号楽しみにしています。
iOSアプリの登場で、やっと私も念願のコボちゃんを利用できるようになりました。
電子書籍の為にわざわざ専用端末なんか買う気にはなりませんでした。
きっとこれから利用者は増えていくと思います。
これからですよ。


2. Posted by LM-7   2013年06月02日 23:39
楽しみにくださりありがとうございます。専用端末の使い勝手も良いと思うのですが、特定のストアと紐付いてしまうのがネックですね。

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