月刊楽天koboちゃん 2013年08月号 -kobo1周年の反省と今後-富士通らくらくホンに見る高齢者に使いやすいUIのあり方

2013年09月01日

月一連載の楽天koboちゃん、楽天のkobo投入と同期して更新を続けてきた今号で一周年となった。最近ではさすがに当初の世間の関心も薄れ、毎号ほとんど読まれない状態が続いている。また、本blogの更新頻度の低下から、この3ヶ月更新されたのは楽天koboちゃんだけという状況となっており、このままではkobo専門blogになってしまうという深刻な危機感を有していた。

後述するグラフを見ていただければ分かるように、当初問題とされたような水増しとも受け取れかねられないコンテンツの取扱はすっかり鳴りを潜め、最近のコンテンツ数の増加はほぼ純粋な書籍で占められている。コンテンツ数は既に国内トップと言って良いポジションにあり、質の面においてもベストセラーの充足率80%と評価できる水準にある。国内電子書籍市場においては実質上Kindleと2強体制に入ったとみてよい状況だ。

かかる状況において楽天koboは当初の目的を達したと考え、今号を持って休刊としたい。毎号読んでくれていた希少な楽天koboファンには今までのご愛顧に御礼申し上げるとともに、是非これからもKindleなんかに流れずにkoboの行く末を見守ってもらいたい。

楽天koboちゃんは今号をもって一時休刊とするが、今後も何か特筆すべき動きがあれば、不定期に掲載を行う所存である。それが明るい話題であってほしいと思う。

ここで一つ訂正を行いたい。2013年08月号の初出時において、引用したグラフに対して考えられない誤読を行っていた。既に修正済みとなっているが、もし修正前のバージョンを読んだ人がいれば、再度ご確認願いたい。今後こういったミスをしないよう、エントリのチェックには細心の注意を払っていく。

そういわけで、最後のコンテンツ数チェックに行ってみよう。



コンテンツ数は16万を突破

2013年7月31日時点の日本語書籍数は161,320コボ。先月比で8,000ほど増加している。

例によって、内訳を見てみよう。

  • 日本語コンテンツ総数161,320コボ(前月比105%)
  • 青空文庫を含む無料コンテンツが20,283コボ(前月比100%)
  • 楽譜が29,715コボ(前月比100%)
  • 復刻版古書が3,770コボ(前月比100%)
  • 画像1枚だけからなるバーチャルアートが2,078コボ(前月比100%)
  • パブーの有償コンテンツ(バーチャルアート除く)が4,361コボ(前月比101%)
  • 残りは101,113コボ(前月比109%)

グラフに縦のラインが真っ直ぐに走っていることからも分かるように、昨年の12月以降、無料書籍や楽譜が増殖することもなく、パブー経由の質の低いコンテンツが溢れることも無かった(この点に関してはKindleのダイレクトパブリッシングの方が酷い)。また、一部危惧されたようにWikipediaの各項目がコンテンツとして配布されることもなく、現時点でWikipediaコンテンツは501と当初から変わっていない。今年のコンテンツの増加はほぼ純粋な書籍で占められたと言って良いだろう。また、グラフ上では分けて記載をしてあるが復刻版書籍や楽譜に関しても、それを必要とするユーザにとっては魅力的なコンテンツだろう。当初に比べてコンテンツの品揃えが飛躍的に充実したことは事実である。

現時点において未だに三木谷社長がコミットした20万に到達してないのは非常に残念なことだが(8月初旬にBookLive!が一足早く20万コンテンツを達成している)、コンテンツ数の増加が当初の期待に満たないのは、楽天の責任というよりは著者と出版側の事情に負う所が大きい(デジタル化をいまだ渋る著名作家 普及に課題山積)。

コンテンツがなかなか思い通りに増えない中にあって、1年余で16万冊までコンテンツ数を増やしたことは健闘したと言える。

楽天の野望

楽天は2日、2013年度第二四半期の連結発表を行い、三木谷社長が楽天koboの業績等について説明を行った。大半が電子書籍事業から構成されるインターネットサービス部門は83億円の赤字となり、42億円の赤字だった前年同期から赤字幅が拡大、赤字幅が大きすぎるとして、一時楽天株価は9%安となった。もっとも他の部門の業績は順調に拡大しており、売りは一時的なものにとどまったようだ。

赤字の拡大について三木谷社長は次のように述べている。

これについて楽天代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏は、koboの赤字のピークは今年がピークになるのではないかと回答。「第3四半期がどうなるかは分からないが、いったん損益分岐点に到達すれば、非常に大きな利益が出る。いつ利益が出始めるか予測するのは難しいが、仮に電子書籍端末を売るのをやめればすぐに利益が出る。デバイス中心のビジネスモデルから、アプリ中心のビジネスモデルに移行しつつある。そうすればハードウェアに対する投資をしなくても済むようになるため、来年からでも利益が出る」とした。

また、電子書籍事業は、第4四半期には北米・欧州のクリスマス商戦で大きなビジネスが期待できるとし、「赤字が大幅に減るとは言わないが、我々としてはしっかりとコントロールしていきたい」と述べた。

また、決算発表の中で三木谷社長は、数年後のグローバル2000億ドル市場において楽天とkoboの戦いになるだろうとし、その事業拡大に大きな自信を見せた。電子書籍事業が他のコンテンツと比べても利益率が高いことにも触れ、利益の出せる有望なコンテンツビジネスである電子書籍事業にグローバルの投資を続けていくとした。

確かにグローバル市場を見た場合、koboの競合となるのはAmazonに限られるだろう。また、楽天が大きな投資余力をもつ点も見逃せない。初期の利益が出ない期間を我慢して競合他社に対抗しうるだけの投資を行う体力があるという事実は重要だ。当初日本の電子書籍市場を牽引するかに見えたソニーやシャープといった家電各社は既に市場から撤退しつつある。少なくとも彼らに楽天やAmazonに伍する投資を行う余力は残されていないだろう。事実上、これから数年の電子書籍市場はグローバルも日本国内もAmazonと楽天、この2社を中心に展開していくことは間違いない。

攻撃の手を緩めない楽天

先月の一周年記念半額キャンペーンでは思わぬAmazonの反撃を食らってしまった楽天だが、今月もまた新たな施策を矢継ぎ早に打っている。こうした施策が行えるのも豊富な資金力の裏付けがあるからだ。

  • グリコのおまけに電子書籍: 楽天koboはグリコのPRETZのおまけに電子書籍を無料で提供するコミック&プリッツキャンペーンを始めた。対象となるコミックは10冊で、プリッツ1個につき1/3冊読める。まずkoboの電子書籍に触れてもらおうというリーチ拡大策の一環だ。なかなか他の電子書籍ストアには真似できない施策と言えるだろう。
  • リアル書店内にkoboストアをオープン: 楽天は蔦屋書店熊本三年坂店に国内初となる書店内koboストアを開始した。端末やアクセサリの販売、端末のセットアップ、電子書籍コンテンツの紹介を行うという。書店には、今後当該ユーザが購入した端末やコンテンツ売上の一部が還元される仕組みだ。Amazonがリアル書店の脅威と捉えられているところに、楽天koboは共存の道を示したわけだ。この施策だけでリアル書店を救えるとは考えにくいが、一つの方向性を示すものになるのではないか。
  • 新ラインナップ4機種発表: Kobo社は新たな電子書籍端末を4機種発表した。E Inkを搭載するKobo Aura 6、タブレット端末となる10インチのKobo Arc 10HD、7インチのKobo Arc 7HD、同廉価版のKobo Arc 7となる。ただ、やはり日本での発売は未定で、先の三木谷社長の言にもあるように、少なくとも国内市場に関しては楽天は大きな赤字を生む要因となる専用端末の投入に消極的であるようにみえる。コンテンツ数が少ない現状では専門端末を必要とするユーザが少ないということだろうか。

これらの施策が功を奏するかどうかは分からない。しかし優れた軍師とは、思いつく限りの多くの策を打っておくもので、そうすればその中にどれかうまくいくものが出てくるものだ。下手な鉄砲も数打ちゃ当たるというと聞こえが悪いが、それができる体力が楽天には(今のところ)あるということである。

Amazonの反抗

対するAmazonはAmazonプライム会員の特典として、Kindleオーナー ライブラリーを開始した。Kindle端末を保有している会員に限られるが、和書7,000タイトルの中からどれでも1月に1冊無料で読むことができるというものだ。本は次の月初には返却する必要があるため、やや使い所が難しいが、基本送料が無料になって以来、メリットが薄くなっていたAmazonプライム会員のテコ入れとしては有効だろう。ただAmazonはゆくゆくは定額制の読み放題サービスをやりたいのではないか。おそらく死蔵されるコンテンツが十分増えてきた時点で、それらのコンテンツの活用策として定額制読み放題サービスが投入されることになるだろう。そう遠くない未来、新刊書籍は膨大な過去の電子書籍とユーザの時間を取り合うことになる。楽天も電子書籍コンテンツをどのように消費させていくのか、今から考えていく必要があるだろう。

国内外で圧倒的な力を有するAmazonだが、だからこそ敵も多い。日本出版社協会はSTOP!! Amazon!! ●出版社へ呼びかけとして、再販制に反するポイント値引きを行っているAmazonを非難し、それを中止させるよう出版社が団結してAmazonに働きかけるよう促す呼びかけを行った。再販制の対象外である電子書籍に市場が移っていく中で、紙の本にのみ例外的に認められた再販制に固執するのは長い目で見れば決して出版業界のためにならないと思うが、こうした抵抗勢力のやり玉に真っ先に上がるのがAmazonなのは事実だ。楽天としては、そうした抵抗勢力をうまく味方につけながらAmazonへ対抗していくというのが基本戦略となるだろう。前述のリアル書店との提携もその戦略に沿ったものだ。

電子書籍に対する利用調査結果

BookLiveが東京国際ブックフェアに来場した本好き読者を対象に行った「電子書籍の利用に関する意識調査」によれば、電子書籍の購入経験者は全体の3割程度らしい。購入しない理由としては、「紙の本で読むほうが好き」(51.6%)が最多で、「対応端末を持っていない」(29.4%)、「使い方がわかりにくい」(20.5%)が続く。

電子書籍に求めるものは、「価格の安さ」(52.5%)、「タイトルの増加」(45.9%)、「読みやすさ」(36.4%)となっているが、電子書籍利用経験者に限れば、タイトル数の増加を望む回答が7割を占めるなど、まだまだタイトル数に不満が持たれていることが分かる。価格に関しては、各電子書籍ストアがなりふり構わぬキャンペーンを行っていることから、それをうまく利用しているユーザにとってはそれほど不満がないのであろう。

一方、ジャストシステムが行った電子書籍ユーザ調査によれば、電子書籍の妥当と思われる金額は紙の本の50%以下と答えた人の合計が71%となっており、キャンペーン適用額ぐらいの価格をユーザは欲しているということが分かる。また、「現在利用しているサービスが突然終了して、今まで購入した本が利用できなくならないか心配だ」にあてはまる、ややあてはまると答えたユーザが6割となっており、サービスの継続性に不安を感じるユーザが多いことが分かる。

これらの結果を考えると、やはり基本通り、タイトル数の増加、低価格キャンペーンの継続を行って新規ユーザを呼び込み、彼らがサービスの継続性に不安を持つことの無いよう、しっかりした経営基盤を作っていくことが重要である。是非とも楽天koboには今後とも精進願いたい。

結び

望むと望まざるとに関わらず、少なくとも国内の電子書籍市場は、楽天koboがこれから取る戦略に依って大きく左右されることになる。電子書籍がユーザにとって良いサービスとなるかどうかはkoboのこれからの行動によって大きく違ってくるだろう。それだけの力を有する楽天は、それだけの責任があるということを忘れないでもらいたい。決して、昨今の一部のソーシャルゲームに見られるように、パクリが横行し、ユーザを騙して小金をくすねるような、そんな志の低いビジネスにはして欲しくない。

仮に日本国内市場がAmazonだけしかいなかったら、AmazonのKindle端末が今の値段で提供されることは無かったし、コミックスの半額セールなどは開催されなかっただろう。楽天koboというライバルがいるからこそ、巨人Amazonもその対抗策として値下げなどのキャンペーンを行い、そのサービスの向上に努めるのだ。日本の電子書籍市場が、プレイヤーたちの切磋琢磨によって、ユーザにも、著者にも、出版社にも、書店にも、魅力的で大好きになれる、そんな市場に育っていくことを願ってやまない。

最後になるが、8月16日に青空文庫の呼びかけ人である富田倫生氏が亡くなった。彼がいなかったら、日本の電子書籍は随分と遅れたものになっていただろうし、著作権に関する議論もずっと貧しいものであったことだろう。追葬イベントの開催が9月26日に予定され、青空文庫の活動を支援する「本の未来基金」の創設されているようだ(富田倫生氏の追悼イベントが9月25日に開催、「青空文庫」支援基金も創設 -INTERNET Watch)。

彼が羨むような未来が待っていますように。



lunarmodule7 at 23:55│Comments(3)TrackBack(0)

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この記事へのコメント

1. Posted by メボチャン   2013年09月04日 19:44
毎号楽しみにしていました。
休刊は本当に残念です。
またいつの日か復刊してくれる事を願っています。
2. Posted by タコ   2013年09月05日 00:49
5 毎月一日がこの記事のおかげで楽しみでした。
いつも面白かったです。お疲れ様でした。
3. Posted by hiro   2013年09月08日 20:43
5 随分、参考にさせていただきました。
ありがとうございました。
またの機会が訪れることを楽しみにしています。

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