冷戦終結時から倍増した世界の軍事費コンピュータ将棋のトッププロを凌ぐ強さが確認されるまで

2015年10月11日

日本の軍事費は長らくGDPの1%程度を保っており、世界的に見れば軍事費負担は小さい部類に入る。軍事費のGDP比を見れば各地域・各国の緊張度、どれだけ無理をしているかということが見えてくる。前回のエントリ『冷戦終結時から倍増した世界の軍事費』では絶対額を比較したが、今回は同じくSIPRI Military Expenditure Databaseから2014年の各国軍事費のGDP比を見てみたい。

ほとんどの戦争は局所的に発生することから、各地域ごとに見ていくのが良いだろう。右上の地域選択メニューで各地域を選択して表示することができる。上段の地図と中段の散布図において円の大きさは軍事費を表し、色は地域を表わす。地図ないし散布図において国を選択すると最下段に当該国の軍事費GDP比の推移が1988年から2014年まで表示される。






東アジア・オセアニア


GDP比アジア


中国の存在感が圧倒的だが、GDP比で言えば世界平均の2%ほどで、アメリカの3.5%と比較しても小さい部類に入る。インド・韓国はGDP比2.5%程度、絶対額では日本と比肩する軍事費を拠出している。

日本の軍事費は5兆円でGDP比の1%。消費税の税収を1%上げると税収が2兆円上がるとされているので、仮にインド・韓国並みのGDP比2.5%、12.5兆円を消費税増税で実現しようとすれば、消費税を3.75%上げて11.75%とし、上昇分をすべて軍事費に回す必要がある。世界平均そして中国並みのGDP2%、10兆円なら2.5%アップの10.5%になる計算だ(あくまで単純計算の結果である)。あ、2017年に予定されている2%の消費税増税は別口なのでよろしく。

北朝鮮のデータが表示されていないが、SIPRI Military Expenditure Databaseにおいては北朝鮮のデータは掲載されていない。米国防総省の推定によれば、2010年現在の北朝鮮の軍事比はGDP比で16.9-23.1%となる$5.75-9.84Bとなっているので、中段の散布図にプロットするとすれば、3画面から4画面ほど右に位置することになる。試みにプロットしてみると次のようになる。

GDP比アジア+


先ほどと同様に、北朝鮮並の20%を消費税増税で賄うことを検討してみよう。軍事費は一気に100兆円、上昇分の95兆円を消費税で賄うには、消費税を47.5%上げて55.5%にする必要がある(もちろんできっこない)。北朝鮮が如何に国民生活に負担をかけているかよく分かる。ちなみに、AJFRのエントリによれば、第二次世界大戦時の1940年の日本の軍事費のGNP比が20%だったようだ。戦前の日本と同じ体制をずっと続けてきたのが北朝鮮なのだ。国が疲弊するのも当然だ。

絶対額で群を抜く中国、GDP比で群を抜く北朝鮮、この2国がこの東アジアの平和と安定に重要な役割を担うことになる。おそらく10年以内にはこの2国に関わる軍事的行動が起こるのではないだろうか。

ヨーロッパ



GDP比ヨーロッパ


ヨーロッパでは復活したロシアが絶対額、GDP比でも大きな存在感を放っている。アゼルバイジャン、アルメニア、ウクライナ等、東ヨーロッパに属する国のGDP比が比較的大きくなっている。

フランスと英国は軍事費、GDP比共にほぼ等しくほとんど重なるポジションにある。ドイツはGDP比1.24%と日本と同様に小さく、軍事費負担の小ささが経済的成功の一助になっている可能性がある。もっともドイツのGDP比は1988年には3%近い水準にあり、当時から1%弱で推移してきた日本よりも軍事費の負担は大きかった。東ドイツを初めとする共産圏陣営と隣り合っていたのだから無理もない。

ロシアや一部の東ヨーロッパ諸国を除けば、ヨーロッパ各国の軍事費のGDP比は冷戦後減少を続けている。GDP比の平均1.60%は東アジアの1.86%よりも小さい。これはEU設立によって、ヨーロッパ圏における軍事衝突の可能性が減少してきたことの成果だろう。ただ、これから先は、2014年のクリミア危機、ISISの台頭とそれに伴う難民問題、これらが各国の軍事戦略に影響を与えることは間違いない。

中東


GDP比中東


さて、世界の火薬庫たる中東だが、GDP比の横軸が他地域とは全く異なっている(北朝鮮を除いての話だ)。地域の盟主サウジアラビアが最大の軍事費を誇り、かつGDP比10%を費やしている。オマーンは更に無理をしていて12%近い。中東各国の軍事費のGDP比は平均で5.15%となっており、他地域と比較して顕著に大きい。この地域の不安定さ、軍事的緊張の高さの証左といえる。

実際に戦争が起これば軍事費は跳ね上げる。湾岸戦争が勃発した1990年のクウェートの軍事費のGDP比は48.52%、1991年はなんと117.35%、130億ドルまで上昇している。まさにすべてを投げ打って総力戦を展開したわけだ。

クウェート


根が深いイスラエル問題、さらに近年のアルカイダ、ISISに代表されるイスラム過激派組織との軍事抗争、さらに難民問題と戦争の火種の枚挙にいとまがない。少なくとも21世紀の前半は引き続き中東が世界の火薬庫で在り続けるだろう。

アメリカ


GDP比アメリカ


圧倒的な軍事力を有するアメリカの一強状態であり、周辺に脅威となる国を持たないアメリカが恵まれているように見える。軍事費のGDP比の平均は最低となる1.4%。比較的安定した地域であると言える。

ただ、アメリカが巨大すぎて気が付きにくいが、中段の散布図でアメリカを除外してみると(USを選択して右クリックから除外を選択)ブラジルが大きな存在感を放っている。ブラジルの軍事費は317億ドル、日本の458億ドルと比肩しうるレベルだ。

アフリカ


GDP比アフリカ


貧困国が集まるアフリカ大陸。軍事費の絶対額は他地域と比べれば極めてささやかなものだが、GDP比で見ると高い負担をしている国が目につく。いつ終わるとも知れない内戦への対応に追われ、疲弊する様子が目に見えるようだ。21世紀はアフリカの時代と言われているが、そのためには地域紛争を解決して平和と安定を持続させ、食料生産などの問題解決に取り組まねばならない。

軍隊が必要とされる日



ある国は大いなる野望をもって最新兵器群を装備した強力な軍隊を構築し、またある国はその対抗上、それに負けないだけの軍隊を用意する。国民の生活を犠牲にして軍事力の増強に務めている国も多い。テロ組織との戦いの中で、否応なく軍整備に予算を回さざるを得ない国もまた多い。

上記に見てきたように、地域ごとにその特徴は様々だが、どの地域でも各国が少なくない軍事予算を費やし、今もしくは来るべき明日に備えている。軍隊が役に立つ日なんて来ないのが一番だが、歴史を見れば軍隊は常に必要とされてきた。

その中で日本が属する東アジアは特異な国の存在によって今にも壊されそうな繊細なバランスの上に、つかの間の平和を享受しているように見える。自衛隊は今まで戦争に加担したことはない。それがいつまで続くかは誰にもわからない。

lunarmodule7 at 09:00│Comments(0)TrackBack(0)││社会 | 視覚化

トラックバックURL

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
冷戦終結時から倍増した世界の軍事費コンピュータ将棋のトッププロを凌ぐ強さが確認されるまで