米国の目を通して見える世界、見えない世界

2019年02月04日

なぜ使いもしない数学を勉強しなくてはならないのか、数学を苦手とする生徒の怨嗟の声は途切れることがない。つい先日も橋下氏の次の発言が多くの反発を招いた。


「最低限、学ばなきゃいけないことは見えてきていると思うので、それ意外のことは選択制でいいと思う。だって元素記号やサイン・コサイン・タンジェント、どこで使うの?使ったためしがない。勉強のできる人たちは"そういうのも教養だ"というが、今はインターネットで色々なことは調べられる」



確かに彼は三角関数を使わないのかも知れない。しかし、世の中には三角関数や数学を使わないと成り立たない仕事は山のようにあり、それらを習得できなければ、そうした仕事に就く可能性を閉ざすことになる。

Hal Saundersは著書When Are We Ever Gonna Have to Use This?において、100の職業において利用されている数学の項目をまとめている。これを見れば実際の仕事においてどのような数学が使われているのか、逆に数学のある単元を投げ出せばどのような仕事の可能性が閉ざされるのかを知ることができる。

それをTableauでまとめたのが次の表である。数学の単元は米国における学習レベルに従って60にまとめられている。さらに100の仕事においてそれらが利用されているかどうかを示している。100の仕事は要求される単元数の降順に物理学者からDJまで並べられている。





Tableau Publicでは、左ペインの数学単元をクリックすることによりチェックを外すことができる。複数選択するにはCtrl+クリックないしはCommand+クリックだ。チェックを外すと、その単元を必要とする職業が除外され、対応可能な職業数が減ることとなる。「なぜ数学を勉強しなくてはならないのか?」という質問にさられれる先生や保護者の方々は是非このVizを活用してもらいたい。



たとえば、三角関数を外してみると、表上位の職が外れ、対応可能な職業数は82に減る。sin, cos, tanを学ばないということは、物理学者やコンピュータプログラマ、各種エンジニアや医学研究員になるのを諦めるということだ。技術立国を標榜する日本の(元)政治家が三角関数不要論を唱えるなんて正気の沙汰とは思えない。



おおよそ高校で学ぶ数学に相当するであろう「応用代数/三角法」及び「微積分と高等数学」を外すと対応可能な職業数は57に減る。高校数学は半数の職業における必須ツールであり、それから逃げることは半数の職に就く可能性を捨てるということだ。

ぜひVizを触って数学が多くの職業で利用されていることに思いを馳せてほしい。注意すべき点としては次のとおりだ。

  • あくまで米国における事例である。ヤード・ポンド法は米国では必須だろうが(除外すると対応可能な職業数は12となる)、米国以外ではほぼ不要だろう。
  • 調査が行われたのは1986年である。当時コンピュータ・プログラミングを必要とした職業は13だったが、現時点ではもっと多くなっているだろう。逆に関数電卓については利用頻度が減っていると思われる。
  • この表で示しているのはあくまで調査対象の人物が普段の仕事で利用するかどうかを示したものである。同じ職業においても利用の有無が異なる場合もあるだろうし、数学を活用することでより良い成果を上げられる場合もあるだろう。また、その職業に就くために高校や大学に進学する必要がある場合には、その過程においてこの表に記載の単元の大部分を習得する必要があるだろう。つまり、ある職業においてある数学の単元が利用されれていないとこの表で示されていたとしても、その単元を学ばなくて良いということでは決して無い。

少なくとも高校までに学ぶ数学は多くの職業において活用されている基礎的なツールだ。たとえ普段の仕事で使う機会が少なくても、その考え方を理解しているかどうかは、人生の様々なステージの意思決定や判断において重要な役割を果たす。高校課程までにそうした基礎ツールを学ぶ機会が全員に与えられているのは、幸運なことだと思う。

なお、この本に関しては読書猿氏が100の職業でどんな数学を使うのか1枚の表にまとめてみたで紹介されている。最初は氏の翻訳版を参照しようとおもったが、よく見ると比例が2つあるなどよくわからなかったので、原著から訳出した。版が異なるのか一部相違があるがご了承願いたい。


lunarmodule7 at 22:31│Comments(0)││社会 | 視覚化

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
米国の目を通して見える世界、見えない世界