重症心身障害児者の人たちを支援している人たちに向けて、重障児者の人たちの地域生活支援ってほんと大事だよね、素敵だよね、たくさんの職種の人たちがみんなでいっしょになって支援したいよねって叫びたい思いが募り、なんとかそれを伝える方法はないものかと考えて本を出したいと思いました。
途中で挫折したり中断したりしながらでしたが、3年ほどかかってやっと本の発刊にこぎ着きました。
かといって私のような無名の年寄り理学療法士が書いた本なんて、出版社は相手にしてくれないし出版業界自体も斜陽の一途だし、それならいっそのこと自前で出してやろうと思い立ち、紹介してもらった印刷・製本業者さんに頼んでペーパーバックっていう文庫本みたいな簡易な本を作ってもらいました。
できあがってみれば、素人校正のために誤字脱字が散見されるちょっとお恥ずかしいできばえだったのですが、内容は私が言いたかったことは一応網羅したつもりです。
これを機に、私でも本を出せたんだから、重障児者の人たちの地域生活支援をしている仲間たちや療法士たちに、あなたも一緒に本を出そうよって声をかけて、そんな人たちと社会に向けて発信していきたいと思い、先日のブログにも書いたようにかつて活動していた任意の支援グループをリニューアル開店して、そこを拠点にしていろんな試みを始めていきたいと思います。
そんなわけで、大変恐縮ですが以下に本の冒頭を紹介させて頂きますので、興味を持って頂ける方には、以下の重障児者地域生活支援ネットワーク〈アクトハウス〉までメールでお問い合わせ頂ければ、購入方法をご案内させて頂きます。
本の収益からは、梱包・発送を手伝ってもらうべく相談中の生活介護事業所の障害者の方への工賃代や、今書き始めている次の本、「療法士のための重症心身障害に対する間身体操作技術論」(仮題)や支援の仲間たちにも本を書いてほしいと依頼しているので、その印刷・製本代の一部にも充当していこうって思っています。
本購入のお問い合わせ先 (※メールでお願いします)
重障児者地域生活支援ネットワーク アクトハウス 代表 岸本 眞
連絡先 acthouse.books(*)gmail.com (*)を@に変えてご利用ください。
重症心身障害の人たちへの介護入門
地域生活支援へのエール
〈ウムウェルトの知恵の輪〉
はじめに
重症心身障害児者の方々の暮らしを支援するみなさんへ
この本でお伝えしたいこと
この本は、2016年に発刊した介護の入門ガイドブック「重症心身障害児者の方々への介護入門―鏡の向こう側にいるあなたと―」(社会福祉法人大阪重症心身障害児者を支える会発行 巻末の支える会ホームページ参照)の続編になればと思って書きました。
この本でお伝えしたいことは、このガイドブックを発刊した頃からの十年近くの間にインターネットの私のブログで今も書き続けている内容といくらかは重なるんですが、これをもう一度再校正しつつ新たに追記しました。今も綴り続けている拙いブログ「ウムウェルトの知恵の輪」(巻末を参照)は、重症心身障害を持たれた方々とご家族とそして毎日の素敵な地域生活を支援されている、介護も医療も教育も行政もボランティアも含めたほんとにたくさんの支援者のみなさんに向けて、エールを贈れたらという思いで書いています。
そして今回のこの本も同じように、地域も職種も立場も越えて支援のチームがみんなで、組織や制度をじょうずに利用して手をつないで、心身に重い障害をもった人たちの命の安全や豊かな暮らしをもっともっと応援したいですねと、確かめ励まし合いたいですねと願って書きました。
私は理学療法士ですので、リハビリ職の仲間たちや後輩やまた養成校での授業をきっかけにしてこの領域で働くようになってくれた療法士の教え子たちにもぜひ読んでほしいのですが、何よりも重症心身障害児者の人たちの地域生活を支援してくれているお医者さんや看護師さんはもちろん、地域の暮らしの現場を支えてくれている介護職、福祉職の人にも、特別支援学校の先生がたにも、そして地域の福祉行政にかかわる人たちにも読んでもらえて、これからもずっとみなさんで同じ思いになって支援していけるきっかけになれば嬉しいと思っています。
重症心身障害児者の人たちへの介護は、ご家庭であれ、地域の通所であれ、入所の施設であれ、安全で安心できるそれぞれの場での介護や医療やリハビリや教育に求められる技能は、みなさんがご存じのように大変なことだと思います。だからこそどの支援の場のどの職種でも、同じようにその組織や施設の中での日々の研鑽が必要なんだと思いますし、そのためにたくさんの講習会や研修会、そして介護の本などがたくさん利用されてきています。そしてこんなふうな機会を通して多彩な支援サービスの「かたち」があちこちで提供されるようになってきたことをほんとに嬉しく思っています。
今回私は、それらのサービスの制度やサービスという「支援のかたち」を通して見えてくる素敵な場面の風景を、みなさんと共に見つめながら、でもつい忘れられがちになっているその風景が意味している大切なことについて、この本でご一緒に振り返りながら考えてみたいと思いました。
この本の組み立て
この本で私は、みなさんといっしょに支援のチームの輪になって、重い障害をもたれた人たちの地域の暮らしを支援することってどんなに大切なことなのかを、四つの章にしていっしょに考えてみたいと思います。
第1章では、今日本で大きな課題になってきている少子高齢化社会の問題の根っこにある「どんなに老いてもどんなに大変な障害があっても、住み慣れた町で家族や親しい人たちといっしょに暮らしていたい」という願いに応えることを支援している人たちを振り返りながら、そんな仲間たちと一緒に大切にしたいと思う絆や関係性をどうやったら作っていけるのかについて、ちょっと理屈っぽくなって申し訳ないのですがはじめに考えてみたいと思います。
そして、この本の中で何度も出てくる「知恵の輪」というたとえが、重症心身障害児者の人たちおひとりおひとりの具体的な介護とどうつながるのかについて、どうしてもお伝えしたくて、最初に少し詳しく書いてみました。
第1章はちょっとむずかしい結論めいたことを先に書いていますので、第2章の4コママンガとそれにまつわるエピソードや第3章と4章から先に読んでもらって、それから第1章に戻ってもらってもいいかと思います。
第4章は、支援者のみなさんが日々の支援の現場で語り合うこともある障害当事者の方たちそれぞれの今に至るまでの生活史や、大変なご苦労の中を介護してこられているご家族のご苦労や喜びを思い浮かべてもらえたらという思いで、それを素人小説家ぶってフィクションの小さな物語にしてみました。
ですからこの本はどの章から読み始めてもらってもいいかと思います。
地域生活支援は、重度の障害をもった当事者の〈あなた〉とあなたのご家族ごとで、そしていろんな支援者の人たちもそれぞれ同じように家族があって幸せでいたいと願って暮らしている中での支援なんだって、共感し合って支援したいよねえ、と思ってもらえたら嬉しいなあというのがこの本を書いた目的です。
どうぞ宜しくご支援をお願い致します。