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December 28, 2014

彼の背中


こんばんは。お久し振りです。cocoaです。
今年も残り僅かですね。皆さん如何お過ごしでしょうか(^^)
今夜は今年最後の更新をさせて頂きます。
内容をご覧頂くとお気付きになる方もいらっしゃるかもしれませんが、
ドラマ化された少女漫画に影響を受けた場面が幾つかあります。
美味しいものを目や耳にするとすぐにヨウ晴へと変換してしまう癖だけは健在ですっ。
久々なものですから、何卒ノークレーム、ノーリターンでお願いしますね(笑)

ヨウ×晴菜 付き合って間もない頃の設定


















放課後、ヨウを教室までダッシュで迎えに行くのは、私がそうしたいからだ。
「彼女なんだから待ってればいいじゃん」なんて言われたって、
その時間が惜しくて会いに行く。
片思いが実ったらそれでおしまいなんじゃない。
恋愛はこれからが本番なんだ。
階段を駆け上っても息はちっとも上がらない。
中学時代に鍛えた脚力がこんなところで役に立つとは・・・。

「 ヨウ!迎えに来たよ! 」

一斉に視線が集まる。
私達が付き合っているのはもう周知の事実だけれど、
いまだに女子の視線は冷たい。

「 えっと・・・ヨウいますか? 」

一通り見渡しても姿が見えないので、とりあえず近くの人に聞いてみた。

「 小宮山ならさっき屋上の方向かったけど 」

ぺこりとお辞儀してすぐさま向かった。
屋上なんて珍しいな。
いつも決まって私が来る頃には鞄を手にしているところなのに。
今来たルートを再び辿り、私はもう一度階段を駆け上がることとなる。

屋上の扉を前にした時、はっとした私は少し髪の毛を整えた。
慌てて来たからボサボサになってるかも。
鏡を見ずともそんな自分が想像出来てしまって、一人苦笑いする。

「 よしっ 」

気合を入れてドアノブを手にした時、微かに女の子の声が届いた。

「 彼女がいるってわかってる。でも諦められないの・・・・・・ 」

後半少しだけ涙まじりのか細い声は、可憐で繊細な女子のイメージを作り上げた。
ぐるぐると頭の中で暗雲が立ちこめたけど、
気付いた時にはドアノブを手にしている私。
盗み見るなんてヨウにも相手の子にも悪い気がしてしょうがないけれど、
でもここで一人悶々としているのも辛い。
そんな気持ちに負けた末そっと隙間から窺うと、
後姿のヨウの向こう側に半身だけその姿が見えた。
小柄で華奢な体に長い髪が腰まで伸びたキレイな女の人。
すぐに分かった。同じクラスの男子からも評判の高い一之瀬先輩だ。
確かヨウと同じクラスだった。
白くて細長い指先が、堪え切れずに零れ落ちた涙を拭う。

「 ・・・・・・ごめん 」

ヨウの声が聞こえてはっとした私は、
慌ててドアをそっと閉めると足音に気をつけながら階段を降りて行った。
さっき駆け上がった時は全然上がらなかった息が、
今は駆け下りているだけでこんなにもドキドキしている。
どうしよう・・・・・・って何が?何に対して?
言い様のない不安が胸いっぱいに広がって怖くなる。
ヨウはごめんって言った。あのキレイな先輩の告白を受け入れられないから。
それは彼女がいるから。私がいるから。
だから付き合えないって意味でごめんって言ったんだ。
もし私と付き合ってなかったら「ごめん」じゃなかったのかな。
今は彼女がいるから駄目だけど、いなかったら・・・・・・。
さらりと伸びた艶のある黒髪と、女の子という性別がぴったりな容姿を思い出す。
妹の麻美とは違ったタイプの美女だ。
麻美が小悪魔ならば、一之瀬先輩は天使。まさに天使なのだ。
後光を背負った一之瀬先輩を想像して白目を剥きそうになった時、
背後で優しく肩を叩かれた。振り向くとそこにはヨウがいた。

「 こんなとこで何してんの 」

いつものトーンで聞くヨウの表情は、いつもと変わらない。
後ろめたいとか怖いとかもうなんだかよく分からない気持ちでこんがらがった私は、
何も返せずに目を泳がせる。
背中と額を伝う汗が止まらない。どうしよう。でも嘘は吐きたくない・・・・・・。

「 もしかして・・・屋上来た? 」

ズキリと胸に痛みがさした。
後ろめたさはもうなくて、悲しい気持ちだけが押し寄せる。
なんでか知らないけど、なんで?
ヨウは私の彼氏だけど、私はヨウの彼女だけど、
でもそれってヨウが彼氏やめたいって言ったら彼氏じゃなくなっちゃうわけで、
いや、でも私はずっとヨウの彼女でいたいけどさ、
でもそれって無理強いしてなったりなって貰ったりするものじゃないわけで、

「 ・・・・・・ちょっとこっち来て 」

ぐるぐる渦巻く頭と泳ぎっぱなしの目に小さく溜息吐いたヨウは、
私の手首を掴むと人気のない階段下まで連れて行った。
どうしよう。怒ったかな。やっぱり勝手に人の告白シーンなんて見て引かれたかな。
ヨウの広い背中は何も言ってくれなくて、
すらりと伸びた長い脚が足早に動く様を見てることしか出来なかった。

「 ねぇ 」

その場所に着いてすぐに呼ばれ、やっと目と目を合わせた。
ちゃんと謝ろう。覗き見なんてしてごめんなさいって言おう。
そう思った時。

「 また何か考えてるんだろうけど、俺、アンタのことちゃんと好きだよ 」

・・・・・・・・・・・・。

「 ・・・・・・・・・・え? 」

「 えって何だよ 」

「 え?!え?!なんか今!告白された気がするんだけど!!! 」

「 告白って・・・まぁ、そうかもね 」

ヨウの額を覆う黒髪が、うっすら赤くなった目元を隠した。
照れ臭そうにする姿が珍しくて物凄い凝視していたら、
長い手が伸びてきて目隠しされた。

「 見過ぎ 」

目隠しを解こうと両手で抵抗しても、ヨウはなかなか許してくれない。
ヨウは片手なのに、やっぱり男の力には敵わないのか。
うぅぅと唸りながら、忘れていたことを思い出す。

「 ごっ、ごめんなさい! 」

突然謝った私に驚いたのか、ヨウの目隠しが解かれた。
自由になった目で確認すると、やっぱり驚いた顔をしている。

「 その、勝手に覗いてごめんなさい。
  見ちゃ悪いなって思ったんだけど、なんていうか・・・気になっちゃって・・・ 」

言いながら後ろめたくて下を向く。
気持ち悪い音のドキドキがして、申し訳なさに拍車がかかった。
視界の中にあるヨウの上履きがゆっくり近付いてきた。至近距離だ。
今度は近過ぎる距離にドキドキして顔が上げられない。

「 誰かに告白されたくらいで別れると思った? 」

前髪にヨウの息がかかる。ぞくりとしたのはその距離だけじゃない。
ヨウの声が、物凄く優しいからだ。
溢れ出しそうな涙を堪え、私は首を横にふるふると振った。

「 離さないって言ったくせに、そんな簡単に俺のこと諦められるの? 」

今度は全力で首を振った。
強く否定したくて顔を上げると、困ったような照れ臭そうな顔のヨウと目が合って、
堪えていた涙が抑えられなくなった。
ぼろぼろ零しながら違うって言ったらヨウは笑った。

「 不安にさせてごめんね。でも俺は、アンタ以外と付き合うつもりないから 」

そう言って私を胸の中に引き寄せると、背中をポンポンとしてくれた。
胸いっぱいに愛おしい気持ちが広がってくる。
ありがとうって言葉にしたいのに、何故か上手く出て来ない。
また涙が込み上げてきたからだ。

「 ヨウ・・・ありがとう。ありがとう。大好きだよ。すごく大好きだよ 」

「 知ってる 」

ポンポンと背中の音が優しくて、更に涙が止まらない。

「 ヨウ大好きだよ~嬉しいよ~うぇ~ん 」

「 はいはい 」

止められない涙をヨウが袖で拭ってくれた。
私が落ち着くまで待ってくれた。
本当になんて素敵な人なんだろう。
ありがたいなぁ。嬉しいなぁ。
・・・・・・あぁ、もう・・・本当に幸せだなぁ・・・・・・。
噛み締めるような笑顔になった私を見て、ヨウは安心したみたいだった。

「 帰ろっか 」

「 うん。ありがとう、ヨウ 」

「 ん 」

「 ヨウ? 」

「 何? 」

「 お礼に何かしたい 」

「 お礼?何の? 」

「 なんか、今すごく幸せだから 」

「 そんなことでいちいちお礼なんてしなくていいよ 」

「 いいの!したいの!させて!いや、させて下さい!! 」

「 させて下さいって・・・ 」

なんだソレって言いながらヨウが笑う。
いつの間にか繋がれた手に私は力を込めた。
大好きだよってもっと伝えたくて。
ありがとうって気持ちもうんと込めたくて。
そしたら急にその手が持ち上がって、ヨウが足を止めた。

「 とりあえず、釣った魚に餌でもやってみる? 」

その言葉の意味を考えるよりも先に、もう一方の手が私の後頭部をすくった。
ふわりと風を感じた瞬間、柔らかい唇が重なる。
重なって、優しく押し当てられて、
少し角度を変えたらちゅっとリップ音を残して去って行った。

「 はい。帰るよ 」

何事もなかったかのように歩き出すヨウ。
突風の如く過ぎ去って行った出来事に頭が全然追いついていかなくて思わず、

「 あの、ごめんヨウ、今のもう1回・・・ 」

「 しないよ 」

背中が物凄く照れている気がして、それ以上何も言えなかった。















おわり


luvcocoa at 01:30│Comments(2)ヨウ×晴菜 

この記事へのコメント

2. Posted by cocoa   May 28, 2015 22:52
はまあき様

お久し振りです(´∀`)
ご返信が遅くなってしまいましたが、はまあきさんもお元気ですか?
お話をいつも気に入って下さって嬉しいです。
私も色々と精一杯で毎日バタバタしておりますww
早く落ち着いてまたのんびり妄想したいなぁ・・・
1. Posted by はまあき   April 30, 2015 09:49
5 お久しぶりです(・ω・)ノ
お元気ですか?
めっちゃ良い話でした♥︎キュン死にしそう(笑)最近は仕事や子育てで精一杯で…余りときめく事もないな〜と思っているなかでお邪魔しました★
また読み直してトキメキ度を増して行きたいと思います♪( ´θ`)ノ

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