2017年09月17日
ボーダーにブレイクされたお話 その10
<前回のあらすじ>
ボダ美は自ら入院しナカジマは引っ越した
入院中のボダ美の予定や行動範囲などはボダ母とのメール、そしてボダ美のTwitterが情報源だった。4月頃から始めたTwitterには、かつての生活風景やその日作った夜ご飯、お気に入りのぬいぐるみの写真などが更新されており、いわゆる"普通のメンヘラ女子"のアカウントだったが、ボダ美が自殺未遂をして病院に隔離される前日に更新していた、
ボダ美 @xxxxxxxxxxxxx 6月xx日
全て失う覚悟で全て壊す
というツイートの破壊力がすさまじく、いつも何かに警戒しながら過ごしていた。
ボダ美が入院してから早3週間が経過し、新生活にも慣れ始めた頃、ボダ母よりメールが届いた。
------------------------------------------------------------------------
ボダ母:2014/07/XX 20:55
ボダ美が退院してきました。まだ完全に治っていませんが元気です。いろいろ御迷惑をおかけしましたが、ボダ美が手紙で謝罪したいと言っています。捨ててもかまいませんので送付させていただけたら有難いです。
------------------------------------------------------------------------
ボダ母には新住所はもちろん引っ越したことすら教えていないが、転居届を出しているため前の住所に送られても転送されるだろうと思い承諾をした。
------------------------------------------------------------------------
ナカジマ:2014/07/XX 22:33
ご連絡ありがとうございます。退院の件、了解しました。
私の友人関係が壊された今、謝罪は必要ありませんが、手紙を送ることで良い方向に行くのであれば自由にしてください。 koko1
------------------------------------------------------------------------
数日後、仕事帰りにポストを開けると見慣れない封筒が入っているのに気が付いた。
差出人にはボダ美の本名がフルネームで書かれており、中には便箋が4枚、直筆の丁寧な字で謝罪文が書かれていた。「ごめんなさい」「就活がんばります」「今までありがとうございました」という内容だったが素直に受けとめられるわけがなく、「手紙読みました。」とだけボダ母に連絡をした。
ボダ美から送られてきた手紙は全部で3通。
2回目の手紙は「読んでくれてありがとうございました。」「どうしたら先輩に許して貰えますか?」といった内容と、同時にGODIVAのチョコがクール便で送られてきた。
このGODIVAは最も意外な行動だった。境界性パーソナリティ障害を自覚していたボダ美は、リターンもないのに人に何かを与える、ということができなかった。自分に利益がないとわかっていながらも贈り物をするという行為は、本当に反省をしていた証なのだろう。貰ったチョコはありがたく友人Bに全部あげた。友人Bは「コイチさん、太っ腹っすね」と言いながら美味しそうに食べていた。
3回目の手紙は「病気が治ったらまた会いたい」「私のせいで引っ越したんですね」「ごめんなさい」という内容だった。一度チョコが届かなかくて転送されたことを知ったのだろう。手紙の最後にはこう綴られていた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
先輩、本当に本当に本当に本当にごめんなさい。
メンヘラのくせに好きになっちゃって本当ごめんなさい。
毎日暑いけれど、体調を崩さないよう気を付けてください。
そして毎日楽しいことがありますように…。
ボダ美より
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
送られてきた手書きの手紙には書き手の気持ちが恐ろしいほど込められており、少しだけ、ほんの少しだけだが、ボダ美を許してしまいそうな自分が居た。しかし、これ以降ボダ美からの手紙が来ることはなかった。
その数ヶ月後、凍結されていたボダ美のTwitterアカウントが再び更新されていることが判明。ボダ美は同じ趣味を持つオフ会やイベントを通じて新しいコミュニティと友達を作っていた。念願だった彼氏も作り同棲もしていたようだが、その男やコミュニティとボダ美の間に"何か"があったらしく、気づいたときにはコミュニティから名前は消えており、Twitterはアカウントごと削除されてしまった。そしてボダ美とのライフラインは完全に途絶えた。
人はあれだけの経験をしても変わることができないのだろうか。
あの時自分が彼女を許していればボダ美は変われたのだろうか。
全てが無駄な時間だったようにも感じるし、貴重な体験だったようにも思える、不思議な3ヶ月間の出来事だった。
あれから3年が経過した。
まだ生きていればボダ美は29歳になっている。
現在のボダ美がどこで何をしているのか、
それを知るすべはない。
━CAN━
ボダ美は自ら入院しナカジマは引っ越した
入院中のボダ美の予定や行動範囲などはボダ母とのメール、そしてボダ美のTwitterが情報源だった。4月頃から始めたTwitterには、かつての生活風景やその日作った夜ご飯、お気に入りのぬいぐるみの写真などが更新されており、いわゆる"普通のメンヘラ女子"のアカウントだったが、ボダ美が自殺未遂をして病院に隔離される前日に更新していた、
ボダ美 @xxxxxxxxxxxxx 6月xx日
全て失う覚悟で全て壊す
というツイートの破壊力がすさまじく、いつも何かに警戒しながら過ごしていた。
ボダ美が入院してから早3週間が経過し、新生活にも慣れ始めた頃、ボダ母よりメールが届いた。
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ボダ母:2014/07/XX 20:55
ボダ美が退院してきました。まだ完全に治っていませんが元気です。いろいろ御迷惑をおかけしましたが、ボダ美が手紙で謝罪したいと言っています。捨ててもかまいませんので送付させていただけたら有難いです。
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ボダ母には新住所はもちろん引っ越したことすら教えていないが、転居届を出しているため前の住所に送られても転送されるだろうと思い承諾をした。
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ナカジマ:2014/07/XX 22:33
ご連絡ありがとうございます。退院の件、了解しました。
私の友人関係が壊された今、謝罪は必要ありませんが、手紙を送ることで良い方向に行くのであれば自由にしてください。 koko1
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数日後、仕事帰りにポストを開けると見慣れない封筒が入っているのに気が付いた。
差出人にはボダ美の本名がフルネームで書かれており、中には便箋が4枚、直筆の丁寧な字で謝罪文が書かれていた。「ごめんなさい」「就活がんばります」「今までありがとうございました」という内容だったが素直に受けとめられるわけがなく、「手紙読みました。」とだけボダ母に連絡をした。
ボダ美から送られてきた手紙は全部で3通。
2回目の手紙は「読んでくれてありがとうございました。」「どうしたら先輩に許して貰えますか?」といった内容と、同時にGODIVAのチョコがクール便で送られてきた。
このGODIVAは最も意外な行動だった。境界性パーソナリティ障害を自覚していたボダ美は、リターンもないのに人に何かを与える、ということができなかった。自分に利益がないとわかっていながらも贈り物をするという行為は、本当に反省をしていた証なのだろう。貰ったチョコはありがたく友人Bに全部あげた。友人Bは「コイチさん、太っ腹っすね」と言いながら美味しそうに食べていた。
3回目の手紙は「病気が治ったらまた会いたい」「私のせいで引っ越したんですね」「ごめんなさい」という内容だった。一度チョコが届かなかくて転送されたことを知ったのだろう。手紙の最後にはこう綴られていた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
先輩、本当に本当に本当に本当にごめんなさい。
メンヘラのくせに好きになっちゃって本当ごめんなさい。
毎日暑いけれど、体調を崩さないよう気を付けてください。
そして毎日楽しいことがありますように…。
ボダ美より
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
送られてきた手書きの手紙には書き手の気持ちが恐ろしいほど込められており、少しだけ、ほんの少しだけだが、ボダ美を許してしまいそうな自分が居た。しかし、これ以降ボダ美からの手紙が来ることはなかった。
その数ヶ月後、凍結されていたボダ美のTwitterアカウントが再び更新されていることが判明。ボダ美は同じ趣味を持つオフ会やイベントを通じて新しいコミュニティと友達を作っていた。念願だった彼氏も作り同棲もしていたようだが、その男やコミュニティとボダ美の間に"何か"があったらしく、気づいたときにはコミュニティから名前は消えており、Twitterはアカウントごと削除されてしまった。そしてボダ美とのライフラインは完全に途絶えた。
人はあれだけの経験をしても変わることができないのだろうか。
あの時自分が彼女を許していればボダ美は変われたのだろうか。
全てが無駄な時間だったようにも感じるし、貴重な体験だったようにも思える、不思議な3ヶ月間の出来事だった。
あれから3年が経過した。
まだ生きていればボダ美は29歳になっている。
現在のボダ美がどこで何をしているのか、
それを知るすべはない。
━CAN━
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2017年09月16日
ボーダーにブレイクされたお話 その9
<前回のあらあすじ>
実家に帰ったはずのボダ美が失踪
嫌な予感は的中していた。LINEや携帯などの連絡手段はすべて拒否していたものの、Gmailだけは帰宅したボダ美からのメールを絶えず受信していたので、まだ終わってないという確信があったのだ。
------------------------------------------------------------------------
2014年6月X2日 18:10:裏切り者、しんでやる
2014年6月X2日 18:11:お前なんて地獄に落ちろ
2014年6月X2日 18:12:人殺し
2014年6月X2日 18:19:あんたんち、毎晩ピンポンしようか?
2014年6月X2日 18:26:電話ずっとしまくるからな、着拒とかしたら家行くから
2014年6月X2日 20:45:電話も、メールも全て拒否。病気のせいなのに、全部拒否。家には帰ったのに、まだたりないんだね。やっぱり私に死んでほしいんだね。
------------------------------------------------------------------------
今の時刻は22時。ボダ美はまたマンションに来るつもりだろう。千葉の実家からうちまでは1時間以上かかるが、もしかしたらすでに部屋の前で待ち伏せている可能性もある。
その時、ボダ母から携帯に着信が入った。ボダ美の居場所を確かめるため慌てて電話に出る。
「もしもしナカジマですが。ボダ美さんはそちらに居ますか?」
「…今から行きますね。センパイ」
携帯から聞こえてきたのはボダ美の声だった。即座に電話を切り着信拒否をする。一緒に居た友人Dも異常事態を察してくれたらしく、今日は泊めてほしいという申し出を快く承諾してくれた。
D邸でメールチェックをすると、その後やはりボダ美は家まで来ていたようだ。
------------------------------------------------------------------------
2014年6月X3日 0:37:下で話したいだけなのに、何でだめなの?
2014年6月X3日 0:38:ずっと入り口にいますから
2014年6月X3日 0:48:ずっとここにいますから。
2014年6月X3日 0:55:遺書ももってきているので、この場で死にます。外で話くらいはしてくれると思っていました。残念です。
------------------------------------------------------------------------
今日諦めて帰ったとしても、明日も来ているかもしれない。もしかしたら一緒に行ったゲーセンに来ているかもしれない。もしくは会社への通勤ルートに待ち伏せているかもしれない。ボダ美ならどんな方法でもやりかねない。自分だけではない。実家の住所を知られているM子やクソ友人と罵られたYりんにも危害が及ぶ可能性もある。親しい友人には「ボダ美に気をつけてくれ」と伝えたものの、それがどれだけのプレッシャーを与えてしまったか。結果的に周りの友人たちも巻き込んでしまったことを深く反省した。
携帯を見るとボダ母からのメールが入っていた。
2014年6月X3日 1:42:そちらに行ったようです
2014年6月X3日 2:59:警察に行き、会って話がしたいと言いに行ったようです。警察から電話がありました。
本物のボダ母だろうと思われるので返信をする。
2014年6月X3日 3:54:もう話す気はありませんし、話しにならないのは今日の件でご存知かと思います。本人には2度と会いません。と伝えてください。好き嫌いの感情ではなくただただ怖いです。母親としての責任を放棄しないで下さい。よろしくお願いします。 koko1
2014年6月X3日 3:59:放棄はしていないつもりです。そう、思ったならすみません。
2014年6月X3日 4:09:気分を害されたのならすいません。ただ娘に携帯を奪われて私にかけてきたり、深夜の外出を許したりと、本当に今日の出来事を理解できているのかという疑問をもってしまいます。彼女が私を追う限り、私はもう1人では外に出れません。会社にも行けません。友人にも外出を控えてもらわなければなりません。はっきりと彼女に私の意思を伝えて下さい。恐ろしいので2度と会う気はないと。諦めてください。と。 koko1
2014年6月X3日 4:24:子供ではないので、縛っておけません。急にこうした展開になり、納得がいかないようです。すみません。
この母親も話しにならないが、いくら母親の責任と言えど20代半ばの娘がこうなってしまったことについては同情しかない。これ以上は何も言えなかった。そしてボダ美から最後と思わしきメールが来ていた。
翌朝、再びボダ母から連絡があり、ボダ美自ら警察署に駆け込み自分を隔離監視してくれるようにお願いに行ったこと。今は千葉の病院に隔離されておりナカジマと周りの友人には安全ですと伝えてほしいこと。また、今日から数週間は携帯も使えない隔離部屋に入院することになったこと、などがボダ母を通して伝えられた。
最後の最後でボダ美の良心を垣間見た気がした。そして二度と同じことが起きないように、その何日後かにおれはマンションを引っ越した。ボダ美との繋がりを全て断ち切ることが、今の自分にできる唯一の恩返しだった。
つづく━
実家に帰ったはずのボダ美が失踪
嫌な予感は的中していた。LINEや携帯などの連絡手段はすべて拒否していたものの、Gmailだけは帰宅したボダ美からのメールを絶えず受信していたので、まだ終わってないという確信があったのだ。
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2014年6月X2日 18:10:裏切り者、しんでやる
2014年6月X2日 18:11:お前なんて地獄に落ちろ
2014年6月X2日 18:12:人殺し
2014年6月X2日 18:19:あんたんち、毎晩ピンポンしようか?
2014年6月X2日 18:26:電話ずっとしまくるからな、着拒とかしたら家行くから
2014年6月X2日 20:45:電話も、メールも全て拒否。病気のせいなのに、全部拒否。家には帰ったのに、まだたりないんだね。やっぱり私に死んでほしいんだね。
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今の時刻は22時。ボダ美はまたマンションに来るつもりだろう。千葉の実家からうちまでは1時間以上かかるが、もしかしたらすでに部屋の前で待ち伏せている可能性もある。
その時、ボダ母から携帯に着信が入った。ボダ美の居場所を確かめるため慌てて電話に出る。
「もしもしナカジマですが。ボダ美さんはそちらに居ますか?」
「…今から行きますね。センパイ」
携帯から聞こえてきたのはボダ美の声だった。即座に電話を切り着信拒否をする。一緒に居た友人Dも異常事態を察してくれたらしく、今日は泊めてほしいという申し出を快く承諾してくれた。
D邸でメールチェックをすると、その後やはりボダ美は家まで来ていたようだ。
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2014年6月X3日 0:37:下で話したいだけなのに、何でだめなの?
2014年6月X3日 0:38:ずっと入り口にいますから
2014年6月X3日 0:48:ずっとここにいますから。
2014年6月X3日 0:55:遺書ももってきているので、この場で死にます。外で話くらいはしてくれると思っていました。残念です。
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今日諦めて帰ったとしても、明日も来ているかもしれない。もしかしたら一緒に行ったゲーセンに来ているかもしれない。もしくは会社への通勤ルートに待ち伏せているかもしれない。ボダ美ならどんな方法でもやりかねない。自分だけではない。実家の住所を知られているM子やクソ友人と罵られたYりんにも危害が及ぶ可能性もある。親しい友人には「ボダ美に気をつけてくれ」と伝えたものの、それがどれだけのプレッシャーを与えてしまったか。結果的に周りの友人たちも巻き込んでしまったことを深く反省した。
携帯を見るとボダ母からのメールが入っていた。
2014年6月X3日 1:42:そちらに行ったようです
2014年6月X3日 2:59:警察に行き、会って話がしたいと言いに行ったようです。警察から電話がありました。
本物のボダ母だろうと思われるので返信をする。
2014年6月X3日 3:54:もう話す気はありませんし、話しにならないのは今日の件でご存知かと思います。本人には2度と会いません。と伝えてください。好き嫌いの感情ではなくただただ怖いです。母親としての責任を放棄しないで下さい。よろしくお願いします。 koko1
2014年6月X3日 3:59:放棄はしていないつもりです。そう、思ったならすみません。
2014年6月X3日 4:09:気分を害されたのならすいません。ただ娘に携帯を奪われて私にかけてきたり、深夜の外出を許したりと、本当に今日の出来事を理解できているのかという疑問をもってしまいます。彼女が私を追う限り、私はもう1人では外に出れません。会社にも行けません。友人にも外出を控えてもらわなければなりません。はっきりと彼女に私の意思を伝えて下さい。恐ろしいので2度と会う気はないと。諦めてください。と。 koko1
2014年6月X3日 4:24:子供ではないので、縛っておけません。急にこうした展開になり、納得がいかないようです。すみません。
この母親も話しにならないが、いくら母親の責任と言えど20代半ばの娘がこうなってしまったことについては同情しかない。これ以上は何も言えなかった。そしてボダ美から最後と思わしきメールが来ていた。
翌朝、再びボダ母から連絡があり、ボダ美自ら警察署に駆け込み自分を隔離監視してくれるようにお願いに行ったこと。今は千葉の病院に隔離されておりナカジマと周りの友人には安全ですと伝えてほしいこと。また、今日から数週間は携帯も使えない隔離部屋に入院することになったこと、などがボダ母を通して伝えられた。
最後の最後でボダ美の良心を垣間見た気がした。そして二度と同じことが起きないように、その何日後かにおれはマンションを引っ越した。ボダ美との繋がりを全て断ち切ることが、今の自分にできる唯一の恩返しだった。
つづく━
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2017年09月15日
ボーダーにブレイクされたお話 その8
<前回のあらあすじ>
復活したボダ美が部屋に籠城した
玄関外に取り残されたおれとボダ母。あんだけ娘から目離すなって言ってたのに、この親も共犯なんじゃないかとすら思えてきた。扉越しにボダ美を説得しはじめるボダ母。
「あなたこれ以上迷惑かけてどうするの!」
「全部センパイが悪いからこの部屋で死ぬの!」
「ナカジマさんに迷惑かけるだけだからやめなさい!」
「迷惑かけるために死ぬんだよ!邪魔すんな!」
あぁ…めんどくさい…死ぬほどめんどくさい…
死ぬ死ぬ詐欺のボダ美も、事を荒立てるだけのボダ母も全部消えてなくなってほしい。心からそう思ったおれは、非常階段のところで本日2度目となるお兄さんコールをした。
「今朝方ご迷惑をおかけしたナカジマですが、あの、また部屋を奪われました…」
「すぐに行くので待っててください」
おれ達に会話はいらない、みたいな伝え方だったけど全てが伝わったようだ。ボダ美にもバレてないのであと10分くらい適当に説得して時間稼ぎをしようと試みた。
「ボダ美〜、もうわかったから。いいから開けてくれ」
「……部屋入れたら私のこと追い出すでしょ」
「もう諦めた。朝から色々ありすぎてとにかく寝たい」
「……センパイだけなら入っていいよ」
入っていいのかよ…なら最初から開けろよ。と思ったが、もう何もかもどうでもよくなってるのでナカジマは怒らない。すんなりと鍵を開けるボダ美。その表情は心なしか嬉しそうだったが、無視してまっすぐ自分の部屋のベッドに横になった。
「セーンパイっ!」
うるせぇ…なんなんだこいつ。
「怒ってます…よね?」
お兄さん、早く来てくれ。
「怒ってない。怒ってないからちょっと寝かせて…」
ピンポーン!!
その時、玄関のチャイムが鳴った。
「ナカジマさーん!大丈夫ですかー!?」
到着した警官が扉ごしに声をかける。鍵はさっき入ったときに開けたままだ。いつ入って来てくれてもいい。ボダ美は何が起きたのか理解が追いついてないようで戸惑っている。
「センパイ、裏切ったの!?」
もはや意味不明すぎて掛ける言葉もないが、事態を把握したボダ美が何故か慌てて台所に向かう。と、同時に3人の警官が部屋に入ってきた。お兄さんと姉御に新キャラの若い男性。戻ってきたボダ美の手にはセラミック包丁が握られていた。が、一瞬でお兄さんに振り払われた。あんな先端が丸く加工された包丁で何をしたかったのだろうか。
「なんなのよ!あんたたちは!?」
追い詰められたボダ美が癇癪を起こす。
「てめぇ!!!!いい加減にしろよ!!!!!!」
おぉ…お兄さんがキレた…
「てめぇみたいな人に迷惑しかかけられないクズはなぁ、死ぬまで一人で生きてればいいんだよ!!」
「あんた今クズって言った?一般人に向かって!?今の問題発言、警察に言いますから」
「警察はおれだよ!言ってみろよ!」
笑ってはいけないけど笑いそうになってしまった。
「いいからさっさと出てけよ!迷惑なんだよ!」
「わかったわよ!けどあんたは、絶対に許さないから…」
お兄さんの体当たりの演技?にボダ美も面を食らったようで、いそいそと部屋の掃除をし始めた。意気消沈しているボダ美を姉御警官がなだめながら掃除を手伝っている。こちらではお兄さんが「お疲れ」と言った感じで一息ついていた。
「俺が悪者になればあの子も怒りの矛先が変わるでしょ」
「本当にありがとうございました」
「彼女とは付き合ってたの?」
「付きあってません」
「じゃあなんであんな子家に入れちゃったのよ」
「わかりません…」
言いたい事も言えないこんな世の中だけど、この日ボダ美は家を出ていった。部屋から出る直前に「一生許さないから」と言いながらこちらを見たときのボダ美の目は今でも脳裏に焼き付いている。こうして、2ヶ月間という短くも長かったボダ美との同居生活は終わりを迎えた。
ボダ美によって迷惑をかけてしまった友人達に報告をしなければならない、とその夜は秋葉原に行きD氏と居酒屋で解放された時間を過ごしていた。悩みの種もなくなり今日からやっと自由に寝れる。そう思った矢先、携帯に着信が入った。かかってきたのはその名前を見たくもない、ボダ美の母親からだった。
「もしもし、なんでしょうか」
「ボダ美が、いなくなりました…」
つづく━
復活したボダ美が部屋に籠城した
玄関外に取り残されたおれとボダ母。あんだけ娘から目離すなって言ってたのに、この親も共犯なんじゃないかとすら思えてきた。扉越しにボダ美を説得しはじめるボダ母。
「あなたこれ以上迷惑かけてどうするの!」
「全部センパイが悪いからこの部屋で死ぬの!」
「ナカジマさんに迷惑かけるだけだからやめなさい!」
「迷惑かけるために死ぬんだよ!邪魔すんな!」
あぁ…めんどくさい…死ぬほどめんどくさい…
死ぬ死ぬ詐欺のボダ美も、事を荒立てるだけのボダ母も全部消えてなくなってほしい。心からそう思ったおれは、非常階段のところで本日2度目となるお兄さんコールをした。
「今朝方ご迷惑をおかけしたナカジマですが、あの、また部屋を奪われました…」
「すぐに行くので待っててください」
おれ達に会話はいらない、みたいな伝え方だったけど全てが伝わったようだ。ボダ美にもバレてないのであと10分くらい適当に説得して時間稼ぎをしようと試みた。
「ボダ美〜、もうわかったから。いいから開けてくれ」
「……部屋入れたら私のこと追い出すでしょ」
「もう諦めた。朝から色々ありすぎてとにかく寝たい」
「……センパイだけなら入っていいよ」
入っていいのかよ…なら最初から開けろよ。と思ったが、もう何もかもどうでもよくなってるのでナカジマは怒らない。すんなりと鍵を開けるボダ美。その表情は心なしか嬉しそうだったが、無視してまっすぐ自分の部屋のベッドに横になった。
「セーンパイっ!」
うるせぇ…なんなんだこいつ。
「怒ってます…よね?」
お兄さん、早く来てくれ。
「怒ってない。怒ってないからちょっと寝かせて…」
ピンポーン!!
その時、玄関のチャイムが鳴った。
「ナカジマさーん!大丈夫ですかー!?」
到着した警官が扉ごしに声をかける。鍵はさっき入ったときに開けたままだ。いつ入って来てくれてもいい。ボダ美は何が起きたのか理解が追いついてないようで戸惑っている。
「センパイ、裏切ったの!?」
もはや意味不明すぎて掛ける言葉もないが、事態を把握したボダ美が何故か慌てて台所に向かう。と、同時に3人の警官が部屋に入ってきた。お兄さんと姉御に新キャラの若い男性。戻ってきたボダ美の手にはセラミック包丁が握られていた。が、一瞬でお兄さんに振り払われた。あんな先端が丸く加工された包丁で何をしたかったのだろうか。
「なんなのよ!あんたたちは!?」
追い詰められたボダ美が癇癪を起こす。
「てめぇ!!!!いい加減にしろよ!!!!!!」
おぉ…お兄さんがキレた…
「てめぇみたいな人に迷惑しかかけられないクズはなぁ、死ぬまで一人で生きてればいいんだよ!!」
「あんた今クズって言った?一般人に向かって!?今の問題発言、警察に言いますから」
「警察はおれだよ!言ってみろよ!」
笑ってはいけないけど笑いそうになってしまった。
「いいからさっさと出てけよ!迷惑なんだよ!」
「わかったわよ!けどあんたは、絶対に許さないから…」
お兄さんの体当たりの演技?にボダ美も面を食らったようで、いそいそと部屋の掃除をし始めた。意気消沈しているボダ美を姉御警官がなだめながら掃除を手伝っている。こちらではお兄さんが「お疲れ」と言った感じで一息ついていた。
「俺が悪者になればあの子も怒りの矛先が変わるでしょ」
「本当にありがとうございました」
「彼女とは付き合ってたの?」
「付きあってません」
「じゃあなんであんな子家に入れちゃったのよ」
「わかりません…」
言いたい事も言えないこんな世の中だけど、この日ボダ美は家を出ていった。部屋から出る直前に「一生許さないから」と言いながらこちらを見たときのボダ美の目は今でも脳裏に焼き付いている。こうして、2ヶ月間という短くも長かったボダ美との同居生活は終わりを迎えた。
ボダ美によって迷惑をかけてしまった友人達に報告をしなければならない、とその夜は秋葉原に行きD氏と居酒屋で解放された時間を過ごしていた。悩みの種もなくなり今日からやっと自由に寝れる。そう思った矢先、携帯に着信が入った。かかってきたのはその名前を見たくもない、ボダ美の母親からだった。
「もしもし、なんでしょうか」
「ボダ美が、いなくなりました…」
つづく━
m-13_62278 at 00:00|Permalink│Comments(7)
2017年09月14日
ボーダーにブレイクされたお話 その7
<前回のあらあすじ>
ボダ美が我が家で自殺した
部屋に入るとそこには意識を失ったボダ美が横たわっていた。救急隊が呼吸器のようなものを口にあてる。「脈確認」死んではいないようだがすぐに担架で運ばれ、救急車で近くの総合病院まで運ばれた。
「◯◯病院に行きます。同居人の方も同乗お願いします」
「(イヤです)はい…」
この同乗システムって断っていいのかなと本気で思ったが、こちらにも責任はあるので仕方なく救急車に乗った。救急車の中ではよくある状況説明をすることに。
「ボダ美さんとはどういったご関係ですか」
「えーと、会社の同僚?です」
「なんか持病とかお持ちでしたか」
「うつ病を少々…」
なんでおれがこんな事しなきゃならんのだ、と悲しくなった。ボダ美は酸素マスクを当てられて呼吸はしているようだが目を覚まさず。生きててよかったとは思わなかったが、うちで死ななくてよかった。と心底思ってしまった。(賃貸の部屋で人が亡くなると事故物件になって敷金とかすごい取られるらしいので皆さんも気をつけてください。)
救急車は総合病院に到着し、ボダ美には腸内洗浄を行って様子をみるとのこと。腸内洗浄は相当気持ち良いらしいのでいつか一度は体験してみたい。
30分後、ボダ美の母親が病院へ到着した。開口一番「またあの子は…」と言った。以前にもパニック障害を起こして同じようなオーバードースで入院した事があったらしい。「今回はもうダメ(死んだ)かと思いました」と漏らした瞬間、この親にも怒りが湧き上がり「あんたの娘だろ?あんたが守れよ」と言ってしまった。
というのも、ボダ母には以前に一度ボダ美を引き取って欲しいと相談しており、ナカジマ邸に来て直接お持ち帰って頂こうと試みたことがあったのだ。その時はボダ美が癇癪を起こして失敗に終わってしまったのだが、その時もこのボダ母は「もう少しだけナカジマさんに面倒みていただけないでしょうか」と引き取りを拒否したのだ。
今回はさすがに引き取らざるを得ないと心を決めたようで「目を覚ましたら、荷造りに伺います。」と言った。おれは「荷造りはこちらでして実家に送ります。それよりも二度とうちに来ないようにしてください。」と返した。
発見が早かったのもあり腸内洗浄のみで様態も落ち着いたとのことで、部屋に帰って引っ越し用ダンボールにボダ美の衣類と生活品をすべて詰め込んだ。あとはこれを宅配便で送れば全部終了。終わってみればあっけない結末だった。
会社には全休になる旨を連絡したと同時に、今日起きたこと、最近休みが増えた原因、ボダ美が会社に行かなくなりにうちに住み着いていたことを当時直属の上司だった社長に全て話した。驚かれると思ったが、社長は全て察していたらしく「やっぱりそういうことだったか」と何も言わずとも理解してくれた。さらに「今日から数日間は危険だから会社名義でホテル取ってもいいよ」とボダ美を危険人物として認識もしていた模様。ボダ美は会社にも直接クレームの電話を入れてきたのでそれ以来警戒していたらしい。散々迷惑をかけたのはこちらなのに「色々大変だったな」と言われてちょっと泣いた。
荷造りも終わり、一息ついたところ見覚えのある差出人からメールが入った。
日付 : 2014年6月xx日 14:42
は???
は????????
何?うち来るの????てかもう生き返ったの????
ボダ美はほんの3,4時間で退院してメールも打てる状態まで回復したようだった。突如ボダ母から電話が入る。
「ナカジマさんすいません。娘がどうしても荷物を取りに行きたいって」
「あの、ついさっきもう二度と来ないでくれって言ったんですが…」
「荷物乗せたらすぐ帰りますんで。あと5分ほどで着きます」
「………絶対に娘さんをタクシーから降ろさないで下さい」
覚悟を決めてマンションの入り口まで荷物を詰めたダンボールを持っていく。すぐにボダ美とボダ母を乗せたタクシーが目の前に来た。キレたナイフのような目つきでボダ美がこちらを見てきたが、ガン無視してタクシーのトランクに荷物を詰め込む。
が、ボダ美からわずか一瞬でも目を離したのが失敗だった。
ボダ美はタクシーから降りてマンションの階段をすさまじい速さで駆け上がっていった。合鍵を回収し忘れていたことを死ぬほど後悔した。ボダ美が向かった先は3階のおれの部屋。すぐさま追いかけるものの部屋の内鍵はかけられ、ボダ美は再び籠城した。
つづく━
ボダ美が我が家で自殺した
部屋に入るとそこには意識を失ったボダ美が横たわっていた。救急隊が呼吸器のようなものを口にあてる。「脈確認」死んではいないようだがすぐに担架で運ばれ、救急車で近くの総合病院まで運ばれた。
「◯◯病院に行きます。同居人の方も同乗お願いします」
「(イヤです)はい…」
この同乗システムって断っていいのかなと本気で思ったが、こちらにも責任はあるので仕方なく救急車に乗った。救急車の中ではよくある状況説明をすることに。
「ボダ美さんとはどういったご関係ですか」
「えーと、会社の同僚?です」
「なんか持病とかお持ちでしたか」
「うつ病を少々…」
なんでおれがこんな事しなきゃならんのだ、と悲しくなった。ボダ美は酸素マスクを当てられて呼吸はしているようだが目を覚まさず。生きててよかったとは思わなかったが、うちで死ななくてよかった。と心底思ってしまった。(賃貸の部屋で人が亡くなると事故物件になって敷金とかすごい取られるらしいので皆さんも気をつけてください。)
救急車は総合病院に到着し、ボダ美には腸内洗浄を行って様子をみるとのこと。腸内洗浄は相当気持ち良いらしいのでいつか一度は体験してみたい。
30分後、ボダ美の母親が病院へ到着した。開口一番「またあの子は…」と言った。以前にもパニック障害を起こして同じようなオーバードースで入院した事があったらしい。「今回はもうダメ(死んだ)かと思いました」と漏らした瞬間、この親にも怒りが湧き上がり「あんたの娘だろ?あんたが守れよ」と言ってしまった。
というのも、ボダ母には以前に一度ボダ美を引き取って欲しいと相談しており、ナカジマ邸に来て直接お持ち帰って頂こうと試みたことがあったのだ。その時はボダ美が癇癪を起こして失敗に終わってしまったのだが、その時もこのボダ母は「もう少しだけナカジマさんに面倒みていただけないでしょうか」と引き取りを拒否したのだ。
今回はさすがに引き取らざるを得ないと心を決めたようで「目を覚ましたら、荷造りに伺います。」と言った。おれは「荷造りはこちらでして実家に送ります。それよりも二度とうちに来ないようにしてください。」と返した。
発見が早かったのもあり腸内洗浄のみで様態も落ち着いたとのことで、部屋に帰って引っ越し用ダンボールにボダ美の衣類と生活品をすべて詰め込んだ。あとはこれを宅配便で送れば全部終了。終わってみればあっけない結末だった。
会社には全休になる旨を連絡したと同時に、今日起きたこと、最近休みが増えた原因、ボダ美が会社に行かなくなりにうちに住み着いていたことを当時直属の上司だった社長に全て話した。驚かれると思ったが、社長は全て察していたらしく「やっぱりそういうことだったか」と何も言わずとも理解してくれた。さらに「今日から数日間は危険だから会社名義でホテル取ってもいいよ」とボダ美を危険人物として認識もしていた模様。ボダ美は会社にも直接クレームの電話を入れてきたのでそれ以来警戒していたらしい。散々迷惑をかけたのはこちらなのに「色々大変だったな」と言われてちょっと泣いた。
荷造りも終わり、一息ついたところ見覚えのある差出人からメールが入った。
日付 : 2014年6月xx日 14:42
は???
は????????
何?うち来るの????てかもう生き返ったの????
ボダ美はほんの3,4時間で退院してメールも打てる状態まで回復したようだった。突如ボダ母から電話が入る。
「ナカジマさんすいません。娘がどうしても荷物を取りに行きたいって」
「あの、ついさっきもう二度と来ないでくれって言ったんですが…」
「荷物乗せたらすぐ帰りますんで。あと5分ほどで着きます」
「………絶対に娘さんをタクシーから降ろさないで下さい」
覚悟を決めてマンションの入り口まで荷物を詰めたダンボールを持っていく。すぐにボダ美とボダ母を乗せたタクシーが目の前に来た。キレたナイフのような目つきでボダ美がこちらを見てきたが、ガン無視してタクシーのトランクに荷物を詰め込む。
が、ボダ美からわずか一瞬でも目を離したのが失敗だった。
ボダ美はタクシーから降りてマンションの階段をすさまじい速さで駆け上がっていった。合鍵を回収し忘れていたことを死ぬほど後悔した。ボダ美が向かった先は3階のおれの部屋。すぐさま追いかけるものの部屋の内鍵はかけられ、ボダ美は再び籠城した。
つづく━
m-13_62278 at 01:44|Permalink│Comments(3)
2017年09月13日
ボーダーにブレイクされたお話 その6
<前回のあらすじ>
ナカジマついに警察へ行く
深夜1時、警察署へ行き生活安全課に案内して欲しい旨を伝える。出迎えてくれたのは30代半ばくらいのお兄さん警官と若干怖そうな姉御警部の2人。
今回、警察署へ来た目的は2つあった。
1つ目は手紙を送った事は脅迫罪にならないのか?
2つ目は家主以外の人が家から出ていかない場合、強制送還できないのか?
結果は両方ともx。手紙には"死ね"とか"殺す"といった類の内容が入っていない限り警察が動くことはできず、仮に脅されたとしても被害届けが必要となる模様。家から出ていかない件も家主や他の住民に多大な迷惑がかかっていない限りは難しいとのこと。要するに何か実害が無いと難しいというのが警察の言い分だった。被害の少ない現状では動かないとわかっていたがここまで動いてくれないとは。
説得の末、いつ自殺されるかわからない状況に置かれていることだけは理解してもらった。こういった男女間トラブルの相談は数多くあるらしく、何かヒステリックを起こしたらすぐに連絡をしてくれ、と名刺をいただいた。心強い味方ができた気がして非常にありがたかった。
今更部屋には帰れないので、近くに住んでいる友人に今晩は泊めてもらおうと携帯を取り出した瞬間、大量のメールと留守電が入っていることに気づく。ボダ美からだった。
メールを見ると「センパイ迷惑かけてごめんなさい」という謝罪の後に「お前が一番の原因だ。不幸にしてやる」といったメールがあり、さらには「今晩ここで死にます。ありがとうございました」という支離滅裂な内容ばかり。
ここまで来ると流石にわかるが、メールの中身には何も意味はなく、おれが反応してくれれば何でもいいのだろう。反応したら負け、とにかく無視することが一番のボダ美対策である。
そのまま友達の家へ行って、友達に今自分が置かれている状況を伝えたところ、しばらく部屋を使っていいよ、と快く承諾してくれた。この友人には感謝しかない。
そして朝。
おそるおそる携帯を見るとやはり大量の留守電と未読メールが溜まっていた。が、いつもと少し様子が違う。留守電には今にも意識がなくなりそうなかすれ声で「センパイ…センパイ…」と呪文のように繰り返しているボダ美の声が録音されていた。溜まったメールに目を通してみる。
受信メール(原文ママ)
------------------------------------------------------------------------
2014年6月xx日1:55
先輩が今夜帰ってこなかったので、私、ここで死にます。発見が遅れれば、アルコールと睡眠剤と抗鬱薬でも死ぬには充分です。だから、明日の朝帰ってきても、私はもう応答できないし、鍵はあかないと思ってください。(長文)先輩に面倒がられて見放されるのが1番つらいです。先輩は誰も救えないじゃん。疲れたで終わらせるなら、優しくする素振りを見せなければいい。また期待させただけじゃないですか。
2014年6月xx日2:05
私、どうせ明日には死んでるんだから、犯罪になるかもしれないことするね。もう本当どうでも良くなった。充電なくて見れてないんだろうけど、電源入れたときにこのメールを見て、昨日私を追い詰めたあんなクソな友達をもったことを後悔してください。
2014年6月xx日2:50
先輩宛の手紙(正式な遺言ではないけど)書いたので、明日の夜帰宅して、警察に通報した後にでもじっくり読んでください。もう1時間くらいしたら死ぬ準備ができると思いますが、薬で意識が朦朧とする前のメールは最後かもしれません。大好きでした。一緒に生きたかったです。それだけです。
2014年6月xx日5:55
私の人生何だったんですかね、頑張って悪いことしなかったのがバカみたい。本当は先輩を殺すって包丁持って迫る演技して、先輩に正当防衛として刺し殺してもらうのが良かったんだー。先輩は罪にならないし、私も死ねるし、おまけに先輩は正当防衛とはいえ人殺しちゃったっていうトラウマ残るし。(長文) じゃあ、帰ってきて私の死体に直面して、自分がやったことを思い出して苦しんでください。
2014年6月xx日6:55
仕事なために必要な道具あますかなけらはまドアあえておこたすもうそろそろ落ちら七らたらその前に必要なら言ってください
2014年6月xx日8:21
かえってこないのね、私がいゆさささはは
2014年6月xx日8:32
せ3せんはまままささささぎ
2014年6月xx日8:34
また気付いたやは先輩の、幻想とかとはなしてた
------------------------------------------------------------------------
現在の時間は9:00。
30分前まで意識もあってメールもできてるし、まさか死んではいないだろうけど、万が一の事もあるので会社に遅刻する連絡を入れて家に帰ってみた。が、鍵が開かない。というかガムのような物が詰められてて鍵穴が回らない。もし鍵を開けたとしてもおそらく内鍵もかかっているだろう。ボダ美とは連絡がつかないため安否も不明。
一度冷静になって、昨晩もらった警察の名刺にある電話番号と生まれて初めての119番へ電話をかける。警察と救急隊は10分も経たずに現場へ到着した。マンションにはサイレンが鳴り響いたため近所から何事かと野次馬が集まってくる。
再現VTRなどでよく見るロック解除工具を取り出すと外鍵を一瞬でこじ開ける警官達。鍵穴は内側からガムテープでギッチギチに固められていた。内鍵はUの字にしたロープを上の隙間から垂らして、内鍵に引っ掛けてから引き抜いて解除。作業からものの1,2分で部屋に入ってしまった。この手際の良さに朝からよくわからないが感動していたのを記憶している。
部屋に入ると壁には生卵が2,3個投げつけられた後があり、廊下には当時おれが集めていたグルーミーのぬいぐるみが包丁でズタボロに刻まれ腹綿がくり抜かれていた。
ボダ美の部屋には鍵が掛かっていたが救急隊が文字通り突撃すると、睡眠剤の空箱と飲み尽くされた日本酒の一升瓶が部屋に転がっており、隣には意識のないボダ美が横たわっていた。
つづく━
ナカジマついに警察へ行く
深夜1時、警察署へ行き生活安全課に案内して欲しい旨を伝える。出迎えてくれたのは30代半ばくらいのお兄さん警官と若干怖そうな姉御警部の2人。
今回、警察署へ来た目的は2つあった。
1つ目は手紙を送った事は脅迫罪にならないのか?
2つ目は家主以外の人が家から出ていかない場合、強制送還できないのか?
結果は両方ともx。手紙には"死ね"とか"殺す"といった類の内容が入っていない限り警察が動くことはできず、仮に脅されたとしても被害届けが必要となる模様。家から出ていかない件も家主や他の住民に多大な迷惑がかかっていない限りは難しいとのこと。要するに何か実害が無いと難しいというのが警察の言い分だった。被害の少ない現状では動かないとわかっていたがここまで動いてくれないとは。
説得の末、いつ自殺されるかわからない状況に置かれていることだけは理解してもらった。こういった男女間トラブルの相談は数多くあるらしく、何かヒステリックを起こしたらすぐに連絡をしてくれ、と名刺をいただいた。心強い味方ができた気がして非常にありがたかった。
今更部屋には帰れないので、近くに住んでいる友人に今晩は泊めてもらおうと携帯を取り出した瞬間、大量のメールと留守電が入っていることに気づく。ボダ美からだった。
メールを見ると「センパイ迷惑かけてごめんなさい」という謝罪の後に「お前が一番の原因だ。不幸にしてやる」といったメールがあり、さらには「今晩ここで死にます。ありがとうございました」という支離滅裂な内容ばかり。
ここまで来ると流石にわかるが、メールの中身には何も意味はなく、おれが反応してくれれば何でもいいのだろう。反応したら負け、とにかく無視することが一番のボダ美対策である。
そのまま友達の家へ行って、友達に今自分が置かれている状況を伝えたところ、しばらく部屋を使っていいよ、と快く承諾してくれた。この友人には感謝しかない。
そして朝。
おそるおそる携帯を見るとやはり大量の留守電と未読メールが溜まっていた。が、いつもと少し様子が違う。留守電には今にも意識がなくなりそうなかすれ声で「センパイ…センパイ…」と呪文のように繰り返しているボダ美の声が録音されていた。溜まったメールに目を通してみる。
受信メール(原文ママ)
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2014年6月xx日1:55
先輩が今夜帰ってこなかったので、私、ここで死にます。発見が遅れれば、アルコールと睡眠剤と抗鬱薬でも死ぬには充分です。だから、明日の朝帰ってきても、私はもう応答できないし、鍵はあかないと思ってください。(長文)先輩に面倒がられて見放されるのが1番つらいです。先輩は誰も救えないじゃん。疲れたで終わらせるなら、優しくする素振りを見せなければいい。また期待させただけじゃないですか。
2014年6月xx日2:05
私、どうせ明日には死んでるんだから、犯罪になるかもしれないことするね。もう本当どうでも良くなった。充電なくて見れてないんだろうけど、電源入れたときにこのメールを見て、昨日私を追い詰めたあんなクソな友達をもったことを後悔してください。
2014年6月xx日2:50
先輩宛の手紙(正式な遺言ではないけど)書いたので、明日の夜帰宅して、警察に通報した後にでもじっくり読んでください。もう1時間くらいしたら死ぬ準備ができると思いますが、薬で意識が朦朧とする前のメールは最後かもしれません。大好きでした。一緒に生きたかったです。それだけです。
2014年6月xx日5:55
私の人生何だったんですかね、頑張って悪いことしなかったのがバカみたい。本当は先輩を殺すって包丁持って迫る演技して、先輩に正当防衛として刺し殺してもらうのが良かったんだー。先輩は罪にならないし、私も死ねるし、おまけに先輩は正当防衛とはいえ人殺しちゃったっていうトラウマ残るし。(長文) じゃあ、帰ってきて私の死体に直面して、自分がやったことを思い出して苦しんでください。
2014年6月xx日6:55
仕事なために必要な道具あますかなけらはまドアあえておこたすもうそろそろ落ちら七らたらその前に必要なら言ってください
2014年6月xx日8:21
かえってこないのね、私がいゆさささはは
2014年6月xx日8:32
せ3せんはまままささささぎ
2014年6月xx日8:34
また気付いたやは先輩の、幻想とかとはなしてた
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現在の時間は9:00。
30分前まで意識もあってメールもできてるし、まさか死んではいないだろうけど、万が一の事もあるので会社に遅刻する連絡を入れて家に帰ってみた。が、鍵が開かない。というかガムのような物が詰められてて鍵穴が回らない。もし鍵を開けたとしてもおそらく内鍵もかかっているだろう。ボダ美とは連絡がつかないため安否も不明。
一度冷静になって、昨晩もらった警察の名刺にある電話番号と生まれて初めての119番へ電話をかける。警察と救急隊は10分も経たずに現場へ到着した。マンションにはサイレンが鳴り響いたため近所から何事かと野次馬が集まってくる。
再現VTRなどでよく見るロック解除工具を取り出すと外鍵を一瞬でこじ開ける警官達。鍵穴は内側からガムテープでギッチギチに固められていた。内鍵はUの字にしたロープを上の隙間から垂らして、内鍵に引っ掛けてから引き抜いて解除。作業からものの1,2分で部屋に入ってしまった。この手際の良さに朝からよくわからないが感動していたのを記憶している。
部屋に入ると壁には生卵が2,3個投げつけられた後があり、廊下には当時おれが集めていたグルーミーのぬいぐるみが包丁でズタボロに刻まれ腹綿がくり抜かれていた。
ボダ美の部屋には鍵が掛かっていたが救急隊が文字通り突撃すると、睡眠剤の空箱と飲み尽くされた日本酒の一升瓶が部屋に転がっており、隣には意識のないボダ美が横たわっていた。
つづく━
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