『くもをさがす』 西 加奈子4

西さんの新刊です。

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期間限定でカナダのバンクーバーに
住んでいた作者は、2021年5月に
乳がんだと告げられる。

英語も完璧ではない中、日本と違う
病院のシステムや対応に時に傷つき
ながらも、日本にいてはなかなか
できない「周りの人に頼る」ことを
しながら、治療を進めていく。

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同い年ということもあり、本当に
他人事ではない感じで読みました。

日本の病院との違いにはびっくり
します。最初に診てもらうまでの
ハードルの高さも、術後の退院の
早さも。でも一方で、「他者の
居場所を守る」街というのは、
素敵だなあと思いました。

日本の衝撃的な雑誌の特集のタイトル、
「「幸せそう」って思われたい!」
もびっくりしました。本当に
意味不明すぎる…。よほど迷惑
かけることなどでなければ、
自分の着たいものを着て、やりたい
ことをすればいいよね、と再確認
しました。

とはいえ、日本で子育てをする時に、
「注意してますよ」と周りの人に
知らしめるために注意する、みたいな
こと、たくさんありますよね…。
同調圧力、忖度、気遣い…。良い面も
ありますが、確かに「周りからどう
見えるか」を個人の力で突破するのは
難易度高いですね…。

引用されてたナイジェリア人の
作家・アクティビストのラヴィー・
アジャイ・ジョーンズさんの
「「恐れを知らない」、というのは、
「恐れない」ことではありません。
それは、「恐れ」によって自分が
やるべきことを減じられることが
ない、ということです。恐れを
感じつつも、前進することなのです。」
というのはすごく良く分かるなと
思いました。「やるべきこと」は
その時々によって変わると思うので、
その見極めがきちんとできるように
なりたいなと思います。

とにもかくにも、癌が消えて良かった
です。周りの素敵な先輩のように、
今度は西さんの姿に励まされる
方がたくさんいると思います。
今後のご活躍も楽しみにしてます。

『はるか、ブレーメン』 重松 清5

重松さんの新刊です。

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3歳の頃に未婚のシングルマザーだった
母親に捨てられ、祖父母に育てられた
遥香。祖母が亡くなり、高校2年生の
今は一人暮らしとなった。

ある日、ブレーメン・ツアーズと
いう会社の葛城という男性から連絡が
来た。40年前に遥香の家のある場所に
住んでいた85歳の認知症の女性・光子と
その息子の達哉が、何日か家に滞在したい
のだと言う。

葛城の会社は旅行会社ではなく、
人生の最期に見る走馬灯の絵を
描く会社だった。そのために光子の
ゆかりの地を巡っているのだが、
遥香の住む周防にいた時代の記憶が
走馬灯の候補になってないのだと
いう。

自らも他人の走馬灯を見る力が
あると知った遥香は、光子親子の
過去に動揺する。遥香の幼なじみの
ナンユウくんにもその力があった。

ナンユウくんは自分は3歳で死んだ
兄の代わりでしかないと思っていて、
父の日にお父さんの走馬灯候補を
見て、ショックを受けてブレーメン・
ツアーズのある東京に向かう。

ナンユウくんを連れ戻しに行った
遥香は、別れたきりの母、史恵が
東京にいると知る。ふらふらふわふわ
しているので「ふうちゃん」と
呼ばれていた母は、今ホスピスに
いた…。

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ここ数年の重松さんの作品の中では
ダントツに面白かったです!

ちょっとファンタジーっぽい要素も
ありますが、それもまた良かった。

でも自分だったら頼まないかなあ。
そんなにお金もないし…。最後の
一瞬が本人にとって安らかかどうか
ということですもんね。多少苦しんだり
悲しんだりしても、どうせすぐ死んで
しまうのなら、なんかもったいないと
思ってしまいました。

悪事に覚えのある権力者などが
怯えて使う、というのはありそう
だなと思いました。逆に光子さん
たちのケースでは、残される側の
気持ちがすっきりするということ
なのかな。お葬式は完全に残った
人のためのものという気がしますが、
光子さんのような場合であれば、
記憶に色がつくことで、生きている
うちにも何か変化があるものなので
しょうか?深層心理みたいなところ
では変化があっても、本人が知覚
できるほどではないのかな?認知症
じゃなければ、もう少し生きてる
うちに何か変化があるのかな?
そのあたりはちょっと分からなかった
です。

なんとなく続きそうな気がするので、
また遥香ちゃん、ナンユウくん、
葛城さんたちブレーメン・ツアーズの
人々に会えるのを楽しみにしています。

『シルクロード・楼蘭探検隊』 椎名 誠2

椎名さんの新刊です。

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1980年代初めに団体旅行で行った
敦煌(「第一章 まず最初に
行けるところまで」)、1998年に
テレビ朝日のドキュメンタリー
番組のレポーターとして行った
楼蘭(「第二章 いよいよシルク
ロード)、「インターネット時代の
前」にルチャリブレを見に行った
メキシコ。「東京スポーツ」で
連載した「風雲ねじれ話」の連載に
加筆修正したもの。

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連載は2020年前後で、実際に
行った時からかなり時間が経っている
せいか、臨場感などはあまりなかった
です。その間に色々な旅や探検なども
されているから、今更特筆すべき
ことはないんだけど…というのが
漂っているような気がします。

それなりには興味深く読めたけど、
ちょっと残念でした。

『Another side of 辻村深月』 辻村 深月4

辻村さんの新刊です。

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対談、全作品解説、書評、文庫本
解説、面識のある方々からの
コメント、100問100答などから、
辻村さんの色々な顔を知ることの
できる1冊。

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かなりボリュームがあり、じっくり
楽しめました。

一番びっくりしたのが大島てるさん
です。おばあちゃんのお名前だった
のか…。その取組の姿勢も、想像
してたよりも真摯なもので、見方が
変わりそうです。

読んだことのない作品もまだまだ
あり、確かに順番に読みたくなり
ました。

辻村さんがお好きな本の話も
面白かったです。森博嗣さんとか
自分は読んだことないけど、子どもに
勧めてみようかなと思いました。

個人的には成井豊さんの寄稿もあり
嬉しかったです。

辻村さんのお人柄が全体から伝わって
きて、ますます好きになりました。

『忍びの副業 上』 畠中 恵2

畠中さんの新刊です。

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平和な徳川の世で、甲賀の忍びたちは
当てもなく技を磨きつつ、百人番所で
勤め、傘張りの内職をする日々だった。

ある日、将軍家治の唯一生き残った
子、西之丸様こと家基の身辺警護を
成し遂げ、家基が将軍になる日が
くれば、甲賀一門に新しいお役が
もらえると告げられる。

打鉤使いの弥九郎、曲玉占いが
得意な十郎、火薬を使える蔵人らは、
誰が西之丸を狙うのかを突き止めようと
する。

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途中までリタイアしようかなと思うほど
読み進められませんでしたが、終わり
頃になると少し面白くなってきました。

なんかどこか淡々としているというか、
キャラクターの違いや魅力が伝わって
こないというか…。ストーリーが
動き出すまでは辛かった。

とはいえ先は気になるので、続きも
読んでみようと思います。
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