2003年04月

『恋火』 天国の本屋3 松久 淳+田中 渉

 とうとう読めました。ちょうど暇ができたので、2時間
弱ですぐに読めて良かった。でも電車の中で読んでいたので、
涙が出そうなのを堪えるのが大変だった。鼻はかんだけどね。

 ピアニストの健太は、いつしか教本のようにしか弾けない
ピアニストになっていて、オーケストラの仕事も失った。
そんな時、アロハシャツのおじいさん、ヤマキに誘われて
天国の本屋で短期アルバイトをすることになる。最初の朗読の
仕事は『椿姫』だった。美しいが淋しそうな女性は、読んでいる
途中で具合が悪くなり、耳を押さえて去っていった。しかし、
自分の意外な才能に気づいた健太は、朗読をこなしていく中で、
観衆の気持ちに共鳴することを思い出す。子どもの頃にすごく
「響く」ピアノを聞いた感動も甦る。

 一方、とある町の飴屋の看板娘の香夏子は、商店街の活性化
のために、昔叔母と見た花火大会を復活させようと思いつく。
商店街の人々に聞いてまわると、その花火大会では毎年最後に
「恋する花火」があがっていたことが分かった。その花火を
好きな人と一緒に見ると、二人は結ばれるというロマンチックな
伝説があった。絶対にそれを復活させたいと願う香夏子だったが、
その花火を作った花火師は香夏子が見た花火大会の前に事故で
恋人に怪我をさせてしまい、それ以来花火を作らなくなっていた…。

 香夏子と花火師、健太と耳の病気を持つ女性、女性と香夏子、
花火師と女性の4つの物語が絡み合い、新しい物語へとつながる。

 健太が小さい頃の感動を与えてくれた彼女に再会し、思い出す場面や、
香夏子の奔走に商店街の老人たちが応えた場面、香夏子が花火師を
説得する場面、健太が曲を完成させて女性の前で弾くうちにピアノ
への熱い気持ちを思い出す場面など、本当にいい場面が一杯あった。
そして効果的に挿入される『椿姫』と『しろいうさぎとくろいうさぎ』。
ずっと一緒にいられることが何よりもの幸せかあ。うらやましいな。
そんな相手に出会いたいものです。
 人の心を震わせられるような仕事に巡りあえることも、本当に
うらやましい。私は健太にも花火師にもあの女性にもなれないけれど、
香夏子のように感動を生み出す何かを実現させる仕事が出来ればいいな。

 そんなわけで、シリーズ3作の中で一番好きな話でした。次回作を
読むのも楽しみです。

『キャラメルミラクル』 守本 一夫

 ずいぶん長い間が空いてしまいました。この間に実は
『T.R.Y.』を読んでいたんだけど、なかなか読み進まない
し、前の図書館で借りていた本なので早く返したくて
焦ってました。調べてみたら今住んでいるところの
図書館にも意外と前の図書館で借りてまだ読んでない本が
あるみたいで、そちらで借り直すことに決定。でも、
一冊だけなかった本が今回の『キャラメルミラクル』でした。
なので、これだけ読んで、今から返しに行く所。

 私の好きな演劇集団キャラメルボックスについて、
とあるライターの方が取材をして書いた、キャラメルボックス
誕生から1998年くらいまでのお話。

 キャラメルボックスは情報源が多いので、書いてあること
の大半は、サポーター暦の浅い私でも知ってました。でも、
キャラメルは役者さんが自分で文章を書いたり、プロデューサーの
加藤さんが書いたりしているものがほとんどなので、純粋に
外部の方から見た姿が描かれていて面白かった。本人だったら
書かないようなことも書いてあると思います。でも「こんなんじゃ
ないよ」って思うこともなく、すごく理解と愛情の感じられる
ルポですね。

 辞めてしまった人たちの辞める前の様子や、今いる役者さんの
入りたての頃の雰囲気も伝わってきて、面白い。サポーター年数が
長い人にとってはあまり得る所はないかもしれないけれど、見始めて
少したって、「もっとキャラメルについて知りたいわ!」と思ってる
人にとってはちょうどいい情報源になるんじゃないかな。

 

 

『ももこの世界あっちこっちめぐり』 さくら ももこ

 軽い気持ちで読めるかな、と手を出したものの、
意外と時間がかかりました。単に本を読む時間が
なかったっていうのもあるけれど、この人の本に
してはイマイチ面白くなかったってのもあるかも。
文体がいつもよりなんかぎこちないんだよね。
元がnon・noの連載ということで、あまりひねって
書く余裕がなかったのかもしれないけど。

 そんな中でも良かったのは、バリ島に行った時の
回かな。アリミニさんというアーティストの絵に
惹かれて、本人に会いに行く。小さな屋根だけついた
アトリエで、ラジオを聞きながら毎日コツコツと
絵を描いている彼女の様子が伝わってきて、静かな
強さを感じたよ。短い時間でも心がつながった
さくらももこさんとアリミニさんの時間をわけてもらった
感じがして、すごくいい話でした。

 結構自分が行った場所が出てるのも面白かった。
バルサとか、マドリードとか、パリ、アムス、
サンフランシスコ、グランドキャニオン、ラスベガス。
私はやっぱりバルセロナが異常に好きなので、さくら
ももこさんも気に入ってくれてなんかうれしかった。

 1つ意外だったのは、のほほんと生きているようで、
色々社会のことについて考えてるんだな、って分かった
ことかな。核実験とか安楽死とかね。安楽死のことで、
個人に選ぶ権利があってもいいと思うという意見には
ほとんど賛成なんだけど、いざ自分の家族がそうなったら
どうか、って思うと100%とは言えないな。難しい
問題ですね。

『セーヌの釣りびとヨナス』 ライナー・チムニク

 私の好きな女優さん、緒川たまきさんが何かの雑誌で
薦めていたのを美容院で読んで、借りてみました。

 結論から言うと、いまいち。絵と文章が一体になった
素敵な装丁ではあるんだけど、話の内容が特にないのです。
大きな魚を釣ったために、セーヌから追放されてしまった
ヨナスが、各地で釣りをしながら旅をしていき、結局セーヌが
恋しくなって戻っていく、という話。

 ヨナスもおっさんだし。でも絵は全体としてかわいいんだけど。
まあ暇つぶしにはいいかな、ってくらいの本でした…。
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