乃南さんの新刊です。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
福島のつねは、一人東京に出て借金をこしらえた
夫作四郎に連れられて、息子の直一と娘のとわと
共に、夜逃げするように北海道の開拓団に加わった。
入植した知床地方の「イワウベツ」では農業は
なかなかうまく行かず、しかも折角育ったと
思ってもバッタの襲来により根こそぎ食べられて
しまう。
神経質な直一に比べ、とわは言いたいことは言い、
のびのびと生きていた。森の中では三吉という
名の年上の子と仲良くなり、植物や動物のことを
いろいろと教えてもらう。だが作四郎が家を出て
飲み屋の女のところに転がり込んだ上、冬の海に
落ちて死んでしまう。つねは3人の男の子と舅の
いる男と再婚する。とわは意地悪な新しい兄弟、
厳めしい新しい父親との暮らしに嫌悪感を感じるが、
その新しい父親も火事で死んでしまい、小学校を
卒業するとすぐに小樽に奉公に出される。
奉公してからもいろいろな出来事がとわの人生を
翻弄する。波乱に満ちた45歳までの出来事を描く。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
なんだか壮絶だなぁという感じでした。もうちょっと
ファンタジックな展開になるのかなと思ったんです
けどね。三吉との子ども時代の場面とかね。大きく
なってからも、歯に衣着せずに突き進む、爽快な
物語になるのかと思いきや、意外と現実的な範疇に
収まっていきました。そういう時代で地域だったの
だなぁ。突飛な物語ではなく、その時代であれば
多くの人が体験していてもおかしくない人生を、
追体験する感じです。
それにしても寒そう…。よくもそんな過酷な環境で
暮らしていけるものだなぁと思いました。それ
以外に道はなかったとはいえ、ほとんど何の準備も
知識もなくそんな土地に来て生きていかなくちゃ
ならないなんて、想像しただけでも恐ろしいです。
「人というものは、もしかすると空から舞い降りる
雪のようなものではないだろうか。(中略)そして、
せっかく同じ川を流れていると思っても、一度
違う流れに入ってしまったら、もう別々に流れて
いくより他ないのだ。いつかは同じ海に着くのかも
知れないけれど、その頃には、もうどこの誰かも
分からなくなってしまっている。」というところは
なるほどなぁと思いました。どれだけ頑張っても
どうにもならないということは、確かにあるよなぁ。
人と人との縁というのは不思議だなと思いました。
奉公に出された時、「少しでも食い扶持を減らす
ために、兄弟の中で他でもないこの自分が
選ばれたということが、とわには何ともいえない
ほどの衝撃だった。つまり、家にいて働いている
より、いなくなる方が家族の助けになるという
ことなのかとも考えた。」というところは
切なかったですね。後に自分が親となり、好きで
手放す親なんていないと実感できたのは良かった
けど、それでもずっと辛かっただろうなぁ。
「人というものは、果たしてどこまで自分で自分の
一生を決めたり選んだり出来るものだろう。」
というところも興味深かったです。今は時代が
違うから、とわの頃よりは選択肢も多く、自分で
決められる範囲も多いけど、それでも全て自由
というわけにはいかないもんね。社会の中で
生きることによって課せられるものもあるし、
自然によって与えられる試練もある。ついつい
なんでも思うようになると勘違いしてしまいがち
だけど、実は限界があるんだよというのを教えて
もらえたのは、今後の自分のためには良かったと
思いました。
三吉の末路は哀れでしたね。とわと一緒になって
いたら、また違っていたのかな?アイヌの社会に
飛び込む日本人という視点の物語もちょっと
期待していたので、少し残念でした。
最後のほうはタマヨのこととか夫のこととかも
あっさり書かれていて、ちょっと肩すかし感も
ありました。連載じゃなくて書き下ろしなのになあ。
ところどころ「こうだったらよかったのに」と
思うところはありましたが、それでも派手さが
ないのに引き込まれるという意味では、やはり
これもエンターテインメントとして立派に成立
している作品なのだなと感じました。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
福島のつねは、一人東京に出て借金をこしらえた
夫作四郎に連れられて、息子の直一と娘のとわと
共に、夜逃げするように北海道の開拓団に加わった。
入植した知床地方の「イワウベツ」では農業は
なかなかうまく行かず、しかも折角育ったと
思ってもバッタの襲来により根こそぎ食べられて
しまう。
神経質な直一に比べ、とわは言いたいことは言い、
のびのびと生きていた。森の中では三吉という
名の年上の子と仲良くなり、植物や動物のことを
いろいろと教えてもらう。だが作四郎が家を出て
飲み屋の女のところに転がり込んだ上、冬の海に
落ちて死んでしまう。つねは3人の男の子と舅の
いる男と再婚する。とわは意地悪な新しい兄弟、
厳めしい新しい父親との暮らしに嫌悪感を感じるが、
その新しい父親も火事で死んでしまい、小学校を
卒業するとすぐに小樽に奉公に出される。
奉公してからもいろいろな出来事がとわの人生を
翻弄する。波乱に満ちた45歳までの出来事を描く。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
なんだか壮絶だなぁという感じでした。もうちょっと
ファンタジックな展開になるのかなと思ったんです
けどね。三吉との子ども時代の場面とかね。大きく
なってからも、歯に衣着せずに突き進む、爽快な
物語になるのかと思いきや、意外と現実的な範疇に
収まっていきました。そういう時代で地域だったの
だなぁ。突飛な物語ではなく、その時代であれば
多くの人が体験していてもおかしくない人生を、
追体験する感じです。
それにしても寒そう…。よくもそんな過酷な環境で
暮らしていけるものだなぁと思いました。それ
以外に道はなかったとはいえ、ほとんど何の準備も
知識もなくそんな土地に来て生きていかなくちゃ
ならないなんて、想像しただけでも恐ろしいです。
「人というものは、もしかすると空から舞い降りる
雪のようなものではないだろうか。(中略)そして、
せっかく同じ川を流れていると思っても、一度
違う流れに入ってしまったら、もう別々に流れて
いくより他ないのだ。いつかは同じ海に着くのかも
知れないけれど、その頃には、もうどこの誰かも
分からなくなってしまっている。」というところは
なるほどなぁと思いました。どれだけ頑張っても
どうにもならないということは、確かにあるよなぁ。
人と人との縁というのは不思議だなと思いました。
奉公に出された時、「少しでも食い扶持を減らす
ために、兄弟の中で他でもないこの自分が
選ばれたということが、とわには何ともいえない
ほどの衝撃だった。つまり、家にいて働いている
より、いなくなる方が家族の助けになるという
ことなのかとも考えた。」というところは
切なかったですね。後に自分が親となり、好きで
手放す親なんていないと実感できたのは良かった
けど、それでもずっと辛かっただろうなぁ。
「人というものは、果たしてどこまで自分で自分の
一生を決めたり選んだり出来るものだろう。」
というところも興味深かったです。今は時代が
違うから、とわの頃よりは選択肢も多く、自分で
決められる範囲も多いけど、それでも全て自由
というわけにはいかないもんね。社会の中で
生きることによって課せられるものもあるし、
自然によって与えられる試練もある。ついつい
なんでも思うようになると勘違いしてしまいがち
だけど、実は限界があるんだよというのを教えて
もらえたのは、今後の自分のためには良かったと
思いました。
三吉の末路は哀れでしたね。とわと一緒になって
いたら、また違っていたのかな?アイヌの社会に
飛び込む日本人という視点の物語もちょっと
期待していたので、少し残念でした。
最後のほうはタマヨのこととか夫のこととかも
あっさり書かれていて、ちょっと肩すかし感も
ありました。連載じゃなくて書き下ろしなのになあ。
ところどころ「こうだったらよかったのに」と
思うところはありましたが、それでも派手さが
ないのに引き込まれるという意味では、やはり
これもエンターテインメントとして立派に成立
している作品なのだなと感じました。