2006年08月
2006年08月30日
ウィキペディアという、所謂ネット百科事典
なるものがあります。最近はだいぶ有名になりました。
ネットにつながっているひとなら誰でも
編集可能。ものすごい数の事項が作られ、
グーグルあたりで検索すると、検索ワードに
よっては一番初めに引っかかります。
これ、執筆者たちがそれなりに良く勉強して
書いていたり、あるいはそれを専門にしていると
おぼしきひとが書いているので、けっこう
参考になります。数年前、ネットに詳しい
某先生が、今情報を調べるなら、ネットで
調べるのが一番便利だ、とおっしゃっていましたが、
こういうネット百科が発達してくると、ますます
その感が強くなってきます。
ただし問題があって、もちろん不特定多数の
ひとが編集できるということは、その内容に
精粗正確不正確がでてくるのが必然というもので、
それどころか悪意のある筆者もいたりする。
そういうのはあからさまにわかることもあれば、
素人にはさっぱりわからないこともある。
ここに危険があるわけです。
でもウィキペディアの面白いところは、こうした
事柄についての記述の形成過程における議論が
ある程度あからさまな仕方で確認できるという
ところに実はあるわけです。議論に参与するか
どうかとは別に、ネット上の議論というものが
どのように展開していくのかの見本市のようです。
議論は個々のページの「ノート」という
リンクから見ることができます。
議論の種はだいたいささいなところで、
たとえば外国語のタームなら、タイトルとなる
訳語が適切かどうかというところから始まります。
たとえば、「ウィトゲンシュタイン」なのか、
「ヴィトゲンシュタイン」なのか、という問題。
あとは事実関係の問題。典拠が確かなものなのか、
些細に偏していないか、重要な内容が落ちて
いないか。
記述の「客観性」なるものについても当然
問題になります。それはお前の主観的な
判断やろ／や、これは一般的な見解だ、常識だ、
という感じで。
あるいは上のこととからみますが、「百科事典」
として適切な記述かどうか、ウィキペディアの
ルールにかなっているか、という問題があります。
個人的には、こういうかたちの情報の集積は
大方にとって有益であろうけど、最終根拠には
なしえないという気がします。それは別に、
ウィキペディアがだめだ、というのではなくって、
要するにネット情報は常に危険であるという
こと。重大な決断に際して、ネット情報にのみ
頼ってはあまりに危険であるという話。
ご近所の噂話で物事を決めるのは危険だと
いうことは、実際日常様々な場面で実感します。
噂がとんでもないことになった例は、人類の
歴史の中にわんさか存在します。
もちろん信用できないのはネットに限らず、
従来の紙メディアだって嘘話はいくらでも
出てきうる。新聞がどれだけ胡散臭い話を
垂れ流しうるかはちょっと考えればわかる。
しかしネットの情報の危うさは、日常
ビシビシ感じるものだし（２ちゃんねる！）、
それがどれだけ容易にえげつないかたちを
とり得るかも明瞭。ネットが紙メディアを
引用することは普通ですが、その逆は
そう見ないし、見るにしてもちょっと不安で
あったりするのは事実です。
その意味で、実はネットは情報収集の強力な
武器であると同時に、根本的な弱みに
なりうる。それはウィキペディアであろうと、
権威者のブログであろうと本質的には
同じではないかと思っています。
集団の意思決定に際して、有力意見の
発信者が実はネットに最終根拠を置いていたと
するならどうか。少なくともぼくは不安です。
でもそれはありうる事態なのです。実際
最近そういう経験があったり。
なるものがあります。最近はだいぶ有名になりました。
ネットにつながっているひとなら誰でも
編集可能。ものすごい数の事項が作られ、
グーグルあたりで検索すると、検索ワードに
よっては一番初めに引っかかります。
これ、執筆者たちがそれなりに良く勉強して
書いていたり、あるいはそれを専門にしていると
おぼしきひとが書いているので、けっこう
参考になります。数年前、ネットに詳しい
某先生が、今情報を調べるなら、ネットで
調べるのが一番便利だ、とおっしゃっていましたが、
こういうネット百科が発達してくると、ますます
その感が強くなってきます。
ただし問題があって、もちろん不特定多数の
ひとが編集できるということは、その内容に
精粗正確不正確がでてくるのが必然というもので、
それどころか悪意のある筆者もいたりする。
そういうのはあからさまにわかることもあれば、
素人にはさっぱりわからないこともある。
ここに危険があるわけです。
でもウィキペディアの面白いところは、こうした
事柄についての記述の形成過程における議論が
ある程度あからさまな仕方で確認できるという
ところに実はあるわけです。議論に参与するか
どうかとは別に、ネット上の議論というものが
どのように展開していくのかの見本市のようです。
議論は個々のページの「ノート」という
リンクから見ることができます。
議論の種はだいたいささいなところで、
たとえば外国語のタームなら、タイトルとなる
訳語が適切かどうかというところから始まります。
たとえば、「ウィトゲンシュタイン」なのか、
「ヴィトゲンシュタイン」なのか、という問題。
あとは事実関係の問題。典拠が確かなものなのか、
些細に偏していないか、重要な内容が落ちて
いないか。
記述の「客観性」なるものについても当然
問題になります。それはお前の主観的な
判断やろ／や、これは一般的な見解だ、常識だ、
という感じで。
あるいは上のこととからみますが、「百科事典」
として適切な記述かどうか、ウィキペディアの
ルールにかなっているか、という問題があります。
個人的には、こういうかたちの情報の集積は
大方にとって有益であろうけど、最終根拠には
なしえないという気がします。それは別に、
ウィキペディアがだめだ、というのではなくって、
要するにネット情報は常に危険であるという
こと。重大な決断に際して、ネット情報にのみ
頼ってはあまりに危険であるという話。
ご近所の噂話で物事を決めるのは危険だと
いうことは、実際日常様々な場面で実感します。
噂がとんでもないことになった例は、人類の
歴史の中にわんさか存在します。
もちろん信用できないのはネットに限らず、
従来の紙メディアだって嘘話はいくらでも
出てきうる。新聞がどれだけ胡散臭い話を
垂れ流しうるかはちょっと考えればわかる。
しかしネットの情報の危うさは、日常
ビシビシ感じるものだし（２ちゃんねる！）、
それがどれだけ容易にえげつないかたちを
とり得るかも明瞭。ネットが紙メディアを
引用することは普通ですが、その逆は
そう見ないし、見るにしてもちょっと不安で
あったりするのは事実です。
その意味で、実はネットは情報収集の強力な
武器であると同時に、根本的な弱みに
なりうる。それはウィキペディアであろうと、
権威者のブログであろうと本質的には
同じではないかと思っています。
集団の意思決定に際して、有力意見の
発信者が実はネットに最終根拠を置いていたと
するならどうか。少なくともぼくは不安です。
でもそれはありうる事態なのです。実際
最近そういう経験があったり。
2006年08月21日
今年の夏休みは、わりにまっとうにとれました。
関東方面にて古本・ＣＤ漁りと温泉巡り。
古本はしばらく前から目をつけていた
ドイツ語のプラトン全集。
シュライエルマッハーの訳が入ったやつ。
コンパクトですがまさに「全集」。
あとは某氏からの依頼でホッブスの
『リヴァイアサン』。岩波の２巻本。
あるいは現在はもう少し冊数が多くなって
いたのかも。
温泉めぐりは群馬〜福島〜宮城。
某氏の車で移動。どうもありがとう
ございました。感謝。
福島はすごく山奥の旅館で一泊。あまりに
山奥で吃驚。
温泉にはたっぷり浸かりましたが、夜は
明りに集まる蛾がすごくてもう。
鳴子温泉で別れて、実家に帰還。実家では
だらだらだらと過ごしました。
夏休み中、ちまちまと古いドイツ語の
文法書を読んでいました。今までドイツ語は
かっちりした言語だと思っていましたが、
思いのほか例外の多いことに驚き。
いやまあ歴史性を帯びた言語であるなら
当たり前の話なのですが。
この文法書の記述ががまたふるっていて、
大真面目に書いていることがかえって
笑えたりします。
基数の項の注。
「elf（古形eilf←ein-lif）、
zwölf（古形zwo-lif）は、十のほか
‘あまり１、あまり２’（lif‘餘’）の
義と推せられている（備考：日本でも、那須與一は
父の第十一子であつた）．」
（佐藤通次『ドイツ広文典』白水社１９５１年、９８頁）
言語規則には例外があること、それは
様々な有様を呈する。それを細かく
フォローしていくのは大変な緻密さと
言語への没入を要する。その難しいこと。
改めて実感。
まあいい夏休みでしたということで。
関東方面にて古本・ＣＤ漁りと温泉巡り。
古本はしばらく前から目をつけていた
ドイツ語のプラトン全集。
シュライエルマッハーの訳が入ったやつ。
コンパクトですがまさに「全集」。
あとは某氏からの依頼でホッブスの
『リヴァイアサン』。岩波の２巻本。
あるいは現在はもう少し冊数が多くなって
いたのかも。
温泉めぐりは群馬〜福島〜宮城。
某氏の車で移動。どうもありがとう
ございました。感謝。
福島はすごく山奥の旅館で一泊。あまりに
山奥で吃驚。
温泉にはたっぷり浸かりましたが、夜は
明りに集まる蛾がすごくてもう。
鳴子温泉で別れて、実家に帰還。実家では
だらだらだらと過ごしました。
夏休み中、ちまちまと古いドイツ語の
文法書を読んでいました。今までドイツ語は
かっちりした言語だと思っていましたが、
思いのほか例外の多いことに驚き。
いやまあ歴史性を帯びた言語であるなら
当たり前の話なのですが。
この文法書の記述ががまたふるっていて、
大真面目に書いていることがかえって
笑えたりします。
基数の項の注。
「elf（古形eilf←ein-lif）、
zwölf（古形zwo-lif）は、十のほか
‘あまり１、あまり２’（lif‘餘’）の
義と推せられている（備考：日本でも、那須與一は
父の第十一子であつた）．」
（佐藤通次『ドイツ広文典』白水社１９５１年、９８頁）
言語規則には例外があること、それは
様々な有様を呈する。それを細かく
フォローしていくのは大変な緻密さと
言語への没入を要する。その難しいこと。
改めて実感。
まあいい夏休みでしたということで。
2006年08月08日
梅雨が明けたら、死ぬほど暑くなってきました。でも
夜はだいぶ涼しいので、まだ本当に死ぬほどでは
ないのでしょう。
いつぞやの夏は朝に死にそうな暑さで目が覚めたり
していました。あれよりはだいぶマシですかねえ。
仕事の帰りにＣＤでコンツェルトハウス四重奏団による
ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第１５番を聴いて
歩きました。やはりすごい曲ですねこれ。
独創性と内容の深さ。何度聴いてもすばらしい。
コンツェルトハウスの演奏は、切れ味抜群の現代的な
演奏とはちょっと趣が違う、丁寧で語りかけるような
味わいがあります。ちょっとこういうアプローチは
ヌルいのかな、と感じなくもないですが、ひとつの
立派なスタイルではないかと。ブダペスト四重奏団の
ような演奏が全てではちょっと世界が狭すぎる。
第３楽章、全曲の核心たるアダージョがまた泣けてくる
いい演奏で。第４楽章、続く最終楽章も、実に楽器の
音色が美しい。第１ヴァイオリン以外の楽器もすごく
味がある。切ないほどいい音です。
第１ヴァイオリン主導型の古風なスタイルは、実は
脇を固める演奏者がべらぼうに上手くないとその美感が
半減するのではないかと。そんな気がします。
三宅剛一『学の形成と自然的世界』みすず書房。
何度かトライして挫折した本ですが、泉井久之助の
『フンボルト』を読了した勢いで再（々？）チャレンジ。
それにしてもなんとも淡々と鋭い文体で。
所謂数学の危機、集合論のパラドクスを西洋哲学史の
核心的問題として扱うアプローチは、現代の学者の
採り得る問題意識なのでしょうか。そのへんはなんだか
よく知りませんが。
「……あらゆる部分的なものを最終的な全体にまで
組織し統一する形式として我々の提示し得るものが、
部分的なるものの組織形式以外になかったとしたら、
そういう形式によって統一さるる全体が果たして
真に全体であり得るか。そういう形式が適用せられる
ことにおいて、それはまだ部分に止まることを
示すものではないか。……」（序�堯�
この問題意識が「全体」として「世界」を考えるとき、
ギリシア以来の問題意識となる。そこに古典を研究する
意味が出てくる。「事物をその始元的本質性において
観ること」。（序��）
「古典哲学の歴史的研究」と銘打つ大著。
こういうのをすらすら読めるひとがうらやましい。
本屋でまんがを１冊買うついでに、なぜか
Ｏ・ヘンリーの短編集を買ってしまいました。
自分でも信じられない行動。普通なら絶対に手を
出さない類の本なのですが。
夜はだいぶ涼しいので、まだ本当に死ぬほどでは
ないのでしょう。
いつぞやの夏は朝に死にそうな暑さで目が覚めたり
していました。あれよりはだいぶマシですかねえ。
仕事の帰りにＣＤでコンツェルトハウス四重奏団による
ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第１５番を聴いて
歩きました。やはりすごい曲ですねこれ。
独創性と内容の深さ。何度聴いてもすばらしい。
コンツェルトハウスの演奏は、切れ味抜群の現代的な
演奏とはちょっと趣が違う、丁寧で語りかけるような
味わいがあります。ちょっとこういうアプローチは
ヌルいのかな、と感じなくもないですが、ひとつの
立派なスタイルではないかと。ブダペスト四重奏団の
ような演奏が全てではちょっと世界が狭すぎる。
第３楽章、全曲の核心たるアダージョがまた泣けてくる
いい演奏で。第４楽章、続く最終楽章も、実に楽器の
音色が美しい。第１ヴァイオリン以外の楽器もすごく
味がある。切ないほどいい音です。
第１ヴァイオリン主導型の古風なスタイルは、実は
脇を固める演奏者がべらぼうに上手くないとその美感が
半減するのではないかと。そんな気がします。
三宅剛一『学の形成と自然的世界』みすず書房。
何度かトライして挫折した本ですが、泉井久之助の
『フンボルト』を読了した勢いで再（々？）チャレンジ。
それにしてもなんとも淡々と鋭い文体で。
所謂数学の危機、集合論のパラドクスを西洋哲学史の
核心的問題として扱うアプローチは、現代の学者の
採り得る問題意識なのでしょうか。そのへんはなんだか
よく知りませんが。
「……あらゆる部分的なものを最終的な全体にまで
組織し統一する形式として我々の提示し得るものが、
部分的なるものの組織形式以外になかったとしたら、
そういう形式によって統一さるる全体が果たして
真に全体であり得るか。そういう形式が適用せられる
ことにおいて、それはまだ部分に止まることを
示すものではないか。……」（序�堯�
この問題意識が「全体」として「世界」を考えるとき、
ギリシア以来の問題意識となる。そこに古典を研究する
意味が出てくる。「事物をその始元的本質性において
観ること」。（序��）
「古典哲学の歴史的研究」と銘打つ大著。
こういうのをすらすら読めるひとがうらやましい。
本屋でまんがを１冊買うついでに、なぜか
Ｏ・ヘンリーの短編集を買ってしまいました。
自分でも信じられない行動。普通なら絶対に手を
出さない類の本なのですが。
