約50年前に睡眠薬や妊婦のつわりの鎮静剤として使われたが、胎児の奇形を招く副作用が判明した「サリドマイド」は、胎児の手足の成長を促すたんぱく質の働きを間接的に妨げることが分かった。東京工業大の半田宏教授や東北大の小椋利彦教授らが、副作用の主因を初めて分子レベルで解明し、12日付の米科学誌サイエンスに発表した。
 世界的な薬害事件となったサリドマイドは近年、血液のがん「多発性骨髄腫(こつずいしゅ)」やハンセン病などに優れた治療効果があると分かり、日本でも厚生労働省が厳しい使用指針を定めた上で、2008年に多発性骨髄腫の薬として承認した。しかし、妊婦にとって危険であることは変わらず、研究チームは副作用を防ぐ改良や併用剤の開発を目指している。
 研究チームは、サリドマイドがたんぱく質分解酵素を構成する分子「セレブロン」に結合し、働きを阻害することを発見した。セレブロンを含むこの酵素は、別の未解明のたんぱく質を分解することを通じ、手足の成長を促す「FGF8」を働かせる役割がある。
 このことを確認するため、身体が半透明な魚「ゼブラフィッシュ」やニワトリの卵に、サリドマイドと結合しないよう操作したセレブロンの遺伝子を導入する実験を行った。その結果、サリドマイドを投与しても、ヒトの腕に相当する胸びれや翼が正常に近く成長した。
 ヒトの場合、こうした遺伝子導入法は使えないため、サリドマイドがセレブロンと結合しないよう改良したり、結合を防ぐ別の薬剤を開発して併用したりする方法が考えられるという。 

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